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所信表明 《渡辺 雄也》

所信表明 渡辺雄也

マジック漬けの人生

プロフィールに書いてある通り、小6で友達に誘われてマジックを始めてから、15年ずっとやってます。クラスの1番にはすぐになれたけど、ショップってところがあるよと聞いて行ってみたらまわりの平均年齢も高くて、コテンパンにされて全然勝てなくて、「なんて奥が深いゲームなんだ!」と。負けず嫌いだったので、少年の心がめらめらと燃え上がって、そこからどっぷりです。中学に上がるときに、回りの友達はやめちゃったんですけど自分は続けてて、ショップに通ううちに常連の方たちとも仲良くなって。中学生だからお小遣いをやりくりしてカードを集めてて、親からもらった昼食代がカードに替わってました(笑)
最初、学校でやってたころは友達と色を分担して僕が白担当だったので《天使の祝福/Angelic Blessing》を雑多なクリーチャーに撃って殴ってた思い出があります。ショップに行ったらさすがにそんなデッキでは勝てなくなって、トリコロールの中速デッキをよく使ってましたね。愛用してたカードが《稲妻の天使/Lightning Angel》と《嘘か真か/Fact or Fiction》です。

天使の祝福 稲妻の天使 嘘か真か

 

《稲妻の天使/Lightning Angel》は今でもお気に入りですし、《嘘か真か/Fact or Fiction》も思い出深くて、僕毎日学校から帰って2時間くらい、1人でもくもくと《嘘か真か/Fact or Fiction》の分け方の練習してました(笑) どうやったら一番いやな分け方にできるかなーと。

僕のマジックの取り組み方としては、ひたすら練習を積み上げる走り込みタイプなんです。そのときに毎日2時間カードを分けていた走り込みが、今の基礎になってるかもしれません。大きなイベントの前は一日中ずっと練習してますし。プロツアーの練習は(リリース時期の関係で)MO(マジック・オンライン)が使えないので、リアルで友達を集めて、グランプリとかはMOに張り付いてやる感じですね。以前の世界選手権のように、フォーマットが多数にわたるときは練習のしすぎでオーバーワークになることもあります。あのときは世界選手権(個人戦)とワールド・マジック・カップ(チーム戦)が同じタイミングだったので、合わせて7フォーマット練習しなきゃならなくて、1か月くらい1日の平均睡眠が1時間半くらいしかとれず、出発の前々日だったかにガチで倒れましたね。チーム戦は自分だけの問題じゃないので手を抜けないし、個人戦のほうが勝った時のウェイトが大きい。すべて自分の生活の根幹にかかわる部分なので、きつくても練習の手は抜けないんです。

プロプレイヤー

学生時代は地元のショップや草の根大会に出るくらいで、マジックは趣味の範囲を出なかったんです。プロツアーの権利も何回か得てましたけど、海外まで行ってマジックやるほどではないと思って一度も出てないですから。
トーナメントプレイヤーになるきっかけは、グランプリ・京都で優勝したことです。そのとき、「どうせだからルーキー・オブ・ザ・イヤー(その年に初めてプロポイントを獲得した新人の中で、もっともポイントを稼いだプレイヤーに与えられる賞)を目指してみたら?」と言われたんです。誰に言われたかはもう忘れちゃったんですけど。それで「そんなのあるんだ、じゃあ目指してみようかな」と思ったんです。

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2007年のグランプリ・京都で優勝した渡辺さんと友人たち

 

初めて出たプロツアー・横浜は初日落ちしちゃったんですけど、次のプロツアーに出るための予選に修平さん(殿堂プレイヤーの中村修平さん)と組んで出て、次のプロツアーの権利がうまく連鎖していって、とんとん拍子でルーキーがとれました。プロプレイヤークラブのレベルも今でいうゴールドくらいになれたので(大会での成績によって得られるポイントの年間集計によって、翌年の待遇が決まる制度。レベルが高いとプロツアーに継続参戦できたり、交通費やホテルが支給されたりする)、「じゃあもう1年やってみるか」ってなったらどっぷり沼にはまって、抜けられなくなりました(笑)

スポンサードプロになるきっかけは、ミントさんからお声がけいただいたことなんですけど、その前にも海外のチームからいくつか話はあったんです。でも海外からの話を受けてしまうと、日本でプロプレイヤーを支える土台ができなくなってしまうんじゃないかと思って断っていたんです。で、国内で最初にミントさんがスポンサーとして立って下さるという話になって、「僕としては、日本国内でスポンサードプロを増やすことを目標にしたいです」と、ご協力をお願いしました。実際、2013年にミントのスポンサードを受けてから、今ではスポンサー企業がどんどん増えて、非常にうれしいですね。
その流れで、マジック業界外のCygamesさんがプレイヤーを募っているというのは素晴らしいことだと思っていて、僕にも声をかけていただいて非常にうれしかったので、ミントさんとも話し合い、こういう流れをもっともっと大きくしていきたいということで、今回Team Cygames入りを受けさせていただきました。ちなみにCygamesさんの作っているゲームは知ってますが、やってはいないんです。まわりにいる、やりこんでるプレイヤーたちを見ると、やり始めるとハマってしまって大変なことになるんじゃないかと……(笑)

チームの3人について

瀬畑さん(市川ユウキさん)は、僕よりあとに出てきたマジックプレイヤーの中で現状一番強いプレイヤーだと思ってます。特にデッキを作るのがうまくて、カード1枚1枚に採用するしないの理由があって、明確な意志を持ってデッキ構築できるのがすごいなと。あとしゃべりがうまい。Cygamesさんの動画は彼のおかげで成り立ってますよね(笑)

やまけん(山本賢太郎さん)は3人の中では一番古くからの付き合いで、同じ仕事してるので一緒にいることも多いです。プレイヤーとしては冷静沈着な面があって、いつも手堅いプレイですね。ミスらしいミスもしないで、自分を崩さずにマジックと向き合ってる感じで、Team Cygamesの中で一番プレイの見本にするべきなのはやまけんだと思います。

覚前君は3人の中では一番付き合いが短いですけど、情熱的というか、復帰してすぐにプロとしてやっていく決意を固めてて、海外とかにも熱心に遠征してますしがんばってますね。僕と同じようにすごい練習するタイプで、いつ見てもMOにいるんですよね。僕としても、個人的に応援したいと思ってます。ブランクが長かった分、地力というか、下積みとかで養われていく部分が若干足りてないのを、練習量でカバーしてる部分があると思うんで、同じチームになったらそこを鍛える方法を探って行けたらなと思います。こっちに引っ越してきたいという話も出てたので、そうなったら一緒に練習できるんですけどね。東京に来てくれないかなー。

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今後について

プロフィールに今季の目標として書いた「プラチナ維持」「グランプリ優勝」「プロツアートップ8入り」は毎年の目標で、いつも通りです。
「プラチナ維持」というのは目標というよりも最低限のハードルで、維持できなかったら今後の身の振り方を考えるレベルです。今の僕にとっては、「プロツアートップ8入り」よりも「グランプリ優勝」のほうが価値が大きいかな。あと1回勝てばグランプリ優勝8回になって、カイ・ブッディ(「ジャーマン・ジャガーノート」の異名を持つ伝説的プレイヤー)の記録を抜いて1位になるので。
今まで、(マジックへの貢献度と成績を認められた人が選ばれる)プロツアー殿堂入りを目標にずっとマジックをしてきて、今年の夏にいよいよ投票なんですが、自分の中で目標があって、できるだけ高いパーセンテージ……90%以上で殿堂入りしたいと思ってます。やっぱりみんなが「殿堂に入るべきだ」と思うような人たちは高い得票率を持っているので、僕もそれに並べるようになりたいですね。

(※殿堂入りするメンバーは、候補者の中からプレイヤーや関係者が投票を行ない、その得票率によって決まる。40人ほどいる殿堂プレイヤーの中でも、得票率90%を超えたのは前述のカイ・ブッディとアメリカのチーム「Channel Fireball」を率いるルイス・スコット=ヴァーガスの2人しかいない。)

「生涯現役」という目標に関しては、自分だけでは実現できないことで、周りの環境、スポンサーして下さる企業やマジックを支えている人たちなくしてはできないものなので、ずっとマジックができる環境を目指して、まわりと一緒に作っていきたいと思います。マジック業界がもっと注目を集めるようになって、どんどん大きくなってほしいですね。

応援してくれる皆さんへ

新しい環境で、チームとして勝てるようにがんばっていきたいと思います。4人ともマジックのスタイルや使うデッキの方向性は違いますが、近い将来、4人で調整した同じデッキを使って4人とも勝てるようになったらいいなと思います。

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