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【MCⅤ】インタビュー:市川 ユウキ ~プロシーンのこれから~【Day2】

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Team CygamesのMythic Championship Ⅴは、残念ながら初日で終わってしまった。

だが、またすぐ来月には今度はテーブルトップのMythic Championship Ⅵが控えている。

それが終わると12月にアリーナのMythic Championship Ⅶがあり、さらに年が明けて2020年からは、マジックのプロシーンは様々な新しい制度によって彩られることになる。

2019年はプロシーンにとって激動の年だったが、2020年はさらなる変化が待ち受けている。

そんな中で、数年間にわたってプロシーンの最前線を走り続けてきた男は何を思うのか。

2日目を戦う行弘を放送越しに応援していた市川 ユウキに、2019年のプロシーンやそれ以外のいくつかのテーマについて、インタビューさせてもらった。

 

 

 

■ 2019年のプロシーン

――プロシーンに様々な変革のあった2019年という年がもうすぐ終わろうとしていますが、そうした渦中の出来事をプロプレイヤーとして直に体験してみて、制度の良し悪しなどについてどう思われますか?

市川「一応今年はまだプロクラブのゴールドとかはギリギリ残ってたから、良し悪しとかはまあまだこれからだよね。プロシーンは2020年からプレイヤーズツアー中心になり、どれくらいヤバイのかが明らかになってくるっていう。2019年は今までの制度+MPLっていう移行期だったんで、ぶっちゃけオレには関係なかったけど、これからはプレイヤーズツアーの権利を取るのも難しそうだよね。」

――これまでの5回のMythic Championshipというイベントを見てきて、メディアでの扱いやコンテンツ作りなどにかなり力が入っていた印象ですが、たとえばオンラインで見えているコンテンツなどから、シーンの変化を感じたりしますか?

市川「アリーナMCは確かにすごいけど、テーブルトップの方は力が緩められてる気がするね。基本的に航空券が出なくなって、そのぶん最低500ドルの賞金はあるけど、日本人としては大抵赤字になるからかなり行きづらくなった。」

市川「外から見て2018年以前よりシーンが盛り上がっていそうかどうかとかは……うーん、自分自身で中にいるとよくわからないかな。」

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――市川さんは精力的に生放送も行っているので、そういった部分で違いは感じられないでしょうか?

市川「ああー、確かに生放送はアリーナでスタンダードしてる時の視聴者数が一番多いね。アリーナは他のDCGからの流入もあるだろうし、やっぱりアリーナで始めたり復帰したりした人が結構いるんだろうね。」

――従来の定義で言う『プロプレイヤー』というものは、ほぼほぼ消滅してしまった形ですよね。

市川「MPL以外だとそうだね。まあ良いことだと思うけどね。MPL以外は生放送や記事でブランディングしていくしかないっていう感じになると、技術やノウハウがどんどんオープンソース化していくわけだし。今まではぶっちゃけ見せ損だったから。」

市川「ただ2019年の時点では、新制度はまだ完全には始まってないからね。プレイヤーズツアーができて、そこで勝ったらライバルズに入れたりして、みたいなのが2020年に始まったら、そこでまた色々見えてくるんじゃないかと思うよ。」

 

 

 

■ 強いデッキが見つけづらい?

――最近『本当に強いデッキリストが見つけづらくなったな』という印象があるんですが、気のせいでしょうか?

市川「確かにそうかも。アリーナは勝ってもリストが出ないからね。リアルトーナメントの結果が一番出ると思うよ。」

市川「たとえば@ArenaDecklistsっていうTwitterアカウントがあって、そこにユーザーがフォーマット通りにデッキリストを載せたリプライを飛ばすとなんか呟いてくれたりするんだけど、まあすごい玉石混交だからね。アイデアを探したりするのにはいいんだけど。」

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市川「オレもこれまでスタンダードGPで優勝してきたデッキとか、全部他人ベースのデッキだからね。MOの5-0リストとか、MOで当たったとか、GPでBBDがトップ8に入ったとか、そんなのばかり。情報が限られてくると、あまり上手くないプレイヤーはさらに勝ちづらくなるよね。」

市川「ただまあそこはMPLリーグがあるからね。すげー強いプレイヤーたちが毎週のようにデッキリストをあげてくれるわけだし。個人的には、MPLリーグの見せ方はもうちょっとうまいやり方がありそうな気もするけど。生放送じゃないのがきついのかなー?現状くらいのコンテンツなら、やっぱり海外GPのカバレージの方が復活して欲しいよね。」

 

 

 

■ 市川とマジックのこれから

――市川さんがマジック界で『こうなって欲しい』みたいなものってありますか?

市川「こうなって欲しいかー……難しいなー……SCGみたいな有料記事サイトは欲しいかもね。ただまあ日本語だけだと採算取れないから難しいのかなー。」

――今回の大会を終えて、市川さん自身は次以降のMCの権利がない状態になってしまいましたが、マジックとの付き合い方は特に変わらないんでしょうか?

市川「とりあえずやりはすると思うよ。ただどれくらいやるかは、やってみないとわからない。GP名古屋が終わって、どれくらい予選を回りたくなってるかどうか次第かなー。」

市川「みんなはどうするんだろう?一緒に回ってたやまけん (山本 賢太郎) とか、てるや (覚前 輝也) とか、タキニキ (瀧村 和幸) とか、ちょうどゴールドレベルくらいだった人たちがこれからどうするつもりなのか気になるね。」

――次の世代のプレイヤーから見た時、2020年以降のMPLやプレイヤーズツアーのシステムははたして魅力的に見えるんでしょうか?

市川「それは……うーん、今のところちょっとないかもしれない(笑) 夢っていう意味でも、1回勝ってもアジアで開催されるプレイヤーズツアーに出れますよっていうだけだと、ちょっと惹かれないよね。来年一発目のプレイヤーズツアーの場合で言うなら、『マジックフェスト名古屋の横でやれますよ』っていうだけだし。」

市川「やっぱり『勝ったらアメリカの大会に出られますよ』っていうのがないとね。オレはもう海外にたくさん行ったから、名古屋でも『ああ、近くていいね』って思うけど、これまでプロツアーに出たことない人とかには、上の舞台が遠すぎてあまり響かないかもしれないね。」

――最後に、『これからうまくなりたい!』というプレイヤーに対して何かアドバイスはありますか?たとえば市川さんのように自分で生放送を始めた方が、上達のためには良かったりするんでしょうか?

市川「ああ、あるとは思うよ。配信して、見てもらってる人にコメントもらって、それで客観的にプレイを見直してうまくなるとかね。」

市川「ただオレが放送を始めた頃ならともかく、今は結構色んな人が手軽に放送してるから、元からある程度ブランディングできてる人じゃないと一つ一つの放送に視聴者が集まりづらいんじゃないかと思うね。視聴者が2~3人とかだとあんまり意味ないし、モチベーションも続かないだろうし。それより、上達のためには他人の配信を見る方が良いかもしれないよ。」

――なるほど。つまり……?

市川「つまりオレの放送を見ろ!!!!』ってことだね。」

――ありがとうございました。

 

 


制度は変わる。プロプレイヤーの在り方も変わるだろう。

だが市川もまた、それ以上の速度で変わり続ける。

ストリーマーとして特別招待を受けた今回のように、きっとまたプロとしての新しい地平を切り拓いて見せてくれるに違いない。

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