【PTAKH】決勝ラウンドレポート【Day3】
日曜日、現地時間の9時に決勝ラウンドが始まりました。
朝は会場に人が全然おらず、まるで無観客試合のようでしたが、徐々に観客が集まってきて中継画面に見入ったり、サイドイベントに参加したりしていました。
プロツアー会場のセッティングが変わり、決勝を行なうステージと観客席との間に薄い黒布が張ってあります。
黒布を透かして観客席からはステージが見えますが、向こうからはお客さんが見えないようになっています。
トップ8プレイヤーはゲストを招くことができ、トップ8プレイヤー専用のエリアに入って朝食と昼食をとることができますが、奥まった部屋ではなく解放された場所なので、普通に外からご飯を食べているところなどが見えます。
専用エリアでくつろぐ行弘さんと市川さん。
●準々決勝
渡辺雄也 VS Chris Fennell(白黒ゾンビ)
渡辺さんの準々決勝が最初に行なわれます。
1ゲーム目は相手の動きが悪く、渡辺さんが《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger(BFZ)》を素出しするまで終始圧倒して勝ち。
すると2ゲーム目に移る前に、もう1つのテーブルでやっている別の準々決勝の中継が始まります。その間、渡辺さんたちは特に何もすることがなく、手持ちぶさたな様子で待っています。
自分のペースでは試合をできないうえ、まぶしいスポットライトを浴び、1試合ごとに賞金額が大きく変わるというこの特殊な環境下で、平常心を保ってプレイする難しさは想像するに余りありますが、渡辺さんは終始よどみなく、リラックスしてプレイしているように見えました。
待つ間、席から立ち上がってもう一方の試合を見る渡辺さん。
行弘さんはステージから少し離れたところで市川さんと一緒にデッキを回しながら出番を待ちます。
2ゲーム目、渡辺さんはスピーディにライフを削られ、《ウラモグ》に《苦渋の破棄/Anguished Unmaking(SOI)》が刺さりいったんはピンチを迎えますが、相手がそこから攻撃を手控えたためゆっくりとした展開になり、またもや《ウラモグ》素出しで勝利。
このあと渡辺さんは3ゲーム目の前にお手洗いに立ち、行弘さんの隣を通り過ぎる際にひとこと「勝つよ」とだけ言っていきました。
そしてその通り、《コジレックの帰還/Kozilek’s Return(OGW)》を炸裂させて3-0でストレート勝ちしました。これで来季のブラチナレベル確定です!
なお、2ゲーム目で相手が攻撃を手控えたのは、「渡辺さんが墓地を改めたことによって《奔流の機械巨人/Torrential Gearhulk(KLD)》の存在を匂わせるブラフをしたから」という意見がニコニコ生放送で出ていましたが、実際どうだったのかを試合後にお聞きしたところ、「別にそういう意識はなく、ライブラリに残っているスペルの枚数などを確認して、何回霊気池を回すまでに引けば足りるかを計算していた」とのことです。
行弘賢 VS Eric Froehlich(ティムール霊気池)
続いて行弘さんも流れるようなビートダウンをたたみかけ、1ゲーム目はやや苦しんだものの《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger(BFZ)》を一度も引かれることなく軽快に3タテ。5年ぶりとなるプラチナレベルが確定しました。
トップ8入りした選手と関係者だけが食べられる、いわゆる「トップ8ランチ」。自分で選んで作れるタコスなど、いろいろなメニューがありました。
●準決勝
渡辺雄也 VS Martin Muller(ティムール霊気池)
準決勝は霊気池対決。相手のサイドボードが特殊なので「サイド後が鬼門」という戦前のコメントでした。
まずはメインボードによる1ゲーム目、相手の《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger(BFZ)》が3枚ともデッキから消えてしまい、渡辺さんの《ウラモグ》で勝利。
2ゲーム目は、渡辺さんがほぼ勝ちという盤面で、Mullerさんが《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》をトップデッキして《ウラモグ》をめくるという奇跡が起き、観客席から「うおー!」という歓声が湧き起こりました。しかし、冷静に《ウラモグ》を出し返して勝ちました。
サイド後の3ゲーム目は、Mullerさんが渡辺さんにとってきつい《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》をフル投入したビート型にしていなかったようで、サイドプラン的に与しやすく、《ウラモグ》が手札に3枚集合したものの間に合って、またも3-0でスムーズに勝ちとなりました。
行弘さんは1ゲーム目、今回のプロツアーで使われている枚数の合計が4枚(行弘さんだけ!)という《ホネツツキ/Bone Picker(AKH)》をすごい勢いで叩きつけ、“ホネツツキマスター”の名をナッシュビルの地に刻みます。
しかし2ゲーム目はダブルマリガン、3ゲーム目はマナフラッドで負けてしまい、4ゲーム目も相手が見事なブン回りを見せ、残念ながら〈MUSASHI〉による決勝対決という夢はついえました。
●決勝
もともと渡辺さんのデッキは、「あったまっているゾンビ」相手には相性が悪いという話でしたが、かつてここナッシュビルでグランプリを優勝したことのあるThompsonさんが、地の利もあってか黒単ゾンビの良さを存分に発揮する展開となりました。
1ゲーム目はマリガン後、土地さえ引ければ勝てる手札だったのですが後続の土地を引けず、今日初めての土がつきました。
2ゲーム目も相手が理想的な回りで追いつけませんでしたが、3ゲーム目は、相手の土地が詰まったすきをついて《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger(BFZ)》を即座にめくり、1本取り返すことに成功。
4ゲーム目は、序盤は順調な展開でしたが、マナフラッド気味のところに出された7/7の巨大ゾンビ2体に手を焼き、最後の一発逆転に賭けた《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》でも《ウラモグ》をめくることができず、1-3で敗北となりました。
余談ですが、Thompsonさんが渡辺さんに「Shadowverseってやってる?」と話しかけてきたそうです。渡辺さんが「僕のスポンサーが作ってるゲームだよ」と答えると、「知ってる、あれはすごくいいゲームだね! 俺かなりやってるよ」とのこと。
Took a while, but did it. pic.twitter.com/8k7EbcXFvM
— Gerry Thompson (@G3RRYT) April 5, 2017
Thompsonさんの「やっとマスターランクになれた」というツイート。
渡辺さんは決勝が終わった直後、勝てる目があったかどうかをほかの人たちと検討。2ゲーム目は《ならず者の精製屋/Rogue Refiner(AER)》でトークンを出して盤面を整理するのではなく、《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》を回していれば《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger(BFZ)》がめくれて勝っていましたが、それは結果論でしかないので、あのときのプレイとしてはあれで正しかったはずという話になりました。
行弘さんたちが「マジックはフルコンプリートすると目標がなくなるから、また次目指そう!」と声をかけると、「優勝してたらたぶん引退してたから、これでよかった」と、少し疲れは見えるものの笑顔を見せてくれた渡辺さんでした。
準優勝のトロフィーを持つ渡辺さん。大理石風の土台に、立体的なブレインズウォーカーマークの彫刻が載っています。見た目ほど重くはありませんでした。