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【MTGWAR】市川 ユウキのサイドボード革命 ~5色人間編~【Day2】

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「マジックの難しさはサイドボーディングにある」とはよく言われることだ。

そしてそれはメインボードで戦った相手に対してどんなカードをサイドインするか、その際何を抜くべきかという具体的な事例だけでなく、そもそもデッキ構築の段階でどんなカードを何枚入れるのかという点についても当てはまる。

自分が出場する大会のフィールドはどんなデッキが多く、どのようなシチュエーションに追い込まれるだろうと考えるのか。すなわち、危機的状況に関する想像力が問われるからだ。

そして想像力といえば、数多のシチュエーション分岐のすべてを見通し、的確なプランニングでプロシーンに名を轟かせているこの男。

市川 ユウキ。

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というわけで今回、Team Cygamesの市川 ユウキが使用し、見事モダンラウンド7勝3敗という好成績を収めた5色人間のサイドボードの構築に関して、市川に話を伺ってみた。

――市川さんといえば、デッキのマナベースに並々ならぬこだわりを見せるマナベース警察として知られていますが、前回のミシックチャンピオンシップでのシミックネクサスの記事を読んでもわかるように、サイドボード警察でもあるんですよね。そんな市川さんがどうして今回こういったサイドボードにたどり着いたのか、という話をお伺いできればと思いまして……。

市川「なるほど。ではまず僕のデッキのサイドボードをご覧ください。」

 


市川ユウキ『5色人間』
ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019



1 《島》
1 《平地》
4 《古代の聖塔》
4 《魂の洞窟》
4 《手付かずの領土》
4 《地平線の梢》
1 《金属海の沿岸》


土地(19)


4 《教区の勇者》
4 《貴族の教主》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《サリアの副官》
4 《帆凧の掠め盗り》
4 《翻弄する魔道士》
4 《幻影の像》
4 《カマキリの乗り手》
4 《反射魔道士》
1 《民兵のラッパ手》


クリーチャー(37)


4 《霊気の薬瓶》


呪文(4)


4 《オーリオックのチャンピオン》
4 《拘留代理人》
3 《民兵のラッパ手》
2 《減衰球》
1 《墓掘りの檻》
1 《四肢切断》


サイドボード(15)


 

 

市川「どうですか?美しいでしょう?」

――えっと……そうですね……?

市川「我が社には有能な人材しかいらないと判断し、無能な人材をリストラしていった結果こうなりました。」

――具体的には、誰がどういった経緯でリストラされていったんでしょうか?

市川「それでは、次にこちらをご覧ください!」

 

市川
サンプルサイドボードA
3《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》
3《オーリオックのチャンピオン/Auriok Champion》
3《減衰球/Damping Sphere》
2《秋の騎士/Knight of Autumn》
2《拘留代理人/Deputy of Detention》
2《四肢切断/Dismember》
市川
サンプルサイドボードB
4《オーリオックのチャンピオン/Auriok Champion》
3《減衰球/Damping Sphere》
2《拘留代理人/Deputy of Detention》
2《秋の騎士/Knight of Autumn》
1《配分の領事、カンバール/Kambal, Consul of Allocation》
1《四肢切断/Dismember》
1《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》

市川「こちらは一般的な5色人間のサイドボードですね。最初はこういったリストをコピーして回したりしていたんですが、いらないカードがたくさんあるなと気づいたんです。たとえば《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》。主にドレッジ対策のカードですが、ほとんどドレッジ専用すぎる割りにサイドボードの枠を食うんですよね。それにドレッジ相手にも別にいらなくね?と思い、1枚にまで減らすことにしました。」

Grafdigger's Cage Auriok Champion

――人間はドレッジ相手にきついと聞きますし、《墓掘りの檻》がないと2本目か3本目のどちらかでぶん回られて即死しそうですが……。

市川「そうでもないんですよ。まずこちらが《オーリオックのチャンピオン/Auriok Champion》を出し、その後相手の《恐血鬼/Bloodghast》やら《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam》が出たとします。その時点で数点ライフゲインしますよね。で、そこから《拘留代理人/Deputy of Detention》で相手のクリーチャーを一度に追放する。もちろんこれは相手も《燃焼/Conflagrate》で除去してきますが、追放されたクリーチャーが帰ってくるのでまたライフゲイン。これを繰り返していくと、相手は毎ターン発掘を続ける必要があるので、相手のライブラリーがなくなるまで耐えられるのでは?という仮説を脳内セバタ会議 (※) で立てたんです」

※「瀬畑」は市川のハンドルネーム

 

――脳内セバタ会議???

市川「そこには色々なセバタがいるわけです。で、セバタBが『採用!』と言ったのでこの案は採用になり、実際にMOのリーグで試してみたらそれで勝てたんです。なので《墓掘りの檻》は不要で、バーンにも強い《オーリオックのチャンピオン》が最強という結論に至りました」

――なるほど。『5色人間には《墓掘りの檻》を大量に積む必要はない』というのは、革命的なアイデアとして今後のレシピに影響を与えるかもしれませんね!

市川「ちなみにその思想を採用した原根くんは、本戦でドレッジを2回踏んで『こんなんで勝てるわけねーだろ!』とブチ切れてました」

――Oh……

市川「でも俺はドレッジを踏んでないので別に間違ってたとは1ミリも思ってないけどね (キリッ」

Damping Sphere Chalice of the Void

――あとはみんな《減衰球/Damping Sphere》を3枚とってるのに、市川さんは2枚だけですよね。今回、ロンドンマリガンの影響もあって、トロンが多いとはさすがに予想されていたと思うんですが。

市川「トロン相手の《減衰球》って、別に置いても置かなくてもそこまで変わらないんですよね。2枚引くと逆に負けますし。最後にポンと置くくらいがちょうどいいので、2枚で十分だと判断しました。あと《虚空の杯/Chalice of the Void》とか入ってる人もたまにいますが、これは単純に意味不明ですね。早いターンに置きたいのに《古代の聖塔/Ancient Ziggurat》との相性が悪すぎる」

Knight of Autumn Deputy of Detention

――《秋の騎士/Knight of Autumn》も採用率がかなり高いカードですが、市川さんは1枚も入れていませんね。

市川「《拘留代理人/Deputy of Detention》が最強すぎるんですよね。サイド後から置き物を対策したいときに、クリーチャータイプが散ってると一緒に入れづらいじゃないですか。それに《秋の騎士》は《溶接の壺/Welding Jar》で再生されたりもしますし、あとクリーチャーと置き物みたいな複数のプランを持ってる相手に対して、《拘留代理人》なら裏目がないんですよ。実際青白コントロール相手に適当に入れたら、《機を見た援軍/Timely Reinforcement》の兵士・トークンを全追放したりもしました」

Kambal, Consul of Allocation Izzet Staticaster

――他にはサンプルにあるカードだと《配分の領事、カンバール/Kambal, Consul of Allocation》とか、少し前だと《イゼットの静電術師/Izzet Staticaster》とかも入ってましたよね?

市川「《配分の領事、カンバール》はそもそも入れたいと思ったことがないですね。《イゼットの静電術師》は、そのへんのスタッフの役割はすべて《拘留代理人》が吸収してしまいました。とにかく《拘留代理人》というスタッフが優秀すぎて、僕にとってはパーフェクトヒューマンと呼べる存在でしたね。人間じゃないけど」

 

 

 


世に広く出回っているリストであろうとも、完成形であるとは限らない。

定着したサイドボードにあえて異を唱え、自らのロジックと想像力をもとに不要なものを削ぎ落としてリストを再構築する市川の姿勢からは、なぜ市川がこれまでプロプレイヤーとして第一線で活動を続けてこられたのかというその理由の一端が、垣間見えたような気がした。

今回最終戦で惜しくも敗れたことで、7月26~28日にバルセロナで開催される次のミシックチャンピオンシップの出場権を、市川は持っていない状態となる。

すなわち、窮地。

だが市川ならば、きっとこの状況からでも。己の実力で、這い上がってみせてくれるはずだ。

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