【PTOGW】構築ラウンド振り返り【Day2】
2日目が終了し、Team Cygamesのメンバーはそれぞれかなりの好成績を挙げました。特に山本さんは、あと1勝で惜しくもトップ8に及びませんでしたが、14位入賞で賞金5000ドル(約58万円)とプロポイント15点という大きな成果を得ました。
すでにお伝えしている通り、市川さん・山本さん・渡辺さんの3人は、津村健志さんにシェアされたほぼ同じ「エムラシュート」デッキを使用しています。そこで津村健志さんに、このデッキがどのようにして誕生したか簡単にお聞きしました。
※画像は【MAGIC: THE GATHERING】より引用させていただきました。
もともと、《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》と《御霊の復讐/Goryo’s Vengeance(BOK)》の組み合わせは強いと言われていました。津村さんはそれを生かして《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》を高速で呼び出すデッキができないかと思い、まずグリクシスリアニメート(墓地から巨大クリーチャーを復活させる青黒赤のデッキ)のデッキレシピをマジック・オンラインで探しました。1つだけ見つかりましたが、それには《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》が入っていなかったため入れて回してみたら感触がよく、成績も上々でした。このデッキはたいていの墓地対策を使われても、《裂け目の突破/Through the Breach(CHK) 》によってかいくぐれるのが強みだと思ったので、ほかのいろいろなデッキも使いつつ調整したとのことです。
それでは、2日目のモダンラウンドの結果をまとめていきましょう。
●市川ユウキの場合
Reid Dukeさんとの試合。
2日目ドラフトラウンドの戦績
3-0
2日目モダンの戦績(2日間の通算戦績 10-6/48位)
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 勝敗 |
---|---|---|
12 | 親和(Pascal Maynard) | 負け(○××) |
13 | 無色エルドラージ(David Ochoa) | 勝ち(○○) |
14 | ジャンド(Reid Duke) | 負け(××) |
15 | 親和(Connor Laehn) | 勝ち(×○○) |
16 | 無色エルドラージ(Mike Sigrist) | 負け(××) |
1《島》 1《山》 1《沼》 4《汚染された三角州》 4《沸騰する小湖》 2《血染めのぬかるみ》 2《忍び寄るタール坑》 1《黒割れの崖》 1《血の墓所》 1《闇滑りの岸》 1《蒸気孔》 1《湿った墓》 土地(20)
クリーチャー(16) |
4《信仰無き物あさり》 4《血清の幻視》 4《御霊の復讐》 4《イゼットの魔除け》 4《裂け目の突破》 3《思考囲い》 1《稲妻》 呪文(24) |
4《神聖の力線》 4《汚損破》 3《稲妻》 2《払拭》 1《すべてを護るもの、母聖樹》 1《苦い真理》 サイドボード(15) |
――デッキにおける自分なりの調整ポイントは?
市川「元の津村さんのデッキレシピでは《呪文貫き/Spell Pierce(ZEN)》3枚と《差し戻し/Remand(RAV)》1枚だったところが、《思考囲い/Thoughtseize(THS)》3枚と《稲妻/Lightning Bolt(M11)》1枚に差し替わってます。《思考囲い/Thoughtseize(THS)》なら、自分に撃つことで「《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》を捨てて《御霊の復讐/Goryo’s Vengeance(BOK)》を撃つ」という動きが、《イゼットの魔除け/Izzet Charm(RTR)》だったら計4マナかかるところを、1マナ軽くできるから。その分ライフが減るのは早いけど、コンボスタートが1ターン早くなるなら、ライフは関係ない。また、《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》でフラッシュバックもできて、遅いデッキに対して強いのも理由。」
――サイドボードは元のレシピとどう違いますか?
市川「《粉砕の嵐/Shatterstorm(10ED)》がなくて、代わりに《汚損破/Vandalblast(RTR)》が4枚入っていること。親和相手ならもちろん《粉砕の嵐/Shatterstorm(10ED)》のほうがいいけど、《汚損破/Vandalblast(RTR)》はトロンやマーフォークデッキなどにも広く使えると思ったから。でも実際に当たった相手の中にトロンとマーフォークはゼロで、親和が2回なので、せめて両方2枚ずつに散らすとかすればよかった。」
――もう一度このプロツアーをやり直すとしたら、どうしますか?
市川「プロツアーの結果を見ると、エムラシュートという選択はあまりいいものではなかったように思います。バーンとトロンなど、フェアデッキには強いけど2日目で上位に上がってきた親和と無色エルドラージには弱くて、“2日目に弱いデッキ”だった。
エルドラージデッキ自体は想定していたけど、黒単か黒タッチで手札破壊をしてくるタイプを考えていたのでサイドに《神聖の力線/Leyline of Sanctity(M11)》を4枚とって相性を改善できると思っていた。でもふたを開けてみれば、勝ち組のエルドラージデッキは無色型で、用意したサイドがスカりサイド後も不利を覆せなかった感じだった。」
――では、このデッキの代わりに何を使いたいですか?
市川「無色エルドラージはチームでの調整がすごく大事で、日本では何度タイムリープしてもこれが完成する世界線にはたどりつけないと思う。個人的には親和でぶっぱするのがよかったかな。」
――今大会で印象的だった試合はありますか?
市川「ラウンド15の対親和で、ブン回られたけどライフが1残って逆転したことかな。《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》を走らせて《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》だけが場に残ったけどライフが1しかないから、フェッチが切れなくてマナが伸びない。ライフ1のままけっこうグダって、墓地にあった火力で相手の脅威をプチプチ除去しながら、『(ライブラリーを削る)奥義を撃ったら勝てないかな』と思って相手のライブラリーを数えたら45枚あって、さすがに無理(笑)。なんとか次の《御霊の復讐/Goryo’s Vengeance(BOK)》を引くまで粘って勝ったのが印象的でした。」
――最後に、大会の総括を。
市川「とにかくドラフトラウンドを5-1できたのがよかった。(メソッドを教えてくれた)彌永さんのおかげです! 2日目のデッキも、もとをたどれば後手でも行けるっていう彌永さんの発想の系譜だしね。」
●山本賢太郎の場合
Jiachen Taoさんとのフィーチャーマッチ。
2日目ドラフトラウンドの戦績
3-0
2日目モダンの戦績(2日間の通算戦績 12-4/14位)
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 勝敗 |
---|---|---|
12 | トリコキキジキ(Antonio De Rosa) | 勝ち(○○) |
13 | ジャンド(Samuel Tharmaratnam) | 勝ち(○○) |
14 | 無色エルドラージ(Mike Sigrist) | 勝ち(×○○) |
15 | 青赤エルドラージ(Jiachen Tao) | 負け(×○×) |
16 | ナヤZOO(Phillip Braverman) | 勝ち(○○) |
1《島》 1《山》 1《沼》 4《汚染された三角州》 4《沸騰する小湖》 2《忍び寄るタール坑》 2《黒割れの崖》 2《蒸気孔》 1《血染めのぬかるみ》 1《血の墓所》 1《湿った墓》 土地(20)
クリーチャー(16) |
4《信仰無き物あさり》 4《血清の幻視》 4《御霊の復讐》 4《イゼットの魔除け》 4《裂け目の突破》 2《思考囲い》 2《稲妻》 呪文(24) |
4《神聖の力線》 2《汚損破》 2《稲妻》 2《粉砕の嵐》 2《苦い真理》 2《払拭》 1《すべてを護るもの、母聖樹》 サイドボード(15) |
強豪Mike Sigristさんとの対戦。
――デッキの調整について教えてください。
山本「このデッキはメインボードの構成はほぼ決まっていて、いじれるスロットは相手を妨害するための4枚分くらいしかないんですが、健志さんに教えてもらったレシピでは《呪文貫き/Spell Pierce(ZEN)》3枚と《差し戻し/Remand(RAV)》1枚になっているところを、《思考囲い/Thoughtseize(THS)》2枚と《稲妻/Lightning Bolt(M11)》2枚にしています。というのは、《呪文貫き/Spell Pierce(ZEN)》はどうしても強く思えなくて、カウンターより能動的にやりたいから《思考囲い/Thoughtseize(THS)》にしました。自分に撃ってコンボパーツの補助にもなりうるので。最初は4枚入れたんですけど、さすがにちょっと痛すぎるから2枚は《稲妻/Lightning Bolt(M11)》に変えました。実際それでよかったと思ってます。」
――サイドボードについてはいかがですか?
山本「二大メタだと予想していた親和とバーン対策を厚めにしたんですが、こんなにエルドラージが勝つとは思いませんでした。
バーンと手札破壊対策の《神聖の力線/Leyline of Sanctity(M11)》4枚は、少し前までは入ってなかったんです。練習してみて、このデッキを使うメンバーで相談して入れました。安心感があるし、このデッキは手札を捨てる手段が豊富なので、あとから引いてきても捨てられます。
あと《粉砕の嵐/Shatterstorm(10ED)》が3枚入ってましたが、市川君が《汚損破/Vandalblast(RTR)》を4枚サイドに入れていて、そのほうが親和以外のデッキ相手にもサイドインできて幅広いと言われ、納得したので入れたら、《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》を割ったりしてかなり活躍しました。」
――もしプロツアーを最初からやり直すとしたらどのデッキを選びますか?
山本「このデッキです。」
――特に印象に残った試合はありますか?
山本「やっぱりフィーチャーマッチですね。2ゲーム目は相手がずっと構えてた《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》でドローしたんで、それでこっちにチャンスが生まれて、トップデッキして勝ちました。3ゲーム目の最後の場面は選択肢がいろいろあって難しい盤面で、もっと時間をかけて考えたら答えが出るかもしれないですが、ちょっとわからないです。明確なミスではなかったと思うんですけど、どっちがより引く可能性が高いかという確率の問題で、試合中には絶対計算できないので感覚でやるしかないんですが、それがちょっと間違ってたかもしれない。
ゲーム後にライブラリーをめくったらちょうど次に勝つカードがあったので、あと1枚の差でした。」
――最後に総括を。
山本「デッキはめちゃめちゃ強かったです。会場でも1、2の強さなのは間違いないと思っています。」
●渡辺雄也の場合
プロチームChannel Fireballのドン、Luis Scott-Vargasさんとのフィーチャーマッチ。
2日目ドラフトラウンドの戦績
3-0
2日目モダンの戦績(2日間の通算戦績 10-6/47位)
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 勝敗 |
---|---|---|
12 | 無色エルドラージ(Luis Scott-Vargas) | 負け(×○×) |
13 | 親和(Oliver Tiu) | 負け(×○×) |
14 | 感染(Dan Lanthier) | 勝ち(○○) |
15 | 感染(Oliv Polak-Rottman) | 負け(×○×) |
16 | むかつきコンボ(Daniel Grafensteiner) | 負け(×○×) |
1《島》 1《山》 1《沼》 4《汚染された三角州》 4《沸騰する小湖》 3《蒸気孔》 2《血染めのぬかるみ》 2《忍び寄るタール坑》 1《闇滑りの岸》 1《湿った墓》 土地(20)
クリーチャー(16) |
4《信仰無き物あさり》 4《血清の幻視》 4《御霊の復讐》 4《イゼットの魔除け》 4《裂け目の突破》 2《稲妻》 2《呪文貫き》 呪文(24) |
4《神聖の力線》 2《汚損破》 2《稲妻》 2《粉砕の嵐》 2《払拭》 1《すべてを護るもの、母聖樹》 1《苦い真理》 1《紅蓮地獄》 サイドボード(15) |
――メインデッキの調整ポイントは?
渡辺「ほかの人は《思考囲い/Thoughtseize(THS)》を取ってるんですが、僕は《呪文貫き/Spell Pierce(ZEN)》にしてます。両方のパターンを回してみて、こっちのほうが感触が良かったのでそうしました。一長一短だと思います。《思考囲い/Thoughtseize(THS)》はちょっとライフが痛くて撃ちづらい場面があるので。」
――サイドボードはどうですか?
「ほとんど一緒ですけど、僕だけ5枚目の《稲妻/Lightning Bolt(M11)》として《紅蓮地獄/Pyroclasm(M11)》を1枚入れていて、親和や感染のクリーチャーを焼くのにだいぶ活躍しました。純粋に稲妻だけじゃ足りないなと思って。」
――このプロツアーをやり直すなら、何で出ますか?
渡辺「今回の結果を知ってるなら、エムラシュート以外にしますね。上に来たデッキに勝てないので。親和がちょっときつくて、感染もきつくて、エルドラージも想定していたハンデスがたくさん入っている黒単エルドラージじゃなく無色エルドラージが勝ってたので。それらのデッキが上にいたのが厳しかったです。何にするかはちょっとわからないですけど、全然違うデッキで出ると思います。」
――今大会で印象に残った試合は?
渡辺「ルイスコ(Luis Scott-Vargas)とのフィーチャー戦で、後手でマリガン後の占術で《血清の幻視/Serum Visions(5DN)》を下に送ったこと。普通なら絶対上に置く場面なんですけど、相手のデッキを知っていたのと、ルイスコのキープがすごく早かったので、1ターン目におおむね《虚空の杯/Chalice of the Void(MRD)》を1で張ってくるだろうなと思い、下に送りました。対戦中に「下に送ったよ」って見せたら、「グッドチョイス」って言われました。互いによく知ってる相手だし、デッキもわかっているプロツアーならではの場面でしたね。ああいうプレイをこれからもできたらいいと思います。」
――最後に総括をお願いします。
1勝4敗で(先手後手を決める)ダイスに負けて、ダイスで負けた試合はそのまま全部負けてます。正直今のモダンはかなり不健全だと思うので、来年のプロツアーはモダンではやってほしくないですね……。
●2日目の風景から
2日目の昼ご飯は中華弁当。手前にある水筒はプレイヤーがもらえるもので、ジェイスの柄がかっこいいです。
ラウンド12の渡辺 VS Luis Scott-Vargas戦を会場内の画面で中継。「GRISHOALBRAND」というデッキ名が下に表示されていますが、グリセルシュートではなくエムラシュートなので、これはたぶん勘違いですね。
晩ご飯は大勢で出かけました。しかし土曜の夜ということもあり、近所のお店はどこも長蛇の列。少し足を延ばしてショッピングモール外のメキシカン・ファーストフード店に入り、タコスなどを食べました。
最終成績が発表されると、市川さんと渡辺さんがぎりぎり50位以内にすべりこみ。50位までは賞金1500ドルですが、51位以下は1000ドルに下がってしまうので、「耐えたー!!!!」と歓声があがりました。チームメンバーは最終日の日曜、それぞれ次の大会に向けての練習やドラフトなどをするそうですが、おなじみの観光編もちゃんとやる予定ですので、お楽しみに!