Team Cygames『霊気紛争』合宿レポート&プロツアー・チームシリーズ発表
1月20日(金)~1月22日(日)の3日間、Cygames会議室にてプロツアー『霊気紛争』に向けた恒例のドラフト合宿が行なわれました。今回は一部日程のみの方も含め、過去最多の全20名が参加。初参加となるのは大礒さん、木原さん、廣澤さん、平見さん、松本(郁弥)さんの5名です。
やり方は前回同様で、ドラフトを進めながら盛んに意見交換が行なわれていました。この記事では、Team Cygamesの4人に聞いたドラフト雑感をお届けします。
また、プロツアー『霊気紛争』からスタートする「プロツアー・チームシリーズ」のため、Team Cygamesのメンバー4人が所属するチーム「MUSASHI」が発足しました。この記事では、チームの成り立ちについても合わせてご紹介します。
ドラフト中の風景
2卓同時にドラフトが進行中。右手の奥にきちんと並んだカードが見えますが、これは色ごとのコモンカードを全部取り出し、みんなで相談しながら強い順に並べ替える途中の状態です。
井上さんのデッキ構築中、覚前さんや渡辺さんと相談。
●『霊気紛争』環境雑感
――この環境についてお聞きしたいのですが。
渡辺「(覚前さんと山本さんを見て)今回は、3-0をたくさんしてる彼らに語ってもらいましょう。いつも俺とせばちゃん(市川さん)のセリフが多すぎるから(笑)」
市川「てるや(覚前さん)は何回3-0してるんだっけ?」
覚前「4回。」
市川「山本さんは?」
山本「僕は3回。」
市川「すごっ! 10回しかドラフトやってないんすよ。それで4回と3回って!」
渡辺「しかもてるやは最初の1回抜けてるから、9回中4回が3-0でしょ。」
覚前「うん。」
――それはすごいですね。
中村さらさんによる成績記録メモ。何回目のドラフトでは何勝だったかがわかります。覚前さんが9回中4回、山本さんが9回中3回が3-0という見事な成績。
覚前「合宿に来る前に、ちょっとドラフトやった成果が出てるのかなとは思いますね。まず、地上のバニラ(能力なしクリーチャー)は弱いからできるだけ取らないようにして、威迫とか飛行とかの点数をちょっと高めにする。勝てるカードをデッキに何枚か入れることがかなり大事なので、何枚かデッキに忍ばせるというのを意識してピックしてます。たとえばピーナッツとか。」
――ピーナッツとは?
渡辺「《浮遊化改造/Aerial Modification(AER)》ですね。」
――(絵を見て)ああ、確かにピーナッツだ!
市川「俺が最初にピーナッツと呼んだばかりに、そう呼ばれるようになってしまった(笑)」
――勝てるカードをデッキに入れるということですが、何かそう考えるきっかけがあったんですか?
覚前「ヤソ(八十岡翔太さん)が『ピーナッツ強いよ』って言ったのがきっかけです。このカード、そんなに強くないと初めは思ってたんですけど、ヤソがこのカードは1枚で勝てると。実際レアに匹敵するくらいなので。こういう1枚で勝てるようなカードをデッキに入れとくことがかなり大事で、あとの地上クリーチャーは全部ノイズかなと思ってるんです。」
――なるほど。
覚前「めちゃ強いって言われてる緑の《起伏鱗の大牙獣/Ridgescale Tusker(AER)》をさっきのドラフトで初めて使ってみたら、確かに強いんですけど、そこまでじゃないなと思いましたね。あんまりこれで勝てる感じじゃないかなと。」
――全体が大きくなるよりも、回避能力のほうが大事?
覚前「僕はそう思ってます。」
市川「《起伏鱗の大牙獣/Ridgescale Tusker(AER)》は強いけど、まっすぐに勝つビジョンはあまり見えない。だけどピーナッツはライフレースを差し切れるカードだから、ゲームの流れをイメージしやすいってことだよね。」
覚前「そうそう! 今までの展開から、『ここからピーナッツで勝つな』ってわかりやすい。緑のほうは出してもちょっと有利になるくらいだから。」
渡辺「あのカードはゲームを勝ちにはしてくれないから、ためずに5ターン目くらいにパッと出しちゃうのが一番強いかもね。」
――山本さんのほうは、どういったことを意識していますか?
山本「今回のキーワード能力である即席や紛争にそんなに寄せないほうがいいなと。がんばって寄せても、即席や紛争のカードがあまり強くないんです。普通にカードパワー重視でピックしたほうがいいので、でかいクリーチャーと除去を取って、あとはマナカーブを埋める感じで、基本セットっぽいなと思ってやってました。」
市川「確かに、マナカーブがきれいなデッキが勝ってる印象がある。」
山本「まあ、マナカーブはあくまで基本で、マナカーブをそろえるだけじゃ勝てないんですけど。」
――即席や紛争に関してはわりと微妙ですか。
山本「僕は微妙寄りですね。というか、そっちに寄せなくても普通に使えるカードが多いんです。赤の即席つき4マナ3/3威迫(《搾取工区の喧嘩屋/Sweatworks Brawler(AER)》)とか。あれは素で4マナで出してもそんなに悪くないので、『3マナくらいで出たらラッキー』くらいの意識で、即席を使うために弱いアーティファクトを入れてデッキを薄めるよりも、もっとほかの強いカードを入れたほうがいいと思います。」
――なるほど。
山本「紛争もそうで、頑張って最大のリターンを得よう、条件を満たそうとしなくてもいいカードが多いかなと。あまりシナジー環境ではないなという認識です。」
――わかりました。では、強い色と弱い色についてはどうですか?
山本「僕は赤が一番強くて、ほかはどっこいどっこい。抜きんでて弱い色はないかなと。」
覚前「僕も赤かなと思います。僕が赤好きなのもあるんですけど、コモンでプレイアブルなカードが多いので、卓内で分け合っても勝ちやすいかなと思います。もう1色がちゃんとしてれば、3-0や2-1はけっこうしやすいと思います。」
――環境としてはアーキタイプドラフトという感じではなくて、強いカードを取るって感じなんですかね。
覚前「僕のイメージですけど、勝てるカード以外は、マナカーブを埋めるだけって感じです。」
――とすると、強いデッキになるかどうかはレアカードに依存しがちですか?
渡辺「さっきやまけん(山本さん)も言ってたように、基本セットみたいな環境なんで、レアが重要ですね。」
――では、皆さんが一番引きたいレアカードはなんですか?
山本「僕は《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester(AER)》ですね。」
市川「3-0したデッキによく入ってる。ただ強。」
山本「初手はやっぱり色を決めずにアーティファクトの強いカードを取りたいんですけど、その中でもこれが一番強いかなと。」
市川「確かに。俺の答えもたぶんそれになりそうだなぁ。」
覚前「僕は《バラルの巧技/Baral’s Expertise(AER)》。まず、絵がかっこいい(笑)」
市川「かっこいいし、撃ったらだいたい勝つし。」
渡辺「手札にあるとニヤニヤしちゃう。」
――これで使う4コストのカードはもはや問題ではない?
覚前「関係ないです。撃った瞬間、バウンスだけで勝つんで。僕、緑黒をドラフトしてたときに2パック目でこれを引いて、黒が薄かったからそこで青に切り替えたんですけど、このカード1枚で3ゲーム勝ったんで、色は変え得。」
渡辺「僕はマスターピースの赤白剣(《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace(NPH)》)ですね。」
――それは確かに強い(笑)今回のドラフトで引いたんですか?
渡辺「いや、プレリで引きました。ちなみに今回のドラフトで出たマスターピースは《三なる宝球/Trinisphere(DST)》だけですね。通常レアだったら、《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester(AER)》か、《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》。どっちも絶対デッキに入るし、シナジーがあればなお強いので。」
市川「俺はどれにしようかな~(公式ハンドブックに載っているマスターピースの一覧を見ながら)。なんかブランド品のカタログ見てるみたいだな(笑)。じゃあ僕は《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine(SOM)》で。」
――はい(笑)
――まとめると、この環境は基本的でありマナカーブとレアが大事ということですね。
市川「普通のことしか言ってないな(笑)」
渡辺「まあ、てるやが言うように、何で勝つかというゲームプランがしっかりしてるデッキが勝つ環境だと思います。」
――わかりました。ちなみに、スタンダードのデッキについてもすでにけっこう考えられてるんですか?
渡辺「僕とてるやは、一緒にだいぶやってますね。SCG(合宿の裏で開催されているStarCityGamesの大規模大会)の結果が出てから、もう少し煮詰めようかなって感じです。」
――以前の合宿取材では、「スタンダードはまだまだこれから」ということもあったと思うので、スタートラインがいつもより前倒しですね。
渡辺「SCGの結果を見てからあーだこーだしてたんじゃ時間が足りないから、すでに考えたデッキをSCGのデッキと対戦させる、くらいまで持ってきたかったんで。行弘は全カードが発表になった直後からみっちり2日間くらい研究してたんですけど、禁止カードが発表されて『あれ?』って(笑)」
――2日間の研究が全部おじゃんになりましたね。
渡辺「《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》デッキが強すぎるからどうしようかって悩んでたら、物理的になくなりました。」
――イチから新環境でデッキを作る感じですね。
渡辺「そうですね、全部のカードを見直したりして頑張ってます。」
――それでは、最終的にプロツアーでどうなるか楽しみにしています。
●チーム「MUSASHI」について
プロツアー『霊気紛争』から、「プロツアー・チームシリーズ」がスタートします。
これは、大まかにまとめると6人でチームを組んでプロツアーを戦い、所属メンバーの成績に応じてチームにさまざまな特典があるというものです。本格始動は来冬からですが、まずはお試し版のような感じで、3回のプロツアーの成績を合計し、上位2チームが世界選手権で決勝を行なうことなどが決まっています。Team Cygamesのメンバーは、このたび以下のチームを結成しました。
山本賢太郎
覚前輝也
市川ユウキ
渡辺雄也(以上、Team Cygames所属)
八十岡翔太(Hareruya Pros所属)
行弘賢(DIG.cards所属)
メンバー4人と交流も深く実績も申し分ない頼もしい2人が加わり、世界へ打って出るにふさわしいチームとなりました。
チーム名は“日本らしく、強そうな名前”をコンセプトに考え、候補として「MUSASHI」の他に「YAMATO」「RISING SUN」などが挙がりました。その中で世界の舞台で戦うのにふさわしい名前を選ぶため、世界各国のスタッフが集まるローカライゼーションチームのメンバーへアンケートを取ったところ…「サムライっぽいイメージでかっこいい」という声や、剣豪・宮本武蔵を連想させるという理由から「MUSASHI」がダントツNo,1の人気でした。
続いてロゴの作成です。書道家の方にいくつかのパターンで“武蔵”の文字を揮毫してもらい、こちらもローカライゼーションチームの意見を聞いたうえで、はっきり“漢字”として認識しやすい書体に決めました。
そこからさらにアルファベットと組み合わせます。横書き・縦書きや赤色・紺色など、さまざまな色・組み合わせのパターンを検討し、“ラーメン屋っぽくならないように”という点も気にしつつ…(笑)最終的なロゴが完成しました。
完成したロゴはコチラです!!!
ちなみにチーム「MUSASHI」のユニフォームはスポンサー別に3種類。色はネイビーです。
――「MUSASHI」がこの6人に決まった理由を教えてください。
市川「とりあえず我々4人は確定で、あと2人どうしようかと。」
渡辺「ちょうど一緒に飯食ってたヤソを誘って、5人になって。」
市川「あと1人はけんちゃん(行弘さん)か瀧村君って話になったけど、どっちも友達だし、こっちじゃ決められない。『2人で決めて』って言ったら、ダイスロールで決めてました。」
渡辺「それで行弘になりました。」
市川「瀧村君から突然LINEが来て、『今からやるから』『何を?』『ダイスロールだよ』と。で、その30秒後に、『がんばって』って送られてきた(笑)」
――瀧村さんの入ったチームも津村健志さんや大礒正嗣さんたちがいて、強そうですよね。
市川「お互い頑張りたいと思います。」
――八十岡さんを誘ったときの反応は?
市川「『(早口で)まぁいいけど』で、終わり。」
覚前「いつも通り。」
――でも、それまで誰にも誘われてなかったんでしょうか?
渡辺「さすがにあったかもしれないけど、わかんないですね。」
市川「てるやがチームリミテッドのチームに誘ったときも、まあまあ周りから声はかかってたと思うんでね、そういうの言わないだけかもしれないですね。気軽に返事してるように見えるけど、実は入念に選んでるかもしれない。でも実際はわからない。」
渡辺「本当に誘われてなかったのかもしれないし。」
市川「ヤソを誘うのはけっこう畏れ多いからね。学園のアイドルなんで、『どうせ彼氏おるやろ』って思って誰も告白しない、みたいな(笑)」
――いいたとえですね(笑)八十岡さんはHareruya Prosのほうでドラフト合宿をしていますが、「こっちのドラフトではこうだったよ」といった意見交換があったりするのでしょうか?
市川「今までもよくやってたし。」
渡辺「近日中に会います。お互い意見交換しますけど、だいたい齟齬はないですね。」
――ちなみに、「MUSASHI」のチームリーダーは誰ですか?
市川「それはもう、ウチの山本が!」
山本「なぜか……。」
市川「いやいや、頼れるリーダーです。」
――リーダーはどういった仕事をするんですか?
山本「単にウィザーズとの連絡役としてメールとかするだけです。」
市川「でもやっぱり、写真撮影とかあったら先頭に出てもらわないとね!」
――そうですよね。それでは、プロツアーまでの練習頑張ってください!
Cygames受付に並んだ優勝トロフィーも3つになりました。
●新年の抱負
Team Cygamesにとって、この合宿が2017年最初の活動にあたるので、メンバーそれぞれに「新年の抱負」を書き初めしてもらいました。
皆さん、墨と筆を使って書くのは小学校の授業以来だとのことですが、思い切りよくスムーズに筆を運び、書き直しもなく一発で仕上げていました。
プロツアー『霊気紛争』は2月3日~5日開催です。会場からのレポート記事もお届けしていく予定ですので、どうぞお楽しみに!
山本賢太郎、市川ユウキ、渡辺雄也、覚前輝也、中村肇、中村さら、瀧村和幸、松本友樹、井上徹、行弘賢、玉田遼一、三原槙仁、石村信太朗、大礒正嗣、廣澤遊太、木原惇希、平見友徳、高尾翔太、菅谷裕信、松本郁弥