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【PTEMN】2日目構築ラウンドまとめ【Day2】

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プロツアー『異界月』の2日目が終わり、日本人プレイヤーからはHareruya Prosの高橋優太さんと、Team Cygamesの合宿(ドラフト合宿と構築合宿の両方)に参加していたDig.cards所属プロの行弘賢さんがトップ8入りしました。
今回山本さん・覚前さん・渡辺さんが使用した赤緑昂揚ランプデッキは、もともと行弘さんが作成し、構築合宿に持ち込んだものです。みんなで調整してサイドボードのやり方なども統一した同じデッキを計7人が使い、行弘さんは最終的に構築ラウンドを9勝1分けという高成績で突破。作者本人の手によって、このデッキは最終日の晴れ舞台へと進むことになりました。デッキ解説などは、行弘さん自身の記事がDig.cardsにて追ってアップされるとのことですのでそちらをご参照ください。

 


山本賢太郎/覚前輝也/渡辺雄也『赤緑昂揚ランプ』



7《森》
5《山》
4《獲物道》
2《燃えがらの林間地》
2《見捨てられた神々の神殿》
4《進化する未開地》


土地(24)


3《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1《世界を壊すもの》
3《約束された終末、エムラクール》
4《搭載歩行機械》


クリーチャー(11)


4《焦熱の衝動》
4《ウルヴェンワルド横断》
4《苦しめる声》
4《集団的抵抗》
4《ニッサの巡礼》
3《コジレックの帰還》
2《炎呼び、チャンドラ》


呪文(25)


3《不屈の追跡者》
3《稲妻織り》
3《ゴブリンの闇住まい》
2《龍王アタルカ》
1《世界を壊すもの》
2《龍詞の咆哮》
1《面晶体の記録庫》


サイドボード(15)


 

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行弘さんのトップ8入りを賭けた試合を、観戦席の最前列で見る市川さんたち。

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トップ8メンバーの発表の瞬間、拍手を送る盟友たち。

 

 

 

●山本賢太郎の場合

2日目ドラフトラウンドの戦績
0-3
2日目スタンダードラウンドの戦績 0-1ドロップ(通算戦績 5-7/178位)

山本さんは今回のプロツアーで6敗1分けのプラチナ獲得を目指していましたが、無念の途中ドロップとなってしまいました。

 

――デッキについて、何か自分なりのポイントなどはあったのでしょうか?

山本
いえ、僕は基本的に合宿で赤緑昂揚ランプを回していなかったので、みんなが作ってくれたサイドプランとかにお任せでした。

――結果がわかったうえでもう一度同じプロツアーに出るとしても、同じデッキで出ますか?

山本
そうですね、全然文句なく強かったので。

――プロツアー全体で、こうしておけばよかったなという点はありますか?

山本
うーん、どうしたほうがよかったんだろう……。デッキとか練習とかの問題ではなくて、ちょっとうまく言えないんですけど、自分の地力とかの問題なので……。ただドラフトに関しては計1勝5敗しちゃったんで、環境の認識不足だったのかなと思います。環境が遅いからカウンターが強いという認識で、青の3マナカウンター《巻き込み/Convolute(EMN)》をけっこう評価してて、中盤くらいでピックしてたんですけど、ドラフト2回とも残り5枚くらいまで回ってきていて、その認識がちょっと周りとずれてたのかなと。環境は間違いなく遅くはなってるんですけど、攻めるデッキが多い環境でもあったので、カウンターを評価高めにしすぎたなと。

――全体的に、受けに回るより攻めるデッキのほうが勝つ環境だったということですね。

山本
そういうこともあって、負けちゃったかなと思います。

 

 

●覚前輝也の場合

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Jason Chungとの対戦。

 

2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1

2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績 9-6-1/58位)

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 緑白トークン 勝ち(○○)
13 青緑現出(十文字諒) 勝ち(○○)
14 赤緑昂揚ランプ(行弘賢) 負け(○××)
15 4色現出(Jason Chung) 負け(××)
16 バント儀式(Patrick Dickmann) ID(引き分け)

――デッキについて教えてください。

覚前
僕はぎりぎりまで違うデッキで行こうかと思ってたんです。赤緑昂揚ランプはバントカンパニーにも緑白トークンにも50%の相性で、別に有利ではないうえに《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》にかなり不利なんで。

――何にしようとしていたんですか?

覚前
スゥルタイコントロールが一番バントカンパニーに対して相性がいいということで、それにしようかなと。でも、実際にバントカンパニーと対戦練習をしてみたら、前日になって実はそんなに有利じゃないことがわかったんです。で、スゥルタイコントロールをやめて、その時点で合宿メンバーが調整してたデッキが赤緑昂揚ランプとドレッジだったので、僕に合ってる使いやすいデッキだと思ったランプを使うことにしました。

――急だったんですね。

覚前
でも、みんな回してたからプレイの仕方とかはだいたいわかってたんで、そんなに問題なかったかなと。サイドボードが、相手のデッキも新しいデッキが多くて難しかったりはしましたけど。

――今大会で、よかったと思うデッキはありましたか?

覚前
トータルで見ると、(準優勝した)ティムール現出ランプが今回一番いいデッキだなと思いました。次点としてタコ(《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》)デッキや昂揚デッキが来るんですけど、そういうのはみんなバントカンパニーに対して強くて、バントカンパニーよりいいデッキだったのは間違いないなと。

――今回の反省点は?

覚前
自分のデッキ構築能力ですかね。ティムール現出ランプのようなすぐれたデッキを作れたらよかったなと思いました。今回使ったのも悪いデッキではないです、行弘君がトップ8に入ってるわけだし。でも自分にとって最高のデッキではなかったと思っているので、まだまだマジックの世界は奥深いなと……。

 

 

●渡辺雄也の場合

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高橋優太さんとの対戦。

 

2日目ドラフトラウンドの戦績
1-2

2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績 10-6/35位)

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 赤緑昂揚ランプ(Ben Rubin) 勝ち(×○○)
13 バントカンパニー(高橋優太) 負け(○××)
14 バントカンパニー(Shaun McLaren) 負け(××)
15 白黒コントロール 負け(×○×)
16 不明(Ivan Floch) 勝ち(後述)

※最終戦は、ここで勝てばプロポイント合計で世界選手権への出場が確定するという事情を説明したところ、Ivan Flochもぎりぎり出られるかどうかという状況でしたが、渡辺さんが確定するのならということで勝ちを譲ってもらいました。「泣きそうになるほどうれしかった」とのことです。

――印象的な対戦はありますか?

渡辺
13ラウンド目のあんちゃん(高橋優太さん)との対戦で、互いに時間を使って延長ターンまでもつれこんで、最終的に負けちゃったんですけど、難しい選択肢が多い中時間がなくて、1ターン15秒とかの早回しでプレイしてたんです。そういうときってデッキへの理解度というか慣れが出るんですけど、僕は練習でこのデッキの相手をする側だったので、早くプレイするというのはけっこう難しい場面が多くて、その部分で負けちゃったかなと思いますね。

――確かに、体に染みついた動きとかがありますし。

渡辺
ほとんど考える余裕がないようなときは、どれだけ多くそのデッキを回して来たかが出るので、そういう意味でこのデッキを使うにあたっての練習不足が響いたなと。その対戦で燃え尽きちゃって、そのあとは息をするように負けました……。

――渡辺さんは仮想敵側だったんですね。

渡辺
行弘が主にこのデッキを回してて一番理解度が高い状態だったので、その行弘が決勝ラウンドに進めたのはすごくよかったと思います。ただ、練習で1人がずっと同じデッキを回すんじゃなくて、練習方法は考えないといけないとは思いました。

――もう一度このプロツアーに出るとしたら、同じデッキを使いますか?

渡辺
デッキとしてはかなり当たりだったと思いますけど、けっこう変えると思います。《苦しめる声/Tormenting Voice(SOI)》じゃなくて《過去との取り組み/Grapple with the Past(EMN)》とか。プロツアーを戦っていて、もう少しこうしたほうがデッキ使用者全体の勝率が上がったんじゃないかという点は見つかりました。

――今回いいなと思ったデッキはなんですか?

渡辺
(準優勝した)ティムール現出ランプは、すごいデッキだなと思いました。それ以外の黒緑昂揚とか赤緑ランプとかは、既存のデッキをちゃんと作り上げてきたって感じですけど、このデッキは完全に一から作ったデッキかつ結果も残したので、アメリカチームのデッキ構築能力はすごいなと再確認しましたね。

――ちなみに、このあとは決勝ラウンドに向けて行弘さんとの調整ですか?

渡辺
はい。全力で応援しようかと思います。

渡辺さんは帰国後、さっそく9月頭の世界選手権に向けて練習がスタートします。

 

 

●市川ユウキの場合

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2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1

2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績 10-6/45位)

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 青黒ゾンビ(Marcio Carvalho) 勝ち
13 緑白トークン 勝ち
14 ジャンド昂揚(Martin Muller) 負け(××)
15 黒緑昂揚 勝ち
16 赤緑昂揚ランプ(井上徹) 負け(後述)

※最終戦は井上さんにトス(勝ちを譲ること)しています。ここで勝っても市川さんはプロポイントが49点で、50点に足りないので意味がありません。ですがプロツアーで5敗までに収めれば次のプロツアーの出場権が得られるので、今回シルバーレベルを確定させた井上さんが参戦権を継続できるように譲りました。

 


市川ユウキ『スゥルタイ現出』



3《森》
2《島》
2《沼》
4《ラノワールの荒原/Llanowar Wastes(ORI)》
4《進化する未開地/Evolving Wilds(BFZ)》
3《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast(ORI)》
3《窪み渓谷/Sunken Hollow(BFZ)》
2《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》


土地(23)


4《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》
3《首絞め/Noose Constrictor(EMN)》
4《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam(SOI)》
1《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》
4《憑依された死体/Haunted Dead(EMN)》
1《縫い翼のスカーブ/Stitchwing Skaab(SOI)》
4《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》


クリーチャー(21)


4《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald(SOI)》
4《過去との取り組み/Grapple with the Past(EMN)》
4《群れの結集/Gather the Pack(ORI)》
4《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》


呪文(16)


3《膨らんだ意識曲げ/Distended Mindbender(EMN)》
2《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》
1《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》
2《衰滅/Languish(ORI)》
3《強迫/Duress(DTK)》
3《究極の価格/Ultimate Price(DTK)》
1《山》


サイドボード(15)


 

――デッキについて教えてください。

市川
このデッキは前日の夜ぎりぎりまでサイドボードが決まってなくて。Aさん(松本友樹さん)と、相性が悪い緑白トークンのデッキを直前で作ってサイドボード後のテストして、《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》と《強迫/Duress(DTK)》をサイドに取ったんです。そしたら、緑白トークンとの対戦でそれがきれいにはまって。《ゼンディカーの代弁者、ニッサ/Nissa, Voice of Zendikar(OGW)》の奥義の手前で《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》を出して、奪った《ゼンディカーの代弁者、ニッサ/Nissa, Voice of Zendikar(OGW)》の奥義で勝ったので、直前に練習しといてよかったです。

――同じプロツアーをもう1回やるとしても、これで出ますか?

市川
上のほうにいるデッキ……ティムール現出ランプとかはまだあまり見てないんでよくわかってないですけど、このデッキにはけっこう満足してます。最終戦を含めなければ構築は6-3、Aさんも7-2で最後IDしてるので、2人で勝率トータル7割とれてるって考えればけっこう強いと思うし。あと、このデッキはみんなが思ってるより安定してます。《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald(SOI)》がすごく強いデッキなので。適当に昂揚してクリーチャーサーチもマナベースの補助もしてくれるんで、3色のリスクはほぼないですね。

――結局Aさんと75枚一緒のデッキになったわけですが、このデッキの使用者はAさんと市川さんの2人だけなんですか?

市川
2人だけです。このデッキ、初日にもちょっと言いましたけど(1日目構築記事にリンク)、MOで当たったデッキをもとにしてるんです。で、今回Jason Chung(ニュージーランドのプロプレイヤー)が、まったく同じデッキ使ってるんです。『君さ、MOでこれ使ってなかった?』って聞いたら、『使ってたよ』と。『じゃあさ、《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》の奥義でデッキめっちゃ見てきたやついなかった?』って聞いたら、『いたいた』って言うから、『それ、俺だよ』と(笑)。詳しくは確認してないんですけど、Jason Chungまわりの人が原案のデッキですね。

――互いに「お前だったのかー!」ということですね。

※このJason Chungのデッキが生まれた経緯について書かれた紹介記事はこちら。浅原晃さんが同時に似たデッキを作ったことも書かれており、北半球と南半球でそれぞれ奇才デッキビルダーが同様のデッキを組み上げたことがわかります。
――デッキについてここをこうしておけばよかった、というのはありますか?

市川
サイドの《山》をメインに入れとくべきでした。メインのマナベースが、《森》は《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》のために3枚、《島》は2枚、これは《進化する未開地/Evolving Wilds(BFZ)》から持ってくるために絶対必要。そして《沼》がメインに2枚入ってるんですけど、なんでかというとサイドに黒黒が必要なカードが入ってるからなんです。メインには《山》がなくて、サイド後《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》を表で撃ちたいときは《山》を入れる、という話だったんですね。最初に俺が作ったときは《山》入ってたんですけど、松本君がね、いいですか、松本君がですよ、『メインで《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》は撃たないので、撃つときにサイドインしましょう』と言ってきて、なるほどよかろうと。でも、どう考えても、メインに黒黒を要求するカードはないので、《沼》をサイドに落として、《山》をメインに入れとけば、《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》をメインで撃つ選択肢が増えるよね!……ということにまったく気づかなかった(笑)。

――本当だ! 当たり前のことですね。

市川
サイドだけ見たらどう考えても変で、黒黒が必要なカードが5枚入ってて赤いカードは1枚もないのに、なぜか《山》が入ってる。こういうことはね、やりたくはないんですけどもね、責任の所在を明らかにしないと先には進めませんからね。松本君と協議した結果、6:4で彼が悪いってことになりました(笑)。

――でも4割は市川さんの責任なんですね(笑)。

市川
彼の言い分は、『僕は提案したけど、あなたが承認したから』ってことなんで(笑)。ともあれ、そこが今回の一番大きいミスですね。《山》がメインにあったら勝ってたゲームはたぶんあるので。

――そうでしたか。ところで明日の日曜日は何をしますか? 今回はニコ生の解説ではないんですよね。

市川
明日はメングッチ君(仲のいいイタリアのAndrea Mengucci)とついにドラフトをやりますよ!

市川さんは9月末の世界選手権に、公式ニコニコ生放送の解説として参加予定です。

 

 

●シーズンを終えて

それぞれ、目標を達成したりしなかったりのプロツアーで、この1シーズンが幕を閉じました。四者四様に、来シーズンの身の振り方について思うところがあり、心の整理には少し時間が必要なように感じました。
プロマジックの世界は、1ゲームごとの勝ち負けの積み重ねがはっきりと結果に結びつくシビアな場所なので、「あともう少しでトップ8/ゴールドレベル/プラチナレベルだったのに……」といった悔しい気持ちも大きい一方で、改めて考えてみればプロツアーというのは出ることすら難しく、2日目に残るのだって大変なことです。それを当たり前のようにやってのけるチームの4人はやっぱりすごいと思う取材班でした。
そして、8月11日(木・祝)にニコニコ生放送で、渡辺さんの殿堂入りを記念した特別番組を配信しました。
みんなでお酒を飲みながら、トークしたり対戦したりと、もりだくさんな内容でお送りした配信ですが、当日見れなかった方のためにyoutubeTeamCygamesチャンネルでのUP(配信当時のコメントは無し)も予定しておりますのでぜひ楽しみにお待ちください!

 

 

●おまけ(会場風景いろいろ)

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今回の会場限定プレイマットはこちらで、35オーストラリアドル(約2,700円)です。ここで予約すると2週間後くらいに発送されてくるというシステムでした。

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フィーチャーエリアには、プロツアー『イニストラードの影』に引き続きイニストラードの墓石があるのですが、エムラクールの影響を受けて不気味な触手がはびこっています。

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会場の外に屋台が出ており、メキシコ料理やマフィンなどの簡単な食事をとれるようになっていました。

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2人並んで対戦する山本さんと市川さん。

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ファンにサインをする渡辺さん。Tシャツにはすでに何人もの有名プレイヤーのサインが書かれているようでした。

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