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【MTGWAR】イレギュラーに立ち向かう ~前日インタビュー~【Day0】

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競技イベントの最高峰。

テーブルトップ側では2019年2つ目となるミシックチャンピオンシップは、早くもイレギュラー尽くしとなった。

なぜならその大会形式は、モダン10回戦+『灯争大戦』ブースタードラフト6回戦の混合フォーマット。

だがドラフトが行われる最新セット『灯争大戦』はまだ発売していない。すなわち、発売前のセットを使った競技ドラフトで行われるというのがまずイレギュラーの一点目。

そして二点目は、モダン・フォーマットにおける対戦は互いのデッキリストを対戦前に確認してから行われるということ。加えて言うならば、こちらのモダン構築の方では『灯争大戦』のカードは使用できない。

さらに三点目、新たなマリガン・ルールであるロンドン・マリガンを試験的に採用したイベントであるということ。

ミシックチャンピオンシップがかつてプロツアーと呼ばれていた時代から考えても、はたしてここまでイレギュラー要素が多いイベントがあったかどうか。

しかし。

そんなイレギュラーだらけのイベントに参加するべくイギリス・ロンドンに集った、プロシーンの最前線で戦い続けるマジックの日本人トッププロチームがいた。

それこそが。

Team Cygames。

 

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渡辺 雄也八十岡 翔太の2人は全世界に32人しかいないMPLのメンバーに選出されているし、山本 賢太郎市川 ユウキ覚前 輝也も、確かな実績を持つトッププレイヤーである。

予測もつかない出来事ばかりの現代にあって、はたして彼ら5人は何を考え、そしてどのようにしてミシックチャンピオンシップを戦い抜くのか。

今回も3日間にわたって、その詳細なレポートをお届けする予定だ。

さて早速だが、開催前日にインタビューを行ったので、以下ではその内容を掲載していく。

 

 

● プレリリース週の開催=練習用のパックを自分で用意しないといけない

――まず今回は今までとは異なる様々な条件があるミシックチャンピオンシップになっていますが、その中でも特に『灯争大戦』のプレリリース週に開催されるミシックチャンピオンシップという点が練習に与えた影響みたいなのをお伺いできればと思います

渡辺「なんも関係ないっす!今までと一緒です!(笑)」

――え、本当ですか!?頼もしいー!(笑) ……ということを踏まえて、山本さんはいかがでしょう?

山本「いやいやいや、そりゃ変わるでしょ。

市川「もう茶番が終わった(笑)」

山本「リミテッドがプレリ状態ってのは前代未聞だよ。俺たち練習用のパック作るのすごく大変だったからね。……俺は何もやってないけど。」

八十岡「ここにいる人たちはほぼみんな何もやってないんじゃないかな?」

行弘「先週のグランプリ横浜で初日落ちした人からパック作りに参加することになってたけど、誰も初日落ちしなかったからね。主に原根くんとかが作ってたよね。」

渡辺「原根くんと高尾くん、ライザ、ざきかわさん、あと僕で作った感じですね。」

山本「色んな人の力があって練習できた、ありがたい話です。」

――パックを作らないといけない時点で、まず練習するのが一苦労、と。

渡辺「練習する準備をするのが一苦労でしたね。とはいえ、調整チームがあるところは今回どこもやっている作業だろうな、と思います。」

八十岡「カード見ないとマジで何もわからないからね。」

――でも『灯争大戦』のリストから疑似的なパックを作ってみたとして、実際のパックのソート (同じ色のカードが14枚出たりしないようにするための、主にコモンにおけるある程度の並び) は再現できないですよね?

渡辺「できないね。そこは手動でなんとかするしかない。」

八十岡「そして今日判明する驚愕の事実、というね(笑)」

 

 

● 『灯争大戦』ドラフトについて

――驚愕の事実、というのは?

行弘「強ソートと弱ソートの差が大きすぎてパック全体のムラが激しいから、期待してたようなドラフトが望めないということが判明したんだよね。」

――平均的にピックできるカードの強さが思ったよりも低かった、ということですね。

渡辺「僕らの疑似パックは完全ランダムで作っていたけど、実際には想像以上に弱カードばかり詰まったパックが多くて、練習の時よりもデッキが弱くなりそうということが、前日である今日になって判明した感じですね。」

行弘「要は色々練ってきたアーキタイプは、意味がなかったと」

――『コモンAとコモンBのシナジーに着目して、それぞれ2枚ずつピックすれば強力なアーキタイプができるぞ!』みたいなことが……?

行弘「それはできない、ということがわかった。なぜなら2枚ずつ出たとしても、他のカードが弱すぎてワンチャンあるようなカードはまず流れて来ないから(笑)

Charmed Stray

――ちなみに猫 (《幸運な野良猫/Charmed Stray》) は集めても勝たない?w

八十岡「勝たないね。まず集めても弱いし。1体出して1/1。2体出して1/1と2/2……4体出してようやく普通だからね。最初が弱くて最後が普通という。『ラヴニカの献身』の《ゴブリンの集会/Goblin Gathering》くらいだったら集める価値があるんだけどね。あれは集まったら結構勝つし。」

行弘「ドラフトについては、なんやかんやあって振り出しに戻った感じだね。」

八十岡「まあ、スタートに戻った感じだね。初日の印象に近い。『鍵を握るのはレアかプレインズウォーカー。引かなかったら終わり』っていう。」

――でもプレインズウォーカーは一応システム上、全員のパックから出てくるのでは?

行弘「そんなの『人間はみな同じ』って言ってるのと一緒ですよ。」

市川「大吉から大凶まであるからね(笑)」

――何割くらいが『大吉』で何割くらいが『大凶』なんでしょうか?

渡辺「『大吉』:『吉』:『大凶』が4:3:3くらいの感覚かなー。」

八十岡「大体50%くらいじゃないかな?50%くらいで『初手でもいい』プレインズウォーカーが引ける気がする。つまり、2分の1を引けないとまずやばい。ただこの50%を外しても、今回はレアも50%くらいは初手でピックできるくらいの性能はあるからね。」

行弘「だからまあ75%くらいは初手でレアかプレインズウォーカーをピックできるイメージだね。」

Tamiyo, Collector of Tales Karn, the Great Creator

行弘「ただワンチャン一発で死ぬのが、《伝承の収集者、タミヨウ》と《大いなる創造者、カーン》。レアとプレインズウォーカーの枠を同時に潰す上にリミテッドだとクソ弱いので、それを引いた瞬間0%になるという(笑)」

渡辺「その2枚は本当にやばい(笑)」

八十岡「というわけで、75%を引けないとほぼ死亡という。」

市川「ちなみに結構引けないけどね。オレも会場でやったドラフト、初手が《雷のドレイク》だったからね。」

Thunder Drake

八十岡「結構やばいねw まあまだマシな方とはいえ。」

行弘「まあリミテッドは正直出たとこ勝負ですね。」

渡辺「全くやってない人とかよりはカードの評価とかは正確だろうと思うけどね。」

――『灯争大戦』ドラフト環境の印象として、『今までの環境だとこれに近い』みたいなのってありますか?速度感とか。

山本「速度は遅い……ね。明らかに。2マナ圏がめちゃめちゃ弱いからね。」

行弘「『ラヴニカの献身』に近いけどね。」

渡辺「確かに。『ラヴニカの献身』に近い。」

八十岡「旧ラヴニカ(『ラヴニカ ギルドの都』)かな、俺の中では。初動3ターン目、4ターン目でも間に合うくらい。」

行弘「実際この環境初動4ターン目でも全然間に合うしね。2マナも1/3ばっかりだし。」

渡辺「3マナ域もパワー3が全然いないからね。」

市川「まあ環境は遅いね。」

行弘「というか早いアーキタイプも俺らの中ではあったんだけど、それらが実際には作れないということが判明した今、遅いという結論になった。」

市川「やってない人ほどビートやりたくなるだろうね。」

渡辺「まあ多色やりましょう。」

八十岡「でも多色もレアないとさすがにやれないからなー。」

行弘「やっぱり一番大事なのは初手のレアとプレインズウォーカーだね。今まで『初手でボムを取れなかったらアグロに行く』というのが通常だったけど、アグロが無理ということになった今、取れなかったら『終わり』。」

市川「それ。『終わる』しかないw」

渡辺「『死んだな』ってなるだけ。」

八十岡「2パック目に祈ろう。」

市川「でも2パック目はかなり受け入れ狭くなるからなー。」

Mana Geode

山本「その受け入れを広げるために《マナ晶洞石》を取りましょう、ということで。」

行弘「いつもの環境よりレアが倍の枚数出てるイメージだから、全体的にカードパワー自体は高いんだよね。とはいえアグロで攻めることはできないからグダゲーになりやすい。」

八十岡「除去が多いんだよなー。」

行弘「除去が多いね。で、白がゴミっていう。」

渡辺「この環境4色しかないからね。」

市川「この環境《平和な心/Pacifism》みたいな除去ないよね?」

渡辺「ないね。あると動員/Amassが死んじゃうから。」

Law-Rune Enforcer God-Eternal Oketra

行弘「《法ルーンの執行官》もゾンビ・軍団・トークンはタップできないしね。」

――ではリミテッドは出たとこ勝負、と。

八十岡「まあ『白はやらない』というくらいかな。《永遠衆オケチラ》引いたらやるかという程度。」

覚前「せばちゃん、なんとか一緒に2-1しよ!w」

市川「いや俺3-0するつもりやけど?w 2年に1回くらい6-0するからね!」

山本「この環境せばちゃん向いてそうだよね。レンジがちょっと後ろ向きだし。」

市川「マナカーブを意識しなくていい環境は得意だからね。」

渡辺「この環境、2マナ域なくていいからね。」

行弘「まあこの環境はレアです。」

渡辺「レアだね。レアかアンコモンの強プレインズウォーカー。」

 

 

● モダンについて

――ではモダンについてはいかがでしょう?ロンドンマリガンの影響や、リスト公開の上での対戦となることを踏まえた上でのデッキ選択になったと思います。

渡辺「モダンは最高!終わり!!

――いやいや、今まで何をしてきたのかとw

市川「モダンが最高のフォーマットであることを確認するための練習を繰り返した結果、やはり『モダンが最高である』ということがわかったのだった……みたいなw」

――今回も勝率のデータを集めながらやっていたんですよね?それが機能しなかったんでしょうか?

市川「いや、勝率のデータはきちんと出しましたよ。」

八十岡「『弱いデッキは勝たん』ということがわかっただけだったね。」

市川「勝率ベースで如実に出るからね。」

渡辺「モダンは圧倒的にトップTierのデッキが強いんだよね。その中からあとは個人で選びましょう、ということになった感じですね。」

覚前「結構みんなデッキ分かれたよね。」

渡辺「一応俺らの中では『このデッキが一番ポジションはいいよね』というデッキはあったんだけど、ほとんど誰も乗れなかったしね。」

山本「モダンのデッキは一朝一夕では使いこなせないからね。」

――ちなみにマリガンとデッキ公開の影響はそこまで大きくないんでしょうか?

市川「ロンドンマリガンの影響を受けるデッキは逆にデッキリスト公開の恩恵は受けづらいのかな、という印象で、たとえばドレッジだとマリガンに強くなるけどデッキバレるのは痛手、といった感じなんだけど、その点俺のデッキはどちらも恩恵を受けられるから良いんじゃないかな、という推論で一応デッキを選びました。」

――でもみんな同じこと考えてそうじゃないですか?

市川「そう思ってミラーもメタり散らかしてます。12枚くらい入ります。」

――すごいw

行弘「今回のMUSASHIは二重三重に構えている形だね。せばちゃんのデッキがダメなら代わりにナベのデッキが、それもダメなら俺のデッキが勝つ、みたいに。その分全員が一度には勝たないけどw」

――うまいこと言ってるように見えて、割りとみんな好きなデッキを選んだ、ってことですよね?w

渡辺「まぁ、やはりモダンは最高のフォーマットということでw」

 

 

● まとめ

――まとめると、今回のミシックチャンピオンシップは……?

八十岡「まあ、『祈り』だね。」

市川「『祈り』だね。『祈り』と『感謝』。」

覚前「やばいこと言ってるw」

渡辺「『祈り』だね、間違いない。」

行弘「モダンで勝ちきるのが難しいから、最初の『灯争大戦』ドラフトで3-0できるか次第なところはあるよね。つまり『祈り』。」

八十岡「それ、いつもと一緒だけどねw」

覚前「でも今回はみんな勝つと思う、だって誰も『灯争大戦』のドラフトは満足に練習できてないけど、みんなドラフトの地力が高いから!」

 

 


イレギュラーが重なりすぎた結果、まさかの神頼みという事態となったTeam Cygames。

だが、もちろん彼らが練習を怠ったというわけでは決してない。むしろ練習した結果として、世界のプレイヤーたちと大幅なエッジ (差) を付けられる要素が見いだせなかった、ということなのだろう。

とはいえ、それは海外のプロプレイヤーたちにとっても同じ条件のはずである。なぜなら『灯争大戦』はまだ発売すらしておらず、誰にとっても十分な練習はできなかっただろうからだ。

となれば問われるのは、覚前も言うようにドラフトの地力。そしてモダン環境が始まってからこれまでにおける、モダンの対戦経験

マジックのキャリアにおいてはかなり長いプレイヤーと言える渡辺・八十岡・山本はもちろん、モダンを得意とする市川にも、十分なチャンスが見込める可能性が高い。

さらに覚前も、ここ最近は安定して好成績を残せるようになってきている。

はたしてTeam Cygamesはロンドンの地でプレインズウォーカーの灯を掲げることができるのか。明日からの活躍に期待したい。

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