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【PTRIX】2日目構築ラウンドまとめ ~〈MUSASHI〉流の勝ち方~【Day2】

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2日間の戦いを終え、〈MUSASHI〉から行弘さんがめでたくトップ8入り!
そのほかの皆さんも、渡辺さんと八十岡さんがなんと2日目は7勝1敗という好成績でした。
皆さん、ハードな終盤戦になってからどんどん勝ちを重ねるという勝負強さを持っていますし、6人の最終成績を見ると最低でも9勝7敗と非常にアベレージが高く、本当にすごいスーパーチームです。

行弘さんを初め、山本さん、覚前さん、八十岡さんと計4名が使用した赤黒ディスカード(通称「ホロウワン」)は、まるで“次世代のマジック”をやっているかのようだと言われる異色のデッキ。運次第で圧勝もすれば自滅することもあるのが特徴で、ダイナミックなので配信映えします。
行弘さんが14ラウンド目でフィーチャーマッチに呼ばれ、生放送でデッキの全貌が明らかになると、《ゴブリンの知識/Goblin Lore(10ED)》が一気に値上がりしました。強さはもちろんのこと、見ていて面白く、自分でも組みたくなるデッキだからというのも理由でしょう。

それでは、行弘さんも含めて全員の対戦とデッキについて振り返ります。
晩ご飯の席でご一緒した、合宿の仕切り役でおなじみ中村肇さんと、“7人目の〈MUSASHI〉”こと原根健太さんにも合わせてコメントをいただきました。

 

 

 

●市川ユウキの場合

20

2日目ドラフトラウンドの戦績
3-0

2日目モダンラウンドの戦績(通算戦績9-7、最終順位143位)/ジェスカイ

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 ドレッジ 負け(×〇×)
13 5C人間(Jacob Wilson) 勝ち(〇〇)
14 マルドゥパイロマンサー(Pascal Maynard) 勝ち(×〇〇)
15 緑黒トロン(藤田剛史) 負け(〇××)
16 青赤マッドキャップ 負け(×〇×)

 


市川ユウキ『ジェスカイ』
プロツアー『イクサランの相克』



3《島》
1《山》
1《平地》
4《天界の列柱》
4《溢れかえる岸辺》
4《沸騰する小湖》
2《神聖なる泉》
2《蒸気孔》
2《硫黄の滝》
1《聖なる鋳造所》


土地(24)


4《瞬唱の魔道士》
4《呪文捕らえ》
3《聖トラフトの霊》
1《ヴェンディリオン三人衆》


クリーチャー(24)


4《稲妻》
4《稲妻のらせん》
4《流刑への道》
4《血清の幻視》
4《謎めいた命令》
3《論理の結び目》
1《電解》


呪文(17)


2《儀礼的拒否》
2《大祖始の遺産》
2《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
2《軽蔑的な一撃》
1《イゼットの静電術師》
1《摩耗+損耗》
1《天界の粛清》
1《仕組まれた爆薬》
1《払拭》
1《否認》
1《聖トラフトの霊》


サイドボード(15)


対戦について

市川「2日目のモダンラウンド、ダイス全敗だったんですよ。全部後手! これがホントにツイてなかった。
モダンで6-4くらいはしたかったんですけど、5-5でしたね。ジェスカイってデッキを使う時点で、コンボにまあまあ負けるのは想定してたし、ドレッジとかはほとんど勝てないマッチアップなので、ダイス運も含めてしょうがない面はあるかなと思ってます。」

デッキについて

市川「ジェスカイはアグロデッキに有利で、スケープシフトやトロンの土地コンボに不利なのを改善するために、メインに《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft(ISD)》を3枚……3枚でもけっこう多いんですけど、サイドにもう1枚取ってます。土地コンボに勝つパターンって、3ターン目に《聖トラフトの霊》を出して、そのあとカウンターして3ターンくらいで勝つって感じなんで。」

――昨日の取材で話に出た、「早いクロックをかける」やり方ですね。
市川「そうです。そのためには《聖トラフトの霊》が最適なカードなんで。あとはみんなでジェスカイを回したノウハウを蓄積してデッキ組み上げてった感じです。」

――プロツアーにジェスカイで出たこと自体はよかったですか?
市川「後悔はしてないですね。赤黒ディスカードは僕が使っても勝てないだろうと思ってたんで。」

このデッキを使うメリット

――このジェスカイデッキを使ってみようと思う人へのアドバイスをお願いします。
市川「『油断した相手には、本体に《稲妻/Lightning Bolt(M11)》と《稲妻のらせん/Lightning Helix(RAV)》を撃ち込んで勝て!』ですね。
ジェスカイってちょっと遅いデッキなんで、ライフは攻められないだろうと思ってギルドランドをショックインしてライフ減らしてくる相手がけっこう多いんですけど、このデッキ、けっこう火力多いんですよね。《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》も火力みたいなもんなんで、手札だけで12点入るなんてこともあるわりに、みんなあんまり警戒しない。
ただ早めに火力を本体に撃ちすぎるとバレるんで、土地ダメージをあと2点受けてくれるまで本体に撃たないで温存してゆっくりやってるフリをして、相手が油断したらワーッと撃ち込むみたいな。初日の最終戦はまさにそんな感じで、相手のライフ16くらいから焼き切ったんですよ。」

――すごい。バーンみたいですね。
市川「コントロールだけど火力がたくさん入ってて、コンボデッキに対して本来は不要牌のそれを本体に撃って勝つプランも取れるっていうのは、このデッキを選んだ理由の1つです。」

――コントロールっぽい動きだというみんなの思い込みの裏をかくんですね。
市川「場がきつくなってきたときに火力で場を整理するか、本体を狙って……その場合あと2枚くらいトップデッキする必要があるけど、それを4ターン以内に引ける確率はどれくらいかとか、このデッキを使ってそういうことを考えてるときが、僕は一番楽しかったですね。自分のドローの受けと相手のドローの受けがどれくらいあって、どれくらいの確率でやられるか、どれくらいの確率で間に合うかとか、考えることがすごいあって楽しかったですよ。そういう、ある程度長くゲームができて、お互いカードの交換をし合うようなマジックがすごい好きなんです。

――すごく“マジックしてる”感じですね。みんなが手札をシャッフルしては捨ててる間に、めちゃくちゃ考えてたんですね(笑)。
市川「1ターン目のセットランドからめっちゃ悩んでた(笑)。いやー、さすがに疲れましたね。」

 

 

 

●渡辺雄也の場合

21
Antonio Del Moral Leonさんとのフィーチャーマッチ

2日目ドラフトラウンドの戦績
3-0

2日目モダンラウンドの戦績(通算戦績12-4、最終順位12位)/トロン

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 青赤マッドキャップ(Antonio Del Moral Leon) 勝ち(〇〇)
13 グリクシスコントロール(Corey Burkhart) 負け(××)
14 トロン(佐藤レイ) 勝ち(×〇〇)
15 緑白オーラ(Christian Calcano) 勝ち(×〇〇)
16 赤白バーン 勝ち(×〇〇)

※青赤マッドキャップは、《向こう見ずな実験/Madcap Experiment(KLD)》でアーティファクトが出るまでめくり、めくれた分だけダメージをくらうが《白金の帝像/Platinum Emperion(SOM)》が出るからライフが減らないというもの

 


渡辺雄也『トロン』
プロツアー『イクサランの相克』



3《森》
1《幽霊街》
1《ラノワールの荒原》
1《草むした墓》
1《ウギンの聖域》
4《ウルザの鉱山》
4《ウルザの魔力炉》
4《ウルザの塔》


土地(19)


3《ワームとぐろエンジン》
3《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1《世界を壊すもの》


クリーチャー(7)


4《古きものの活性》
4《彩色の宝球》
4《彩色の星》
4《探検の地図》
4《森の占術》
4《忘却石》
3《大祖始の遺産》
2《四肢切断》
4《解放された者、カーン》
1《精霊龍、ウギン》


呪文(34)


3《自然の要求》
3《思考囲い》
3《集団的蛮行》
2《難題の予見者》
2《スラーグ牙》
1《次元の歪曲》
1《沼》


サイドボード(15)


対戦について

渡辺「クリスティアン・カルカノと当たったとき、互いに相手の所属してるチームのデッキを知ってたんですよ。カルカノのチームはみんな人間を使ってて、〈MUSASHI〉はみんな赤黒ディスカードを使ってるじゃないですか。で、ゲーム始まったらカルカノが呪禁オーラで、『えっ、マジ!?』ってなって、返しに俺がトロンランド置いたら『えっ、違うの!?』って。僕、てっきりカルカノが人間だと思ってそれ用の手札をキープしてたんですけどね。2人でゲラゲラ笑ってました。カルカノとは最近よく当たるんですけど、毎回楽しくやってますね。」

デッキについて

――渡辺さんのトロンは、デッキ相性はどういう感じですか?
渡辺「基本的に青系には有利です。相手のクロックが遅くて、こっちのトロンがそろってこっちの脅威に相手が対処できないみたいなゲームが多いので。ただ13ラウンド目のコリー・バークハートのときは、3色デッキなのにこっちの土地を壊してくる土地を2枚くらって、ダブルマリガンしてたこともあって相性はいいはずなんですけど負けちゃいました。」

――トロンを選んでよかったですか?
渡辺「そうですね、成績もよかったですし。今日メインボードだけだと1勝4敗なので、トロンにしてはかなりメインで負けたんですけど、サイド後全部取り返せました。たくさん練習しただけあってサイドボードで悩むことも全然なかったし。」

――カンペを見ながらサイドを入れ替えていましたよね?
渡辺「どういう相手にはどう入れ替えるかという、井川(Hareruya Prosの井川良彦さん)に教えてもらった指針があって、それを参考にしてました。デッキ自体井川のもので、自分の使おうとしてたトロンよりこっちのほうがいいと思って完全にシェアしてもらった形です。」

――では、井川さんに感謝ですね。
渡辺「まあ、牛丼くらいはおごらないと(笑)。」

――井川さんのサイド指針に従ったんですか?
渡辺「いや、あくまで参考で、その通りにしたわけではないです。どうしてこうするか聞いて、僕はこう思うからこうはしない、というような意見交換をして、実際には教わったのとは全然違うサイドボーディングにしてました。自分で積み重ねた経験もありますし。」

――もとから使っていたトロンより井川さんのトロンのほうがよかった点は何ですか?
渡辺「そもそも、今回は人間や親和が多いだろうと思ったから、赤緑型で《紅蓮地獄/Pyroclasm(M11)》を取りたかったんです。でも井川のリストを見せてもらったら、黒を取ってサイドに《思考囲い/Thoughtseize(THS)》を多めに取ってて、《集団的蛮行/Collective Brutality(EMN)》もあってストームとか、苦手なマッチアップに勝てるようになってるから、こっちのほうが総合的に強いなという印象を受けて選びました。赤緑型だと、盤面にカード出してくる相手には強いですけど、手札内で完結する相手には弱いし、《思考囲い》ならトロンが苦手な最序盤から相手に干渉できるようになるので。」

――なるほど。
渡辺「あと井川と1枚だけ違うのがディッチャ(アーティファクト・エンチャント破壊)枠で、井川は《原基の印章/Seal of Primordium(PLC)》と《自然の要求/Nature’s Claim(WWK)》を2枚・1枚で散らしてるんですけど、僕は3枚全部《自然の要求》にしてたんです。最後、バーン戦のときにそれを2枚引いたおかげで勝ちました。《原基の印章》のほうは先置きできる利点はあるんですが、僕はバーン相手にライフ回復つきの《自然の要求》3枚のほうが勝てるだろうと思って、それがうまくハマりました。」

 

 

 

★赤黒ディスカードデッキ

 


八十岡翔太/山本賢太郎/覚前輝也『赤黒ディスカード(ホロウワン)』
プロツアー『イクサランの相克』



1《沼》
2《山》
3《血の墓所》
1《踏み鳴らされる地》
4《血染めのぬかるみ》
2《樹木茂る山麓》
1《乾燥台地》
1《沸騰する小湖》
3《黒割れの崖》


土地(18)


4《炎刃の達人》
4《恐血鬼》
4《炎跡のフェニックス》
4《虚ろな者》
4《通りの悪霊》
1《黄金牙、タシグル》
3《グルマグのアンコウ》


クリーチャー(24)


4《燃え立つ調査》
4《信仰無き物あさり》
4《稲妻》
4《ゴブリンの知識》
2《集団的蛮行》


呪文(18)


3《渋面の溶岩使い》
2《大物狙い》
2《致命的な一押し》
2《古えの遺恨》
1《集団的蛮行》
2《血染めの月》
3《虚空の力線》


サイドボード(15)


※行弘さんも75枚同じ
※覚前さんはサイドボードの《渋面の溶岩使い》1枚が《虚空の力線》になっています。このデッキは強いので、会場に持ってきている人がほかにもいるだろうという読みで《虚空の力線》を増やしたとのこと。

赤黒ディスカードデッキの相性

――赤黒ディスカードの、ほかのデッキに対する相性は?
覚前「細かいクリーチャーデッキ……親和とか人間とかにはメインを落としやすいですね。除去がそんなに入ってないので、対応しきれない気がします。」

――その場合はそれより早く殴り切るわけですか。
覚前「そうですね。」
渡辺「人間は《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》がきついかな。」

――相手の手札を捨てさせるわけですから、相手が墓地を利用するタイプのデッキだったら不利ですよね?
渡辺「今は墓地を主流にしているデッキは少ないので。」
覚前「ドレッジくらいかな。」

――サイド後は、相手に墓地対策をされると思うんですが……。
行弘「対策カードを出されても、けっこうその上から勝てます。」
八十岡「っていうか、明確な対策カードがない。」
行弘「墓地対策をけっこう過信してくる相手が多いんですけど、1ターン目に手札から《虚ろな者/Hollow One(HOU)》とか、全然普通にあるから。」
渡辺「いろんな攻め方の軸があるので、やったことがないと相手にとってはサイドしづらいデッキですね。」

 

 

 

●八十岡翔太の場合

22

2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1

2日目モダンラウンドの戦績(通算戦績11-5、最終順位46位)/赤黒ディスカード

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 ジェスカイ 勝ち(×〇〇)
13 フェアリー 勝ち(〇〇)
14 無限頑強 勝ち(×〇〇)
15 緑黒トロン 勝ち(〇〇)
16 緑黒 勝ち(×〇〇)

対戦について

――今日はドラフトの初戦を落としただけで、あとは7試合全部勝っていますね。
八十岡「僕のとりえといえば昔から、トップ8の目無しになってから勝つってところなんで(笑)。」

――15ラウンド目は楽しそうにプレイしていましたね。
八十岡「よく当たる人で、けっこう和気あいあいとできましたね。逆に最後に当たった相手はこのラウンドにかかっているものが多かったらしくて、唯一この人にだけランダムディスカードをダイスで決めてくれって言われました。普段はダイス振ってると手間がかかりすぎるから、互いに手札を適当に3枚抜くってやり方なんですけど。話によると、彼は僕に負けたあとずっと座席から放心状態で動かなかったらしいです。」

――それはつらい……。

デッキについて

――このレシピは、誰かが中心になって作ったんですか?
八十岡「いや、MOのリストをコピーして、みんなで話し合っていろんな形は試したんですけど、もともと完成度が高かったんで結局数枚しか変わってません。僕とてるや(覚前さん)がMOでけっこう回して、サイドだけちょっといじりました。」

――サイドボードはどういう意図で決めたんですか?
八十岡「サイド後に墓地対策を取られたあと、新しい勝ち方ができないかと思って最初は《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster(M15)》とか《死の影/Death’s Shadow(WWK)》とか、《思考囲い/Thoughtseize(THS)》とかの手札破壊で攻めるプランも試したんですが、どれもあまりよくなくて、結局メインの構成はほとんど変えずに、苦手なデッキへのキラーカードを入れることにしました。
《血染めの月/Blood Moon(M15)》2枚と《虚空の力線/Leyline of the Void(M11)》3枚はほぼ固定で、《古えの遺恨/Ancient Grudge(ISD)》も絶対2枚か3枚入れる。《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》は相性の悪い親和や人間に強いので絶対取る。《大物狙い/Big Game Hunter(PLC)》はデッキに合っててかなり強いけどちょっと対象が狭いので、緑黒の《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》や《漁る軟泥/Scavenging Ooze(M14)》、人間の《カマキリの乗り手/Mantis Rider(KTK)》とか、全部に広く使える《致命的な一押し/Fatal Push(AER)》を最後に2枚足した感じです。」

――サイド後も基本的な形は変えず、対策カードが多少入る感じですね。
八十岡「メインがかなりシナジーデッキで、ルーティング12枚と戻ってくる系の8枚はほぼ抜きたくなくて、《炎刃の達人/Flameblade Adept(AKH)》も抜けないから、抜けるカードが少ないので。」

――抜けるカードは何ですか?
八十岡「《集団的蛮行/Collective Brutality(EMN)》は、スペルが入ってない相手にはよく抜きます。あと赤緑のギルドランドは、《古えの遺恨/Ancient Grudge(ISD)》がいらない相手には不要なので抜いて、あとはライフを攻めてくる相手にはあまり速度勝負にならないので《通りの悪霊/Street Wraith(FUT)》を抜きます。《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》を入れる場合は《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》と《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler(FRF)》を多少入れ替えます。全部残すと墓地が足りなくなるので。」

 

 

 

●山本賢太郎の場合

23

2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1

2日目モダンラウンドの戦績(通算戦績10-6、最終順位67位)/赤黒ディスカード

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 ドレッジ 勝ち(×〇〇)
13 トロン(Jon Finkel) 負け(××)
14 青白コントロール 勝ち(〇×〇)
15 人間(Oliver Tiu) 勝ち(×〇〇)
16 グリクシスデスシャドウ(Ben Friedman) 負け(×〇×)

デッキについて

山本「今日も後手が多かったですね……4回かな。先手だったら勝ってる試合が多かったんで、やっぱり先後の差はでかいなと思いながらやってました。」
――このデッキを使おうと思った人へのアドバイスはありますか?
山本「“新感覚マジック:ザ・ギャザリング2”をぜひ楽しんでください。僕はもうこりごりですけど(笑)。」
――昨日の段階ですでにつらそうな雰囲気が出てましたもんね。
山本「俺には運要素が強すぎて合わないですね。簡単に勝つときもあるし簡単に負けるときもありすぎて、サイコロ振り合ってチンチロやってるような感覚です(笑)。なので、勝っても負けてもあんまり何も思わないんですよ。単にサイコロの目が出なかったなっていう感じで。たまにこういうマジックも楽しいんですけど、プロツアーでやるのはきつい(笑)。
運で簡単に勝ち負けが決まるので、相手もけっこうつらそうでした。プロツアーのためにいっぱい練習してわざわざスペインまで来たのに、運で決まっちゃうというのは、頭ではわかってても感情的にはやりきれないかなと。」
――とすると、もともと使う予定だったジェスカイのほうが自分としては向いてましたか?
山本「どうかな……結果的に今回のモダンの成績は6-4で、ジェスカイ使っても6-4くらいで変わらなかったと思うんですけど、そっちのほうがマジックやった感があるという、気持ちの問題ですね。とはいえ、この赤黒ディスカードが文句なく強かったのは間違いないです。」

24
Jon Finkelさんとの対戦で、互いにランダムディスカードしているところ。

 

 

 

●覚前輝也の場合

25

2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1

2日目モダンラウンドの戦績(通算戦績10-6、最終順位70位)/赤黒ディスカード

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 親和 負け(××)
13 バーン 負け(××)
14 アブザン 勝ち(×〇〇)
15 エルドラージトロン 勝ち(×〇〇)
16 バーン 負け(×〇×)

対戦について

覚前「今日は全体的にめちゃくちゃ引きが悪かったです。《虚ろな者/Hollow One(HOU)》が初手に全然なくて。このデッキ、1ターン目に《虚ろな者》が出る確率はけっこう高いんですけど、5マッチやって一度もありませんでした。」

――今回5敗で終われれば、次のプロツアーの権利につながったんですよね。
覚前「そうですね。最後の試合勝てなくて本当に残念です。けど、プロポイント6点は取れて14点になったので、次のプロツアーまでに海外グランプリを回ってあと6点稼げばシルバーレベルになって出られるので、がんばりたいと思います。」

印象的な試合2つ

覚前「14ラウンド目の対戦相手が、人間的にめちゃくちゃ素晴らしい方でした。チームユニフォームも着てなかったし、そんなにプロツアー常連って感じでもない人でしたけど。
僕、11ラウンドから13ラウンド目まで連続で負けてて落ち込んでて……というか、黙りながらキレるタイプなんで(笑)、すごい不機嫌だったんです。自分のライフを書くのも面倒になって、フェッチ切って『19』って言って土地持ってきたんですけど、メモらなかったんです。次に相手から殴られて、正しくは14なのにさっきのフェッチの分を書いてなかったんで、僕『15』って言ったんです。で、相手に『14だよね』って言われて、間違えてたことに気づいた。そのあとも、対戦相手のライフすら僕書いてなくて、教えてもらったりして。言ったら自分の適当さが全部悪いんですけど、対戦相手の人は快く対応してくれて。」
――戦いの場でも親切ですね。
覚前「いい勝負で、最終的に僕がぎりぎりで勝ったんですけど、相手の人は笑顔で『次もがんばってね』って言ってくれて。すごく感じのいい人で、僕は3回負けたくらいで落ち込んでるようでは人間としてだめだなと、自分もこういうジェントルマンなプレイヤーになりたいなと思いました。」
――なるほど。

覚前「15ラウンド目は、僕のプレイで対戦相手を負けさせたというのが、かなり自己評価が高いんで聞いてください(笑)。
まず、相手の場に《難題の予見者/Thought-Knot Seer(OGW)》、《現実を砕くもの/Reality Smasher(OGW)》、さっきのターン攻撃した《現実を砕くもの》、3/3の《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》がいて、相手のライフは4。
自分の場には《虚ろな者/Hollow One(HOU)》と《恐血鬼/Bloodghast(ZEN)》。墓地に《恐血鬼》が2枚落ちてて、手札は土地だけです。僕のターン、フェッチを切ってライフを11にして赤緑のバトルランドを持ってきて、墓地から《古えの遺恨/Ancient Grudge(ISD)》を《歩行バリスタ》に撃つところです。」

カード図

覚前「《歩行バリスタ》を生かしたまま相手にターンを返したら20マナくらいあるんで負けます。
このとき、フェッチランドを切って《恐血鬼》を墓地から戻すタイミングが問題で、《恐血鬼》が場に出るのにスタックして《歩行バリスタ》に《古えの遺恨》を撃つ、というのが基本なんです。
なぜかというと、《恐血鬼》が場に戻るのをスタックに乗せてから撃てば、《歩行バリスタ》は今すでに出ている《恐血鬼》に1点と、本体に2点飛ばすことしかできない。そのあとで墓地から《恐血鬼》が2体戻ってくるので。
でもこの状況でそうすると、僕の負けが確定するんです。」
――えっ、どうしてですか?
覚前「まず、僕はフルタップになります。相手に4/4と5/5トランプル×2体がいるけど《恐血鬼》はブロックができないので、次の相手のターンのアタックで10点くらう。つまり、今《歩行バリスタ》から本体に1点でも撃たれた時点で負けが確定してしまうんです。
もし僕が《恐血鬼》を2体戻して《虚ろな者》と一緒にフルアタックしたとしても、《虚ろな者》と《恐血鬼》1体がブロックされて、相手のライフは2残りますよね。」
――確かにそうですね。
覚前「そこでどうしたかというと、わざと先に《恐血鬼》を2体場に戻してから、《古えの遺恨》を撃ったんです。それによって相手は、《歩行バリスタ》を《恐血鬼》3体に1ダメージずつ振り分けて、3体とも倒したんです。そうすると僕の場には《虚ろな者》だけが残るんですけど、次の相手のターンでフルアタックされても、1体はそれでブロックできるから10点通って、ライフが1残るんですよ。」
――《歩行バリスタ》を本体に撃たれていなければ、そうなって生きのびますね。
覚前「つまり相手にとっての正着のプレイは、出てきた《恐血鬼》2体を無視して、《歩行バリスタ》で本体にダメージを与えてフルアタックすることなんです。僕はフルタップだからそれ以上何もできないし、僕に攻撃されても死なないので。
だけど、相手がミスるかもしれないと思って、あえて先に《恐血鬼》を戻しました。」
――本体にダメージを入れられないよう、《歩行バリスタ》の餌にしたんですね。
覚前「そうです。対戦相手は《恐血鬼》を3体除去した次のターン、なぜか《現実を砕くもの》1体だけで攻撃してきたんですよ。なんか自分のライフを4じゃなくて6あると勘違いしてたみたいなんですけど。僕はそれをスルーしてライフ6に。
返しの僕のターン、手札は土地だけだったんで、土地をセットして《恐血鬼》を3体戻して、相手が何も持ってないことに賭けて4体でフルアタックしたら、《恐血鬼》が2体通って勝ちました。」

〇相手にとっての正着のプレイ
《歩行バリスタ》が破壊される前に、《恐血鬼》に1点と本体に2点与える→
次のターンにフルアタック→
本体に10ダメージ通る→
相手の勝ち

〇実際に起こったプレイ
《歩行バリスタ》を《恐血鬼》3体に1点ずつ撃つ→
次のターンに《現実を砕くもの》でアタック→
覚前さんに5ダメージ→
返しの覚前さんのターンに《恐血鬼》を3体戻し、フルアタック→
相手に4点通る→
覚前さんの勝ち

覚前「ちなみにこの対戦相手にはゲーム開始早々にいちゃもんつけられてキレてたんですけど、うまく策がハマってプレイミスさせて勝てたんで、すごい気持ちよかったですね(笑)。」
――前のラウンドに人格者に当たって「こんなプレイヤーになりたい」って思ったのに、次のラウンドでは即キレてたんですね(笑)。

 

 

 

 

Staff

ゲストコメント:中村肇さん

――今回のプロツアーはいかがでしたか?
中村「発掘で出たんですが、3-1から4連敗してさんざんでした。
ただ今回は(チームグランプリの結果で渡辺さんと八十岡さんに)連れてきてもらった記念参加みたいなものなので、今度は自力で権利を取って出たいなと思います。久しぶりにプロツアー出たら、やっぱりめちゃ面白かったので。おかげでブロンズレベルにもなれて、これでRPTQに出られます。」

――そういえば、渡辺さんが「中村さんがいるプロツアーでは初日落ちするというジンクスがある」と言っていましたが、払拭できましたね。また一緒に出てください。
中村「ナベを初日落ちさせるために権利取るぞー(笑)。」

Staff

ゲストコメント:原根健太さん

――今回のプロツアーはどうでしたか?
原根「早く記憶をなくしたいようなひどい負け方をしたんですが(笑)、ここに至るまでの準備に関してはいつも通り彼らと一緒にやれてすごく楽しかったですね。」

――最初にMOでこのデッキを組まされたとか。
原根「この赤黒ディスカードデッキを見つけた時のことはよく覚えてますよ。
合宿でみんなの使うデッキがほぼ決まって、夜の11時くらいにそろそろ帰ろうかってときに、MOのリーグで5-0した回数が多い人一覧を見ながら、何を使ってるのかなって雑談してたんです。山本さんと『この人は赤黒ディスカードだよ』『あのデッキ、いつもブン回ってきてイライラするんですよね』って話してたら、『俺も負けたよ』ってみんなが乗っかってきて、そしたらヤソさんが『最強デッキやん。早く組んでよ原根君』って言いだした。『今画面開いてるんだから早くやれ』みたいな(笑)。」

――それぞれが1人で練習してたら、「なんかこのデッキに負けるけどただのブン回りだな」だけで終わってたでしょうから、同じ空間にいたからこそですね。
原根「ちょうどその場に全員集まっていたのがよかったですね。」

――まさに、行弘さんをトップ8に送り込んだ原動力だと思います。

 

 

 

●TOP8特別編:行弘賢さん

26

2日目ドラフトラウンド

――今日1日のまとめということで、ドラフト3-0したところから教えてください。どんなドラフトでしたか?
行弘「1-2で吸血鬼のレアが流れてきたのでこれは吸血鬼をやらせてくれるのかなと思って、そういうカードをちょいちょい取りながら進めてたんですけどいまいちで。結局吸血鬼にはなったんですけど、とにかく重くてかなり不安な出来でした。
でも、対戦相手3人のデッキが僕のデッキよりも弱くて、単純に卓のカードが全体的にめちゃくちゃ弱かったんだなってことがわかって、普通に3-0できました。」

――卓に有名な人はいなかったんですか?
行弘「松本友樹さんがいたくらいで、当たらなかったですね。」

――初日も6-2とけっこう好成績でしたから、強い人と当たってもおかしくないと思うんですが。
行弘「ただ僕は1日目の初戦で負けてるので、強い人とは当たりにくかったですね。大会を通して、明確にすごい強い人と当たることが少なかったのは運がよかったかもしれないです。」

2日目モダンラウンド

戦績(通算戦績12-2-2、最終順位4位)/赤黒ディスカード

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 人間 勝ち(〇〇)
13 バーン(Jon Stern) 勝ち(×〇〇)
14 エルドラージトロン(Liu Yuchen) 勝ち(×〇〇)
15 ID(合意の上の引き分け)
16 ID(合意の上の引き分け)

行弘「12ラウンドの対人間はちょっときつい寄りだと思ってたんですけど、ヤソ印のサイドボードプランがかなり強くて、サイド後はこっち有利で普通にいけましたね。もちろんツイてたのもありましたけど、やっぱりデッキが強いなと。
13ラウンドのバーン戦は、1本目で相手のミスをとがめられずに負けてしまったんですけど、すごい接戦でなんとか2本取り返しました。3本目はこっちライフ8、相手ライフ18の状態から、ランダムディスカードした相手の3枚が全部スペルだったんでギリギリ間に合って勝ちました。
14ラウンド目はフィーチャーだったんですけど、1本目は相手が3ターン目にトロンがそろっちゃって。こっちは後手だったし、2ターン目のランダムディスカードから土地が詰まっちゃって。ルーティングから入っていれば土地にたどり着けてたんで勝ってたんですけど、期待値高いほうを選んだら裏目っちゃいました。
2本目は3ターン目の《血染めの月/Blood Moon(9ED)》がバチーンと刺さりました。相手は3ターン目にトロンそろってたので、こっちが先手じゃなかったら負けてましたね。
3本目は相手が《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》に頼ったぬるキープをしてくれたおかげで、こっちの横展開に相手が間に合わなくなって勝ちました。」

――山本さんは「もうこりごり」とおっしゃってましたけど、行弘さんはこのデッキで本当に楽しそうですね。
行弘「(笑)モダンってフィールドでは難しく考えず、ストレートに相手が不愉快になるデッキを使うのが一番いいんじゃないかなと僕は思いますね。相手が不愉快になるのが早ければ早いほどモダンでは優位性がある(笑)。このデッキは1ターン目から相手の手札をぐちゃぐちゃにして不愉快にさせる可能性が高いので、強いデッキだなと。
実際、山本さんはめっちゃキレた相手に、『俺はお前の次のマッチが不幸であるように願うぜ』みたいな、すごい捨て台詞を吐かれたことがあったらしいです。それは確かにきついと思いますけど、僕はそれを誉め言葉として受け取って、『そうか、俺はお前の幸運を祈るぜ』って言ってやりますね(笑)。」

決勝への思い

――明日の決勝ラウンドへの意気込みをお願いします。
行弘「今回でプロツアートップ8は4回目ですが、これまでは1没、2没、2没で決勝戦まで行ったことがないので、決勝戦に進んで、今まで見たことのない景色を見たいというのが今回の目標です。」

――最初に準々決勝で当たるリード・デュークさんのアブザンはどうですか?
行弘「原根君のアブザンと違って墓地対策が薄くて、《漁る軟泥/Scavenging Ooze(M14)》がメインに2枚しか入ってなくてサイドにもないので、戦えそうな印象ですね。順位が上なので先手番だし、それを生かしてメインを2本とも取れたら(プロツアー3日目は2ゲーム目までメインボード、3ゲーム目からサイドボードを使用)、ほぼ勝てると思います。」

――追い風が吹いてる感じなので、いけそうですね。
行弘「明日も吹いてくれるように祈ります。〈MUSASHI〉のみんなからは、『準決勝までは勝って、決勝で負けろ』って言われました(笑)。優勝するとその後のモチベーションがなくなりそうだからって。」

――チームのためにポイントは稼いでほしいし、次へのモチベーションも保ってほしいというみんなのわがまま心が伝わってきますね(笑)。
行弘「トップ8入りできたのは僕個人としてもちろんうれしいんですけど、前回のプロツアーでは初日落ちしちゃってチームの足を引っ張ってしまったかなと思ってるので、今回はチームに貢献できたのが何よりうれしいです。」

――チーム思いですね。
行弘「今回、日曜夜にこのデッキが見つかったあと、僕は月曜~火曜と体調を崩してしまって、ほとんど練習できなかったんです。その間にヤソとかがすごい回してくれて、サイドボードプランをけっこう自信ある感じで教えてくれたんで、だったら信じようって全部その通りに実行して勝てました。
デッキを見つけてくれたみんなと、それを実際に回して試してくれた原根君と、僕が寝込んでて貢献できなかった間に回してくれたヤソと覚前君とやまけんの3人には感謝しかないですね。そもそもこのデッキが見つからなかったら僕はサヒーリで出ようと思ってたので、賭けてもいいけどサヒーリと心中して初日落ちだったと思います。
本当にいつもTeam Cygamesのみんなに助けられてますし、Cygamesドラフト合宿に参加させてもらってるのもありがたいですし、一緒に練習できる環境もあって、僕1人の力じゃ決してなしえなかったことです。僕はみんなに結果でお返しするくらいしかできないので、明日は全力でがんばりたいと思います。」

――すばらしいコメント、ありがとうございました。がんばってください!

 

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Liu Yuchenさんとのフィーチャーマッチ

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トップ8で行弘さんの名前が読み上げられるときに騒ごう!とステージ前に集まり、「ゆっくひろ! ゆっくひろ!」と叫びました。

 

準々決勝の対戦相手が名手リード・デュークさんとわかったので、これから行弘さんはしっかり寝て英気と運気を養い、今回アブザンを使った原根さんの助けも借りつつ、渡辺さんたちがサイドボードの研究をして明日に臨むとのことです。
また、八十岡さんは今回も3日目はニコニコ生放送で解説です。ワールド・マジック・カップのときは八十岡さんの試合を行弘さんが解説していましたが、立場が反対になりました。

 

 

 

編注:日曜日の結果

行弘さんは、準決勝で相性の悪いランタンコントロール相手に5本目まで粘りましたが、残念ながら決勝には進めませんでした。
ですが、このトップ4の成績も加算して〈MUSASHI〉はチーム順位が一気に2位へと大躍進!
また、プロツアートップ8入り4回やメタ外の独創的なデッキでの活躍により、行弘さんは殿堂入りへの道が見えてきたとの声も。いろいろと実り多いプロツアーとなりました。
 
team
最強チーム「Ultimate Guard Pro Team」と3ポイント差の89点で、2位につけています。

 

 

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空き時間は行弘さんと調整し、試合が始まると画面の前で応援する仲間たち。
※写真は【Magic: The Gathering】から引用させていただきました。

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