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【PTKLD】プロツアー準備と謎の男【Day0】

01

新シーズンに入って初のプロツアーがいよいよスタートします。
開催前日にあたる10月13日(木)、プロツアー『カラデシュ』の舞台となるハワイのホノルルにTeam Cygamesメンバー4人が集まりました。
夜の殿堂セレモニーに出席する渡辺さんは前日、そのほかの3名のチームメンバーは13日の朝方ハワイに到着。ランチをとりながら、プロツアーの準備についてうかがいました。

02
ハワイの美しい海が目の前で、南国気分たっぷりです。真夏の陽気ですが、貿易風が常に吹いているのでさわやかです。

 

 

●デッキの準備

――まずは構築をどのように準備したか、お聞きしたいと思います。渡辺さんは先週末、PWC(横浜の草の根大会)に出ていましたよね。あれも準備の一環ですか?
渡辺「一応そうですね。PWCが500回目の記念大会で、僕とカカオ(中村肇さん)と井川(Hareruya Prosの井川良彦さん)という、先日のグランプリ・京都2016と同じチームで出ました。チーム戦だったので好きなようにはデッキを組めなかったんですが、僕と井川はプロツアーで使いたいと思っているデッキの調整をして、パーツがちょっとだけかぶった分はプロツアーに出ないカカオが妥協しました。」

――出てみて、結果はどうでしたか?
渡辺「このデッキはとても使用に耐えないおもちゃだということがわかって解体しました(笑)貴重な1日を使いましたが、“後の3巡を買った”ということで。」

――そこからどうしたんですか?
渡辺「そもそも、金曜の夜から菊名(中村肇さんの家)で行弘(Dig.cards所属の行弘賢さん)とか津村(Hareruya Prosの津村健志さん)とかライザ(石村信太朗さん)と練習してたので、大会に出てダメだった部分をフィードバックして、そのあと2日間くらいあがきにあがいてたら、最終的に天才ライザ先生のデッキが天から降ってきたんです。けっこう、見たらびっくりすると思いますよ。カカオは最初に見て「大丈夫なの、これ?」って言ってました。」
??「まず僕に、ライザからLINEが来たんですよ。『僕らのプロツアー優勝デッキができましたよ!』って。」

――おお、かっこいい!
??「デッキの写真が送られてきて、それを見たら……(真顔で首をひねるポーズ)」
渡辺「俺もその場にいて、一緒に首をひねりました。」
??「思わず『これ、いける?』って返事したら、『えっ? 見た目弱そうですか?』って、いかにも心外だって感じの返事が来た(笑)。『みんなすごいってほめてくれると思ってたのに……』って。」
渡辺「常人には理解できない構成をしてたんです。でもライザがこんなに自信持って言うのは珍しいからってことで、回してみたら確かになるほどと思うポイントがたくさんあって、これにしようってなりました。」

――見た目ではわからないデッキなんですね。
??「工場の外観を見て、このパイプが何の役割かってわからないじゃないですか。そんな感じです。」
渡辺「細かいところはこれから相談して詰めます。殿堂セレモニーがあってけっこう時間を割かれちゃうんですけど……。」

――覚前さんは「まだデッキが決まってない」と出発前にツイッターでおっしゃってましたが、決まりましたか?
覚前「決まりました!」
市川「今回は最初僕と瀧村君(BIG MAGIC所属の瀧村和幸さん)とAさん(BIG MAGIC所属の松本友樹さん)が3人でやってたんですけど、ドラフト合宿の時に声をかけたりかけてもらったりした人たちがいて、覚前君とやまけん(山本さん)、あと彌永(淳也)君と浦瀬(亮佑)君を加えた7人で構築の調整をやりました。彌永君だけ、LINEが使えなかったので途中からやりとりに参加できなくて離脱状態になってしまったんですけど。」

――その方たちは一緒のデッキを使う予定なんですか?
市川「たぶん5人くらいは一緒かな。」

――調整はどんなふうに?
市川「週末に集まってやりました。僕は1日くらいしかいられなかったんですけど。Aさんと瀧村君はアイディアの宝庫なので、湯水のようにデッキアイディアが湧いてきて。週刊誌に載ってる女子アナのブラジャー特集みたいな、くだらないものもあるんですけど(笑)」

――それは、思いつきとしては取るに足りないようなアイディアを、ちゃんと2ページ見開きの記事にまとめる力があるってことですよね。
市川「そうです。僕が編集長なので。これはアリ、これはダメって精査します。もちろんデッキを実際に回してくれる人もいて、役割が途中からある程度できていった感じですね。いろいろデッキを回して、二択か三択くらいまでいったんですけど、最終的には『俺を信じろ』ということで決めました。」

――最後は編集長が責任を持たないといけないですからね。
市川「最初の3人で集まったとき、最終的に俺の判断にゆだねるという基本軸でチームができてるので。だからみんなが負けたら、僕の責任です。」

 

 

●環境について

――カラデシュの環境はモダンのようだという意見がありますが。
市川「そうですね、除去が弱すぎるから抑止力が少なくて、アクティブなカードが強いので。」
渡辺「やりたいことやったもん勝ちだね。」

――対戦が長引かず、すぐ終わる環境ですか?
渡辺「考えることは多いから1ターンは長いけど、ゲーム自体は5ターンとかで終わることも多そう。終わったあとで『聞いてよ~4ターンキルされたんだけど~!』って文句タラタラな人と、『めっちゃ回った~!』って笑顔で喜んでる人に分かれそう。」

――どんなデッキが多いプロツアーだと予測していますか?
市川「正直、今回はマジでわかんないですよ。俺的には、赤白とかメジャーなものとは別に、赤緑のダブルストライクと、《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》のデッキを選ぶ人は多いかなと思う。」

――どっちも、回ったら勝ち!みたいなデッキですよね。
市川「赤緑ダブルストライクのほうは、けっこう安定してますよ。MOで安く効率よく回せるデッキみたいに見えるけど、見た目の3倍くらい強いです。そこには勝てるようにしたいと思ってます。」
渡辺「ただ、全部に勝つのは無理だね。」

――そこはモダンと同じですね。すべてに対して丸いデッキは存在しないという。
渡辺「僕は、ヘリコプター(《密輸人の回転翼機/Smuggler’s Copter(KLD)》)を使うか、《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》を使うかの二択だと思っています。カードパワーが飛び抜けたこの2つのアーティファクトをどちらも使わないのはハンデを負うなと。赤緑ダブルストライクは、個人的にはわずかにデッキパワーが足りないんじゃないかと思ってます。」

――《密輸人の回転翼機/Smuggler’s Copter(KLD)》が席巻するというほどではないでしょうか?
渡辺「数として多いのは間違いないと思います。ヘリコプターはデッキを支える丸いカードで、どんなデッキにも使われるので。」

 

 

●本番への自信は?

――では最後に、デッキ選択を含め、プロツアーへの自信のほどは?
市川「あります!」
山本「編集長がそう言ってるので、確かです。」
市川「紆余曲折あって、1人でやろうとしていた山本さんを口説き落としてチームに入れたので、責任は重いんですけど、僕、なかなかデッキに『The Sun』って名前はつけないんです。この名前を使ったのは台北以来で、台北では優勝してますから。今回は相当自信あります。」

――それは期待できますね。初版即完売、増刷待ったなしですね。
??「じゃあ、俺らのデッキは『The Moon』にしようか?」
渡辺「ありだね。なんか月っぽいデッキだし。」
市川「ブラックビスケッツとポケットビスケッツみたいだ(笑)」

――太陽と月が並び立ちますね。渡辺さんはどうですか?
渡辺「僕は無我の境地でやってるので、自信とかじゃなくて、できることをただやるだけです。それよりも今晩の殿堂セレモニーのスピーチのほうが心配です。帰って練習しないと……。」

――さっきも1時間練習していたというのに、まだ練習するんですか?
渡辺「英語の発音が難しくて……頑張ります…!」

――覚前さんは、自信のほどはどうですか?
覚前「僕はドラフトはけっこう練習してきたので5-1します。構築は大船に乗ったつもりで。」

――ドラフトで勝てば、構築への気持ちの余裕もできますしね。そういえばドラフトについては特にお聞きしていませんでしたが、ドラフト合宿が終わった後は構築に力を注いでいるから、特に変化とかはないですよね?
渡辺「井川は青黒が板だって言ってた。」
山本「それはMOで青が安いからじゃないかな。」
市川「この環境のドラフトは“アートを描け”というのが基本なので、僕に無地のキャンパスをください。」

――アートですか。逆にアートじゃないデッキっていうのはどういうデッキなんですか?
山本「マナカーブはだけは良いけど、どうやって勝つんだ?っていうような、ぼんやりしたデッキです。」
市川「そういうデッキが強い環境もあるんですけど、今回はそうじゃない。」

――勝ち方のストーリーがあるデッキがアートということですね。
市川「そう。まずキャンパスに1本の線をバッと引いたら、どう彩るかは自分のセンス次第!」

――なんか、例えがすごいかっこいいですね。
市川「だいたい羽生さん(将棋の羽生善治さん)の本に書いてありますけどね(笑)」
山本「ドラフトは何で勝つかの見通しが大事なんですけど、この環境は特にそれが大事ですね。」
――なるほど。それでは本番、頑張ってください!

 

03

ちょくちょく会話に出てきていましたが、実は山本さんと同部屋の行弘さんも一緒のランチタイムでした。
行弘さんは今回がホノルルでのプロツアーは4回目ですが、土地の相性が悪いのか今までの3回は全部初日落ちしているそうです。「今年はドラフトマスターをねらってるんですが、初日突破しないとドラフトマスターにはなれないから、目標は初日突破です」と話してくれました。
このあと、夜には渡辺さんの殿堂セレモニーがおこなわれたので、そちらの様子もレポートしたいと思います。お楽しみに!

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