グランプリ・千葉2016レポート
11月26日(土)~27日(日)に幕張メッセで開催されたグランプリ・千葉2016では、Team Cygamesから山本さんと渡辺さんの2名が決勝ラウンドに進出し、みごと山本さんが優勝をかざりました! 山本さんは9回目のグランプリトップ8入りでついに初優勝となり、チーム内外から祝福されました。チームのメンバーは4人ともほぼ1年ぶりのレガシーフォーマットとのことで、それぞれ別々のデッキを使い大会に臨みました。その選択理由や本戦の様子について、詳しくうかがっていきます。
●準備について
――まず覚前さんから、デッキの選択理由と、レガシーをどんなふうに練習したかを教えてください。
覚前「1ヶ月前からレガシーデッキをいろいろ回してました。ただ奇跡は習熟度がいるので、1ヶ月じゃ無理かなと判断して最初から回すつもりはなかったです。奇跡以外のトップメタのデッキは、デルバーを中心にひと通り回してたんですけど、エルドラージがその中で頭1つ抜けて強いと思ったので、使うことに決めました。MOで5-0したデッキや、晴れる屋のデッキ検索を使って、勝ってるエルドラージのリストを全部見て、よさそうなものをもとにけっこう練習したんですけど、メイン・サイドともに、これといって変えるところがないんですよ。変えられる要素は《四肢切断/Dismember(NPH)》とか、《歪める嘆き/Warping Wail(OGW)》をメインに何枚取るかとか、そのくらいしかないんですけど、そこを変えても『このデッキ相手にはちょっと有利になるけど、あのデッキ相手にはちょっと不利になる』という誤差くらいしかないので。」
市川「アーキタイプに幅がないから、リストがほぼ固定化されてたよね。」
渡辺「クリーチャースロットも呪文スロットも土地もほぼ一緒だから。」
覚前「そんな差がつかない中でも、自分なりにベストの選択をしたつもりではあります。」
――エルドラージデッキは強いけれど、みんなにデッキレシピを知られている、という弱点もあるわけですね。
覚前「そうです。誰が使ってもプレイミスもしにくいし、普通に勝ちやすくも負けやすくもある、みたいなデッキです。」
――ほかのデッキに対する有利不利はどんな感じですか?
覚前「デルバー系には若干有利だと思います。奇跡は五分くらい。スニーク・ショウはちょっと苦手で、一番きついのは続唱系。あと土地単は絶対勝てないですね。それ以外は、だいたい五分以上でやれると思うんですけど。」
渡辺「まぁエルドラージにはどんな相手でも勝てるブン回りがあるからね。1ターン目《虚空の杯/Chalice of the Void(MRD)》、2ターン目《難題の予見者/Thought-Knot Seer(OGW)》っていう。」
――MOで5-0したらもらえるトロフィーのところに、覚前さんのアカウント名がたくさん載っていて、すごい練習してるんだなと思って見ていました。何マッチくらいやりました?
覚前「数えきれないくらい。やまけんよりやってると思う、たぶん。でも、エルドラージっていうデッキを練習しまくった結果、『エルドラージは練習してもそんなに差がない』ことがわかりました(笑)。」
渡辺「選択肢がそんなに多くないから、プレイがそんなに変わらないよね。」
市川「差がつくとしたらサイド後のプランニングくらいかな。」
――エルドラージデッキにプレイングの差が出る要素がもっとあれば、練習量がもっと生きたでしょうね。
覚前「そうですね。まあしょうがないです。市川君みたいに瞑想する時間も必要だったかなと、今になって思いますね。」
市川「まぁでも、それは大会に臨むにあたってのスタイルの問題だから。俺は石の上に乗って座禅を組むような、何もしないターンが欲しいんだよね。」
渡辺「てるてるが勝つときは、死ぬほど練習して極めてる状態が多いと思うから、そのスタイルでいいと思うけどな。」
――デッキについて、覚前さんなりに工夫したこだわりの点などはあるんでしょうか?
覚前「えっと……特にないです(笑)。ただサイドボーディングと、初手のキープ基準は誰よりも正確であろう、ミスらないようにしようと、意識して練習しました。」
4《古えの墳墓》 4《魂の洞窟》 3《裏切り者の都》 4《エルドラージの寺院》 4《ウギンの目》 2《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 3《不毛の大地》 土地(24)
クリーチャー(27) |
2《四肢切断》 4《虚空の杯》 1《アメジストのとげ》 2《梅澤の十手》 呪文(9) |
2《漸増爆弾》 3《アメジストのとげ》 1《歪める嘆き》 1《四肢切断》 1《全ては塵》 4《虚空の力線》 3《終末を招くもの》 サイドボード(15) |
――続いて、渡辺さんはいかがですか?
渡辺「僕は1週間前にワールド・マジック・カップに解説で行っていたこともあって、事前の練習は全然してないです。リーグに3回出たくらいだから、15マッチかな。もともと、《渦まく知識/Brainstorm(MMQ)》と《意志の力/Force of Will(ALL)》は使いたいなと思っていて、青白奇跡と青単ショーテルを回したら、奇跡はぼちぼちで、ショーテルは手ごたえが悪かったので、時間もないので奇跡一本に絞って練習しました。でも晴れる屋の大会に出てみたら2勝4敗(笑)。奇跡ってやっぱりプレイが難しくて引き分けてしまうことがあるので、できるだけ早く終わるような構成にしつつ、一般的なリストの中で自分ではあまり強くないなと感じる部分を微調整しました。」
――試合が長引いて引き分けないような工夫をしていたんですね。
渡辺「奇跡は、最終的には相手のライフを削り切って勝つデッキなので、ライフを削りやすいカードを普通より多めに採用しましたね。メインから《僧院の導師/Monastery Mentor(FRF)》を3枚しっかり取ったり、サイドボードからも《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》や《硫黄の精霊/Sulfur Elemental(PLC)》を入れたり。ただ、ダメージを与えやすい《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》はあまり好きになれなくて入れませんでした。《赤霊破/Red Elemental Blast(4ED)》とかですごく対処されやすいのと、相手の手札を見ても正直経験不足で何を抜けばいいかわからないので(笑)。どんなカードが飛んでくるかわからないから、何でも対処できる《対抗呪文/Counterspell(7ED)》のような、使い方の限定されてないフレキシブルなカードを少し多めにしましたね。」
――プレイング面での引き分けない工夫はありますか?
渡辺「基本的には、1つ1つの行動を早くすることです。フェッチランドを切る前にどの土地を持ってくるのか決めておいて、それを見つけしだい次の作業に移るとか。あと事前に人に言われてたんですけど、手札をシャカシャカするのをなるべくやめたほうがいいと。それをやらないようにするだけでもちょっと変わるよと言われて、癖でついやっちゃいはするんですけど、少し意識しました。そのせいか、今回延長ターンは1回も入らなかったですね。」
――相性のいいデッキと悪いデッキは何ですか?
渡辺「サイド後まで含めると、《硫黄の精霊/Sulfur Elemental(PLC)》を2枚取ってる分、デスタクには有利にふるまえます。《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》を抜いているので、基本的には五分の青白奇跡同系はだいぶ不利になってる印象でした。エルドラージにはまあ五分くらい、デルバーには多少有利くらいです。あと、3ターン目に《僧院の導師/Monastery Mentor(FRF)》を出す動きがあまり強くないので、スニーク・ショウとかのコンボ系には少し相性が悪いですね。」
4《島》 2《平地》 1《山》 3《Tundra》 2《Volcanic Island》 4《溢れかえる岸辺》 4《沸騰する小湖》 1《乾燥台地》 土地(21)
クリーチャー(6) |
4《師範の占い独楽》 4《渦まく知識》 3《思案》 4《剣を鍬に》 4《相殺》 2《対抗呪文》 1《予報》 1《議会の採決》 4《意志の力》 3《終末》 1《天使への願い》 2《精神を刻む者、ジェイス》 呪文(33) |
2《硫黄の精霊》 2《狼狽の嵐》 2《紅蓮破》 2《外科的摘出》 1《赤霊破》 2《基本に帰れ》 1《罠の橋》 2《摩耗+損耗》 1《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 サイドボード(15) |
――市川さんはどうしてこのデッキに?
市川「1か月くらい、リーグを1日1回やるかやらないかくらいですけど、MOでいろんなデッキを回して練習してました。ミラクルもオムニテルも回したし、デルバーもいろんな形を試しました。デスタクはMOでできなかったのでリアル大会に出てけっこう回したんですけど、あまりしっくりこなくて。戦績自体は6-1、7-2、4-1くらいでかなりよかったんですけど、結果に比べて感触がよくなくて微妙だなと。そしたら、最後にデスタクで出た大会……グランプリの1週間前くらいですけど、そこに今回のデルバーのベースになるデッキを回してる人がいたんです。その人もデッキは調整中だったんですけど、《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler(FRF)》が3枚くらい入ってて、《若き紅蓮術士/Young Pyromancer(M14)》が入ってなくて、《もみ消し/Stifle(SCG)》が入ってる形のグリクシスデルバーですね。デルバー系はいろんな形を試して全部ダメだったんですけど、この形はやってないから一応試してみるかと思って、MOで回してみたら5-0を3回くらいしたので、これでいいかなってなりました。」
――ポイントは《もみ消し/Stifle(SCG)》ですか。
市川「そうです。デルバー系が奇跡に勝てるかどうかは完全に《もみ消し/Stifle(SCG)》の有無にかかっていると思っていて。奇跡のフェッチランドをもみ消すことで最初から土地を縛って、《不毛の大地/Wasteland(TMP)》や《目くらまし/Daze(NEM)》や《呪文貫き/Spell Pierce(ZEN)》といったデッキ内のカードの機能を高くできる。もし《もみ消し/Stifle(SCG)》がなかったら、奇跡側にとっては単にフェッチから基本地形を持ってきて《目くらまし/Daze(NEM)》をケアするだけでいいので、簡単すぎます。」
――このデルバーを回してみたら、デスタクより感触がよかったんですね。
市川「デスタクって、《リシャーダの港/Rishadan Port(MMQ》と《平地》、あと3マナだらけみたいな初手がよく来るから、ドキドキしちゃうんですよ。『そもそも3マナ目を引くかもわからないし、《リシャーダの港/Rishadan Port(MMQ》を割られたら絶対無理だけど、本当に行けんのかな?』みたいな手札ばっかり来る。ロングゲームになれば安定するんですけど、1~4ターン目くらいまでがデッキ的にまったく安定しないので、心臓に悪い(笑)。」
――デルバーだと、そういう心配はないですか?
市川「このデルバーデッキは1マナのカードがいっぱい入ってて、デルバーの中でも一番軽い構成だと思います。だから土地1枚でもキープできるし、《渦まく知識/Brainstorm(MMQ)》があるから、土地が4枚あってもまあいいかなって感じになる。」
――1週間かけて、そういう形に調整していったわけですね。
市川「そうですね。1週間で30マッチくらいやりました。その間に、原根君(Hareruya Prosの原根健太さん)がデッキがないって言ってきて、グランプリ直前の水曜日の祝日に、僕は仕事だったから『じゃあこれ回してみて』って渡したら、原根君も感触よかったみたいで、フィードバックをもらいつつ詰めました。」
渡辺「それ、僕が2-4したトーナメントだね。原根君はそのとき6-2してた。」
市川「そうそう。翌日も平日トーナメントでけっこう勝ったみたいで、最終的に原根君と74枚一緒のレシピで出ました。」
――1枚だけ違う部分はどこですか?
市川「サイドボードで、僕は《発展の代価/Price of Progress(EXO)》になってるところが、原根君は《罠の橋/Ensnaring Bridge(8ED)》です。方向性の違いですね。このデッキは《もみ消し/Stifle(SCG)》が入ってる分エルドラージに対して不利なので、サイドボードを多くとろうと。原根君は《罠の橋/Ensnaring Bridge(8ED)》を張って、《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets(ISD)》でゆっくり小突いたり、《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman(RTR)》でライフを減らしたりして勝つイメージで、僕はライフレースするイメージ。相手の要所だけ抑えて詰めていって、最後に《発展の代価/Price of Progress(EXO)》で勝つという。そこのプランの違いですね。」
――あと、サイドボードが《冬の宝珠/Winter Orb(5ED)》ではないほうがよかったということですが。
市川「これは《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives(5DN)》のほうがよかったです。このデッキはほかのデルバーに比べて1マナのカードが多いから、《虚空の杯/Chalice of the Void(MRD)》のX=1がはまってしまうことが多くて、エルドラージに今回3回当たって2回負けてるんです。だから、メインとサイドに《突然の衰微/Abrupt Decay(RTR)》と《古えの遺恨/Ancient Grudge(ISD)》は入ってるんですけど、置物にさわれるカードがあと1枚欲しかったのと、《冬の宝珠/Winter Orb(5ED)》はいろんなマッチであまり効果的じゃなかったので。対エルドラージで《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives(5DN)》は弱そうだと思ってたんですけど、実は《果てしなきもの/Endless One(BFZ)》とか《虚空の杯/Chalice of the Void(MRD)》とか、意外と0マナのカードがあるので。」
――そう言われればそうですね。
市川「ちなみにこのことは前日に原根君に提案されてたんですけど、『置物にさわりたい』っていうふんわりした意見だったので、一蹴しました(笑)。そこでしっかり、エルドラージに《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives(5DN)》が効くって論理的に伝えてくれてたら、入れてたんだけどなぁ……。まあ、責任の所在で言うと、僕4:原根6くらいですね(笑)。」
――まあ割合は置いておくとして……。そのほか、デッキの有利不利はどんな感じでしょうか?
市川「デルバーデッキの常で、コンボデッキ全般には有利ですね。当たりたくないのは、やっぱりエルドラージかな。デスタクもあまり当たりたくないですね。《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler(FRF)》が単体除去を受けやすくて、デッキが止まりやすい。ここが《若き紅蓮術士/Young Pyromancer(M14)》だったら横に広がっていってトークンも殴れるような場になりやすいんですけど、そうじゃない分相性がちょっと悪くなってるなと思いました。他はだいたい五分くらいの印象ですね。」
3《Underground Sea》 2《Volcanic Island》 1《Tropical Island》 4《溢れかえる岸辺》 4《沸騰する小湖》 4《不毛の大地》 土地(18)
クリーチャー(12) |
4《稲妻》 1《四肢切断》 1《突然の衰微》 4《もみ消し》 4《目くらまし》 4《渦まく知識》 4《思案》 2《思考掃き》 4《意志の力》 2《呪文貫き》 呪文(30) |
1《突然の衰微》 1《古えの遺恨》 1《ヴェールのリリアナ》 1《狼狽の嵐》 1《紅蓮破》 1《硫黄の精霊》 1《赤霊破》 1《外科的摘出》 1《真髄の針》 1《呪文嵌め》 2《思考囲い》 1《発展の対価》 1《冬の宝珠》 1《四肢切断》 サイドボード(15) |
――それでは最後に、山本さんのデッキについてお願いします。
山本「レガシーの経験は少ないんですけど、3年前にThe Last Sunで優勝した時に使ったスニーク・ショウと、グランプリ・京都2015で使ったオムニテル、その2つは経験値があるからとりあえずMOで回してみました。そしたらオムニテルは《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》が禁止されてデッキパワーが大きく下がって、代わりに入ったカードが《パズルの欠片/Pieces of the Puzzle(SOI)》とかで、勝てなくて。」
市川「《パズルの欠片/Pieces of the Puzzle(SOI)》はおもちゃだからね。こんなカードでレガシー勝てるわけあるか、舐めてんじゃねーぞって思う(笑)」
山本「なので、スニーク・ショウを回したらけっこう勝率がよくて。MOには奇跡とエルドラージとデルバーが多いんですけど、エルドラージと奇跡にはけっこう相性がいいので。デルバーにはあまりよくないんですけど、この3つのアーキタイプは本戦でもけっこういるだろうから、そのうち2つに相性がいいならまあいいかと思って選びました。」
――モダンでもグリセルシュートを使われてますし、《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》と《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》を出すのが好きというのもありますよね。
山本「それももちろんあります。」
――この環境に合わせたポイントはありますか?
山本「このデッキを作るとき、カードは全部あんちゃん(Hareruya Prosの高橋優太さん)に借りたんですけど、リストを渡したときは《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(NPH)》2枚と《定業/Preordain(M11)》2枚だったのが、『《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(NPH)》は弱いから、《定業/Preordain(M11)》を4枚にしたほうがいいよ』ってあんちゃんに言われて、そうしました。スニーク・ショウって《古えの墳墓/Ancient Tomb(TMP)》とかでダメージをくらってる場面が多いから、2ライフ払うのが結構きついんですよね。」
――実際、準決勝のスニーク・ショウ対決で、相手は《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(NPH)》を撃っていたのでライフが14しかなく、《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》を1回しか起動できなかったという場面がありましたね。
山本「そうですね。《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》の関係で、ライフをある程度保っておきたいというのはあります。」
渡辺「今のレガシー環境はけっこうライフを押されるんだよね。エルドラージとデスタクが新しく出てきて、デルバー系もバージョンが増えて、前よりライフがタイトな環境になった。」
市川「殴るデッキが増えたね。」
――そこで《定業/Preordain(M11)》なんですね。グランプリ前に200マッチくらい練習されたという話ですが。
山本「グランプリ・クアラルンプール2016が終わってから、1か月くらい大会がなくて暇だったんですよね。レガシーやってたら意外と楽しくて、気づいたらそれくらいやってました(笑)。」
渡辺「プレイするのが楽しいの?」
山本「《渦まく知識/Brainstorm(MMQ)》とか《思案/Ponder(LRW)》とか、選択肢がいろいろあるスペルが多くて、それをいろいろ考えるのが楽しい。」
渡辺「でも、突然ポキッと折れたってうわさに聞きましたよ?(笑)」
山本「ちょうど200マッチやって、グランプリの1週間前に晴れる屋の神挑戦者決定戦に出たんですよ。けっこう自信あったんですけど、1ゲームも取れずに0-2して、これはやばいなって。それで、てるてるがけっこうレガシーやり込んでるのを知ってたんで、LINEしたんです。最初、『赤黒リアニどう?』って聞いたら、『ゴミ』って言われて(笑)。次に『エルドラージはどう?』って聞いたら、『強い』と。『俺はエルドラージ一強だと思ってる』みたいな話だったので、リストを教えてもらって回したんですけど、同系戦で全然差がつかずにめっちゃ負けて、そこまで使いたくないなと感じて。消去法で、手元にスニーク・ショウしか残ってなかったから使いました。」
――消去法だったんですか。グランプリ直前、最後はモミール(MOでのカジュアル寄りフォーマット)をやっていたそうですね。
山本「やることなくて……若干現実逃避でした(笑)。」
――デッキの性質的に、「対処されないと信じてぶっぱする」みたいな、一か八かの局面が多くあると思うんですが、そういう勝負は得意なんですか?
山本「いや、別に、得意ではないと……いや、でも、もしかしたら得意かもしれない……。モダンで似たようなデッキを使ってた経験値があったから、行かなきゃいけない時の見極めとかは多少得意かもしれないですね。あまり意識はしてませんでしたが。」
――今までの蓄積によって、「ここは行くべき!」というのが感覚でわかると。
山本「そうですね、感覚です。」
市川「そこは職人芸だから。」
渡辺「その感覚を養うのが、たぶん200マッチなんだろうね。」
3《島》 3《Volcanic Island》 2《沸騰する小湖》 2《溢れかえる岸辺》 2《霧深い雨林》 2《汚染された三角州》 3《古えの墳墓》 2《裏切り者の都》 土地(19)
クリーチャー(8) |
4《水蓮の花びら》 4《渦まく知識》 4《思案》 4《定業》 4《呪文貫き》 4《実物提示教育》 4《騙し討ち》 4《意志の力》 1《精神を刻む者、ジェイス》 呪文(33) |
2《渋面の溶岩使い》 2《ヴェンディリオン三人衆》 2《赤霊破》 1《狼狽の嵐》 1《墓掘りの檻》 3《仕組まれた爆薬》 3《血染めの月》 1《精神を刻む者、ジェイス》 サイドボード(15) |
●本選について
覚前さんの戦績(最終順位:240位)
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 勝敗 |
---|---|---|
1-2 | bye(不戦勝) | – |
3 | ジャンド続唱 | 勝ち(〇〇) |
4 | 青赤デルバー | 勝ち(〇×〇) |
5 | 赤黒リアニメイト | 負け(〇××) |
6 | マーフォーク | 負け(〇××) |
7 | 青赤黒デルバー | 負け(〇××) |
8 | デスタク | 勝ち(〇〇) |
9 | 4色デルバー | 勝ち(〇〇) |
10 | ジャンド続唱 | 勝ち(〇〇) |
11 | 奇跡 | 勝ち(〇〇) |
12 | スニーク・ショウ | 負け(×〇×) |
13 | ドレッジ | 負け(〇××) |
14 | 赤単バーン | 勝ち(〇×〇) |
15 | 4色デルバー | 勝ち(〇×〇) |
覚前「2日間戦って、やっぱり、奇跡使えばよかったなと思いました(笑)。」
市川「200マッチ以上練習したんだったら、奇跡やっててもけっこう仕上がってたんじゃない?」
渡辺「エルドラージはそんなに習熟度いらないから、100マッチずつに分けてやっといたらよかったかもね。」
覚前「キープ基準とサイドの入れ替えは、練習の経験を生かしてよく考えてできたと思うんですけど、負けるときは負けるデッキなので。僕、『初日4-3、2日目4-2くらいが順当かな』と思ってツイッターで書いたら、実際その通りになりました。でも奇跡だったら、習熟度によってはもっと上をねらえたかもしれない。」
――エルドラージデッキには天井があるけど、奇跡だったら使い手の腕しだいで上から下まで幅があるということでしょうか。
覚前「そうですね、エルドラージ使ってる人はそこそこ勝っててみんな2日目には行ってるんですけど、トップ8にはいなかった。安定感があってデッキパワーが高いけど、勝ちきれないデッキなんですよね。」
渡辺さんの戦績(最終順位:3位)
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 勝敗 |
---|---|---|
1-3 | bye(不戦勝) | – |
4 | 青白石鍛冶 | 勝ち(〇〇) |
5 | 青赤デルバー | 勝ち(〇〇) |
6 | マーフォーク | 負け(××) |
7 | エルフ | 勝ち(〇〇) |
8 | 感染 | 勝ち(〇〇) |
9 | デスタク | 勝ち(〇×〇) |
10 | デスタク(諸藤拓馬) | 勝ち(〇〇) |
11 | 青赤コントロール | 勝ち(×〇〇) |
12 | グリクシスデルバー | 勝ち(〇〇) |
13 | BtB青白コントロール | 勝ち(〇〇) |
14 | 食物連鎖 | 勝ち(×〇〇) |
15 | ID | – |
準々決勝 | デスタク(劉今) | 勝ち(×〇〇) |
準決勝 | 奇跡(木原惇希) | 負け(××) |
渡辺「一番印象に残ったのは、ビデオフィーチャーになった諸藤さんとの戦い(10ラウンド目)ですね。諸藤さんが《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic(WWK)》を出したんで、装備品をサーチするのを待ってたら、そのまま『エンドです』って言われて。『えっ!? 』って。」
市川「放送を見直したら、ナベがマジで『えっ!? 』って言ってて面白かった(笑)。」
――諸藤さんがしゃべりすぎて、サーチを忘れたんですか?
渡辺「まあ諸藤さんはいつも話しながらプレイするスタイルで、僕も楽しくやれたらいいなと思ってるので付き合って普通に話してたんですけど、諸藤さんにエンドって言われて、『エンドですか!?……じゃあ独楽回します』って言ったら諸藤さんが『あー! 忘れたー!』って急に慌て始めた(笑)。でも「これは得意の手だな」と。諸藤さんの手札がその時3枚あったんですけど、装備品が全部手札にあるから持ってこなかったんだと思ったんですよ。だから、慌ててるのが天然なのか演技なのかわかんねーなと思って、怖いから返しに《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic(WWK)》に除去を撃ちました。あとで確認したら本当にうっかりさんでした(笑)。」
市川「さすがに、《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic(WWK)》がただの2マナ1/2バニラなのはやばい。」
渡辺「《従者/Squire(TSB)》だからね。ちなみに最終スタンディングを確認したら、諸藤さんは2日目その1敗しかしてないんですよ。あとは全部勝ってて、すげーなこの人、装備品持って来るのを忘れなければ勝つんだなと(笑)。」
――渡辺さんは珍しい食物連鎖も含め、幅広くいろいろなデッキに当たっていますね。
渡辺「とはいえ、だいたいのデッキはある程度知ってるマッチアップだったので。食物連鎖は何されるかよくわからなかったんですが、《食物連鎖/Food Chain》と、出し入れしてマナを増やすためのクリーチャーさえしっかりカウンターすればいいっていうのは事前に市川君から聞いてたんで。」
市川「食物連鎖は回したことがあって、《霧虚ろのグリフィン/Misthollow Griffin(AVR)》をカウンターされるとけっこうきついのはわかってたので。」
渡辺「そのアドバイスをもらってたので、メインは負けたんですけど、サイドボード後にあまり悩まずできて助かりました。唯一負けたマーフォークは、サイド後に《歪める嘆き/Warping Wail(OGW)》が入ってるということを知らなくて、それで負けちゃいました。」
――デッキやプレイで、こうすればよかったという反省点はありますか?
渡辺「やっぱり《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》はちょっとだけ入れておけばよかったなと。奇跡同系に全然当たらなかったんですけど、最後の最後に当たって、やっぱり同系で強いなと感じたので。斉藤伸夫さん(レガシーのトッププレイヤーで特に奇跡に関しては第一人者とされる)にいろいろ教えてもらったときに、『《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》があるかどうかで同系の勝率が2割は変わる』と言われて。もとが五分のところから2割も変わるなら、そりゃ勝てないなと思いました。」
市川さんの戦績(最終順位:80位)
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 勝敗 |
---|---|---|
1-3 | bye(不戦勝) | – |
4 | ANT | 勝ち(〇〇) |
5 | 続唱 | 勝ち(〇〇) |
6 | エルドラージ | 勝ち(〇×〇) |
7 | エルドラージ | 負け(×〇×) |
8 | 黒緑デプス | 勝ち(〇〇) |
9 | デスタク | 負け(××) |
10 | 赤単ペインター | 勝ち(〇〇) |
11 | デスタク | 勝ち(〇×〇) |
12 | オムニテル | 勝ち(〇〇) |
13 | 感染 | 勝ち(〇〇) |
14 | 青赤デルバー | 負け(×〇×) |
15 | エルドラージ | 負け(××) |
市川「初日は自分のドローも弱かったんですけど、相手のドローもそうとう弱くて、お互い何やってんだろう?みたいになることが多かったですね(笑)。初戦のANT戦は、俺が全然いい動きしてなくて6ターン目までまったく何の妨害もしてないのに、相手側もコンボを決められないで結局勝ったりとか。」
――レガシーって、たまにそういう不発対決がありますよね。
市川「次のビデオマッチ(5ラウンド目)でも、2本目に俺がダブルマリガンして《不毛の大地/Wasteland(TMP)》1枚だけでキープして『さすがに負けたな』と思ってたら、相手も《Tropical Island》と《不毛の大地/Wasteland(TMP)》の2ランドキープで、そのあとまったく土地を引かなくて、お互いディスカードしまくったりとか、そんなんばっかりでした。」
――あれは泥試合でしたね。
市川「「そのあとのエルドラージ戦も、《Underground Sea》を引けず黒マナが出なくて困ってたら、相手が《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth(M15)》置いてくれて勝ったりとか、ドローが強くないけど変に噛み合ってて。ただ最終戦のデスタクはあんまり集中できてなくて、メインはたぶん勝てたかなって感じだったのが心残りでしたね。」
――そうでしたか。
市川「2日目は、序盤はよかったんですけど最後2連敗して。14ラウンド目の3本目については、簡単に言うと1ターン目に《思案/Ponder(LRW)》を撃ったのがミスで負けました。」
渡辺「え? どういうこと?」
市川「相手が赤青デルバーで、先手1ターン目にフェッチ切って《Volcanic Island》→《思案/Ponder(LRW)》って入ってきたんだよね。そうとう弱い動きだったんだけど、シャッフルせずにそのまま2枚積んで、《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(NPH)》撃ってエンドだったから、次のターンに必ずクロックが出てくることは予想できた。で、俺の後手1ターン目の初手が《思案/Ponder(LRW)》、《渦まく知識/Brainstorm(MMQ)》、《思考掃き/Thought Scour(DKA)》、《もみ消し/Stifle(SCG)》、《意志の力/Force of Will(ALL)》、《Underground Sea》、あと1枚は忘れたけどクリーチャーでも土地でも除去でもない何かで、たぶんドローソース。で、ファーストドローが2枚目の《Underground Sea》だったんだよね。そこで、1ターン目にうっかり《思案/Ponder(LRW)》を撃ったのが間違いだった。土地が1枚しかないなら、2枚目の土地を探したいからそれでいいんだけど、2枚目の土地を引いた時に、プランを変更すべきだった。」
渡辺「ああ、なるほどね。」
市川「土地を置いて、1マナ構えて《目くらまし/Daze(NEM)》をケアしてエンドすべきだった。ここで《思案/Ponder(LRW)》を撃ってしまったら、相手のクロックに対して《意志の力/Force of Will(ALL)》を撃っても《目くらまし/Daze(NEM)》でカウンターされてしまって、そうなったら今の手札に除去がないからほぼ負け。手札に除去がない以上、相手のクロックは絶対つぶせるようにしておかなきゃいけなかった。初手を見たときに考えたことを、プラン変更できずにそのままやっちゃったのが、もったいなかったなと。結果的に、そのあと赤マナ・緑マナが追い付いてこなくて除去のテンポが悪くなっちゃって、ライフを詰められて《発展の代価/Price of Progress(EXO)》で負けたんだけど、1枚目のクロックをちゃんとさばけてたらロングゲームになってて、そうなってたらたぶんこっちのほうが相性いいんで、勝っててもおかしくなかった。」
――でも、普通は《思案/Ponder(LRW)》を撃っちゃいそうですね。
渡辺「確かに。言われればなるほどなってわかるけど。」
市川「まあ、こういう感じで負けたなと思ったのは久しぶりで、やっぱりマジックは日々勉強だなと思いました。」
山本さんの戦績(最終順位:優勝)
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 勝敗 |
---|---|---|
1-3 | bye(不戦勝) | – |
4 | 赤青緑デルバー | 勝ち(〇×〇) |
5 | 赤単スニーク | 勝ち(〇〇) |
6 | エルドラージ(加茂理樹) | 勝ち(〇×〇) |
7 | エルドラージ(藤本岳大) | 勝ち(〇×〇) |
8 | オムニ入りスニーク・ショウ | 勝ち(〇×〇) |
9 | 奇跡 | 負け(×〇×) |
10 | エルドラージ | 勝ち(〇〇) |
11 | 奇跡 | 勝ち(〇〇) |
12 | グリクシスデルバー | 勝ち(〇〇) |
13 | 黒青緑続唱 | 勝ち(〇〇) |
14 | BtB青白コン | 引き分け(〇×-) |
15 | デスタク(劉今) | 勝ち(×〇〇) |
準々決勝 | エルフ(本間彰) | 勝ち(〇〇) |
準決勝 | スニーク・ショウ(佐藤啓輔) | 勝ち(〇〇) |
決勝 | 奇跡(木原惇希) | 勝ち(〇〇) |
――山本さんの14ラウンド目は、時間がかかって引き分けたんですか?
山本「久々に引き分けました。」
市川「スニーク・ショウが引き分けるのは珍しいね。」
山本「あと1ターンあったら勝ってたんですけど。延長4ターン目で、こっちの場に《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》があって、手札に大物がいて、相手のライフは2で土地も1枚という状況で、こっちにターンが返ってきたら、延長5ターン目で勝てそうだったんです。でも相手が《真髄の針/Pithing Needle(RTR)》で《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》を止めてきて、手札に《意志の力/Force of Will(ALL)》はあったんですけど、ライフが1で撃てなかったんです。めちゃめちゃ噛み合った結果の引き分けでした。」
――それはタイトな試合でしたね。そのほか、何か印象的な出来事はありましたか?
山本「15ラウンド目ですかね。MOだと《リシャーダの港/Rishadan Port(MMQ)》が高いせいでデスタクはいないので、デスタクと対戦するのはこのときが初めてだったんです。1本目負けて、これはきついなと。2本目は普通に勝って、3本目は、《カラカス/Karakas(LEG)》を引かれたら一瞬で負けるけど、でもぶっぱするしかないという手札で、デスタクって《カラカス/Karakas(LEG)》が3枚くらい入ってるのが一般的なんですけど、『頼むから引かないでくれー』と思いながら出したら、引かれなくて勝ちました。」
市川「あのビデオマッチ見て、『そうとうハート強いなこいつ!』って思ったよ。」
山本「デスタクとの3ゲームは、結果的に1枚も《カラカス/Karakas(LEG)》を引かれなくて、すごくツイてたなと。」
――初日の8ラウンド目ではケアしたら負けたから、2日目の最後は心を強く持った、みたいな感じですか?
山本「それも一応、教訓ではありました。初日の8ラウンド目は選択ミスで負けちゃったので、印象的ですね。かいつまんで言うと、《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》2枚と《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》みたいな手札で、とりあえず《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》を1発撃って、《摩耗+損耗/Wear+Tear(DGM)》で壊されて、その時点では次のターンで2枚目の《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》を出す予定だったんです。そしたら、次のドローが《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》で、マナは4マナしかない状況。さすがに1ターンはさむかって考えて、《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》で見た相手の手札が《僧院の導師/Monastery Mentor(FRF)》、《狼狽の嵐/Flusterstorm(CMD)》、《議会の採決/Council’s Judgment(CNS)》。相手の白マナは1つしかなかったです。次のターンに、こっちが土地を引かなくても《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》を出したいから、《議会の採決/Council’s Judgment(CNS)》を下に送ったんですけど、そこが勝負の分かれ目でした。あとでほかの人にこの場面でどうするか聞いたら、みんな意見が違って面白かったですね。結果的にはそこで《摩耗+損耗/Wear+Tear(DGM)》2枚目を引かれて、相手も4マナしかなくて何も出さずにエンドしてきたんですけど、こっちは土地を引かなくて、《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》しかないから普通に出したら、壊されて負けちゃいました。」
――そもそも《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》のために1ターン待たないほうがよかったんでしょうか?
市川「いや、さすがに《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》は出しそう。」
山本「どっちかというと、3枚の手札のどれを送るか、それともステイするかの問題だった気がします。」
市川「そのとき、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》に殴られてたんですよ。ステイして、《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》と《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》を交換して、長いゲームにするのがよさそうかな。」
渡辺「確かに、相手に白マナが1つしかないんだったらそのほうがよさそう。」
山本「今になって客観的に見ると、こっちが次の土地を引けば絶対通るから、ステイしたほうがよかったかな。けっこうシンプルな問題だったかもしれないね。」
●決勝ラウンドについて
――渡辺さんの、トップ8に入ったら髪型を瀧村さん(BIG MAGIC所属プロの瀧村和幸さん)みたいにするという話が話題になってましたね。
市川「英語版のカバレージで、グランプリトップ5ニュースの2位になるくらいからね。」
――発端は何だったんですか?
渡辺「グランプリ前日の夜にみんなで飲んでて、ほんとに全然練習してないから自信なかったんですけど、『そういうこと言ってどうせ勝つんでしょ?』みたいなことを瀧村君に言われて、『絶対勝たんから!』ってムキになって、『じゃあ、もしトップ8に入ったら瀧村君と左右対称の髪型にするよ!』って言ったんですよ。まさか勝つとは(笑)。」
市川「初日8-1した時点で、俺はけっこう勝ちそうだなと思ったけどね。プロプレイヤーは適応能力が違いすぎるんで、ラウンドが進むごとにナベの勝率は上がっていくだろうなと思ったから、初日8-1だったらもうだいたいトップ8だなと。」
――経験値が少ないってことは、そのぶんのびしろがすごくあるってことですもんね。
市川「このマッチはだいたいこんな感じだなってわかったらもうほぼミスらなくなるから、ナベは。」
――じゃあ渡辺さんも、8-1の時点でちょっとやばいなと思ってましたか?
渡辺「うーん、ちょっとまずいかなと(笑)。とはいえ手抜きはせず全力でやって、2日目5-0して、瀧村君に行きつけの美容室教えてもらいました。まあ、男と男の約束は守ります。」
――さすがです。
渡辺「12月と1月はオフシーズンで、特に表舞台に立つことはないので……。プロツアーまでにはできるだけ髪を伸ばして元に戻すつもりです。」
――でも、2か月あっても髪って3センチくらいしか伸びないですよ。横の刈ってる部分はヘンになると思います。
渡辺「育毛剤を買って横だけ塗ろうかな(笑)。」
――ところで、決勝ラウンドの対戦組み合わせを見て、勝てそうだと思いましたか?
渡辺「初戦がデスタクで、それはいけるかなと。《大変動/Cataclysm(EXO)》を撃たれて土地がなくなっても《硫黄の精霊/Sulfur Elemental(PLC)》さえいれば勝てると思っていて、実際に2本目はまさにそんな感じで勝ちました。3本目はまったく引かなくて長引いちゃったんですけど。」
――準決勝は奇跡対決でしたが、ミラーマッチの練習はあまりしていなかったんですか?
渡辺「そもそも練習自体あまりしてなかったので(笑)。 まあ何回か当たったことはありますけど、ふわふわしながらやってて。あと、このときはデスタクとの準々決勝を2時間やってすごい疲れてたというのもあります。」
――休憩なしですぐに準決勝が始まりましたからね。
市川「対デスタクは、総力戦になるから長くなるんだよね。」
渡辺「疲れてたうえ、デッキリストを見てもどういうふうに戦えばいいか経験不足でよくわからなくて。あとから考えれば、メインはもっとうまくできたなと。カウンターすべきかそうでないかの選定が甘かったです。《相殺/Counterbalance(CSP)》は絶対通しちゃダメだというのは知ってて《意志の力/Force of Will(ALL)》を撃ちまくったんですけど、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》で手札を回復してる途中で《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top(CHK)》を出されて、それに対して《対抗呪文/Counterspell(7ED)》を何も考えずに撃っちゃったのが明確なミスでした。結果的にその《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top(CHK)》から《天使への願い/Entreat the Angels(AVR)》を撃たれて負けちゃったんですけど、そもそも《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top(CHK)》じゃなくて《天使への願い/Entreat the Angels(AVR)》のほうをカウンターすればよかった。《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top(CHK)》はドローの質を上げるカードでしかないので、ゲームに負けるカードに対してカウンターを持っておくべきでした。そういうのもあって、奇跡というデッキは本当に大変だと改めて思いました。疲れすぎて、翌日は15時間くらい寝ました(笑)。」
――お疲れさまでした。
渡辺さんの準々決勝を見守る観客
――山本さんのほうは、勝てそうだと思いましたか?
山本「トップ8全体を見て、苦手なデルバー系がいなくて、デスタクくらいしか苦手なデッキがいなかったので、フィールドはまあまあいいなと思いました。」
――準々決勝のエルフ戦はどんな試合でしたか?
山本「昔エルフがはやってた時期にけっこう対戦していて、有利だと思ってて。こっちの手札もよくて、4ターン目には《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》が走れる手札で先手を取れたので、普通に勝ちました。2本目は《真髄の針/Pithing Needle(RTR)》で《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》を止められたんですけど、こっちは《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》とかの対処手段も引いてたのでゲームがゆっくりして、《実物提示教育/Show and Tell(USG)》を引いて勝ちました。」
――予選ラウンドの順位が2位と高かったので、先手を取れたのも大きかったんでしょうか。
山本「けっこうでかかったですね。」
渡辺「特にレガシーだと、先にマナを使える権利があるのは全然違う。」
――準決勝のスニーク・ショウ対決はいかがでしたか?
山本「1本目はかなり不利でしたね。相手の《実物提示教育/Show and Tell(USG)》が通って、相手が《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》を、俺は《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》を出して、相手の方が《騙し討ち/Sneak Attack(USG)》から出した《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》で7枚ドロー。ここでもし、《水蓮の花びら/Lotus Petal(TMP》か《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide(PLC)》から《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》が走ってきたら終わってたし、そもそも出たのが《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》じゃなくて《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》だったらもう負けてたし。そこで《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》を引かれていなかったというのが、ツイてましたね。実際《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide(PLC)》は持たれてたので。もしくは相手のライフがあと1点あればもう7枚引けてたから、そしたらほぼ負けでしたね。」
――そこは運もよかったと。山本さんの準決勝が終わった段階で、渡辺さんの準々決勝はまだ2ゲーム目くらいだったので、決勝が始まるまでかなり時間がありましたよね。
山本「1時間くらいあったので、畳の休憩スペースで壁に寄りかかって寝てました(笑)。ニコ生のモニターもあったので、『ナベ負けそうだなー』とかちらちら見ながら。」
――確かに、進行状況も確認できるからいい休憩場所でしたね。
ラウンドの合間に休憩をとる山本さん
――決勝の1本目では100回に1回という1ターンキルをなしとげましたが、コンボがそろっている手札を引いたとき、どんな気持ちでしたか?
山本「あ、そろってるなと。」
(一同笑)
――淡々としてますね。
山本「木原君(決勝の対戦相手である木原惇希さん)のリストに《カラカス/Karakas(LEG)》や《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant(FUT)》が入ってなかったので、《終末/Terminus(AVR)》+《意志の力/Force of Will(ALL)》とか、《意志の力/Force of Will(ALL)》2回とか、そうとう薄い負け筋しかなかったので、『まあ勝つやろ』とは思ってました。」
市川「あの1ターンキルは居酒屋でみんなで見てて、超盛り上がったよ。2ゲーム目も、《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》に《終末/Terminus(AVR)》撃たれて、『あれ? でも2枚目持ってない? いやさすがにないだろ』って言ってたら、ちゃんと2枚目持ってるし《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》もあるし、やばかった。」
――その後、3枚目の《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》も引きましたからね。本当に好かれてますね。
山本「あのとき1枚抜いてたので、デッキに3枚しかなかったんです。」
市川「じゃあ全員駆けつけてきたんだ(笑)。」
渡辺「エムラ三兄弟(三姉妹?)集合してたかー。」
――優勝後のインタビューで、勝った瞬間はあまり実感がないとおっしゃってましたが、一番うれしいと感じたのはいつでしたか?
山本「勝った瞬間は『引き強かったな』くらいの感想でしたけど、みんながおめでとうって言ってくれたのが一番うれしかったかなと。みんな、俺の想像以上に喜んでくれてて。知り合いの方とかがみんな祝ってくれてありがたかったです。」
――直後に渡辺さんが駆けつけたり、市川さんも会場に戻ってきましたし。
渡辺「うれしくて飛び出しちゃった。」
――日本中が喜んでましたよね。
渡辺「喜んでたの、マジックユーザーだけじゃなかったですからね。」
――シャドウバースのプレイヤーも、パックが配られて大喜びでしたね(笑)。
渡辺「山本賢太郎の優勝記念……えっ…誰?!」って(笑)。
市川「『誰だか知らないけどありがとう』って言われてたね(笑)。」
●その他雑感や今後について
――今回はレガシーのグランプリということで、レガシーだけをずっとやりこんでいる人と、スタンダードが中心になりがちなプロプレイヤーとの違いを感じましたか?
渡辺「うーん、場慣れしてないなと。」
市川「ああ、それはあるね。レガシーには慣れてるけど、グランプリには慣れてない。」
渡辺「僕らはグランプリでも普段通りプレイできますけど、対戦相手が緊張からミスプレイしたりというのはよく見かけましたし。」
――慣れないグランプリに出て、しかも対戦相手が渡辺さんだったりしたらさすがに緊張しそうです。
渡辺「《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic(WWK)》のサーチを忘れる人もいるし(笑)。」
市川「あの人はけっこう歴戦の強者のはずなんけどな(笑)。」
――また、いろいろと新しい試みの多かったグランプリでしたが、快適さはどうでしたか?
渡辺「オンラインペアリングが見られるアプリはすごくよかった。」
市川「あれは素晴らしい。」
――あなたはどこに座りなさいと、スマホに表示されるんですか?
市川「そうです、みんながぞろぞろ動き出したら、ああ出たんだなと思って画面を見ると、あなたは今何点で、座る席はここで、対戦相手は誰ですっていうのが表示されてます。」
渡辺「今までのオンラインペアリングは、WEB上で更新を押してもちゃんと出なかったりしたけど、今回は非常に快適でしたね。」
市川「フリーのお菓子とドリンクのサービスはどうでもよかったかな。畳とか充電スペースも特には。」
渡辺「フリードリンクはけっこう利用したよ。自販機が売り切れにならないから、水分補給の心配をしなくていいのは助かった。」
市川「確かに。」
渡辺「今回、主催した晴れる屋の中の人とちょっと話したんですけど、スペースの空け方やゴミ箱の置き方は、海外のグランプリを参考にしてすごい考えられてたみたいで、快適でした。」
市川「確かにゴミ箱もあちこちにあったし、対戦スペースも広かった。」
渡辺「隣のプレイマットが自分の領域に入ってこないのはいい。全体的に、プレイする場所に重点を置いているのがよかったですね。」
――参加プレイヤーのストレスができるだけ少なくなるように配慮していたんですね。
渡辺「進行も早くて、初日に1ラウンドだけ機材トラブルがありましたけど、それでもいつもより1時間以上早く終わりました。やっぱり紙のペアリングが張り出されるのを見に行って、渋滞しながら移動して……っていうのに毎ラウンド時間を食うんですよね。今回はそこがスムーズでよかったと思います。」
――プロツアー『霊気紛争』まではしばらくプレミアイベントがありませんが、今後の予定やこの休暇の過ごし方は?
覚前「僕はThe Last Sun(12月17日(土)~18日(日)に晴れる屋トーナメントセンターで開催される賞金制大会)に出ようかと思ってます。迷ってたけどやっぱり行こうかなと。」
渡辺「スタンダードとモダンの練習してるの?」
覚前「うん、やってる。」
市川「今のスタンダード、つまんなさそう……。」
覚前「けっこうつまんない(笑)。」
渡辺「デッキ3つくらいしかなくて、それのじゃんけんゲーでしょ?」
覚前「けっこうじゃんけんゲーだね。一番勝ってるのが赤緑の霊気池で、あと生きてるのは黒緑とマルドゥ機体だけ。青白は勝ってない。」
渡辺「時期的に環境末期だから、そんな感じになっちゃうよ。」
覚前「でも僕、その3つ以外のデッキを使おうかなと思ってるんで。」
――それは楽しみですね!渡辺さんはどうですか?
渡辺「僕は何もしてないです。今はアニメを見て、シャドウバースやって、次のセットの情報を待つくらいで。」
覚前「優雅だなー。」
渡辺「ちょっとだけスタンダードをさわっとこうとは思ってるんですけど。次の環境に移る前に、最後に残ったデッキだけはチェックしとこうかなと。」
――渡辺さんは髪型を変えつつ休養ということですね。市川さんは?
市川「僕は引っ越します!」
覚前「お、ついに来ましたか。」
市川「今月中に退去するってもう通知して、自分の逃げ場をなくしたから、さすがに引っ越します! 引っ越してジムに通います。」
覚前「毎日100回ずつ腹筋するだけで十分だよ、ジムにお金払い損だよ。」
市川「100回もできるわけないな?」
――でもジムにお金を払ったら、その分がもったいないから行く気になるのでは?
市川「効率厨だから、金払ったら行くかも。」
渡辺「いやいや、そう言って結局めんどくさくて行かない人の例をたくさん見てきてるから。」
市川「まあね。大会は、The Last Sunとエタフェス(年末に板橋で行なわれているレガシーの大規模大会、Eternal Festival Tokyoの略)があるんですけど、どっちも楽しそうなデッキがあったら行こうかなくらいで、その時のテンションですね。」
――山本さんは?
山本「僕も、The Last Sunに出る予定です。なので、スタンダードとモダンをちょっとさわろうかと。」
――3年前のThe Last Sunで優勝されてるんですよね。今回も頑張ってください。
先日の「9割越せる年末生放送2016」でもお伝えした通り、Team Cygamesの2016年は本当にいろいろなことがありましたが、これで今年もおおよそ終わりとなりました。大会レポートは少し間が空きますが、「9割勝てるマジック講座」などもありますので、来年もどうぞよろしくお願いします!!!
※記事中の写真は一部【Magic: the Gathering】から引用させていただきました。