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【2019MC1】変革の時代に挑む ~前日インタビュー~【Day0】

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2019年の幕開けは、マジック:ザ・ギャザリング (マジック) とプロツアーの大変革から始まった。

1993年の発売から26年の歴史を持つトレーディング・カードゲームであるマジックは、ファンタジーをベースにした重厚な世界観や次々と発表される斬新なゲームギミックだけでなく、初心者がわかりやすくなるようなルール改正や、ユーザーのゲーム体験を盛り上げるためのイベント施策など、様々な施策によって今日まで長く愛されるようになった。

そんなマジックを開発するアメリカのウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が、昨今のeスポーツブームの流れに乗る形で、2018年末から2019年の頭にかけていくつか大きな制度変更の発表 (参照:新時代へ――マジックとeスポーツ) を行ったのである。

その制度変更のうち代表的なのは、これまで年4回開催されていた世界大会 (プロツアー) と、マジックの持つ魅力の一つでもあるプロプレイヤー制度 (プロプレイヤーズ・クラブ) に関するもの。

世界大会の名称は「プロツアー」から「ミシックチャンピオンシップ」へと変わり、賞金総額は50万ドルにまで増額された一方で、これまでシーズンごとに獲得したプロポイントによってランク付けされていたプロプレイヤーたちは、最上位の32名のみが選出されてマジック・プロリーグ (MPL)参加者として75000ドルの年俸とともに、ウィザーズ社との契約選手となった。

プロツアーの歴史は23年。プロプレイヤーズ・クラブの歴史も14年にものぼる。その歴史がこの2019年を契機に一気に塗り替えられ、マジックが新たな一歩を踏み出そうとしているのだ。

そう、それはまさしく「新時代」

そしてそんな時代の最中にあって、変化の荒波の最前線で戦い続けるマジックの日本人トッププロチームがいた。

それこそが。

Team Cygames。

 

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渡辺 雄也八十岡 翔太の2人は全世界に32人しかいないMPLのメンバーに選出されているし、山本 賢太郎市川 ユウキ覚前 輝也も確かな実績を持つトッププレイヤーだ。

彼ら5名は、2月22日~24日に開催される最初のミシックチャンピオンシップに参加するため、アメリカはオハイオ州クリーブランドに集っている。

大会形式はプロツアーと同様、スタンダード10回戦+ブースタードラフト6回戦の混合フォーマット。

激動の時代の最中にあって、彼ら5人は何を考え、そしてどのようにミシックチャンピオンシップを戦い抜くのか。

今回は3日間にわたって、その詳細なレポートをお届けする予定だ。

さて早速だが、開催前日にインタビューを行ったので、以下ではその内容を掲載していく。

 

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※右から2番目はMPL選手であり、プロツアー・チームシリーズにおいてTeam Cygamesメンバー5人とともに「Musashi」のメンバーでもある行弘選手。Team Cygamesの八十岡選手は、飛行機の到着時間の関係で夕食時のインタビューには同席できなかった。

 

 

●MTG Arenaがプロツアー調整に与えた影響について

上記のような大変革の背景には、オンラインでマジックが楽しめる「MTG Arena」(以下アリーナ) の正式稼働があることは疑いない。

迫力のあるサウンドに美麗なエフェクト、そして何よりテンポの良いスムーズなインターフェース。アリーナは従来のオンラインマジックの定番ソフトだった「Magic Online」(以下MO) から幾世紀分も時が経過したかのような圧倒的な進化ぶりで、既に多くのマジックプレイヤーたちに人気を博している現状がある。

その現状は、トッププレイヤーにどのような影響を与えているのか。

――「今回はアリーナがオープンβになり、多くの人に受け入れられた状態では初めてのプロツアー、もとい『ミシックチャンピオンシップ』になると思うんですが、アリーナが皆さんのプロツアー調整に与えた影響は実際何かあったんでしょうか?」

市川「いや……あんまないけどね。ていうか競技プレイヤーの人口が移っただけじゃない?アリーナに。しっかりした対戦をしようと思ったら、いま強い人はアリーナにいるからね。」

渡辺「僕は『調整するのがかなり面倒になったな』というイメージですね。アリーナはMythic (アリーナ内の最高ランク) にならないと調整にならないので……。」

市川「Diamond (アリーナ内の2番目のランク) くらいでも結構強いよ?」

渡辺「そうだね、最低Diamondかな。でもそこまでランクを上げる作業をまずやりたくないし、かといってMOは人がいなくて過疎ってるし。調整するハードルは上がったなーと。」

山本「俺はアリーナはMOに比べてやれるゲームの数が違いすぎるから、単純にデータが集まりやすくなったなと思うね。イメージだとMOで1マッチやってる間にアリーナだと3マッチくらいできるし。」

渡辺「そんなに変わる?w」

市川「変わる変わる変わる。ちなみにタイムワープ (《運命のきずな/Nexus of Fate(M19)》) 使ってると、アリーナだとすぐ『爆発』する (※相手が投了した際にアバターのアイコンが弾け飛ぶ様子を指して) から。MOみたいに持ち時間の問題がないからアリーナは決まったらすぐ爆発するんだけど、MOは全然爆発しない」

――「なるほど。MOはほとんどやらなくなった感じですか?」

市川「僕はほとんどやってないですね。」

渡辺「僕は逆にずっとMOばかりやってました。」

覚前「僕もMOメインだけど、これからはアリーナメインでやっていくと思う。正直MOはもう利点がないし(笑) アリーナだと勝ち続ければついでにアリーナ側のミシックチャンピオンシップに出られる特典があるけどMOはそういうのがないから、それだとアリーナで調整した方がいいなって。」

市川「調整ついでに走ってたら良いことあるかもしれないからね。僕も先週くらいまでは25位くらいだったし。今は負けて200位くらいまで落ちたけど。連勝ボーナスみたいなのがあるんだと思う。連勝が大事。」

 

 

● スタンダードの調整の手法と『ラヴニカの献身』入りのスタンダードについて

――「前回のプロツアーの際は『データ重視の調整』に変えた点を強調していましたが、前回のプロツアーから調整の手法で変わった点は何かありますか?」

市川「人数が増えたくらい?データをとって、共有して……っていうやり方の部分は変わってないね。」

渡辺「前回と一番大きく違う点は、全員で直接会っての調整がなかったことかな。たとえば僕とやまけんは情報共有はしてたけど、『一緒に調整をした』って感じではあまりないかも。今回、デッキも全員バラバラだしね。」

市川「明確に優れたデッキっていうのがない環境だからね。前回は明らかにセレズニアの勝率だけ7割くらいあってみんな納得したけど、今回は突出したスコアがなくて、そうなると各々好きなデッキ使うかー、ってなるよね。寄り道もしたけど、どれも勝率があまり変わらなかった。」

渡辺「寄り道をした人はすべからく感触が悪かったんだよね。モダンに近くて、『そのデッキに精通してる人じゃないと回せない』みたいなデッキが多かった。デッキの種類が多種多様で、どれもデッキパワーは似たり寄ったりで、しかもどれもプレイスキルを要求してくるな、っていうイメージ。」

山本「そう考えると『ラヴニカの献身』ってカードパワーめちゃめちゃ高かったよね。スタンダードからモダンになったってどんだけ(笑)。」

市川「高いね。コモンアンコが特に高い。《プテラマンダー/Pteramander(RNA)》とか《舞台照らし/Light Up the Stage(RNA)》とか。」

Pteramander Light Up the Stage

 

渡辺「軽いところがめちゃくちゃ強化されたね。」

――「ということは、全部のデッキが強化された感じなんですね。そうなると確かにデッキ選択が難しそうです。メタを読んで、みたいな感じでしょうか?」

市川「いや、今回は『このデッキがメタ的に強い』っていう選び方をしてる人はこのチームに一人もいない気がする。『このデッキが使いたいから』ってデッキを決めて、その後で『こういうメタゲームだといいな』っていう自分に有利なメタを後付けで想像する感じ。『俺はこのデッキを使うんだけどなぜかというとAというデッキが多いからだ』って言う人はかなり建前上の理由だなと思う。」

渡辺「確かにいないと思う(笑)。 だって環境ぐちゃぐちゃだって言っててチーム内でも意見が割れてるのに『このデッキが多い』っていうのは、まあある程度多いくらいはあるかもだけど、はたして20%を超えるデッキがいるのかというと、怪しいと思う。てるてるなんて前日の段階で2回デッキ乗り換えてるしね。」

市川「最終的に『MOで3-2以上したらこれで出るわ』って言ってたし。謎のボーダー(笑)。」

覚前「チームの中でも普段はデッキ選択が早い方だと思うんだけど、今回はこれ!っていうデッキがなさすぎて変えまくった結果そんな感じになりました。ちなみにもしもう一日あったらまたデッキが変わる自信がある(笑)。」

渡辺「なんていうか、すごく『良すぎる』環境だね。プレイテストチームが仕事してるなー、っていう。ただもしかしたら今回のミシックチャンピオンシップですごい環境が固まる可能性もあるけど。平坦だと思ってたけど『実は青単が突出してたよねー』とか『実はスゥルタイがやっぱり最強だったよね』ってなるかもだし。」

――「市川さんとかは前週のグランプリにも出場されてましたけど、そちらでもやっぱりたくさんのデッキがいたんでしょうか?」

市川「グランプリではトップ32まで見たら青単とスゥルタイばっかりだったけど、プロツアーはまた別だしね。」

――「構築合宿も兼ねてということでしたが、合宿の感想としてはいかがでしたか?」

市川「楽しかったですよ!あとドラフトも毎日やれたのが良かったですね。このタイミングでドラフト忘れてるかもって不安だったんで。」

覚前「ていうか今回Cygamesのドラフト合宿参加してないから何もわからないんだけど!」

――「Team Cygames『ラヴニカの献身』ドラフト合宿レポートを読んでください(笑) それだと覚前さんは今回はどうやって練習されたんですか?」

覚前「友達づてで30数人くらいの関西のドラフト合宿に混ぜてもらって。みんな上手くてすごく練習になりました。ちなみに3回ドラフトやって3-6でした(笑)。」

市川「えっ、レベル高い!」

 

 

●プロツアーとプロプレイヤーズ・クラブの制度変更について

――「最近の様々な発表を受けて、マジックやプロ活動に対する姿勢が変わったりしましたか?」

渡辺「僕をはじめとしてMPLメンバーは、特にモチベーションが下がったりする要素がないですね。そもそも得をする発表しかされてないので。」

市川「僕は『全部ちゃんと決まってから発表しろ』とは思いましたね。『こういう風にしようと思ってるんだよねー』って発表して、反発が来ると『やっぱり撤回しまーす』っていうパターンが多いから。なので全部の発表をしてくれるまでは一喜一憂しないことにしました。全部決まるまでは待つ!。」

――「じゃあ基本的には今まで通りと。」

市川「まあそうだね。一応アリーナがプロマジックにつながるようになったこともあって、これからはアリーナベースでやってこうかなーとは思ってるけど、結局それってソフトウェアが変わるだけだから。今までと基本的には変わらないよね。」

覚前「僕は少しモチベダウンですね……ゴールドレベルくらいだと今後厳しくなるわけだし。せっかく今期プロポイント結構取れててチャンスなのに、MPLとは隔離されて自分たちの待遇は下がることが確定されるわけじゃないですか。ちょっとなー、と思いますね。」

渡辺「確かに、今期余裕でプラチナのペースだよね。」

市川「こういうのは全部タイミングだよねー。それでいうと俺は今シルバーに落ちたタイミングだから何も関係がない(笑) MPL以外全部一緒だし。」

覚前「あと海外GPに行く意味がなくなっちゃったのもマイナスですね。海外GP回ってプロポイント稼ぎつつプロとして活躍するっていうのでやってきたのに、今のシステムだとグランプリに出る意味がなくなっちゃったから。」

渡辺「でっかいPTQみたいなものだよね。3敗に価値があったものが2敗以上しか価値がなくなったから、ハードルが上がったよね。」

山本「俺は逆にめちゃめちゃモチベーション上がったけどね。今までのプラチナって言うても年収的にはそんなに……っていうくらいだったけど、今回ゴールド以下への待遇をカットして上の方に寄せたっていうのは、すごく夢があっていいなって思います。今までのプロってどこまでいっても兼業でしかやれなかったけど、今は32人に入れば専業って胸を張って言えるくらいの待遇なんで。そういう意味で英断だなと思いましたね。」

市川「個人的にもマジックっていうゲームめちゃめちゃ面白いと思ってるし流行って欲しいと思ってるから、頑張って欲しいね。」

 

 

●今回のミシックチャンピオンシップにおける目標について

渡辺
僕は5敗ラインですね。世界選手権に向けたミシックポイントは欲しいけど何敗でどれくらいとか把握していないので、とりあえずそれくらいかな。あとチームシリーズのためのプロポイントは必要なので、それに貢献できるくらいってことで。
覚前
今回は正直自信がないんで、6敗以上はしたい。個人的な目標として、次のプロツアーのあたりでプラチナのポイント確保してたいんで。
山本
僕は優勝ですよ!

一同「おぉ!」
渡辺「あのやまけんが、ついにやる気に……。」
山本「……グランプリの (ぼそっ
市川「オィ!
渡辺「初日落ちしてからの併催グランプリ出場プラン(笑)。」
山本「さすがにグランプリは勝てる。」

 

Staff
それでは最後に市川さん、お願いします!
市川
優勝します!……プロツアーで!僕にしては自信があるプロツアーなので、あとは波を待ちます!

マジックを取り巻く様々な激動の渦中で各人様々な思いはありつつも、「ゲームを楽しみ、そして勝つ」という基本姿勢は変わらずリラックスした姿が見られたように思う。

はたして彼らはこのクリーブランドの地でトロフィーを掲げることができるのか。Day1以降のレポートに続く!
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夕食後Clevelandの街を歩くメンバーたち

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宿泊先のホテルはショッピングモールが入っててとても綺麗

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