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グランプリ・千葉2018レポート(前編)

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7月21日~22日、幕張メッセでグランプリ・千葉2018が開催されました。フォーマットは発売されたばかりの「基本セット2019」を使ったリミテッドです。
Team Cygamesの皆さんは3年ぶりに帰ってきた基本セットを武器にどんな戦いぶりを見せたのか、それぞれのインタビューで振り返ります。

※都合により1日目のみの取材となっています。ご了承ください。

 

 

 

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今回の参加人数は2471人。日本のグランプリはほかのアジアグランプリなどに比べて圧倒的に参加者が多いため、勝ち残るのは至難の業です。

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マジックの発売25周年を記念して、会場にマジックの歴史が書かれた年表が飾られ、お客さんも自由に書き込めるようになっていました。

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年表の中にこんな書き込みを発見!

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会場内の4か所に、開発部の有名人“マロー”ことマーク・ローズウォーターさん(の看板)が立っていて、ボタンを押すと英語と日本語でいろんなセリフをしゃべります。

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会場ではこれらのポスターのほか、Tシャツやプレイマットなどの25周年限定アイテムが販売されていましたが……

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すぐにほぼ全商品が売り切れになるほどの人気でした。(金曜にほとんどの種類が完売してしまったそうです)

 

 

 

 

●八十岡翔太の場合

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1日目戦績:8勝1敗

デッキ構築

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――今日はどうしてこの白黒デッキになりましたか?
八十岡「赤がゴミで、緑がゴミで、青がゴミでした。ホント白黒でしか組みようがなくて、しかも25枚くらいしか選択肢がなくて。」

――ではサイドで使えるカードとかも特になく?
八十岡「ないです。25の精鋭で戦うという。
基本的にサイドは、アーティファクトとかエンチェント見たときの《神聖の発動/Invoke the Divine(M19)》と、《悪運尽きた造反者/Doomed Dissenter(M19)》(死ぬと2/2ゾンビが出る2マナ1/1)しか使わないです。こっちはタフネス1が多い赤白みたいなデッキに当たったら入れようと思ってたんですけど、まぁ当たらなかったんで入れなかったですね。」

――このデッキの戦い方はどういう感じですか?
八十岡「3パターンくらい勝ち方があって、まずプランAは、《ヴァレロンの有印剣/Sigiled Sword of Valeron(M19)》を引く→勝ち。」

――どういうことですか?(笑)
八十岡「これ強いんですよ。《悪運尽きた造反者/Doomed Dissenter(M19)》、《組み直しの骸骨/Reassembling Skeleton(M19)》、《夜明けの司祭/Daybreak Chaplain(M19)》とか、2マナ圏はかなり強いんですけど、テンポがよくない。でも《ヴァレロンの有印剣》つけて、死んでも押し切って殴るとそれだけでけっこうすんなり有利になるんで。2マナ圏は装備しがいがあるみたいな。」

悪運尽きた造反者 組み直しの骸骨 ヴァレロンの有印剣

八十岡「プランBは……殴る(笑)。《ペガサスの駿馬/Pegasus Courser(M19)》(攻撃時にほかの攻撃クリーチャーに飛行を与える1/3飛行)は、基本的に地上の頭でっかちを飛ばすと強いんですよ。なので《双頭ゾンビ/Two-Headed Zombie(M19)》(4マナ4/2威迫)を飛ばして殴る。
プランCは、除去がけっこう多いので、ダラダラやってリソースで勝つ。」

――《光明の縛め/Luminous Bonds(M19)》で押さえつけてミニミニクリーチャーを並べて勝つみたいな試合、ありましたもんね!
八十岡「そうすね。《吸血鬼の君主/Vampire Sovereign(M19)》は場に出ると3点ライフ吸うんですけど、これを除去られても《死の円舞曲/Macabre Waltz(M19)》(墓地のクリーチャー2枚回収)で回収して、ライフを詰めていけるんです。」

練習について

――シールドではどういうデッキを組みたかったとかありますか?
八十岡「まぁシールドは基本的に殴るデッキが強いんで、白使いたかったですね。コモンで引きたかったのはさっきの《ペガサスの駿馬》と《暁の天使/Angel of the Dawn(M19)》と《星冠の雄鹿/Star-Crowned Stag》。その3種類が2枚ずつあれば、レアなくても勝つんで。そういう意味では、今日のプールはまあギリギリですね。」

ペガサスの駿馬 暁の天使 星冠の雄鹿

――けっこう練習しましたか?
八十岡「ドラフトよりシールドのほうが好きなんで、けっこうやりましたね。ドラフトは合宿だけですけど、シールドは20回くらいやりました。」
山本「え、ヤソ、シールド20回もやったの?」
渡辺「めちゃめちゃやってるじゃん。」
市川「やりすぎ(笑)。」
八十岡「俺MOリーグでは0-1ドロップするから(笑)。これは弱いと思ったら、パーンってドロップして次! って。」

――今日は8-1でしたが、勝因は何だと思いますか?
八十岡「まぁ特に……。普通に8-1でした。
あんま書くと心証悪いですけど、確定負けだったときに相手がミスって勝った試合があったんですよ。
3本目、相手のライフは4くらいまで詰めたけど相手の場に10/10警戒ができちゃって、1マナ0/3(《吸血鬼の新生子/Vampire Neonate(M19)》)に1点ずつ吸われてるみたいな状況だったのが、最後に《ヴァレロンの有印剣/Sigiled Sword of Valeron(M19)》引いて、横に並べてまくって勝ったみたいな感じだったんです。その終わったあとに相手が『出しておけばよかった~』って見せたのが、4マナ2/4の場に出したときにクリーチャーぶん回復するやつ(《ドワーフの僧侶/Dwarven Priest(M19)》)。そいつ出されてたら4点ゲインされてブロッカーも増えてたんで、けっこうきつかった。」

――何で出さなかったんですかね?
八十岡「もうちょっと待ちたかったみたいな? 向こうからしたら、1点クロックかけてるんで毎ターン1点ずつ削りながら10/10をチャンプブロックしてもらったほうが楽なんで。危なくなったら出そうって欲張ったのかなと思いますよ。」
覚前「おそらくヤソのブレイジングスピードにやられましたね。目に見えない圧がね。」

――目の前に八十岡さん座ってたらびびりますもんね。
渡辺「そこは有名税払ってるからね。」
八十岡「まぁ、練習した甲斐がありましたよ。」

――明日の目標は?
八十岡「5-1でトップ8ですね。」

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25周年記念に寄せて

――今回、公式のほうでもいろいろな人に質問していたんですが、マジック人生で1番の思い出は?
八十岡「生放送で質問されたときは、『プロツアーの優勝は?』って聞かれたんですけど、あれは1番ではなくて初のグランプリ優勝も1番ではなくて……って話で終わりました。ワールド・マジック・カップ優勝も1番ではないですね。1番って難しいんですよ。」

――じゃあ、TOP3をあげるとしたら?
八十岡「2009年のMagic Online Player of the Year 受賞したことですかね。」

――それって、八十岡さんしかなってないやつですよね?
八十岡「そうそう。開催されてこりゃダメだって廃止されたイベントで、1年しか存在してないんで、僕しか持ってないです。」

――それって、世界中の人がMOでポイントレースに参加してたんですか?
八十岡「いや、途中からは中国の孫博(ボウ・シュン)さんって人と1対1の戦いでした。MOやるとポイントが勝手に加算されて、1週間に1度更新されたポイントがWEBで公開されて、それが合計年間1位だと受賞できる仕組みだったんですよ。ラスト1か月前くらいではその人と100点くらい差が開いてて、100点って普通の人が1年間で稼ぐくらいのポイントなんですけど、その100点を1か月でまくられて、最後は2点差でこっちが勝ったっていう。」

――へぇー! それはずっと見てた方とか興奮したでしょうね!
八十岡「けっこう見てくれてた方がいて、MO上で『応援してるよ』ってコメントもらったり、トスってくれたりする人いましたね。向こうは2~3人の交代制で24時間回してたところを、僕は1人で20時間回す、みたいな感じだったんで。
あと2つ目は、殿堂入り。もともと、プロツアーを個人で勝ってなくて、勝ったら投票するよって言われてたときにプロツアー『タルキール龍紀伝』で準優勝して、そしたらみんな票を入れてくれて殿堂なれたんで。殿堂は1つの目標でもあったんで、嬉しかったですね。
3つ目は2012年のプレイヤー選手権(現在の世界選手権)で、決勝でナベ相手に微妙にミスって負けたやつですね。」
覚前「ここでもまた渡辺雄也ですかー。」
八十岡「微妙な選択ミスが裏目って負けた。あれがなければ勝ってたので。」

そこに市川さんが「あれってなんでああなったんだっけ?」という質問を差しはさんだのがきっかけとなり、当時の戦いの話が大いに盛り上がりました。もう6年も前の大会ですが、そのとき盤面に出ていたカードやゲームの展開、その時の手札内容などを、皆さんが昨日のことのように詳しく覚えていて驚きです。

 

 

 

●渡辺雄也の場合

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1日目戦績:7勝2敗

デッキ構築

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――どうしてこのデッキになりましたか?
渡辺「メインは青黒タッチ白ですけど、ウルトラ組み間違えました……。
僕のプール、珍しいことに3枚あった2色ランドが(《曲がりくねる川/Meandering River(M19)》《水没した骨塚/Submerged Boneyard(M19)》《放棄された聖域/Forsaken Sanctuary(M19)》)、全部青黒白に固まってたんです。」

曲がりくねる川 水没した骨塚 放棄された聖域

渡辺「んで、赤と緑を確認したらそこまで強いカードがなかったんで、じゃあ青黒白でどう組もうか、構築時間中ずっと考えてて……白に《暴君への敵対者、アジャニ/Ajani, Adversary of Tyrants(M19)》があってものすごく使いたかったんですけど、ほかの白がものすごく弱くて微妙かなって思って、その段階で構築時間中には白の選択肢を取れなくなって、最終的に青黒になりました。
《悠長な再構築/Patient Rebuilding(M19)》も強いし、黒もそこそこクリーチャーが強かったのでコントロール気味なデッキを組んでみたんです。けど、この環境って基本的に受けるより攻めるほうが強いんで、構築時間が終わったあとに黒白を組み直してみたら、けっこう強いなって。」

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サイドの黒白パターン(先手用)

渡辺「これが、自分が1ゲーム目負けて2ゲーム目を先手でできるときのサイドプランとして、白黒ベースで用意したものです。こっちのパターンだと、白のクリーチャーのスペックは弱いんですけど、黒のクリーチャーがけっこう太いから《アジャニ》をうまく使えていいなって。」

 

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サイドの青白パターン(後手用)

渡辺「逆に後手の場合はこれだと相手に攻められて弱いんで、青白ベースで受けられるようなデッキを作りました。2マナの《本質の散乱/Essence Scatter(M19)》は、先手だとあんまり強くないんですが、後手だと相手の3マナ4マナのカードを2マナでカウンターできるんで、マナ分得するんです。なので3本目で後手を取る展開のときは、この青白で。
エスパー(青黒白)の中でぐるぐるしたんですけど、メインは組み間違えちゃって。先手でも後手でもいけるように組んだつもりだったんですけど、中途半端になってしまって……。まぁメインはしょうがないので、2本目先手のときは白黒、3本目後手のときは青白とサイドを使い分けてました。

今日の結果

――渡辺さんは7-2なんですよね。
渡辺「そうです。ちなみに負けた2試合は、ラウンド4が《暴君への敵対者、アジャニ/Ajani, Adversary of Tyrants(M19)》に負けて、ラウンド7は《工匠の達人、テゼレット/Tezzeret, Artifice Master(M19)》に負けて、この環境はプレインズウォーカーが強いんだなぁって改めて理解しました(笑)。」

――明日はドラフトなんで、2敗のままで耐えて残るのが渡辺雄也なのかなって期待を持ってたりしてるんですけど……。
渡辺「ははは、まぁでもシールドよりドラフトのほうが自分の中で下地ができてるんで、自信ありますね。なんで、シールドをちゃんと切り抜けられるか少し不安で……少しは練習したんですけど、そもそもプールとかもあるし、けっこう怖かったんですけどまあまあいいプールもらえたんで。
いいレアもらえたんで8-1したかったんですけど、かみ合いが悪かったのとメイン組み間違えたのもあって7-2で負けちゃったんで……。それはしょうがないので、明日は切り替えて自信のあるドラフトで頑張ろうかなって。
まぁサイゲ合宿のドラフトでもけっこう成績よくて、環境つかんでる自信あるんで。」

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25周年記念に寄せて

――25周年のマジックの歴史の中で、渡辺さんの一番の思い出は?
渡辺「僕の1番は、(2012年の)プレイヤー選手権で優勝したことですね。プロツアー級のタイトルで一番初めに取ったタイトルだったのと、最終的に世界王者という立場になったので一番思い出深いですね。
あとすごい僅差で、人生を変えるきっかけになった2007年のグランプリ・京都もあるんですけど。この2つが自分の中ですごく大きいですね。」

 

 

 

●グランプリ・千葉2018 2日目結果

 

八十岡
八十岡翔太
第1ドラフト:1-2
第2ドラフト:3-0
合計:12勝3敗(最終順位:15位)

 

 

渡辺

 

渡辺雄也
第1ドラフト:3-0
第2ドラフト:2-1
合計:12勝3敗(最終順位:18位)

 

 

 

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