【PTGRN】2日目スタンダードラウンドまとめ【Day2】
プロツアー2日目を終え、渡辺さんが自身5回目となるプロツアーサンデー進出を決めました! ドラフトラウンドで八十岡さんとの「弱デッキ対決」を制した1勝ぶんがあとになって響き、八十岡さんは「俺が勝ちを譲った甲斐があったな。打ち上げロケットの役を果たした」と言っていました。
また、覚前さんもラウンド13から連勝を重ね、最終ラウンドで勝てばトップ8入りできるところまで一気に駆け上がりましたが、無念にも土地が2枚で止まってしまいました……。
とはいえ、渡辺さんのトップ8入りに加えて覚前さんが12-4、八十岡さんが11-5などの成績を挙げ、チーム〈MUSASHI〉は今年のチームシリーズ・ポイントレースで好スタートを切ることができています。
今回は調整方法を見直したことが良い結果として現れ、Team Cygamesのさらなる“進化”を感じられるプロツアーでした。
それでは、皆さんのデッキ内容と成績についてまとめていきます。
上のチーム集合写真を撮影していたら、警備のおじさんが突然乱入してきました(笑)。
●市川ユウキの場合
8《平地》 4《森》 4《陽花弁の木立ち》 4《寺院の庭》 1《オラーズカの拱門》 土地(21)
クリーチャー(14) |
4《開花+華麗》 4《苗木の移牧》 4《大集団の行進》 3《軍団の上陸》 4《ベナリア史》 4《議事会の裁き》 2《暴君への敵対者、アジャニ》 呪文(25) |
3《不可解な終焉》 2《クロールの銛撃ち》 4《無効皮のフェロックス》 2《ビビアン・リード》 3《秋の騎士》 1《不滅の太陽》 サイドボード(15) |
2日目ドラフトラウンドの戦績
1-2
2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績9-7、最終順位145位)/セレズニアトークン
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
12 | ジェスカイコントロール | 〇〇 |
13 | 白単 | 〇〇 |
14 | 赤単 | 〇×〇 |
15 | エスパーコントロール | ×〇× |
16 | 赤単 | ×〇× |
最終ラウンドの前に、生放送解説の浅原晃さんから差し入れのチョコをもらう市川さん。ちなみにチョコをもらった人たちは全員このラウンドで負けたそうです……。
デッキ選択の理由
――このデッキを選ぶにあたっては、まず高い勝率という理由があったと思いますが、そもそもこのデッキ自体の持つ利点もありますか?
市川「もともと、白赤がチーム内でけっこう強いってことになってたんですけど、MOCS(MOの大会)で勝っちゃったからどうしようかって話してるところに、セレズニアの勝率が高いという浦瀬君からのデータが上がってきて。白単系にもすごく強いので、自分たちが選ぼうとしてたデッキに強いなら選んでもいいかなって感じでしたね。もし自分の中でこれがいいと思ってるデッキがあれば別でしたけど、特になかったので。」
――セレズニアはそこそこ有力デッキだったけど、誰もやってなかったから浦瀬さんが担当してたんですか?
市川「いや、どっちかというと浦瀬君が好きでずっと回してた感じですね。なんか、見た目がパッとしないじゃないですか。盤面にさわりづらいし、モッサリしてるというか……緑黒にも弱いし。だからみんな微妙かなと思ってあまり手をつけてなかった。」
――イメージがあまりよくなかったんですね。
市川「でも、チーム内で緑黒の評価が下がりつつあったんです。原根君がけっこうやってたんですけど、どんな形にしてもあんまりうまくいかないと。勝率もだんだん下がっていって、これならプロツアー本番では緑黒が少なくなるかもな、というのもあって選びました。結局数として少なくなかったんですけど、20%以上いてトップ8に0人なので、負け組ですよね。緑黒が負け組になることは想定内だったんで、それならセレズニアにしようというのも、僕としては1つの理由です。」
――相性としては、緑黒には弱いけど白系に強いと。
市川「あと、ジェスカイにも強いです。メインから《アダントの先兵/Adanto Vanguard(XLN)》入ってるし。」
――選んでよかったですか?
市川「僕は構築ラウンドの成績が6-4でしたけど、てるや(覚前さん)も原根君も8-2してるんで、まぁ悪くなかったなと思います。」
このデッキを使うなら?
――このデッキ、今度のグランプリ・静岡でも使われそうですが、何かアドバイスはありますか?
市川「うーん……1マナの土地を持ってくる《開花+華麗/Flower+Flourish(GRN)》の左側、あれが一番難しいですね。
土地3枚と《開花+華麗》って手札だったりした場合、いつ撃つべきかというのが……。早めに撃ったらそのあと土地ばっかり引いて、『温存しとけば右側の+2/+2のほうで撃てたのに』とか。逆に温存しすぎて、『このカード引いたけど、土地を伸ばしてなかったから1ターン分ラグができちゃった』とか、そういう裏目を引くことが多いカードなので。
でも僕はこのカードがセレズニアで一番強いと思ってるんです。安定性を担保しつつ、フィニッシャーにもなるので。」
覚前「《開花+華麗》強すぎ!」
市川「さすがにデッキの根幹。デッキ内で一番強いまである。」
覚前「緑でも白でも撃てるし、最終的に5マナで引いたら『あっ、勝った』ってなるし。」
市川「序盤は安心するし、トップデッキしてもうれしい。」
――でも、撃ちどころは考えないといけないんですね。
デッキの変更点
――大会を経て、何かデッキに変更したい点はありますか?
市川「(覚前さんに)《不滅の太陽/The Immortal Sun(RIX)》だけ余計だったね、サイドイン全然しなかったよね?」
覚前「けど、一応緑黒に対する保険ってことだったから。」
市川「さっき話してたのが、《勇敢な守護者、アジャニ/Ajani, Valiant Protector(AER)》の3枚目のほうがよかったんじゃないかって。」
行弘「緑黒だけ見るなら、絶対そのほうがいいよ。」
市川「ジェスカイとかにも別に入れないからね。」
――つまり、《不滅の太陽》はいらなそうってことですか?
市川「前日くらいに、セレズニアが緑黒に全然勝てないってのが判明して、サイド枠が1枚あったんでお守りとして入れたんですけど……原根君と浦瀬君に試してもらった結果、《不滅の太陽》をサイドインしても全然裏目があるなと。みんな《打ち壊すブロントドン/Thrashing Brontodon(RIX)》入れてくるんで、それを引かれると黒の回収土地で回収されて使い回されたりするから、出し損。そういう結論に達したんですけど、結局ほかにいいものもなくて……。」
覚前「でも、ギリギリまで2枚だったのを1枚に減らしてよかったじゃん。」
市川「そうだね、《ビビアン・リード/Vivien Reid(M19)》に替えてよかった。6マナのカード、そんなに出せないからね。」
原根「《アジャニ》じゃなくて、《残骸の漂着/Settle the Wreckage(XLN)》でもよかったかも。」
(以下、サイドボードの議論が続きます……)
●覚前輝也の場合
2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1
2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績12-4、最終順位17位)/セレズニアトークン
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
12 | イゼットドレイク(井上徹) | 〇 |
13 | イゼットドレイク | 〇 |
14 | 白タッチ赤アグロ | 〇 |
15 | 白タッチ赤アグロ(テイ・ジュンハオ) | 〇 |
16 | 赤白アグロ(ジェレミー・デザーニ) | × |
覚前さんは最終2ラウンドをフィーチャーマッチで戦いました。写真はラウンド15の開始前にテイ・ジュンハオさんと談笑しているところです。この試合では、相手の《ベナリア史/History of Benalia(DOM)》の効果を忘れてトークンが1体余計に死んでしまうというミスもありましたが、関係なく圧倒しました。
最終ラウンドのジェレミー・デザーニさんとの対戦は、1本目が相手のブン回り、2本目が土地2枚で止まって、かなり粘ったけれどどうにもならずという残念な結果でしたが、「4敗は上出来です」というのが対戦後の本人談。
プロツアーの参加者数がいつものようにもっと少なければ、4敗はトップ8入りできるレベルなので、惜しかったです。白系アグロデッキに強い覚前さんのセレズニアデッキがトップ8に残っていれば、フィールド的には優勝の可能性も大いにありました。
似たような横並べデッキなのに、どうしてセレズニアはそこまで白系アグロに有利なのでしょうか。渡辺さんの言葉をお借りして説明します。
マジックってゲームでは、基本的に1マナ域のカードは2マナ域のカードに勝てないし、2マナ域のカードは3マナ域のカードに勝てない。マナ域が上がれば上がるほどそれは顕著になる。このデッキは特に高マナ域で唱えるカードが相手に対してすごく強いし、絆魂もけっこうあるから、出だしが少し遅くても間に合うんです。
でも逆に言えば4、5マナ域まで行ってまくるデッキだから、この日の最終戦みたいに土地が事故っちゃうとどうにもならない。
もしてるやが決勝ラウンドに残ってたら、白系6人、あとジェスカイの1人に対しても有利だから、優勝期待値はかなり高かったですね。
――覚前さんは直前でこのデッキを使うことに決めたんですよね?
覚前「前日に決めました。」
――その決め手はなんだったんですか?
覚前「前日の夜集まったときに、みんな『セレズニアトークンが板(鉄板の意味)』って言ってて、でも僕だけ回してなかったんですよ。僕は赤白を気に入ってたんですけど、みんながそんなに勧めるのに僕だけ全然回さないまま大会に出て、赤白で負けるのはイヤだったんで、その日の夜にとりあえず2リーグだけやってみようと。そしたらいきなり7連勝して、思いのほか感触がよかったんですよ。
そのあとでもう一度赤白も回してみたんですけど、赤白はデッキパワーが高い一方、けっこうマナトラブルで負けることもあるんです。でもこのセレズニアは、《開花+華麗/Flower+Flourish(GRN)》のおかげでマナ基盤がかなり安定してるんです。
なので、普段なら僕は赤系のアグロが好きなんですけど、今回はみんなの意見に乗ってみようと思って。」
――このセレズニアデッキもアグロ寄りなので、赤白アグロとそこまで遠いデッキではないで
すよね。
覚前「けっこう近いですね。2ターン目《アダントの先兵/Adanto Vanguard(XLN)》、3ターン目《ベナリア史/History of Benalia(DOM)》っていうアグロムーブがあるんで、自分としては使いやすかったというのもあります。」
――覚前さんがデッキを変えるって言ったときに、みんなびっくりしていたそうですよ。
覚前「あ、そうなんですか?『どうせ変えへんやろ』って思われてるのかもしれない(笑)。いつもプロツアーでは、リミテッドはだいたい4-2するんですけど構築ラウンドの成績がよくないことが多くて、データマジックを取り入れてみたら成績よかったんで、これからもこれで行きたいと思います。」
――印象論じゃなくて、数値が出てたから信頼しやすかったってことですよね。
覚前「そうです。今までの練習方法だと、赤白でもまあまあ勝つんで、それでプロツアーに来てたら、構築ラウンドの成績は6-4くらいの無難な成績だったと思います。でもベストなデッキはこれ!ってデータをもとに、使ってみたら8-2できたんで、やっぱりデータのおかげですね。ポンコツでパソコンとかは全然できないんで、データのこともやってくれる人がいるから乗れました。」
――じゃあ、今回の勝因はやっぱりデッキ選択ですね。
覚前「あと、当たり運もよかったです。相性のいい白タッチ赤と青赤ドレイクに今日は4回当たって全部勝ててるし。緑黒がけっこう不利なんですけど、トップメタなのにそこにはたまたま当たらなかったのがよかったなと。」
――今回のような好成績を積み重ねていれば、いずれトップ8に進むのも現実的で、今回はそのための一歩になりましたね。
覚前「そうですね。自分としてはプロツアーで勝てなかった要因が常に構築だったんで、それがこのデータマジックによって改善されつつあると感じてるんで、今シーズンは期待できるかなと思います。
……(小声で)プラチナあるよ? 今回15点やからね。この調子でいけば60点でしょ(笑)。」
――そういうところは関西人っぽい(笑)。
覚前「まあ、それくらいの気持ちで……いずれチャンスをつかめればトップ8にも入れると思います。」
――そういえば、ビデオのフィーチャーマッチに呼ばれると、キリのいいところから映すためにかなり待たされますが、ああいう時って何を考えているんですか?
覚前「早く始まんねーかなーって思ってます。20分近く待ってたから、『長すぎ、さすがに早くして!』と(笑)。」
15ラウンド目に勝った直後の覚前さんをねぎらう渡辺さん
●山本賢太郎の場合
8《平地》 5《山》 4《断崖の避難所》 4《聖なる鋳造所》 3《ボロスのギルド門》 1《廃墟の地》 土地(25)
クリーチャー(22) |
4《溶岩コイル》 3《裁きの一撃》 4《ベナリア史》 2《イクサランの束縛》 呪文(13) |
1《イクサランの束縛》 1《残骸の漂着》 4《ウルザの後継、カーン》 4《凶兆艦隊の向こう見ず》 3《轟音のクラリオン》 2《魔術遠眼鏡》 サイドボード(15) |
2日目ドラフトラウンドの戦績
1-2
2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績9-6-1、最終順位112位)/セレズニアトークン
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
12 | ゴルガリ | 〇 |
13 | 青赤フェニックス(イェルガー・ヴィーガーズマ) | 〇 |
14 | 白タッチ赤アグロ | × |
15 | イゼットドレイク | 〇 |
16 | ID(井上徹さんと合意の上の引き分け) | – |
――このデッキを選んだ理由は?
山本「メタゲームの主要なデッキのうち、青いコントロール以外に勝率がいいと思ったので使いました。白タッチ赤とか、青赤ドレイクとか、黒緑ミッドレンジとか、そこらへんの主要デッキにはサイド込みでちょっと有利だと思っているので、それならいいかなと。
半面、青系のコントロールはすごく苦手なんですけど、メタ的に見ていろんな種類のデッキがいる今みたいな環境だと、コントロールって受けづらいと思うので、あんまりいないという読みでこれを使いました。」
――「ちょっと有利」というのは、みんなが取ってたデータ上でのことですか?
山本「それは関係なくて、僕の体感ですね(笑)。一応、前々週のアメリカのグランプリではボロスエンジェルが一番勝ってたデッキなんですよね。ブラネル(ブラッド・ネルソン)が準優勝してるし、トップ32に一番数が多くて。
なのでけっこう有力なデッキだったんですけど、調整後期になるまであんまり誰もさわってなかったんです。1回高尾(翔太)君がやってみて以来、誰もやってなくて、僕も普通にスルーしてたんですけど、それはやっぱりコントロールに弱すぎる点が目立ってて、無理でしょって感じになってたからなんです。
でも、スプレッドシートでの環境把握が進むにつれて、白タッチ赤が使っても使われても一番勝率が高いデッキだなってことになって、仮想敵の中でも数は多そうだと。そうすると、その白タッチ赤にけっこう有利なので、僕が『環境的にボロスエンジェルはいいんじゃない?』って調整グループにLINEしたら、ヤソが『けっこういいと思うよ、でもコントロールがきついからサイドをどうするかだね』みたいな話になって。
ブラネルが勝ったリストだと、サイドにコントロールに対して入れるカードがほとんどないのでほぼ勝てないんですけど、僕はかなり厚めにコントロール用のサイドを取りました。《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza(DOM)》4枚と、主に《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria(DOM)》とかを指定する《魔術遠眼鏡/Sorcerous Spyglass(XLN)》2枚という6枚の専用サイドを取ることによって、サイド後の相性が4.5割くらいまで改善したかなと。もちろんマッチ通して不利ではあるんですけど、ギリギリ戦えるって感覚をつかめたんで、これで行こうと決めました。」
――選んでよかったですか?
山本「結局、初戦でエスパーコントロールに1回当たっただけで、その試合もけっこうギリギリ負けたような感じだったんで、今回のボロスエンジェルは選択肢としてはけっこう悪くなかったと思ってます。
来週、アメリカでグランプリに出るんですけど、これで出ようかなって思ってます。」
――それは言っちゃっていいんですか?
山本「誰も出る人いないと思うんで(笑)。」
――グランプリ・ミルウォーキー2018ですよね?
山本「そうです。このあとアメリカに2週間滞在して、グランプリ・静岡の週に戻ります。」
――大会の間はラスベガスにいるんですよね?
山本「ポーカーやってます。(中村)修平さんと一緒に。」
――いいな~、楽しそうですね。
山本「楽しくはないです(笑)。」
――えっ、楽しくないんですか?
山本「僕の感覚的には、ポーカーは労働と同じで、アルバイト的な感覚でやってます。まったく楽しくはないです。」
――そうなんですか、急に夢がなくなりました(笑)。
山本「楽しいわけじゃないけど、勉強しがいがあるのでやってますね。」
●八十岡翔太の場合
5《沼》 1《島》 4《硫黄の滝》 4《蒸気孔》 4《水没した地下墓地》 4《湿った墓》 4《竜髑髏の山頂》 土地(26)
クリーチャー(6) |
3《思考消去》 1《黄金の死》 2《煤の儀式》 1《標の稲妻》 2《悪意ある妨害》 2《喪心》 2《薬術師の眼識》 4《渇望の時》 2《ヴラスカの侮辱》 2《中略》 2《一瞬》 1《否認》 1《最古再誕》 2《虚報活動》 1《アズカンタの探索》 呪文(28) |
1《思考消去》 1《最古再誕》 2《黄金の死》 1《喪心》 1《虚報活動》 1《ヴラスカの侮辱》 2《軽蔑的な一撃》 2《強迫》 3《正気泥棒》 1《イゼット副長、ラル》 サイドボード(15) |
2日目ドラフトラウンドの戦績
1-2
2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績11-5、最終順位26位)/グリクシスコントロール
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
12 | 緑黒 | 〇 |
13 | ジェスカイコントロール(ギヨーム・ワフォタパ) | × |
14 | ジェスカイコントロール | 〇 |
15 | 赤単 | 〇 |
16 | 青赤フェニックス | × |
――八十岡さんはプロツアー直前の水曜の朝、天啓を受けたとツイートしていましたが……。
八十岡「そうっすね。」
渡辺「水曜に急にヤソコンができた(笑)。」
八十岡「コントロールって、基本的に環境を全部見てからじゃないと組めないんで、出そろってから組んだだけです。一昔前のデッキを参考にしても意味ないから。」
――どうしてこのデッキを使うことに?
八十岡「強いから(笑)。
まず、白いビートダウン……白タッチ赤とかボロスとか、セレズニアも含めて、それらが強いという前提があって、グリクシスコントロールはそれらはほぼ取りこぼさないくらい相性がいいというのが、一番の理由ですね。
今回はどこかでもう1勝できてれば、上位陣は白系ばっかりだったんで、そこのゾーンに行けたらかなり楽だったのかなと思うんですけど。1日目は当たったんですけど、2日目は白と1回も当たらなくて、いるラインの問題もあったのかなって気がします。」
――デッキ使用率を見ると、グリクシスコントロールを使っていた人は9人いて、あんまり2日目に残ってなかったんですが、そういう人たちはあまりコントロールを使いこなせてなかったってことでしょうか。
八十岡「まあ……センスなしってことじゃないですか?(笑)」
――苦手なデッキは?
八十岡「緑黒はきついかなと思ってたんですけど、やった感じそうでもなくて、むしろジェスカイコントロールのほうがちょっとクリーチャーに寄せてるんで、サイド後に《パルン、ニヴ=ミゼット/Niv-Mizzet, Parun(GRN)》と、7マナ7/7のカウンターされないエルダー恐竜(《原初の潮流、ネザール/Nezahal, Primal Tide(RIX)》)とかがいっぱい入ってるときついなと。」
――実際、このデッキで出てよかったですか?
八十岡「そうですね。変えるとしてせいぜいサイド1、2枚ですね。前日、ジェスカイ対策は気持ち増やしたんですけど、2回負けてるのでまだちょっと足りてなかったのかなと。4マナ2ドロー(《薬術師の眼識/Chemister’s Insight(GRN)》)がジェスカイは普通4枚入ってて、僕は2枚しか入ってない分の差がちょっと出たんで、サイドにあと1枚増やすとかはできたのかなと。」
コントロールデッキについて
――八十岡さんはオリジナルのコントロールデッキを定期的に生み出していますが、意図的にそうしようとして作っているんですか?
八十岡「単純に、勝てると思ったらコントロールを使うだけですけどね。基本的に、ローテーションが入ってエキスパンションが少ないタイミングって、一番コントロールが強いタイミングなので。」
――確かに八十岡さんが優勝したプロツアー『カラデシュ』のときも、今回同様にローテーションしたあとのシーズン最初のタイミングでしたね。
八十岡「僕、シーズン初めが一番勝つんで。シーズン終わりは絶対コントロール勝たない。エキスパンションが増えていくと、ビートダウンに入るカードは増えるけどコントロールのカードは増えないので。今のビートって、2マナ圏が弱くて、3マナ圏も《ベナリア史/History of Benalia(DOM)》があるくらいですけど、その時点でコントロール優位な環境なのかなと。」
――でも、エキスパンションが増えると低マナ域のビート向きのクリーチャーが増えるということですね。
八十岡「コントロールって、2マナのカードって全然増えなくて、3マナ以上のカードは増えても入れ替わるだけなので、あまり強くならないんですよね。カウンターも除去も、質はそんなに変わらなくて、重いフィニッシャーが入れ替わるくらいなので。《スカラベの神/The Scarab God(HOU)》クラスのカードが入れば、ちょっと強くなったりすることはありますけど。一方、ビートで1マナクリーチャーが増えたりすると、単純に総数が増えて強くなるので。」
――近年はクリーチャーの質が上がっていて、全体としてコントロールよりビートダウンデッキのほうが優勢になるように、という開発の意図を感じませんか?
八十岡「なくはないですけど、最近はけっこうコントロール向けの強いカードも多いなと感じますけどね。《アズカンタの探索/Search for Azcanta(XLN)》とか《ヴラスカの侮辱/Vraska’s Contempt(XLN)》とか、『ラヴニカのギルド』のカウンターもかなり強いし、久しぶりにカウンターがけっこう強い環境ですね。」
――まだまだコントロールの時代は終わっていないぞということですね。
デッキについて、細かい部分を解説してもらい記述するのは難易度が高くてできませんが、リスト内で珍しく感じられる《虚報活動/Disinformation Campaign(GRN)》がどういう意図で入っているか、という点だけ八十岡さんに質問しました。
答えを大まかにまとめると、基本的にコントロール対策で、ロングゲームであればこれを利用して多くのカードがキャントリップのように運用できる。4マナ域にカードが多いため、3マナで使えるドローカードを探していてこれになった。赤単などの早いデッキに対しても、手札破壊呪文と《虚報活動》、《破滅の龍、ニコル・ボーラス》とつなげれば相手を息切れさせることができる。ただし緑黒相手は探検で土地を確保されてしまうため意味がない。……といった内容でした。
このデッキはほかのいろいろな“ヤソコン”デッキに比べると勝ち筋がはっきりしており(おすすめは《ニコル・ボーラス》と《破滅を囁くもの》でカウンターを構えて2回殴る、もしくは《ニコル・ボーラス》を裏返す)、使いやすいので自分なりのチューンを加えて使ってみてはいかがでしょうか。八十岡さんも、「大会後にMOとかで見かける自分のデッキのコピーは、3日もするといなくなってしまうので、このデッキは定着してくれたら」とのことでした。
●渡辺雄也の場合
ルイス・スコット=ヴァーガスさんとのフィーチャーマッチ
7《島》 5《山》 4《蒸気孔》 4《硫黄の滝》 1《イゼットのギルド門》 土地(21)
クリーチャー(15) |
4《選択》 4《ショック》 4《発見+発散》 4《急進思想》 4《航路の作成》 3《溶岩コイル》 1《最大速度》 呪文(24) |
1《つぶやく神秘家》 2《パルン、ニヴ=ミゼット》 1《呪文貫き》 2《軽蔑的な一撃》 3《幻惑の旋律》 3《火想者の研究》 1《標の稲妻》 2《イゼット副長、ラル》 サイドボード(15) |
2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1
2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績12-3-1、最終順位8位)/イゼットドレイク
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
12 | 白タッチ赤アグロ(ルイス・スコット=ヴァーガス) | 〇×× |
13 | 緑黒(ブラッド・ネルソン) | 〇〇 |
14 | 白タッチ赤アグロ | 〇〇 |
15 | 白タッチ赤アグロ | 〇〇 |
16 | ID(合意の上の引き分け) | – |
最終ラウンドに珍事がありました。なんと1番テーブルのプレイヤーが「すでに対戦したことがある」というのです。ドラフトラウンドとスタンダードラウンドで同じ人と2回当たることはありますが、スタンダードで2回当たることはありえないため、上位卓だけ対戦組み合わせを変更することになりました。ジャッジが集まって相談中です。
フィーチャーエリアにもペアリングの変更が伝えられます。
トップ8に入るためのID(合意の上の引き分け)を行ない、結果登録用紙にサインをする渡辺さん。
――デッキ選択の理由は?
渡辺「調整初期から回してて、デッキの動きがすごい好きなんです。一応ほかのデッキも少し回してたんですけど、守りもできるしブン回りの押し付けもできてすごく自分好みのデッキで、イメージとしては(過去に愛用していた)デルバーに近いんです。
直前にセレズニアトークンが強いって話になって、実際自分でも回してみて強いなとは思ったんですけど、これのほうが1か月くらいずっと回しててデッキを熟知してるし、75枚変えるところがないくらい完璧にできてると思ってたんで、自分だけの期待値で言うならこっちを使ったほうがいいと思って選びました。勝率も、自分のプレイした試合だけに絞ればイゼットのほうがセレズニアより高かったので。」
――やはり使い慣れているぶんのプレイングの上積みがあるんですね。どんなデッキにも丸い構築にしていると聞きましたが。
渡辺「そうですね。環境の想定として、緑黒、ボロス、イゼットドレイクの同系、あとジェスカイの4つが攻略対象だろうと思って、この4つに対してサイドボード15枚を全部使って、どれとでも戦えるようにしようというのが今回の意図です。
それ以外の少ないデッキタイプ、セレズニアとか青単とか赤単とかに対してはそもそもこのデッキの地力がけっこうあるし、普通に勝つなと。そもそもそんなに勝ち上がってこないだろうとも思ってました。」
――実際、このデッキを選んでよかった感じですね。
渡辺「トップ8に入れて満足ですし、自分はこういうゲーム感のデッキが本当に性に合ってるんで。攻めと守りの押し引きが繊細なデッキが好きというか……さっきまで守ってたのに急に攻めてくるとかなんで、相手もプレイしづらいんですよ。」
――でもそれは、押し引きのタイミングを熟知していないと難しいですね。次のグランプリでもこれを使いたい人がいると思うんですが、アドバイスをお願いします。
渡辺「めちゃくちゃ難しいデッキなんで……自分の手札の中だけで、どういうゲームプランで勝つかを考える必要があります。僕も1か月練習してきてやっとなので、練習がすごい大事ですね。除去とドローのどっちを優先するかとかも、ケースバイケースで全部変わってくるので、まずは数を回すことが大事かなと。次のターンにこう動けばこのくらいドレイクの打点が増えるから、今は殴っていいのかいけないのかとか、先を読んで考えることも多いので、プレイヤーに要求することが多いデッキです。そういうのが楽しい点でもありますけど、難しいデッキではあります。」
(テクニックの一部については、後述の記事でご紹介します)
――最後に、明日への意気込みを。
渡辺「目標はやはり、彼女を笑顔にすることです! 彼女に最高の勝利を捧げたいなと……僕にできるのはそれだけです。」
渡辺さんのトップ8入りを記念し、このデッキの構築ポイント、マリガン基準、運用の際のTipsなどを渡辺さんが詳しく説明する「なべごく!~正しいイゼットドレイクの使い方~」を後日掲載予定です。グランプリ・静岡2018に向けても大いに役立つ内容ですので、お楽しみに!
トップ8の発表
実はデッキケースの中でずっと見守ってくれていたのが、日本時間ではもう誕生日を迎えた“彼女”です。「彼女を笑顔にしてあげなくちゃ」と言う渡辺さん。
●明日に向けて
渡辺さんの準々決勝の相手は赤白アグロで、「相性は五分、ほぼ先手ゲーなのでメイン戦を1-1にし、サイド後は後手をまくれる戦い方ができるかどうかにかかっている」とのことです。
後手をまくるには、《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer(GRN)》を出してスペルを軽くして手数を増やし、先手に追いつく必要があるため、最初に《ゴブリンの電術師》を引けるかどうかがかなり重要です。
晩ご飯の席ではグランプリ・静岡で使うデッキの相談や、次の『ラヴニカの献身』で追加される5ギルドについての予想などで盛り上がりました。
渡辺さんは睡眠をとるため先に帰り、残りのメンバーが市川さんの部屋に集まってサイドボードプランの検証を深夜まで行ないました。
イタリアンレストランで渡辺さんのトップ8入りを祝って乾杯! 写真に写っていませんが、調整チームの原根さんと宇都宮さんもいます。
デザートに大きいクレームブリュレを食べる覚前さん。