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【MythicInvitational】ミシックインビテーショナル・あとわずかの2日目【Day2】

01

3月29日(金)は八十岡さんが所属する“死のリーグ”ことCリーグと、覚前さんが所属するDリーグの試合が行なわれました。
昨日よりPAX East全体として入場者数が多く、周囲で観戦している人の数も昨日の1.5~2倍はいて、トップデッキに歓声が起きていました。

なお渡辺さんは今日、マジックのサイドイベントに出ていたそうです。八十岡さんと行弘さんも昨日、カオスドラフトに参加して2人で決勝に残ったとか。ほかの参加者の皆さんは、突然野生のプロが現れて驚いたことでしょう。

 

 

 

●八十岡翔太の場合

使用デッキ:通称「ライラエスパー」(赤単に強い構成になっている普通寄りのエスパー)/「ネザールエスパー」(対エスパーに強くし、アグロに対してもワンチャン戦えるレベルのエスパー)
(デッキリストはこちらから)

02
BBDさんとのフィーチャーマッチ

デッキ選択について

使用デッキは2つともエスパー。メインの大部分は同じですが方向性が違い、サイトボード後のデッキが2つあるような感じです。相手はいったいどちらのデッキなのか序盤のうちはわからないため、ゲームプランを立てにくくさせるというメリットがあります。
ただ、1ゲーム目にデッキがランダムで決まった際、自分がどっちを使っているかわからないまま始まったら困るという危惧がありましたが、実際はゲーム前に運営から「今回はAのデッキを使ってください」のように指示されるシステムだったため、特に問題はありませんでした。

――どうしてこういうデッキ選択になったんですか?
八十岡「まず、相手が2つとも相性の悪いデッキで、当たった瞬間詰むというのは絶対に避けたくて、どちらのデッキと当たるか次第で2-0か0-2になるマッチにもしたくなかった。
で、最大勢力がエスパーになるのはほぼ確実で、エスパーに強いデッキ1つとビートに戦えるデッキ1つを用意しつつ、逆側のマッチングになったとしても勝てる……つまりビートと戦えるほうでも普通のエスパーと五分で、エスパーに強いほうでもビートに当たってワンチャン勝てる、そういうデッキを探したときに、エスパー/エスパーの組み合わせが一番よかっただけですね。」

――そうしたら、2つのデッキの大枠はあまり変わらなかったと。
八十岡「まあけっこう違うんですけど。この組み合わせにしておけば、かなりの高確率で3ゲーム目には進めるなと思ってました。運要素は極力排除したかったんで。悪い当たり方をしたとしても0-2になることはまずなくて、一番いい当たり方をすれば2-0する可能性は多少あって……みたいな丸い構成にしたんで。」

――初日を突破できるデッキか、MPLに勝てるデッキ、どちらにするかという選択もあったと聞いています。
八十岡「それはビート/ビートのデッキの組み合わせに強くするかどうかって話ですね。MPLでビートデッキ2つを持ってくる人はほとんどいなそうだけど、配信者枠の人にはまあまあいるかなと。ビート2つに勝つことを考えるなら、普通のエスパーのほうをもっとビートに寄せたんですけど、結局幅広く勝てる構築にしました。」

――もしこの大会をやり直すとしても、デッキはこのままでいいですか?
八十岡「基本一緒ですね。ビートに寄せるエスパーをどこまで寄せるか、エスパーに強いエスパーをどこまで強くするか、やりすぎると逆のデッキに勝てないのでバランスが難しかったんですけど、微妙に時間が足りなくて、デッキを提出したあとに1、2枚変えたいところもあったので、そこをちょっと変えるくらい。
予想より白単が多かったんですよね。エスパー/赤単の組み合わせが最大勢力だと思ったんですけど、意外とエスパー/白単の人が多くて。」

――確かに、今日の3回戦で当たった人はみんなエスパー/白単でしたね。
八十岡「ブン回りが一番強いのが白単なんですけど、やればやるほど白単って最大勢力と予想される赤単とエスパーに弱くて、あまり理がないなと思ったんでこんなに選んでる人がいるのは予想外でした。
なんで、どっちかというと赤単に寄せてるんで、もう少し白単に寄せてもよかったなと。《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium(RNA)》を3枚取るとか。」

03
対戦席ではパソコンが赤く光っています

対戦結果

メンツが濃すぎて八十岡さんも「ベスト16から賞金がすごい上がる大会なのにこのメンツはたまらん!」と言っていたCリーグ。
最初から相手が2017年世界チャンピオンのウィリアム・ジェンセンさんで、その後もラスボスクラスのプレイヤーばかりがトーナメント表に控えています。
対戦内容について本人にも少し伺いました。

1ラウンド目
対戦相手はウィリアム・ジェンセンさん。
1ゲーム目はエスパー対決、《原初の潮流、ネザール/Nezahal, Primal Tide(RIX)》でほぼ勝ちのところから《首謀者の取得》をトップデッキされ、《魔術遠眼鏡/Sorcerous Spyglass(XLN)》を持ってこられて、そこから3ターン何も引かず。
2ゲームを取り返しますが3ゲーム目は白単に先攻を取られブン回りで負けとなり、「このメンツであと4連勝とか、辛すぎでしょ!」とプンプン。
 

 
2ラウンド目
対戦相手はBBDことブライアン・ブラウン=デュインさん。
1ゲーム目は白単に間に合わず負け、2ゲーム目はエスパー対決で勝ち。
3ゲーム目ではデッキの読み合いが発生します。
相手の立場から見れば、エスパーを出して八十岡さんが「ネザールエスパー」を出してきた場合、2:8くらいで不利。もし八十岡さんが「ライラエスパー」のほうを出してきたとしても五分五分です。そうすると、「ライラエスパー」に対しても4:6程度で勝ち目がある白単を出し、ブン回りを期待するのがよさそうです。
八十岡さんも相手の考えをそう予測して「ライラエスパー」を選択し、先攻を取れて勝利。

 
3ラウンド目
対戦相手はハースストーンの強豪として有名なSavjzさん。
1ゲーム目はエスパー対決。
このゲームでは八十岡さんが大逆転を果たしました。
八十岡さんの初手は、相手が白単のほうだったら戦えそうな内容で、同系に強いカードは何もなく、ドローも除去ばかり。
一方相手は有効牌ばかりの完ぺきな序盤の立ち上がり。《オルゾフの簒奪者、ケイヤ/Kaya, Orzhov Usurper(RNA)》の忠誠度が10まで行って紋章を出され、《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria(DOM)》も出てきて、こちらの手札には何もなく、次のターンには死ぬという状態です。
そこからまず《薬術師の眼識/Chemister’s Insight(GRN)》を引き、それで《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria(DOM)》を引いて、《テフェリー》で《ケイヤ》を戻し、序盤に何も引いてなかった分、デッキの後半は濃かったので、ドローがつながってお互いに《テフェリー》を出したり戻したりを繰り返し、最後に《首謀者の収得/Mastermind’s Acquisition(RIX)》を引けて、ギリギリのところで相手の《テフェリー》と《ケイヤ》を両方、《集団強制/Mass Manipulation(RNA)》で奪って勝ちました。
「ここ数年でも久しぶりの綱渡りを耐え切って、なかなかない試合でした」
とのことだったので、ぜひ中継で見たかったです!

オルゾフの簒奪者、ケイヤドミナリアの英雄、テフェリー

集団強制

2ゲーム目の相手は白単。
この時はマリガン後の占術で、4枚目の黒マナを上に載せるかどうかが勝負の分かれ目でした。
手札に《ケイヤの怒り/Kaya’s Wrath(RNA)》があるものの、3マナ以下のアクションがなく、4ターン目の全体除去で間に合うかどうか不安だったので下に送ったところ、そこから黒マナを引けず負け。
「手札がよくないから、4ターン目の全体除去だけは確実にしておいて、相手の回りが悪いことに賭けていればたぶん勝ってましたね」とのこと。

3ゲーム目では再びデッキ選択が問題となります。
八十岡さんとしては、1、2ラウンド目同様に白単が来る可能性を考えると、「ネザールエスパー」は出しづらいです。ただ、「ライラエスパー」でSavjzさんのエスパーと対戦すると少し不利です。
Savjzさんは1ゲーム目にエスパー対決で負けているため、白単を選ぶかなと思い「ライラエスパー」にしましたが、リスクを取ったエスパーを選んできました。
この試合は、残り時間ぎりぎりまでプレイして惜しくも負けてしまいました。

ヤソ「白単選ぶかなと安易に考えすぎました。普通のエスパーなら51:49くらいの相性ですけど、Savjzのエスパーはちょっとエスパーに強い構成で58:42くらいあって、選んでもおかしくないし、向こうのエスパーのレシピにはやりこみを感じたんで、単純にエスパーが好きだったのかなと。エスパー寄りのエスパーのほうを選んでれば勝ててたんで、そのへん考えなしにやりすぎましたね。」
 

↑Savjzさんが今回持ち込むデッキ選択に悩んでいる際のツイート。「自分のスタイルならやはりコントロールだが、経験豊富なMPLたちを相手にするなら単色のほうがチャンスがあるかも……」といった内容。Savjzさんはハースストーンではコントロール使いらしいので、エスパー好きだと思われます。

 

 

 

●覚前輝也の場合
使用デッキ:緑単/赤タッチ黒アグロ
(デッキリストはこちらから)

覚前さんは「なんだかんだ運ゲー」と言ってアグロデッキ2つを選び、あえて運ゲーに飛び込んでいった形です。
日本人のMPLプレイヤーが次々と初日落ちしていく中、最後のDリーグで、今非常に勢いのある覚前さんに希望が託されます。

04

デッキ選択について

――勝率の高いデッキ2つを持って来た、とのことですが?
覚前「赤単系はBO1でもずっと勝ってたので、とりあえず1つは確定してました。こないだのマジックフェスト・京都2019と同じデッキなんですけど、BO1で初手の事故が軽減されてて安定性が高くなるから、そのままにしてます。BO3で使ってるデッキをBO1で試したらこっちでも勝てたんで、そのままでいいかってことで60枚同じです。
2つ目のデッキを探して、エスパーとかティムール、青単とかいろいろ回してみたけど、どれもいまいちで……。それで、赤タッチ黒は感触がいいから、このデッキで勝てないデッキに対して強いデッキをもう1つにしようと。赤タッチ黒は構成的にエスパーもメタっているので、絶対勝てないのはグルールアグロくらいなんですけど。
で、そうなると緑単がいいかなと。緑単ってBO3にはいないし、BO1でもメタの上位にいないんですけど、やってみたらめちゃくちゃ勝率がよかったんです。赤単にも勝ちやすいし。
僕の《リックス・マーディの歓楽者/Rix Maadi Reveler(RNA)》入りデッキは、安定性の高い赤単にはちょっと弱いんですよね。だから赤単とグルールアグロに強い緑単を選びました。
最後のころになって《ドビンの鋭感/Dovin’s Acuity(RNA)》型のエスパーがはやりだして、強いなとは思ったんですけど、そのデッキはそこまで意識してなかったです。」

――でも実際に蓋を開けてみたら、かなりいたと。
覚前「いましたね。そっちには全然勝てなくて……。ただ、緑単という選択肢は悪くなかったので、トップ16を賭けた最後のゲームで緑単を出してればよかったなというのは思います(後述)。」

――もしこの大会をやり直すとしても、デッキ選択自体はこれでよかったですか?
覚前「そうですね。最後のゲームのデッキ選択だけやり直したいです。」

05
対戦中の覚前さん。土地の出し間違いなどをケアするため、日本語版でプレイしていました。

対戦の結果

1ラウンド目
対戦相手はピョートル・グロゴウスキさん(MOでkanisterという名前で有名、MPLの中で一番若いプロプレイヤー)。
1ゲーム目は緑単を使い、相手は青単。覚前さんの初手に《クロールの銛撃ち/Kraul Harpooner(GRN)》が2枚あって楽勝。
2ゲーム目は赤単対決で、先攻で勝ち。

 
2ラウンド目
対戦相手は、覚前さんと同様にアリーナで世界ランク8位入賞して参加権利を獲得したadverこと杉山泰樹さんです。
最初、PCの座席が隣同士で、手札が見えてしまうので対面に移りました。
杉山さんの使うジャンドウォリアーデッキはアグロに非常に強い構成になっており、特に覚前さんの緑単には勝ち目がほぼありません。
1ゲーム目は緑単対ジャンドで負け。
2ゲーム目は赤単対決で、ドローを重ねて勝ち。
3ゲーム目は赤単対ジャンドで、ライフを削り切れず負け。

 
3ラウンド目
対戦相手はMPLでおなじみのブラッド・ネルソンさん。
1ゲーム目は緑単対白単で勝ち。
2ゲーム目は赤タッチ黒対エスパーで、2ゲームともスピーディに勝ちました。

 
4ラウンド目
女性の配信者、AnnaMaeさんとのフィーチャーマッチ。
1ゲーム目は緑単対エスパーで負け。
2ゲーム目は赤タッチ黒対白単で勝ち。
3ゲーム目は赤タッチ黒対エスパーで、先攻から勝ち切りました。

 

06
フィーチャー席につく覚前さん

07
フィーチャー後のインタビュー

 
ここで勝てばリーグ突破=ベスト16入りです! 今日最後の試合となり、残っているのはここともう1つの試合だけ。
しかし相手のデッキは両方ともエスパーで、はっきり言って不利。行弘さんは「5本勝負だったらまず無理だけど、今まで見てきたとおり、不利マッチでも勝てるのがアリーナのBO1だから、がんばって!」と励まして対戦へ送り出しました。

対戦相手はTheAsianAvengerさん。
試合が始まる前から、イヤホンから音楽を流しているようでノリノリで踊っていました(バンドに所属しているとか)。体を揺らして拍子を取ったり、歌ったりしていて、覚前さんとしては「特にそういうのは気にならない」そうですが、机を指でドラムのようにたたき、机が振動するのは迷惑なのでやめてほしいとのことです。皆さんは大会で自宅のノリでプレイしないように気をつけてください。

1ゲーム目は緑単対エスパーで、まったく歯が立ちません。
2ゲーム目は赤単対エスパー。《危険因子/Risk Factor(GRN)》で計12点たたき込み、相手の踊りと体の揺れがぴたりと止まりました。そのまま削りきったところがスクリーンに映し出されると、観客から拍手が湧き起こりました。
3ゲーム目は赤で先手を取ることができ、「いけるか?」と思いましたがやはり相手はノリノリで歯を見せて笑っていました。《ドビンの鋭感/Dovin’s Acuity(RNA)》が回り、《黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer(DOM)》も出されて、回復量にダメージがまったく追いつきません。

危険因子ドビンの鋭感

黎明をもたらす者ライラ

 

この3ゲーム目は、緑単を選んだほうがよかったそうです。
渡辺さんの解説によると、相手はアグロに強いエスパーとコントロールに強いエスパーの2デッキで、覚前さんは両方アグロデッキなので3ゲーム目は必ずビート用のエスパーが選ばれることになります。これはライフ回復が多いデッキなので、本体に火力を撃ちこむ赤タッチ黒デッキでは3:7くらい相性が悪いです。
緑単も不利ではありますが、相手の《ケイヤの怒り/Kaya’s Wrath(RNA)》は3枚しか積まれていないので、4ターン目に撃たれる確率はそこまで高くなく、相性は4:6くらい。

覚前「どうせどっちも不利なら、使い慣れている赤タッチ黒にしようって思ったんですけど、情で選んでしまったことは反省してます。情でデッキを選ぶこと自体はありだと思ってるんですけど、情で選べる範囲というのがあって、今回は選んじゃいけない範囲だったという感覚です」

08
スクリーンに表示される対戦表。この最後の1戦に勝てれば、トップ16なのですが……。

09
TheAsianAvengerさんとのフィーチャーマッチ。

10
覚前さんを応援する行弘さん。八十岡さんと「この盤面でヤソならどうする?」などと相談しながら、一緒にステージを観戦していました。ただ、座席がなく通路で立ち見なので足がとても疲れます。

このあと、大会まとめ編に続きます!

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