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【PTDOM】リッチモンドの穏やかな夕べ【Day0】

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ここアメリカのリッチモンドで、6月1~3日に開催されるプロツアー「ドミナリア」。
リッチモンドは、渡辺さんが「12年前とかにグランプリで一度来たことがあるかもしれないけど、覚えてない」という程度で、チームの皆さん同様、読者の方々にとってもあまりなじみのない場所かと思われます。
簡単にご説明しますと、アメリカ東海岸、首都ワシントンD.C.の南にある古い植民地で、南北戦争の時代には南側の首都として戦場になったそうです。現在ののどかな街の姿からは想像もつきませんが。近隣には古戦場もあるとか。

Team Cygamesのメンバー4人は、5月31日(木)の昼すぎに現地入り。〈MUSASHI〉の仲間、行弘賢さんと一緒に、準備についてお話を聞きました。
残念ながら今回は覚前さんのプロツアー参加権利がないため、いつもより1人少ない顔ぶれとなっています。ラウンドが終わるたびに取材班のところに顔を出し、あれこれと話してくれる癒しの存在、覚前さんがいないのは寂しいですが、次回のチーム戦によるプロツアーにはほぼ確実に戻ってくるということでした。

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緑が多い街角の風景。見た目はさわやかですが、日本より湿度が高く、かなり蒸し暑いです。

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木曜日、受付のために会場を訪れるとまだステージの設営中でした。

 

 

 

●構築合宿

――今回も八十岡さんの家で構築合宿をしてデッキを決めたんですか?
渡辺「グランプリ・北京が終わってから本格的にやり出したんで、2週間くらい、週末にみんな集まって、平日も集まれる人は集まって。いつもよりプロツアーの開催時期が遅くて、しかもスタンダードのグランプリが1回と、MOの大会……MOCSと、MOPTQが2回くらいあったんで、それを参考にして結果がよかったデッキを回したり、メタゲームを予測したり。」

――先日のグランプリ・バーミンガム2018ではトップ8に赤黒が多くいましたが、今回の環境予測は?
渡辺「まあ、赤黒と青白は多そう。」

――では、その2つに勝てそうなデッキを選んだ?
渡辺「とはいってもその2つだけではないと思っているので、自分たちが総合的に戦えると思ったものを持ってきたつもりです。」
市川「単純にデッキパワーが高くて、赤黒と青白にもまあまあ戦えるデッキ。」

――環境はだいぶ煮詰まっていて、前みたいにMOで直前に新デッキが発見されたりはしなかったんですね。
市川「ないですね。」

――構築合宿には覚前さんもいらしてましたか?
八十岡「けっこう来てました。」
行弘「5、6回は来て、いろいろ意見くれてたかな。」
市川「赤黒とかけっこう回してくれたし。」

――覚前さんはプロツアーの放送を見ながら勉強するといってましたね。

 


市川「てるや、ちょっと寂しそうで、ツイート多めだったね。」
行弘「練習中も、『よーしプロツアーのデッキ決まったぞー』とかって言ってた(笑)。」
市川「『赤黒で出ようかなー、どう思う?』って。」

――出ていたら、きっと赤黒を使ってたでしょうね。
市川「使ってた使ってた。」
渡辺「あと、合宿はいつもの原根(健太)君と高尾(翔太)君も一緒にやってました。」

――原根さんの存在の必要性は今までにもいろいろと話を聞いていますが、高尾さんはどういう部分を買われて参加しているんですか?
渡辺「デッキ構築力があるのと……」
市川「家が近い(笑)。」
渡辺「家が近いのは、大事。」
八十岡「時間が取れる、呼んだら来てくれるってことなんで。」
渡辺「高尾君は常に構築合宿にいたくらい。」

 

 

 

●デッキ提出期限の繰り上がり

――今回、デッキの提出期限が1日早まりましたよね。今までは現地に来てから、木曜の夜までに提出すればよかったのが、今回は日本を出発する前。
渡辺「水曜の昼くらいから集まって、木曜までみっちり調整して、朝3時くらいにはだいたい決まってサブミット(確定)って感じでしたね。僕らは出発が昼の11時だったんですけど、それまでに出せば大丈夫でした。」

――そうすると、飛行機に乗ったら寝るだけでうまいこと時差も調整できると。
行弘「ぐっすり寝ました。」

――デッキ提出が早まって、今までとどう変わりましたか?
市川「荷物が軽くなった! ヤソなんか、75枚しか持ってきてないでしょ?」
八十岡「うん。普段は使いそうなカードとか、100枚くらい。」
渡辺「今回はデッキしか持ってこなくていいから荷物はすごい軽いですね。で、もうデッキが決まっちゃってるから今日(木曜日)が楽。いつもだったらこの晩ご飯のあと、デッキの最後の詰めをみんなで22時くらいまで考えてましたけど、今日はもう寝るだけなんで。」
市川「精神的に楽。今日は着いたら会場行ってドラフトして、飯食って寝るだけだから、食う寝る遊ぶの木曜日(笑)。」

――明日に向けてのコンディション調整にはよさそうですね。
市川「まあ、かなりいいですね。もう何もできることはないから。」
渡辺「あとはデッキのスリーブを入れ替えることくらいしか。」
市川「今日会場でサイドボードプランの質問されたんですけど、『もうデッキ出してるからあきらめたほうがいいよ』って(笑)。」

――提出が早くなってよかったですか?
渡辺「まあ、実際やってみないとわかんないですね。練り込み不足で、『あと1日欲しかったね』って言ってるかもしれないし。」
八十岡「結局のところ、あと1日やってよくなったかどうかはわかんないけどね。」

――デッキ提出が早くなりましたが、それに伴ってデッキの公開タイミングが早くなるわけではないですか?
渡辺「最初は構築2ラウンド目くらいでデッキ全公開になるんじゃないか、みたいな噂もあったんですけど、今のところ何も言われてないので。」
八十岡「先にデッキテクの動画(本国の生放送でラウンドの合間に流れる、使用者本人がデッキについて解説する映像)を撮ってるから、その中からドラフトで勝った人を誰かフィーチャーに呼ぶんじゃない?」
市川「先にデッキを見たうえで、決め打ちでフィーチャーに呼ぶ展開が多そう。」

 

 

 

●今回の目標

――今回のプロツアーの目標をお願いします。
渡辺「追加のプロポイント取れたらいいなくらいで、あまり自信ないです。普段のプロツアーは2週間の間にどれだけやりこんできたかみたいなのが出るんですけど、今回は1か月なんでみんなやりこんでるのが当たり前で、ドラフトも構築もある程度みんな環境理解度が高い状態なんで、けっこう差が出にくい。」

――開催まで時間があったプロツアーは、前回いつでしたっけ?
渡辺「プロツアー『イクサラン』ですね。〈MUSASHI〉が大コケしたとき。」
市川「やまけんが9位で、救ってくれた。あぶなかった。」
渡辺「まあ、あまり自信はないですが精いっぱい頑張ります、てるやの分も。」

――山本さんはいかがですか?
山本「5敗にできたらうれしいな……くらいです。自信ないんで。」
行弘「自信ない勢が集まってきたな(笑)。」
山本「ドラフトもあんまりやってないし、構築もあんまりやってなかったんで。」

――でも合宿にはけっこう行っていたんですよね?
山本「合宿には週末はどっちか出て、平日もたまに。ただオンラインのほうをあまりやらなかったんで、そこがいつもと違って不安な面があります。」
八十岡「俺は構築7-3、ドラフトは2-4から5-1まであると思います。」
市川「運否天賦やないかい!」
行弘「6-0がないところに自信のなさが出てる。」

――市川さんは?
市川「勝ちます! 構築もドラフトも、けっこういい準備ができたと思っているので。構築のデッキは僕が3週間前くらいからこれで行けそうだと思ってけっこう擦っていたやつで。ドラフトのほうはけっこう何でもできる環境だし、すごい楽しいんで『アートを描く』を標語に。こないだも墓地からクリーチャー戻す《最古再誕/The Eldest Reborn(DOM)》と、1枚手札で1枚墓地の5マナチューター(《最後の別れ/Final Parting(DOM)》)と、1マナ1/1のサクるとエンチャント回収できるやつ(《もの悲しい詩人/Tragic Poet(DOM)》)で無限にぐるぐるできるぞって。そこに6マナ5/4の、歴史的な呪文を唱えると手札に返ってくるやつ(《遷延する幻影/Lingering Phantom(DOM)》)もあって、5マナチューターと6マナ5/4の貧乏コンボは好き(笑)。両方とも10手目以降で取れて、デッキ内にある一番強いカードと5/4が手札に来るから。」

――それはシークレットテクかもしれませんね。
渡辺「隠れてはいないけど(笑)。」
――ともあれ、皆さん悲観的だったので、市川さんが希望の持てる感じでよかったです。
八十岡「瀬畑(市川さん)が一番、今回かかってるものがでかいんじゃない?」
市川「プロポイントが16点しかないんで、ここで5敗内にしておかないと、来期のゴールドレベルがあやうい。でもまあ、あまり気負ってもしょうがないので、いい準備できたぶん、ちゃんと発揮できたらと思います。」

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今回プレイヤーに配布されたTシャツはこちら。《ヤヤ・バラード/Jaya Ballard(DOM)》が描かれ、かなり色合いが派手なため普段使いにはしづらそうです。

 

 

 

●渡辺雄也の下には座るな!

――余談ですが、八十岡さんが2-4から5-1まであるというような、ドラフトの振れ幅はどういう点からですか?
八十岡「運ですね。パックの出方で、スポットに入るとやばい。ソートの関係なのかなんなのか、反対側の3人くらいはみんなパック強いって言いながら強いレアをすごい取ってるけど、こっち側はパック弱いって言いながらゴミのようなコモンを取ってるときがあって。特に弱い側の下流に座ってる人は全然おこぼれすら来ないみたいな。そういうどうしようもないときがたまにあるんすよね。」
市川「俺たちの中では、そのスポットは西成と呼ばれているんですけど(笑)。」
八十岡「あと、パックが弱いと上が何やってるかシグナルがわからない。」
行弘「パックが弱いとビートダウンに行くしかないんで、デッキが強くならなくて2-1を目指すしかない。」
八十岡「逆に、パックが強くて上と協調できてれば、何やっても勝つみたいなときもある。上が初手で自分と違う色のレアを取ってくれて、マルチのアンコモンが回ってくる、とかが一番わかりやすくていいよね。それが自分の初手と噛み合ってれば、だいたい3-0できるスポットに入れる。」
渡辺「そうならないときにどう立ち回るかなんですけど、どう立ち回っても3-0するスポットの人には勝てない。」
市川「立ち回りだけでは3-0できない。噛み合うしかない。」
渡辺「発売すぐのプロツアーだったら、まだカード評価もけっこうばらけてたりするんですけど……。」
八十岡「もういろんな記事や強いアーキタイプとかも出回ってて、みんな半分決め打ちになってる可能性もある。」
行弘「戦略を最初から決めてきてる人の下のほうがやりやすいけどね。流れを意識して手広くピックする人が上に座ると厳しい。シグナル読めないし、強いカードも流れてこない。」
八十岡「要は、渡辺雄也の下には座るなってこと(笑)。」
行弘「ほぼ3-0できないんで、嫌です(笑)。」
渡辺「いやいや、僕もちゃんと1パック目は仲良くするよ?」
八十岡「下に流したカード気にしないでしょ。『青の強いカード流したけど、青の流れいいからやるか』って。」
渡辺「まあ、やるね。」
八十岡「それ、仲良くないから! 仲いい人は、流したから仕方ないなって青いカード流し続けるから。」
渡辺「3パック目だけはちょっと意地悪するけどね。『緑やってるな、よしちょっとカットしとくか』って。」
八十岡「そのうえで3パック目意地悪されたら終わりでしょ(笑)。」
市川「『おかしいなー、途中まで流れよかったんだけどなー?』ってなるやつ。」
渡辺「一番大事なところだけしか押さえないですけどね。」
八十岡「そこが一番大事だから!」
渡辺「そこだけ押さえれば死ぬだろう、ってところ。」
八十岡「要は殺されてる!」
市川「恐ろしい。渡辺雄也は世界で一番カットすると言われているからね。」
渡辺「そんなことないでしょー。」

――カットの枚数じゃなくて、質が一番ってことじゃないですか。
市川「要所を止めるんだよね、やっぱり。」
渡辺「まあ、カットするからには、クリティカルなカットをしないと意味ないので。」
渡辺さんの要所を抑えたカットのテクニックは、過去のプロツアーのドラフト記事でもちょくちょく見ることができますが、明日はいったいどうなるでしょうか? レポートをお楽しみに!

 

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ホテル内のイタリアンレストランで晩ご飯。いつもと異なりデッキが提出済みであとは寝るだけということで、ふんわり気楽な雰囲気が漂っていました。

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前回のプロツアーに引き続き、デザートにティラミスを食べる山本さん。

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