【2019MC1】八十岡 翔太・覚前 輝也のドラフト【Day1】
初日の開幕3回戦は『ラヴニカの献身』3パックを用いたブースタードラフト。
ここでブースタードラフトという競技における基本的な考え方としては、カードの出方や各人のピックの性向によってパック内容に偏りが生まれる結果、ある時点で卓に座った8人それぞれに「やるべき2色の組み合わせ=ポジション」が生まれるので、そのポジション通りにピックできると強力なデッキができやすい、というのがある。
ただ本当にそれだけなら話は簡単で、問題なのは白青黒赤緑の5色の中でも環境によって「強い色」と「弱い色」が存在することだ。
ポジション通りに作った弱い2色のデッキと、ポジションに逆らってできた強い2色のデッキでは、後者が勝つ場合も往々にしてある。そのため、環境をやり込んだプレイヤー同士でドラフトする場合は、やりたい色でできるデッキとポジションによってできるデッキ、それぞれの出力の最大値のバランスを見極めながらピックすることが求められる。
そしてミシックチャンピオンシップとは、そうした「環境をやり込んだプレイヤー」しかいないフィールドだ。
Team Cygames『ラヴニカの献身』ドラフト合宿レポートを読めばわかるように、この環境は「黒が強く、緑が弱い」というのが合宿参加者の共通認識となっている。だが、海外のプロツアー参加者たちははたして同じ認識を持っているのか。もし持っているとすれば、今度はそれに対応した上位戦略が必要となる。
「競技レベル:プロ」というハイクラスのブースタードラフトでは、タイムカウントもある中で単に自分が選ぶカードを決めるというだけでなく、そうした要素をも考えながらピックを進める必要があるのだ。
そんな中、トッププレイヤーであるTeam Cygamesの5人はどのような考えでピックをし、そして3回戦の対戦に臨んだのか。
まずは八十岡 翔太と覚前 輝也の2人に、初日のブースタードラフトを振り返ってもらった。
■ 八十岡 翔太 白黒 2勝1敗
ヤバイ。流石におかしい pic.twitter.com/MywCTwBPMS
— ヤソ (@yaya3_) 2019年2月22日
八十岡「1パック目の初手は《冷気をもたらす者/Chillbringer(RNA)》と《無慈悲な司教/Pitiless Pontiff(RNA)》との2択だったんだよね。で、この環境は基本的には白黒か多色のデッキをやりたいと思ってたんだけど、多色になったり最悪白黒でもタッチ青にできると思って安定の《冷気をもたらす者》をピックしました。」
八十岡「そうしたら2手目《欲深いスラル/Grasping Thrull(RNA)》、3手目《屈辱/Mortify(RNA)》でほぼ白黒かなーという路線で固まって、あと初手のパックで《思考崩壊/Thought Collapse(RNA)》と《公判への移送/Bring to Trial(RNA)》があって『どっちか一周するかなー』と思ってたけど後者が返ってきたから、まあ上2人くらいは白黒やってなさそうだな、と思いましたね。」
八十岡「ただ《無慈悲な司教》を流したのと《欲深いスラル》のところでも《傲慢な支配者/Imperious Oligarch(RNA)》を流したりした結果下家も白黒になってて、2パック目の流れは終わってたね。それでも3パック目で初手《聖堂の鐘憑き/Basilica Bell-Haunt(RNA)》から2手目に上家の (覚前) 輝也から《騒乱の落とし子/Spawn of Mayhem(RNA)》が流れてきて、その後も流れが良くてさすがに空いてるなと。最終的には23枚ぴったりカードが取れた感じでした。」
Pick
Deck(平地5、沼8)
八十岡「デッキは強かったね。白黒3人並びの一番上で、上3人は白黒やってなかったから。初戦のバニラビート+《拘引者の忠告/Arrester’s Admonition(RNA)》デッキには相性良かったけど2本目マナフラ3本目マナスクで落として、2回戦目のPVは5キルと6キルとかで瞬殺して、3回戦目の下下家の白黒はさすがにこっちが上家側だけあって相手が《黄昏の豹/Twilight Panther(RNA)》とか同型に弱いカードばかり出してくる中でこっちだけ《聖堂の鐘憑き》《欲深いスラル》とかの動きで、さすがにカードの質が違いすぎて勝ちましたね。」
八十岡「ライフゲイン要素が多いのが強くて、ライフ1からまくった試合も何度かありました。」
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
1 | 白青 | 〇×× |
2 | 青緑 (パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ) | ○○ |
3 | 白黒 | ○○ |
――「海外のプレイヤーと同卓して、カード評価が大きく違いそうだなと思った点などはありましたか?」
八十岡「あんまりなかったかな。高いカードは高いし、みんな緑やりたくないし黒はやりたいんだなーっていう共通認識が再確認されただけでしたね。」
■ 覚前 輝也 白青 1勝2敗
一方、同卓した八十岡の上家で苦しいドラフトを強いられていたのが覚前。
覚前「初手は《新プラーフのスフィンクス/Sphinx of New Prahv(RNA)》。個人的にこの環境はアンコモンのクアドラプルシンボルのサイクルのカードはかなり強いと思っていて、《聖堂の鐘憑き/Basilica Bell-Haunt(RNA)》だけ1枚落ちるけど他は見たら少しリスクを負ってでも取っていいと考えていたのでこのピックになりました。」
覚前「ただこの環境の本命としてはグルールかシミックをやりたいと思っていて、2手目は『やっぱりグルールがやりたい』ということで《旧き道のニーキャ/Nikya of the Old Ways(RNA)》に飛び込んでみましたが、その後緑が全然来ず、青の流れが良かったので青を拾う形になりました。白黒もめちゃくちゃ流れが良かったんですが、下家のヤソと下下家とで取り合う形になるだろうと思って避けました。」
覚前「そうしたら2パック目は流れがすごく悪くて、3パック目で2枚目の《新プラーフのスフィンクス》は拾えましたが、結局最終的にはそれに頼りきる形になってしまいました。」
Pick
Deck
覚前「デッキも中の中とかであまり強くないところに、プレイヤーが全員S級の厳しい当たり方とマリガン祭りが響きました。」
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
1 | 青緑 (パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ) | ×〇〇 |
2 | 赤黒 (マーティン・ジュザ) | ×× |
3 | 白黒赤 (ジェレミー・デザーニ) | ×× |
――「海外のプレイヤーと同卓して、カード評価が大きく違いそうだなと思った点などはありましたか?」
覚前「点数の違いはそんなになさそうでした。ただ赤が空いていたとはいえ《瓦礫帯の世捨て人/Rubblebelt Recluse(RNA)》が2-14とか3-13まで流れるなど、日本人同士でドラフトするよりも色の合わないカードが流れ気味になる印象だったので、きちんと空いているポジションに入れるか、立ち位置を見極めることが重要だなと感じましたね。」
渡辺 雄也・山本 賢太郎・市川 ユウキのドラフトへ続く!
今回の会場はとても大きな空間で、参加者も500人近くもいました
“MAGIC FEST”の文字が真新しくて新鮮でした
八十岡さんと覚前さんが並んで同卓でピックしているところ
パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ選手と楽しそうな一場面
覚前さんのドラフトラウンドは3試合とも名高い強豪プレイヤーでした