【PT25A】いつもより豪華なプロツアー前日【Day0】
8月3~5日、アメリカのミネアポリスでマジック25周年記念プロツアーが開催されます。
今回は特別に、3人がスタンダード・モダン・レガシーの各フォーマットを分担して戦うチーム構築戦で、我らが〈MUSASHI〉は以下の2チームに分かれて出場します。
今回のプロツアーはドラフトラウンドがないため、2日合わせて14回戦といつもより短めですし、「1日目で何勝しないと2日目に残れない」といった「足切り」もない、異例のプロツアーです。
Team Cygamesのメンバーのうち、市川さん以外の4人は、先週同じ会場で行なわれたグランプリ・ミネアポリスに出場し、そのまま滞在していました。プロツアー前日に、市川さんがみんなに頼まれた追加のカードなどを持って到着。集合したところで取材を行ないました。
ここミネアポリスはアメリカ大陸の中央右上寄りに位置する都市で、大学や大きなショッピングモールがあります。酷暑の日本と異なりとても涼しく、朝晩は寒いほど。写真はプロツアー会場隣の公園にある、きれいな遊歩道です。
ミネアポリスの冬は大変寒いので、ビルの間をつなぐ渡り廊下があちこちに設置されているのが名物だそうです。これがあるので、1階よりも2階のほうがお店としていい立地だとか。
●プロツアー前の1週間
山本さん、覚前さん、渡辺さん、八十岡さんに加え、行弘賢さん、原根健太さんの計6人は、先週の金曜日からミネアポリスにいて、大きい家で共同生活しながらプロツアーに向けて練習していました。食事は、ピザや中華のデリバリーや外食ほか、近所のスーパーの総菜がおいしかったのでそれを買ってきたりしていたそうです。
余談ですが、その家の2階をたまたま借りていたのがプロツアーチャンプのジェリー・トンプソンさんだったとか。
――グランプリ・ミネアポリスのあとは、皆さんでプロツアー向けの練習を一緒にやってたんですか?
八十岡「一緒にはやってないすね。」
渡辺「フォーマットが違うんで、同じ空間でMOやってた感じです。」
市川「まあそうなるよね。」
渡辺「後ろでプレイを見てああだこうだ言うことはあったんですけど、デッキの細部について言うとかは、同じフォーマットをやってる人以外ではなかったです。」
――でもスタンダード担当組は、相談するところがありますよね。
渡辺「僕と行弘、原根君の3人はすごいディスカッションしました。ほかの2つのフォーマットに比べて開拓が必要なフォーマットなんで、いろいろ構築とか話し合いました。2人だけだとけっこう行き詰まりやすいんですけど、3人いるとアイディアがいろいろ出てくるのも大きかったですね。」
●デッキについて
――そもそも『基本セット2019』以降発売、参考にする大会ってあまりなかったですが、どういうところを情報源にしていたんですか?
渡辺「MOで1回PTQがあったのと、StarCityOpenのチーム構築トーナメントが2回くらいあって、それは参考にしましたけど、それくらいしか見るところなかったですね。」
――スタン組としては、どういうデッキが有力だと考えていますか?
渡辺「今はデッキがほぼ5つしかない感じですね。
まず前の環境からいる赤黒アグロ、次が緑単……新しく《蔦草牝馬/Vine Mare(M19)》とか《茨の副官/Thorn Lieutenant(M19)》が入ったアーキタイプ。3つ目が《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager(M19)》を使ったグリクシス。いろんな形があるんですけど、基本的にはミッドレンジですね。4つ目も、前の環境からいた青系のコントロール……青白とかエスパーとか。これはあまり新しいカードは加わってないですけど、前の環境から有力なデッキだったので。最後が新しくできた青単ストームで、これは《練達飛行機械職人、サイ/Sai, Master Thopterist(M19)》によってすごく強化されたデッキです。」
――レガシー組も、あまり相談してどうこうという感じではなかったですか?
山本「あんまり相談してないです。」
――山本さんも八十岡さんも、前からデッキ決まってたんですか?
山本「そうです。禁止改定前からいけそうだなって思ってたんで、ずっと一本に絞って練習してました。」
八十岡「もともとデッキ2つ持ってきてて、どっちにしようかって感じだったんですけど、勝率まあまあよかったほうになりました。」
――禁止改定の影響はありましたか?
山本「けっこう、当たるデッキの種類が爆発的に増えたなと。禁止改定前は3回に1回はグリクシスデルバーに当たる感覚だったんですけど、アントとかランドとかリアニメートとか、いろんな種類のデッキに当たるようになって、その分サイドボードを詰める作業が難しかったですね。」
――そうすると、当たり運要素が強いですか?
山本「まあそうですね、でもレガシーは圧倒的に当たり運要素が大きいモダンに比べたらそんなに種類は多くないので、振れ幅の度合いで言ったらモダン>レガシー>スタンダードって感じです。」
――その大変なモダン組ですが……。
市川「僕は日本でMOを、てるや(覚前さん)はアメリカでMOを(笑)。僕はてるやに使ってるリスト教えてもらったり、『俺はこういうの回してるよ』って進捗を伝えたりしてはいましたけど、基本的には個人ベースでした。」
八十岡「近況報告だよね。」
渡辺「僕が見てる限り、てるやはずっと同じデッキしか回してなかった。」
市川「俺も最後の1週間は同じデッキしか回してないけどね。」
覚前「日本にいるときから、プロツアーに向けて75枚くらい固まった状態で回してました。結局モダンって当たり運だし、デッキ選択さえ間違えなければ、1つのデッキのプレイスキルを高めたほうが、勝率上がるんじゃないかなって思ってて。悪い選択ではないと今は思ってます。」
――市川さんのほうは?
市川「モダンやることになって、最初はいろんなデッキを7、8個くらい回したんですけど、どれもしっくり来なくて。その中で、モダンに詳しい人見(将亮)君に相談して、教えてもらったデッキを2週間くらい前から回し始めたんです。最初のリストだとマリガンがすごい多かったので、爆発力はあるからあとはいかに安定性を上げるかを中心にデッキを調整しました。」
渡辺「新しいデッキだから、回してて楽しいってのもあるよね。」
市川「ブン回りもある一方で細かいシナジーも多くて、回してて自分の中で発見が多くてすごい楽しいですね。3日間くらいで80マッチくらいやって、これでいこうって感じになりました。でもその時には同系とか全然いない状態だったのが、今ではけっこうメジャーなデッキになりつつあって、特にここ数日はMOでもメタられる側になってきているんで、それがリアルのプロツアーにどれだけ反映されているかが問題ですね。直前でけっこう感覚をたよりに調整した部分が吉と出るか凶と出るか、楽しみではあります。」
――MOとリアルのメタゲームがどれくらい近いのか……。
市川「ただホロウワンのときも、プロツアー前にMOでめちゃくちゃ当たって、これはチームで調整して持ち込まれるはずって話してたけど、使用者6人のうち4人が〈MUSASHI〉だったわけで。」
渡辺「あのとき僕らはコピーデッキを持ってきただけだったのに、僕らのオリジナルデッキだと思われてたからね。」
市川「だからMOのメタゲームがリアルにどれくらい反映されるかっていうのは、本当に難しくてわからない。完全にこのままではないだろうなって楽観視して、突撃しようって気持ちなんですけど。」
八十岡「蓋を開けてみないとわかんないからね。」
渡辺「ただホロウワンの時とちょっと違う点があって、チーム構築なんで6人のチームでもみんなで練習はできなくて、個人ベースでの練習になりやすい。そうするとMOでやるしかないから、MOの信頼性はより高くなってるかもしれない。」
●今回の目標
今シーズンは、プロポイントのシステムが変わってややわかりにくくなっています。
今までは、1年の最後に獲得プロポイントを合計し、それに応じたプロレベルを翌年1年間得られるというものでしたが、今は四半期ごとにプロポイントを計算し直し、過去1年を過ぎたポイントは消滅していくような形になっています。
シーズン末期に得たポイントの価値が下がららないようにという意図も込められた新システムですが、管理が難しくわかりにくいという声がプレイヤーから多く出ており、またいずれ変更されるかもしれません。
そのプロポイントの現状なども踏まえて、今回のプロツアーの目標を皆さんに聞いてみました。
八十岡「今回はやっぱりトップ4入りですね。チームシリーズもあるし。」
――トップ4に入れれば、巻き返してチームシリーズ決勝に進めそうですね。
八十岡「今回リミテッドがないから、あんまり何を目指して何かする、みたいなのじゃなくて、ただ上を目指すだけ。レガシーは自分に一番合ったデッキを持ってくるってだけだし。」
――山本さんは先日のグランプリでめでたくゴールドレベルになったんですよね。そうすると今回のプロツアーの目標ってどうなりますか?
山本「ただ勝つことですね。何勝したい、とかはなくて、勝てるだけ勝ちたい。」
覚前「僕も、1つでも多く勝ちたいです。」
渡辺「ここで勝っておくとてるやは全然違いますね。」
市川「僕は9勝5敗でゴールドです。ただ、いろいろ計算したらここでゴールドになる意味はそんなになくて、単にグランプリのbyeが3つになることだけなんですけど、やっぱり3byeあればグランプリの成績も上げられるので。気持ち的には、俺が7-0してチームが4-3くらいを目標に(笑)。チームを頼らない!」
行弘「俺らなめられてますよ、山本さん!」
八十岡「個人で9-5すれば実質ゴールド! って(笑)。」
渡辺「僕は一応8勝6敗でプラチナなんで、それが目標といえば目標ではありますけど、それは消極的な目標になっちゃうので。せっかくなんで、俺とヤソが世界選手権出場を確定させられるくらい勝ちたいです。(プロポイントが)何点必要か全然わかんないですけど。」
市川「今ナベとヤソはどっちが上なの?」
ナベ「ヤソのほうが上。」
市川「ヤソとけんちゃん(行弘さん)は何点差?」
八十岡「けっこうあるよ。10点くらい。」
市川「じゃあけんちゃんはもう油断してるなー(笑)。」
渡辺「そっちのチームメイトは2人ともゴールしたよね、1人(行弘さん)はワールドほぼ確定、1人(山本さん)はゴールド確定。」
市川「それが不安だよねー(笑)。まあ心配はしてないけどね。」
それぞれ軽口をたたきあいながらも、チームメイトへの信頼感がうかがえました。さあ、明日からいよいよ本番です!
普段、プロツアーの前日は受付が行なわれるだけですが、今回は特別なプロツアーということで、ピザやドリンクが無料でふるまわれました。
派手な5色に彩られた甘ーいカップケーキもあります。
アメリカらしく、ポップコーンも盛り放題。
ステージ前ではクイズショーが開催されていました。「《稲妻のらせん》をトップデッキしてプロツアー優勝したのは誰?」といった簡単なクイズに答えるだけで、100ドルもするプレイマットが投げ渡される大盤振る舞い。
クイズで場をあっためてから、目玉の「The Silver Showcase」の中継が始まりました。
ちなみにTeam Cygamesの皆さんは「ちらっと見たけど、ロチェスターはすごく時間がかかるし、カードが古くてなじみがなく、見世物として面白くない」という感想でした。
長々とした口上でプレイヤーを呼び込みます。最後にスポットライトを浴びて登場するのは、「ジョニーマジック」ことジョン・フィンケル。
前日の晩ご飯は景気づけにシュラスコで肉づくし!
チームB:行弘(スタンダード)・市川(モダン)・山本(レガシー)