【PTKLD】悲喜こもごもの構築ラウンドまとめ【Day1】
プロツアー『カラデシュ』の1日目が終了し、Team Cygamesの4名は山本さんと渡辺さんの2名が2日目進出となりました。
「モダンのようだ」と言われるカラデシュ環境のプロツアーは、機体を使った早いビートをメタったコントロールと、《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》を使ったデッキが多勢を占めていましたが、そんな中に彼らが工夫を凝らして持ち込んだデッキたちは、当たり運によって大きく明暗が分かれる結果となりました。
●市川ユウキの場合
Jason Chanさんとの対戦
1日目ドラフトラウンドの戦績
1-2
1日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績 2-5)/グリクシス現出
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
4 | 赤緑タッチ青黒エネルギー(Jason Chan) | 負け |
5 | 赤黒除去コントロール | 負け |
6 | 赤青緑タイムワープ | 勝ち |
7 | 赤緑ダブルストライク | 負け |
8 | – | ドロップ |
デッキについて
市川さん・覚前さん・山本さんは同じグリクシス現出デッキを使用しています。これはまず墓地を肥やし、墓地から戻ってくるクリーチャーを種にして現出クリーチャーを出しつつ、《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》で盤面を一掃するというのが基本のコントロールデッキです。
ビートダウンに強く、厳しいのは《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》。《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》の5点で流せそうですが、そうするためには現出クリーチャーでの生け贄が必要で、生け贄の際にゾンビ・トークンが出てしまい、それを使って5/6になってしまう《カリタス》を流せないというジレンマがあります。
「このデッキは3/3ゾンビ(《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam(SOI)》)を毎ゲーム2枚引けたら優勝しますね」と市川さんが言うように、ゾンビとの絆が問われるデッキとなっています。
なので、《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam(SOI)》を引けるようにドローソースを増やしたり、墓地を肥やすカードをクリーチャー依存にしないというのが、今回の構築のかなめでした。
「今回、グリクシス現出ないしドレッジの、どういうタイプのデッキが勝つのかはすごい気になりますね。」と市川さん。調整ではドレッジをいかに安定させるかに力を注ぎましたが、ドレッジがうまくいかなかったときにビートダウンしきれるような構成をはたして作れたのか、そういう道がありえたのかというのが興味深いところです。
市川「デッキ内に金色(マルチカラー)のカードは《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam(SOI)》しかないから、枠が金色だった瞬間『きたきたー!』ってテンションあがります。」
覚前「金色を見るとアドレナリンが出るよね!」
対戦について
このデッキにとっては《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》がいやな存在ですが、下位に沈むとそれが入っているようなデッキに当たりそうだから、ドラフトで1-2した段階でいやな気はしていたという市川さん。実際、5ラウンド目の相手が出してきて負けました。上位のほうはコントロールや霊気池デッキがまあまあ多く有利だったのですが、それらには当たりませんでした。
また、28枚ライブラリーを掘ったのに《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam(SOI)》が墓地に落ちず、常にタップアウトしている《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》を《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》で流せないまま負けてしまったのは、かなりアンラッキーでした。
ただ、同じデッキを使っている山本さんと瀧村さんが6-2(構築は4-1)しているので、明日もがんばってほしいところです。
●覚前輝也の場合
Petr Sochurekさんとの対戦
1日目ドラフトラウンドの戦績
1-2
1日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績 3-4-1)/グリクシス現出
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
4 | 白黒コントロール | 引き分け |
5 | 緑黒ビート | 勝ち |
6 | ジェスカイPWコントロール | 勝ち |
7 | 緑黒昂揚(Petr Sochurek) | 負け |
8 | 赤黒ビート(Martin Dang) | 負け |
デッキについて
このデッキでの戦いは回るか回らないかがポイントなので、「ゾンビを何枚引けるかとか、相手との戦いというよりも自分のデッキとの戦いみたいなところがある」と覚前さんは言います。モダンのように、自分の使うデッキの経験値を高める必要があるので、「市川さんと調整してそれに乗るって決めた以上、デッキは信じてたんですけど、練習が少し足りなかった面はあるかもしれない」という分析でした。
対戦について
7ラウンド目は土地1枚で、あと1枚土地を引けばおおむね勝つ手札をキープして、3ターン土地が来なくて負けてしまいました。「マリガンすべきだったとは思わないから、しょうがない。引けないのも僕の実力です!」と、いつものさばさばした表情で覚前さんは語っていました。
また、珍しく引き分けが発生していますが、覚前さんのデッキが山札を全部掘れる作りなので、相手もデッキの内容が知りたくて、何が何枚入っているか数えてメモをとっていたため、時間がなくなってしまったとのこと。最終的に覚前さんのデッキが全部なくなったところから山札を復活させて長引きましたが、あと1ターンあったら負けていたぎりぎりのところだったそうです。
●山本賢太郎の場合
Ari Laxさんとのフィーチャーマッチ
1日目ドラフトラウンドの戦績
2-1
1日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績 6-2)/グリクシス現出
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
4 | 青赤コントロール | 負け(○××) |
5 | 緑黒高揚(Jon Stern) | 勝ち(○○) |
6 | ティムール霊気池 | 勝ち(○○) |
7 | ティムール霊気池(Ari Lax) | 勝ち(×○○) |
8 | ティムール現出 | 勝ち(○×○) |
デッキについて
このデッキは《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》の全員5ダメージがきくビートダウンデッキと、トップメタのティムール霊気池デッキには有利なので、メタ的には有利なデッキが多く、デッキ自体の力はあるのですが、回るかどうかが大事で、回らないときとの落差が激しいです。
キーカードの《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam(SOI)》がないと打点が足りなくなることが多いのですが、それを序盤のうちに引いたり墓地に落としたりするほど有利になるので、ライブラリの上のほうに何枚いてくれるかというのが勝敗を左右する重要ポイントとなっています。
山本さんは「その点今日は恵まれて、ゾンビと踊ってました。」とのことでした。
対戦について
印象的なシーンとして、Ari Laxさんとのフィーチャーマッチの、1ゲーム目の最後が挙がりました。
《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End(EMN)》を出されてターンを奪われましたが、山本さんの盤面にはクリーチャーがたくさんいて相手のライフが残り6しかなく、何をされても次のターンで勝てるような状況でした。しかし、そこでよりによって《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》を引いてしまい、墓地に《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》があったので、現出→《コジレック》誘発のコンボが決まってしまって逆転負けとなりました。一番引いてはいけないものを引いてしまい、相手は「ラッキー!」と喜んでいたそうです。
●渡辺雄也の場合
Zac Elsikさんとのフィーチャーマッチ
1日目ドラフトラウンドの戦績
3-0
1日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績 6-2)/バント霊気池
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
4 | ティムールエネルギー | 負け(×○×) |
5 | 青緑霊気池 | 勝ち(×○○) |
6 | トリココントロール(Zac Elsik) | 負け(×○×) |
7 | ティムール霊気池 | 勝ち(○×○) |
8 | グリクシス現出 | 勝ち(○×○) |
デッキについて
このデッキの動きは普通の霊気池デッキと同様ですが、バントカラーになっており《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》や《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》でターンを稼ぎやすい作りになっています。《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》を探しに行くのではなく、稼いだ時間でターンを伸ばして間に合わせようというコンセプトです。
また、白を入れたことによる一番のメリットは、昂揚で全クリーチャーを追放する《罪人への急襲/Descend upon the Sinful(SOI)》です。メインからマナクリーチャーと全体除去が同居しているいびつな構成ではありますが、グリクシス現出や赤白機体といった普通の除去が効きにくいデッキに対して強く、実際にこれで勝った場面も多かったとのこと。
霊気池デッキとの同型対決は、相手の《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》をこちらの《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》などで止めることができるため、とても有利です。苦手なのはトリココントロールなど、カウンターを使う青系です。4ラウンド目のダブルストライクデッキも、タッチ青でカウンターが入っていたため非常にきつい戦いを強いられました。
今日の5ラウンドはきついところに負け、勝ちやすいところに勝つというわかりやすい結果で、想定の範囲内でした。ただ、4ラウンド目に関してはサイドボードをあと1枚変えていれば勝てていたかもしれません。昨日思いついたものの、試す時間がなかったカードとして4マナのダメージ軽減エンチャント《領事府の看視/Consulate Surveillance(KLD)》があり、どうしても入れる場所がなくて1枚だけ取っていたのですが、2枚にしていればサイド後は勝てていたと思われます。
対戦について
同じラウンドの間に、2本目と3本目でサイドプランを大きく変えられるというのもこのデッキの強みです。渡辺さんは6ラウンド目のトリココントロール相手に2本目と3本目を同じサイドにして負けてしまいましたが、あとで同じデッキを使ってる行弘賢さんや石村信太朗さんと話したところ、3本目は相手が除去を入れてきたところにクリーチャーを抜くようにサイド変更をしないといけないことがわかりました。
その石村さんは渡辺さんと同じ6-2ラインにいます。行弘さんはマリガンが多かったため4-4だそうですが、それぞれ明日もデッキの本領を発揮できるようお祈りしたいと思います。
残念ながら初日落ちとなってしまった市川さんと覚前さんですが、晩ごはんのときに明日の計画を聞かれて「来るまですごく忙しかったから、さすがにちょっと休みたい。とりあえず起きるまで寝る。起きたらきっとお昼くらいになってるから、昼ご飯を食べて、食べたら眠くなってくるから、また寝る!」という話をしていました。
渡辺さんが殿堂セレモニーのゲストとして招いた中村夫妻と井川良彦さんも一緒にシーフードのディナー。