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Team Cygames『イニストラードを覆う影』合宿レポート

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新セット『イニストラードを覆う影』発売直後の4月8日(金)~10日(日)に、Team Cygames恒例のドラフト合宿を行いました。ここから1ヶ月の間に開催されるグランプリ北京、プロツアー『イニストラードを覆う影』、グランプリ東京と続いてゆくプレミアイベントに臨むにあたり、メンバー達は『イニストラードを覆う影』をどのように分析していったのでしょうか。その合宿を終えた総括と各メンバーのドラフト所感をお届けしていきます。
(※本取材は2016年4月10日(日)に行われたものです)

ドラフト合宿を行うにあたり、Team Cygames所属の、山本賢太郎、市川ユウキ、渡辺雄也、覚前輝也の4人に加え、前回の合宿にも参加をしたメンバーが多く集まりました。
「菊名合宿」中村肇・さら夫妻、殿堂プレイヤーの三原槙仁さん、プロツアーチャンピオン瀧村和幸さん、リミテッド巧者石村信太朗さん、金民守さん。そして今回の合宿新顔枠にはグランプリ千葉チャンピオンの松本友樹さんを迎え、連日にわたってドラフトとその検討が行われました。

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トップレベルのプロたちで意見交換できる場はとっても有意義!

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コモンとアンコモンのカードを右から左にかけて強いカード順に並べていました。

 

 

●『イニストラードを覆う影』ドラフト合宿を振り返って

――合宿ドラフトも一通り終わって、この環境の印象はどのようなものでしたか?
市川「カードパワーはさがったよね、全体的に。」
渡辺「いつものリミテッド環境と比べて、カードパワーが全体的に低いよね。」
市川「パワータフネスが一段階ずつ低い。」
山本「そう、サイズが小さいよね。」
渡辺「除去も弱い。」
山本「緑はでかい。」
渡辺「緑だけ従来の環境のカードパワーだよね。《血狂いの吸血鬼/Bloodmad Vampire(SOI)》だって今までなら4/2だよね。なんか足らない。」
覚前「足らないね。」
渡辺「赤も2マナ域にパワー2がいないしね。」
市川「そう、それすごいよね。」
山本「いないの?それやばいね。」
覚前「普通、2/1だよね。」
渡辺「そう!いつも2/1にトランプルとかちょっとした能力ついているけど、今回はそれすらない。だから緑が強いなと。そして両面カードは取り得!」

4人「両面カードは取り得!」

渡辺「例えば初手に《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》引くじゃないですか、その下の人は白できないです。」
市川「下がかぶせるのは難しい。」
渡辺「選択肢がないんだよね。色の読み合いとかのドラフトの醍醐味がなさすぎて。棲み分けもできるからみんなデッキが綺麗になって、結果として単純にカードパワーが強いデッキが勝つ。」
市川「棲み分けしやすいせいで、カードが強い緑がそのまま勝ってる感じするよね。もう少しグチャってくれたらローグアーキタイプ、今回でいったら青赤みたいなデッキにも可能性があると思うんだけど。今回は誰も3-0もできなかったし。」
渡辺「ローグのうま味がないよね。」
市川「俺とナベと瀧村君はそうとう青やったよね。でも、1回も3-0できなかった。」
山本「俺、青白で3-0したよ。」
渡辺「白が強かったんでしょ?」
山本「確かに白強かったかも……。」
市川「白軸なら許される。」
山本「あ、《罪人への急襲/Descend upon the Sinful(SOI)》とか入ってたな……!」
市川「(台パン)ふざけんじゃねーぞ!(笑)」
渡辺「棲み分けできてみんな綺麗なデッキになるからビートが強い。《川の水神/River Kaijin(CHK)》くらいくれよ~。こんだけコモンに3/2がいるんだから。」

――生き物じゃないデッキは存在できない?
渡辺「《パズルの欠片/Pieces of the Puzzle(SOI)》とかみんな試してたけど、どうだった?」
市川「勝てない!」
覚前「よくできたビートが本当に強いよね。」
市川「装備品も強いしね。」
渡辺「ジャイグロのようなコンバットトリックをはじめとして、押し込みカードが強いのに守るカードが弱いので、結局ビートがいいなと。なんでタフネス4が用意されてるのが緑なんだよと。」
市川「守るデッキも緑が一番強いんだよね。《黴墓のゴミあさり/Moldgraf Scavenger(SOI)》とか。」

――じゃあ緑の許容人数はかなり多い?
渡辺「4人までいけます。」

――卓の半分ってかなりですよね。
渡辺「そうです、しかも全員デッキがそこそこになりますよ。」
市川「みんな2-1スペックになるよね。」
渡辺「上が緑をとっても諦めないほうがいいかもと思ってます。白と赤は厳しいんですけど、緑黒と緑赤狼男はデッキで使うパーツ違うので、色がかぶってもアーキタイプで棲み分けできれば戦えるかなと。」

――緑が強いのはわかりましたが、他の色はどうでしたか?
渡辺「吸血鬼やマッドネスはどちらもコモンがね……。」
市川「2マナ域をアンコモンで揃えないといけない。」
覚前「赤黒はきつい。」
山本「パックの出に左右されるんでそれがきついなと。」
渡辺「とにかく黒が一番やりたくないですね。」
山本「青はいい。2色目としては触りやすい。」
市川「補色としては、まぁアリ。」
渡辺「補色で触りやすいのもそうなんですが、一応メイン色になったときに逃げ道として果敢マッドネスとかできるからね。」
山本「あと黒はクセが強い。マッドネスとか昂揚とかメインでがっつりピックしないと弱いから。」
覚前「赤はめちゃくちゃ試して、赤黒含め強いパターンを探してたんですけど無かったです。最後の2回くらいで緑か白のビートを組むのがいいなって思いました。」
渡辺「それができなかったときの逃げ道としては?」
覚前「青赤とか青黒とかかな。」
渡辺「青黒はだめだと思うよ。」
山本「それって何で勝つの?」
市川「《驚恐の目覚め/Startled Awake(SOI)》とか。」
山本「神話だよね?」
渡辺「《驚恐の目覚め/Startled Awake(SOI)》はすごいね。あれからだったら青赤やりたい。一枚で勝てる。しかもあれをピックしたからって青はかぶせてこないから。」
市川「青そんなやりたくないからね、みんな。」
覚前「青あげるよって回ってくるよね、きっと。」
渡辺「あと青は《逸脱した研究者/Aberrant Researcher(SOI)》くらいからしかできないのに、合宿ではみんな流しすぎかなぁと思った。」
市川「そういえば《逸脱した研究者/Aberrant Researcher(SOI)》が(インスタント・ソーサリーを)めくれるとこ一回も見なかったな。」
渡辺「結構めくれるよ。まあ昂揚を達成できる《噛みつきドレイク/Snapping Drake(RAV)》だからね。」

――合宿を終えての感想を聞いて、だいぶかたよった環境なんだなってことを感じました。

渡辺「そうですね。緑白強い、赤は許せる、青と黒は弱い。そして両面は取り得。」

――ありがとうございました。

 

 

●各メンバーの感想

 

山本賢太郎

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――『イニストラードを覆う影』の初見の印象を教えてください。
山本「最初は黒と赤の吸血鬼とかマッドネスが強そうな感じを受けていました。」

――実際はどうでしたか?
山本「コモンにマッドネスに必要な共鳴者がいなくて、卓に1人が限界のアーキタイプでした。アンコモンとかの優秀な共鳴者を見たら参加して《マウアー地所の双子/Twins of Maurer Estate(SOI)》をピックしていくのがよいと思います。」

――マッドネスが微妙だったとのことですが、逆に何が強かったですか
山本「緑全般ですね。クリーチャーがひとまわり太くてダントツに強いです。卓8人中4人までいけますね。」

――結構な許容人数ですね。
山本「殴る緑と昂揚の緑のようにアーキタイプで棲み分けができそうですし、そもそもプレイアブルなカードが多いです。」

――その昂揚の印象はどうでしたか?
山本「意識してピックしないと昂揚デッキはうまくつくれないですね。《発生の器/Vessel of Nascency(SOI)》とか《闇告げカラス/Crow of Dark Tidings(SOI)》あたりを狙ってピックしていく必要があると思います。」

――合宿中で評価が変わったカードを教えてください。
山本「《スレイベンの検査官/Thraben Inspector(SOI)》ですね。軽く装備先を用意できるし調査トークンで損もしない。逆に《刹那の器/Vessel of Ephemera(SOI)》の評価が下がりました。トータル5マナで1/1飛行を2体出している環境じゃなかったです。」

市川ユウキ

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――『イニストラードを覆う影』の初見の印象を教えてください。
市川「前のイニストラードの時から、両面カードを出された返しで行動できないと負けちゃうイメージだったので、低マナにカードを寄せる感じじゃないかなと思いました。」

――実際合宿を行ってみて、両面カードはどうでしたか?
市川「結構強いですね。表が平均点くらいで裏になったら強いですね。あとカラーリング、赤緑って色が強いので、両面カードがんがんピックしていったら、下の人がやりづらいんじゃないかな。そういう相乗効果もあると思います。」

――他のキーワード能力はどうでしたか?
市川「赤と黒のマッドネスは結構やるかな。青もマッドネスの色なんですが、カードが弱いんでマッドネスではあんま強くないかな。なんか青のマッドネスカードは場に与えるインパクトが弱いんですよね。赤と黒は除去とかクリーチャーなので、マナ効率がよくなってテンポよく展開できたりして。綺麗に組めたときは強いなみたいな印象をうけました。」

――昂揚はどうでしょう。
市川「僕は組むのが苦手だなと思いました。緑とか白のビートダウンで、そこそこ昂揚を達成する形があって……。《ガラスの破片/Shard of Broken Glass(SOI)》とかアーティファクトクリーチャーをちょっと入れたりとか。そういうセンシティブな構築が要求されるかなと。緑黒昂揚はドレッジみたいなのを作ればいいと思うんですが、緑白で昂揚を考えてデッキを作れたら強いかなと。」

――合宿中に評価が変わったカードを教えてください。
市川「青が全般的に期待外れでしたね。《金縛り/Sleep Paralysis(SOI)》とか。《療養所の骸骨/Sanitarium Skeleton(SOI)》はシナジーが多くて一枚はピックしておきたいカードに変わりました。」

――色のバランス的にはどんな環境ですか。
市川「緑が一番強い。白と赤が2番手。緑と白はクリーチャーの質がよいのでメインの軸になる感じですね。青と黒はメインカラーになれず、添え物みたいな感じですね。」

渡辺雄也

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――『イニストラードを覆う影』の初見の印象を教えてください。
渡辺「以前の両面カードと同じでかなり取り得、自分の色を主張して周りに引いてもらうっていうことができるなと。なのでドラフトではそれを絡めたピックが要求されるなと思いました。」

――その通りでしたか?
渡辺「そうですね。本当に取り得でした。あと両面カードは卓にでたカードを全部覚えておかなくてはいけなくて、そこから色とアーキタイプを推測できるし、ドラフト中なら「何手目にこれが流れてくるかも」というカード予想もできる。やっぱ両面カードの存在は大きいなと思いました。あとは単純に強いカードが多いですね。逆に言えば強い両面カードを引けなかった人が割を食う環境だなとも思います。」

――なるほど。両面以外の他のキーワード能力はどうでしたか?
渡辺「マッドネスはディスカードすることでテンポをとることができる能力なんですが、基本的にリソース・アドバンテージにつながらない。最初はテンポで押していけるのかなって思ってたんですが、強くはなかったなと。カードを捨てるための共鳴者が(コモンに)全然用意されていないので、マッドネス関連のカードは使いづらいですね。《癇しゃく/Fiery Temper(SOI)》だけは別格ですが。」

――昂揚はどんな印象になりましたか?
渡辺「しっかり組めればちゃんと強いですね。全体のクリーチャーの質が弱いのでゲームが長引きやすくて、長引けばしっかり昂揚できて勝てると思います。ただ意識してデッキを作る必要があって、テクニカルなアーキタイプだなと思います。」

――どのあたりを意識するのでしょうか?
渡辺「自然にやってると4種類は揃わないので、《ねじれ地帯/Warped Landscape(SOI)》《爆発性の機器/Explosive Apparatus(SOI)》《発生の器/Vessel of Nascency(SOI)》《闇告げカラス/Crow of Dark Tidings(SOI)》といった墓地を肥やしたり種類を増やせるカードをピックしておく必要がありますね。」

――色の強弱としてはどうでしょう。
渡辺「緑白が2強。コモンの質が高くてビートダウンが強いので。赤は《癇しゃく/Fiery Temper(SOI)》がかなり強くて次点。弱いですが飛行で押せる青が次で、黒は除去も弱く攻めもできない。ただアンコモンがすごく強いので、そこから黒はありえると思います。」

――ドラフトしてて強いなと思ったカードは?
渡辺「《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》。《アーリン・コード/Arlinn Kord(SOI)》はそうでもないですね。」

--合宿を通して評価が変わったカードを教えてください。
渡辺「《死の重み/Dead Weight(SOI)》は思ったよりも弱かったですね。それでも黒のコモントップクラスにはいるのですが。同様に《天使の粛清/Angelic Purge(SOI)》《金縛り/Sleep Paralysis(SOI)》も最優先ってことはなくなりました。除去よりもクリーチャーをピックしたほうがいいなと。逆に評価が上がったのは《信条の香炉/True-Faith Censer(SOI)》ですね。白とかで使うとコモンとは思えない強さです。《ガツタフの放火魔/Gatstaf Arsonists(SOI)》も、クリーチャー全体の質が低かったので、このレベルのカードでも十分強いと感じました。あとは《スレイベンの検査官/Thraben Inspector(SOI)》ですか。このカードはぐんぐん評価があがっていきましたね。」

覚前輝也

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――『イニストラードを覆う影』の初見の印象を教えてください。
覚前「マッドネスの復活が興味深くて、やってみたいと思いました。スタンダードで《ファルケンラスの後継者/Heir of Falkenrath(SOI)》《戦争に向かう者、オリヴィア/Olivia, Mobilized for War(SOI)》を使ってマッドネスデッキを作ってみたかった。もちろんドラフトでもやってみようと思いました。」

――実際赤黒系デッキを多くドラフトしてましたが、どうでしたか?
覚前「弱かった。とにかくコモンにマッドネスのキーカードがなくて《傲慢な新生子/Insolent Neonate(SOI)》くらいしか使えなそうだったのですが、それすらダメでプレイアブルなコモンがゼロ。アンコモンから入って枚数が揃わないとギャンブルになってしまいますね。」

――ではどのようなデッキがよいと思いましたか?
覚前「みんなの結果を見ていて、緑か白を中心にやってみたいなって思いました。特に両面カードは強くて、アピールにもなるし協調、棲み分けが容易でデッキを強くしていける。昂揚も緑を中心とした能力なんですがアーキタイプ的な棲み分けもできると思います。」

――その昂揚はどういった印象になりましたか?
覚前「キーワード能力の中で一番わかりにくいものですね。ただ実際に達成したときにはすごく強い能力だなと思ったので、これらの点数はものすごくあがりましたね。《発生の器/Vessel of Nascency(SOI)》あたりは特に。」

――他にも評価が変わったカードはありますか?
覚前「《発生の器/Vessel of Nascency(SOI)》に限らず、昂揚のカード全般の評価があがったのですが、それ以外だと軽いコンバットトリック全部ですね。ジャイグロとか。逆に除去は全て評価が下がりました。」

――では緑が最強ということで。
覚前「そうですね。緑の1トップです。それと次点の白、このどちらかは必ず入れたい。最弱は青で、《驚恐の目覚め/Startled Awake(SOI)》《氷の中の存在/Thing in the Ice(SOI)》のどちらかくらいからでないとピックすることはないと思います。」

 

 

●プロツアー目前!
Team Cygamesのメンバーによる『イニストラードを覆う影』ドラフトの感想は「緑最強両面最強」みたいな印象となりました。みなさんはどのように感じましたでしょうか。

グランプリ北京も終わり、今週末はいよいよプロツアー『イニストラードを覆う影』が開催されます。大会の様子は「ニコニコ生放送」の公式中継で見ることができるほか、Team Cygames公式HPでも報告していきますので、ご期待ください!

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