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【PTA25】2日目〈MUSASHI〉チームB(行弘・市川・山本)振り返り【Day2】

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チームBは最終戦を勝ったことにより賞金圏内に入り、1人2000ドルを獲得。市川さんがゴールドレベルになるにはわずかにあと1勝足りませんでしたが、思ったより賞金がもらえたので、皆さんも苦労が報われた様子でした。

 

 

 

●対戦結果

Staff
1日目のチーム成績:4勝3敗
2日目のチーム成績:4勝3敗
合計成績:8勝6敗(43位)
ラウンド 行弘(対戦相手) 市川(対戦相手) 山本(対戦相手) チームの勝敗
R8 ○×-(赤黒アグロ) ○×○(赤緑ホロウヴァイン) ×○○(エルドラージ) 5-3
R9 ○××(赤黒アグロ) ○○(ホロウワン) ○×○(デスタク) 6-3
R10 ×○○(緑タッチ黒/Chris Fennell) ○-(ミラクル/Pete Ingram) ○○(ジェスカイコントロール/Gerard Fabiano) 7-3
R11 ○××(赤黒アグロ/John Rolf) ○××(トロン) ○○(青黒デルバー死の影/Tom Martell) 7-4
R12 ○×○(グリクシス) ×○×(トロン) ×○×(デスタク) 7-5
R13 ××(緑単/Jason “Amaz” Chan) ○××(ドレッジヴァイン) ○○(青白コン) 7-6
R14 ○××(グリクシス) ○○(ホロウワン) ×○○(青白石鍛冶) 8-6

2日目の前半戦はチーム3連勝で、「いつものプロツアーならドラフトラウンドが終わってX-3ってことだから、けっこういけるのでは!?」的な雰囲気でしたが、そこから後半戦で残念ながら3連敗してしまいました。
「デッキどうこうじゃなくて引き次第だからしんどい」とこぼす行弘さんに対し、「いやいや、スタンダードはメンコだとか言われてても、やっぱりコンバットが大事だからうまいほうが勝つよ。けんちゃんはコンバットがうまいから、負けそうな場だなと思っても気づいたら勝ってて、ホントびっくりするよ」と励ます、市川さんのやさしさが見えました。

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ハースストーンの有名プレイヤー、Amazと対戦する行弘さん

 

 

 

●チームのフォーマット振り分けについて

山本さんは最初からレガシーを希望していましたが、市川さんと行弘さんのどちらがスタンダードをやるか相談していて、先月のドラフト合宿の直前あたりのタイミングで行弘さんがやることになりました。

 

 

 

●行弘賢の場合

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※デッキは渡辺さんと75枚とも同じ「緑単タッチ黒」です。

デッキ選択の理由

行弘「僕が緑単をずっと使ってて、原根君も緑単をけっこうやってて、ナベはいろんなデッキ回してたんですけど、どれもしっくりこなくて、緑単回してみたら『プレイ感は合わないけどけっこう強い』ってなって、ナベも一緒に調整しだして、3人でMOで3日間やった結果のベストバランスがこれじゃないかなっていう結論です。なんで、誰のリストというのではないです。」

――3人で話し合った共同構築なんですね。行弘さんのプレイ感覚には合いますか?
行弘「普通ですね。今の緑単は、カード単体がただ強くて、そこを引くか引かないかで勝率がめっちゃ変わるんで。あと先手後手の差がすごく出るんで、それもあんまり好きじゃないです。でも選択肢としては、事故りたくなかったんで単色デッキのどれかにしようと思っていて、中では緑単が一番安定するかなと。」

――1日目は赤系にばかり当たりましたが、赤黒には強いですか?
行弘「赤系には若干強いです。ただ相性というより安定感の違いですね。緑単のほうが回りやすくて、赤黒のほうが回りづらい。赤はよく土地3枚で止まって4マナのカード抱えて負けたり、黒マナが《霊気拠点/Aether Hub(KLD)》からしか出なかったり……。」
――赤黒ですごくよくある負け方ですね。
行弘「緑単は4マナ以上のカードがそんなに入ってなくて、3マナあればとりあえずゲームになるし、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves(M19)》もいますからね。今回は安定させるために、山札を3枚めくって土地かクリーチャーを手札に加える《冒険の衝動/Adventurous Impulse(DOM)》も2枚入れてて、普通は蛇デッキにしか入ってないんですけど、それも差が出たかなと思ってます。」

冒険の衝動

――今ならここを変えておけばよかったと思うところはありますか?
行弘「難しいですねー。赤黒にこれ以上強くするのはあんまり意味がないし……ほかのカードを取るにも不器用な色なんで、あまりいいカードがないんですよね。バランスもそんなに悪くなかったし、緑単の中では出来はよかったと思ってます。何かこうしていたら緑単の枠を超えて今回大きく勝てたとか、そういうのはないと思います。
そもそも何か別のデッキを使ってたらどうかというのも……青白系のデッキが途中までよかったけど最後のほうは失速してたし、チーム戦なんで、どのデッキがどれだけ勝ったかわからないので。」

――プロツアーを終えて、このデッキで出たことはよかったと思いますか?
行弘「よくも悪くもなかった感じですかね……でも個人的にはそんなに悪い選択肢を取ったとは思わないですね。1日目にも言いましたけど、今回のトーナメントは勝ち組デッキと負け組デッキがそんなに分かれないと思ってたんで、メタデッキじゃなく実力が高いデッキを選ぶしかない。そんな中で僕は緑単が一番手になじんだし、練習中赤黒に対しての勝率がよかったし……といっても気持ち程度ですけど。
もともと使いたかったのはアブザンだったんですけど、それは赤黒に弱かったんで、個人戦だったらもっと調整して持ち込んでたかもしれないですけど、今回のフォーマットでは厳しそうだと思ってやめました。」

――そうだったんですね。
行弘「スタンダードは個人的に8-6できればかなりいいほうだと思っていて、結果的に7-6-1だったので、最後のほうでもうちょっと普通に回れば……下ブレたのが残念でしたね。」

プロツアーを振り返って

――この形式のプロツアーはどうですか?
行弘「そもそもプロツアーはチーム戦でやるべきじゃないなと思いましたね。チームで勝敗を決めるっていうのが、負担がでかすぎる。プロツアーほどかかっているものが大きいときは、個人の中で終わらせたほうがいいなと思いました。」

――自分は勝ったのにチームメイトのせいで負けたとか、チームメイトの足を引っ張ったとか、そういう要素が入ってきてしまうと。
行弘「チーム構築スタンダードみたいな、単一フォーマットならまだいいんですよ。チーム3人で考えて3人でやった結果が負けだったとしても、それはしょうがないねってなるんですけど、別々のフォーマットを個別に練習してきて、1人がボロ負けしたら残り2人は納得いきづらいじゃないですか。それをプロツアーという、かかっているものが大きい舞台に持ってくるのはちょっと違うなと思いましたね。グランプリだったら全然いいと思います。」

 

 

 

●市川ユウキの場合

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市川ユウキ『ドレッジヴァイン(ブリッジヴァイン)』
マジック25周年記念プロツアー



4《黒割れの崖》
4《血染めのぬかるみ》
2《血の墓所》
2《新緑の地下墓地》
2《樹木茂る山麓》
1《踏み鳴らされる地》
1《草むした墓》
1《山》
1《沼》


土地(18)


4《墓所這い》
4《傲慢な新生子》
4《縫い師への供給者》
4《臓物の予見者》
2《ボーマットの急使》
4《復讐蔦》
1《大いなるガルガドン》
4《恐血鬼》
2《歩行バリスタ》
3《ゴブリンの奇襲隊》


クリーチャー(32)


4《黄泉からの橋》
4《信仰無き物あさり》
2《集団的蛮行》


呪文(10)


2《思考囲い》
4《虚空の力線》
4《破壊的な享楽》
1《集団的蛮行》
2《稲妻の斧》
2《暗黒破》


サイドボード(15)


デッキ選択の理由

――デッキができるまでの話は0日目の記事で軽くうかがいましたが、市川さんが元にしたデッキを作ったのは、プロツアー『イクサランの相克』のときのホロウワンを作った人なんですよね?
市川「そうです、例の“ホロウワン師匠”こと、CHAR_AZNABLEって人ですね。彼が5-0したデッキだということが、俺の中ではかなりの信頼度だったんで。ただの素人が5-0してるくらいじゃ、わざわざ回してみようって気にはならないけど、彼が5-0してるんなら、これは新たなホロウワン誕生の可能性あるなと思ったんで。」
八十岡「〈MUSASHI〉モダン部門の顧問の可能性ある。」
市川「会ってみたいよね。『もしこのインタビューを見ていたら、以下のあて先までご連絡ください』的なの、書いといてください(笑)。」

――デッキは相当強かったっておっしゃってましたよね。
市川「日本人が3、4人使ってみんなかなり勝ったんで。墓地対策に明確に弱い点はありますけど、今回そんなにメタられてなかったし。
MOにはあんなにいたのに、全然いなかったな(使用者は全部で10人)。MOの当たり方的には15%くらいいてもおかしくなかったけど。」

――《復讐蔦/Vengevine(ROE)》の値段がこの1、2日で相当上がったと聞いてます。
市川「上がるでしょうね。でもあれはもとからけっこう高かったんで。僕は《黄泉からの橋/Bridge from Below(FUT)》が買いだと思ってました。プロツアー前は800円とかで売ってたのが、今2000円買い取りらしいですよ。」

――それはすごい!
市川「絶対上がると思ってたけど、もちろん買ってはいない(笑)。」
行弘「ちょっと、そういうのは先に教えといてよ~!」

デッキの調整について

――このデッキ、モダンで自分も使いたいって人がいると思うんですが、アドバイスをお願いします。
市川「とりあえず、誘発がすごく多いし、いろんなギミックがあるんですよ。一番簡単なところでいうと、《傲慢な新生子/Insolent Neonate(SOI)》で《黄泉からの橋》を捨てると、ディスカードが先なんで、その《傲慢な新生子》の分誘発する。」

――そうなんですか。
市川「MOで初めて見たとき感動しました(笑)。」

傲慢な新生子 黄泉からの橋

 

市川「あと、僕のデッキは《恐血鬼/Bloodghast(ZEN)》が入ってるので、1マナ1/1の3枚めくり(《縫い師への供給者/Stitcher’s Supplier(M19)》)を出すのは土地を置く前にするとか。クリーチャーは《復讐蔦》のためにできるだけ手にとっときたいから、スペルから出していくとか。
そういう部分はセオリーなんですけど、流動的に変化する戦術もあります。《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》が特に顕著なんですけど、手札に応じてプレイすべきタイミングが変わるんです。たとえば、《ボーマットの急使》以外にディスカード手段がなくて、絶対ディスカードしたいときは初手にあっても2ターン目に出します。絶対サクれるんで。ビートダウンしたい場合は1ターン目にプレイする。手札を使いきれる算段がついてるなら最終ターンに出すとか、さまざまな要素がある。
同じマナ域のカードがたくさん入っててギミックも多いんで、発見がすごいあって楽しいけど難しい面もあるので、要練習!」

――そのぶん、使いこなせればデッキのポテンシャルはすごく高いですね。
市川「そうそう。安定性も皆さんが思っているよりはあるし、爆発力は見ての通りなんで、ぜひ回してみてください。とにかくすごい楽しいんで。」

――直前での調整がうまく刺さったとか。
市川「最初は《大いなるガルガドン》が2枚だったんです。月曜の朝くらいにカードを調達してずっと1人回ししてたら、サクリ台はすごく引きたいけど、2枚以上重複すると弱いんで1枚減らそうかなってなって。《大いなるガルガドン》はデッキにスピードを出すカードでプラスサクリ台って印象なので、そこが《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》の3枚目になりました。
で、《ボーマットの急使》が4枚入ってたんですけど、殴りづらいマッチアップもあってブレのあるカードで、ディスカード手段としては2枚くらい残せば足りる印象だったんで、《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》を代わりに2枚取りました。これは人間デッキの《オーリオックのチャンピオン/Auriok Champion(5DN)》がすごくきついから、それの回答としてというのと、0マナクリーチャーとして運用したり、いろいろ便利なので。俺はあまり0マナのクリーチャーが好きじゃなくて、最初8枚あったのが一時0まで減ったんですけど、2、3枚は欲しいなってことで。
出発の6時間前まではバリスタ0枚だったんですけど、3ラウンド目、まさに対人間で《オーリオックのチャンピオン》の返しに引けて勝ったんで、マジで入れ替えてよかった。」

――記事によると、《無謀な奇襲隊/Reckless Bushwhacker(OGW)》を入れるパターンもあるそうですが……。
市川「怒濤のほうの《無謀な奇襲隊》は、トップしたとき弱い。キッカーのほうの《ゴブリンの奇襲隊》は、《復讐蔦》を戻したいときにキッカーしないで1マナでプレイすることもできる柔軟性がある。マナベースはちょっときつくなるんですけど。」

無謀な奇襲隊 ゴブリンの奇襲隊

 

なお、瀧村和幸さんも同じブリッジヴァインデッキでしたが、市川さんの解説によると同じリストから別のベクトルで進化しており、瀧村さんのほうは《ゴブリンの奇襲隊》や0マナのクリーチャーをたくさん入れて、爆発力を重視した調整。市川さんは《恐血鬼》で持久力を上げていて、細かくシナジーを活用するタイプ。「デッキのコアが強いからどっちも勝ってるんで、あとは好み」だそうです。

印象的だった場面など

――特に印象的な試合などはありましたか?
市川「ラウンド9のメインは、《ゴブリンの奇襲隊》を劇的にトップデッキして勝ちました。ライフ6で《通りの悪霊》を2体出されてて、相手はライフ19だったんですけど、まず《傲慢な新生子》引いて、ドローしたら《ゴブリンの奇襲隊》で、《復讐蔦》2体誘発して出てきて、とりあえずみんなで殴ってみたら20点以上入ったという。「何点あるか知らんけど、どうせ返しで負けだから殴ってみるわ、あとはお前が考えろ!」って(笑)。

――生き残ってるかどうか、計算はお前がしろと。
市川「そう。アイドントノーだから勝手にやってくれって。計算してみたら24点くらいあった(笑)。」

――計算させられたあげく負けるって、ひどい(笑)。
市川「あと最終戦も、4ターン目くらいまで土地1枚で止まってて。ギリギリで2枚目の土地を引けて、《集団的蛮行/Collective Brutality(EMN)》で《復讐蔦》を2枚捨てて、手札見たらけっこう絶望的に強くて、これはいかれたかなと思ったけど相手の不用意なアタックによりブロッカーが《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler(FRF)》1体だけになって、その瞬間に赤マナさえ引けば勝ちになった。で、引いて一瞬で《ゴブリンの奇襲隊》出して、15点。」

――ああ、その場面は見てました。相手の人、左右を見回して「えっほんとに? これで負けるの?」みたいな顔してましたね。

プロツアーを振り返って

――この形式のプロツアーはどうですか?
市川「いやー、しんどい。自分が勝ってチーム負けても悲しいし、自分が負けてチーム負けても悲しい。僕がチーム戦苦手だっていう可能性を、最近うすうす感じてきたんですけど……。」

――えっ、チーム戦でグランプリ優勝してるじゃないですか。
市川「俺、個人だと常にデジタルなんですけど、チームだと勝ちたさがすごい出ちゃって。情寄りになって……。」

――本来の自分の強みが出せなくなっちゃうんですか?
市川「1人だったら、『なかったら勝ちやろ(スパーン)!』とか、『あるわけない』とか『さすがにこらえる』とかは、バランス感覚でやれてる印象なんですけど、チーム戦になるとなぜかリミテッドでも構築でも、マリガン基準とかリスク取る部分とかがズレちゃうんですよね。だから、今回は個人スコアだけを見ようと思ってやってたんですけど、それでも情が出ちゃう(笑)。」

――それはきっと、仲間への思いやりが深いってことですね。
市川「それはある。」

 

 

 

●山本賢太郎の場合

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山本賢太郎『スニークショウ』
マジック25周年記念プロツアー



2《島》
1《山》
4《沸騰する小湖》
3《Volcanic Island》
3《古えの墳墓》
2《裏切り者の都》
2《汚染された三角州》
2《溢れかえる岸辺》


土地(19)


4《グリセルブランド》
4《引き裂かれし永劫、エムラクール》


クリーチャー(8)


4《思案》
4《渦まく知識》
4《意志の力》
4《実物提示教育》
4《騙し討ち》
4《定業》
4《水蓮の花びら》
3《呪文貫き》
1《全知》
1《精神を刻む者、ジェイス》


呪文(33)


4《削剥》
3《墓掘りの檻》
3《秘儀の職工》
2《渋面の溶岩使い》
2《防御の光網》
1《狼狽の嵐》


サイドボード(15)


デッキ選択の理由

――山本さんはグランプリ・千葉2017の2日目に、スニークショウで日本レガシー選手権に出てましたよね。練習のために?
山本「そうです。禁止改定前からいけそうだなって思ってて。レガシー選手権も4-1だったんですけど、悪くなかったし。そのあともずっとスニークショウ一本に絞って練習してました。」

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――ただ、1日目は相性の悪いデッキばかりと当たってしまいましたよね。
市川「グリクシス系とばっかり当たってるなーと思って見てた。」
山本「みんな《思考囲い/Thoughtseize(THS)》に《トーラックへの賛歌/Hymn to Tourach(FEM)》を撃ってきて……単純にスニークショウがめちゃめちゃメタられてると肌で実感しました。今回のメタゲームブレイクダウンではスニークショウが二番手だったんですけど、意外と多いなと。3、4番手かなと思っていたので。
昔のスニークショウってtier2くらいの立ち位置だったんで、《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman(RTR)》が禁止になったあとの新しいレガシー環境で、tier1になってメタられる側になると、デッキパワーがちょっと足りてないのかなって感じました。
グリクシスコントロールも、たぶん対策として《悪魔の布告/Diabolic Edict(TMP)》をメインに入れてたりするし。そういう、強く意識された状態のスニークショウを選択したのはあまりよくなかったかなと。」

――2日目は打って変わってかなり勝ちましたが、それも踏まえるとどうですか?
山本「それでもやっぱり選択ミスだったと思います。今日は黒が入ってないデッキと多く当たったり、運が良かったりして勝てたんですけど、客観的に見たら間違いなくベストデッキではなかったなと。」

――ほかに選択肢はあったんですか?
山本「いや、ないです。禁止改定前から決め打ちで調整してたんで。でもそのころはあんまりメタられてなかったんですよね。tier1がグリクシスデルバーで、あと4cレオヴォルドとか。だから、メタられてもいないし、その2つに対して《神聖の力線/Leyline of Sanctity(M11)》という必殺のサイドカードをを4枚取ってたんで、そのころはすごい自信あったんです。
でも、禁止改定で世界がまったく変わってしまった後でも、自信を持った状態で調整してしまって、グランプリの練習とかしてるうちにだんだんレガシーやる時間が減って、結果的に経験値のあるスニークショウを使う以外ない状況に追い込まれてたんですよね。」

――いけるはずだったけど、環境が変わってしまったと。
山本「今回で言ったらグリクシスコントロールとか青黒のデルバーデスシャドウみたいなデッキが明確に勝ち組だったので、そこらへんのデッキもちゃんと回して、冷静なデッキ選択をしたらよかったなと。そうするためには、単純にもっと人手が欲しかったです。」

対戦について

――今日の印象的な場面などがありましたら。
山本「最終戦、僕にマッチの勝敗がかかってて、1-1になった最後の場面ですね。相手の場に《真の名の宿敵/True-Name Nemesis(C13)》がいて、こっちの手札が《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》2枚と《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》と《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》、土地が《Volcanic Island》2枚と《島》2枚、あと手札に《古えの墳墓/Ancient Tomb(TMP)》がありました。で、僕の残りライフが4なんです。」

――相手の手札は?
山本「相手は5マナあって、手札が1枚です。
僕の取れる選択肢は、《古えの墳墓》を使ってライフ2にして《騙し討ち》を置いて、通ったら《エムラクール》を走らせて勝ちというプランがまず1つ。もしくは土地4枚をタップして《騙し討ち》を置いて、それがカウンターされたら、返しに相手の《真の名の宿敵》に殴られて残りライフが1になり、トップで痛くない土地を引いて勝つというプラン。その場合、引いていい土地は《山》1枚、《Volcanic Island》1枚、あと《裏切り者の都/City of Traitors(EXO)》2枚。その4枚を引ければ、《古えの墳墓》を使わなくても勝てるんです。でも冷静に考えて、そのわずかな受け入れの可能性がどれだけあるんだって。」
市川「《思案/Ponder(M12)》とかもはさめなくて、ダイレクトにトップデッキするしかないからね。」
山本「だから、僕の中では8割《古えの墳墓》で行くだろうと思ったんですけど、『相手の手札1枚だし、行くしかないよね』って一応チームメイトに確認して。」
行弘「話し合ってどれだけリスクがあるか考えた結果、行くしかないと。ただ、相手の5マナ目の置き方がブラフっぽい置き方だったんだよね。」
山本「ドローして手札2枚になって、土地を置いて5マナになったんですけど、土地を置くのがすごい早かったんですよね。素早く置いて5マナってことは、ウィル(《意志の力/Force of Will(ALL)》)の数値ってことで。」
行弘「『俺は5マナあるぜ』って置き方をしたんですよ。本当にウィルだったら、もっと存在を消す置き方するじゃないですか。」
市川「しかも相手、《外科的摘出/Surgical Extraction(NPH)》でやまけんの手札に《騙し討ち》があるのわかってるんです。あと俺としては隣の人が……5マナ目を置いたのを見て、『(うなずきながら)よっしゃ』みたいな感じを出してきた(笑)。」
山本「そうなんだ、それは俺見てなかった。」

――2人がかりでのブラフなんですね。
行弘「もし逆の立場でウィル持ってたら、持ってないと思わせたいじゃん。だから、『ウィル持ってそう』感をあえて出してきたってことは……って考え方で。」
市川「そもそもウィル持たれてたら、9割負けじゃん。だって受け入れ4枚しかないんでしょ?」
行弘「いや、今にして思えば一応《実物提示教育/Show and Tell(USG)》も受け入れだね。」
山本「ああ、確かに。《実物提示教育》は残り2枚だったから、6枚受けだね。」

――まあ、結果的には思いきって行ったら勝ったということですね。そして2000ドルにつながったと。
行弘「相手、負けたあと天を仰いでたよね。」
山本「いやー、よかったです。僕的には1000ドルくらいかと思ってて。あとから考えたら意外とかかってるものがでかかったですね。」
行弘「やっぱりマジックは、勝って何かを得ないとね!」

プロツアーを振り返って

――この形式のプロツアーはどうでしたか?
山本「僕個人としてはリミテッドのほうが得意なんで、得意要素がなくなって構築に比重が置かれてるのは、単純に勝ちにくくなったなという印象です。今後もこういった大会はあるかもしれないですけど、そうなったら今回みたいに決め打ちの選択になってしまわないように、チームシリーズの垣根を越えてもっと調整の人数を増やさないといけないなと。」

 

 

 

12

2日目の晩ご飯はイタリアン。大皿で頼んでシェアするスタイルで、テーブルに中華料理のような回転台があるのですが、なぜか法王の像っぽいものが中央に飾ってあるのがかなりシュールです。

13

デザートに「アイス」と「ティラミス」を頼んだら、こちらが来ました。写真では伝わりにくいですが、ティラミスの大きさは縦10センチ、横20センチ、高さ15センチくらいあります(味はとてもおいしかったです)。

 

 

 

●目指せ日本代表!

というわけで25周年記念プロツアーは終了。残念ながら〈MUSASHI〉の2年連続チームシリーズ決勝進出の夢はついえましたが、いろいろな学びを得たプロツアーでした。
皆さんの次の大会予定は、9月頭の日本選手権。ワールド・マジック・カップに出場するメンバーを決めるための大会です。今年の日本チームのリーダーは行弘さんになることが決まっていますが、「左右を〈MUSASHI〉の仲間が固めてくれるのがもちろん一番の理想形」なため、スタンダードの本気デッキを作ってシェアするなど、皆さんが勝つために協力を惜しまないそうです。

6人集合

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