【PTBFZ】2日目を終えて ~PTBFZ総括~【Day2】
――全16回戦が終わりましたね。残念ながらTeam Cygamesの3人はトップ8を逃してしまいました。戦績から見ていきたいと思います。まずは、市川さん。
【Team Cygamesの最終戦績 ~市川ユウキ~】
★市川プロ 0勝5敗
Day1
ドラフト 0-3
スタンダード 0-2
市川「辛いプロツアーでしたね。ドラフトの失敗はもちろん、スタンダードのデッキは一緒に調整したBIG MAGICの瀧村(和幸)さんがトップ8に残ったし、あんちゃん(Hareruya Prosの高橋優太さん)も玉田(遼一)さんとの最終戦で勝てばトップ8ってところまで行ってました。スタンダードでの不運な事故がなければ少なくとも2日目には行けていたと思います。」
――今回はかみ合わせが悪かったかと。スタンダードのデッキですが、どのような形で調整したんですか?
市川「最初にあんちゃんからリストの提供を受けたんですが、その時はまだ《砂草原の城塞/Sandsteppe Citadel(KTK)》が4枚入っていたんです。でもこのままだとタップインが多すぎてもたついている間に押し込まれちゃうんですよ。」
――瀧村さんのリストを拝見すると……あれ? 色の合ってないバトルランド(《燻る湿地/Smoldering Marsh(BFZ)》)が入ってますね。
市川「これとフェッチランドを組み合わせると、ほとんどタップインを使わずに3色を運用できます。『アブザンアグロ』の一番強い動きが、《始まりの木の管理人/Warden of the First Tree(FRF)》→強化→《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost(KTK)》なんですけど、これまでのマナベースだと間にタップインを挟まざるを得なかったわけです。4ターン目に《アブザンの魔除け/Abzan Charm(KTK)》を構えながら《乱脈な気孔/Shambling Vent(BFZ)》をセットしてもいいし、先手で《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》を置ければそのまま押し切れます。」
――戦乱のゼンディカー最強カードと名高い《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》を攻撃的に使えるのも『アブザンアグロ』の大きな利点ですね。瀧村さんのデッキにも4枚フル投入されています。
市川「僕は3枚でもいいかな、とは思っています。能力の性質上、後手だと少し弱いので。ただ、ブン回り(理想的な展開を行うこと)を期待するなら4枚かもしれないですね。他にも《風番いのロック/Wingmate Roc(KTK)》と《棲み家の防御者/Den Protector(DTK)》の枚数は好みだと思います。」
――なるほど。そもそもの話で恐縮なのですが、このデッキって強いんですか?
市川「強いというよりは、隙がないという言い方になりますね。他のデッキにもベストムーブはあるし、『アブザンアグロ』よりも早いとかカードが強いってデッキは存在するとは思うんですけど、どうしても勝てないデッキがあります。でも、『アブザンアグロ』にはサイドを含めた対応力があるから、特に苦手なデッキがないんです。」
――なるほど。《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》が使えるのも『サイ』ゲームス的にはおいしい気がします。
市川「それ、他のプロプレイヤーにも言われましたね。ニコニコ生放送のプレゼントでも《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》にサインしましたし。」
――スタンダード環境の最強カードが『サイ』という時期にTeam Cygamesを結成できたのも運命のような気がします。では、次に覚前さんの戦績を見ていきましょう。
【Team Cygamesの最終戦績 ~覚前輝也~】
★覚前プロ 7勝9敗
Day1
ドラフト 1-2
スタンダード 3-2
Day2
ドラフト 1-2
スタンダード 2-3
Round12(勝)『緑白タッチ赤大変異』
Round13(負)『赤緑上陸』Vidugiris Gaudenis(PT名古屋2011トップ8他)
Round14(勝)『ダークジェスカイ』
Round15(負)『マルドゥトークン』※Raphael Levy
Round16(負)『緑白大変異』Brad Nelson(Player of the Year2010)
――こうしてみると2日目は有名プレイヤーとの連戦でしたね。
覚前「全部負けちゃってますね。当たり前ですけど上手いプレイヤー相手に誤魔化しは効かないなと思いました。」
9《山》 1《森》 4《樹木茂る山麓》 4《血染めのぬかるみ》 2《吹きさらしの荒野》 2《燃えがらの林間地》 土地(22)
クリーチャー(18) |
4《タイタンの力》 4《乱撃斬》 4《ドラゴンの餌》 4《アタルカの命令》 2《ティムールの激闘》 2《強大化》 呪文(20) |
4《搭載歩行機械》 3《雷破の執政》 3《わめき騒ぐマンドリル》 1《焦熱の衝動》 4《焙り焼き》 サイドボード(15) |
――スタンダードのデッキは最大勢力でもあったアタルカレッドでした。このデッキを選択した理由は?
覚前「攻撃的なデッキの中でも、メインの完成度が高くて勝率も一番よかったんです。市川さんの話にもありましたけど、タップインランドを使うデッキが多い中で2色だから淀みなく動けますし、相手のライフもフェッチで削れやすい環境ですから。メインの安定性を高めて、サイドを作りこめば勝てるだろうと思っていました。」
――昨日インタビューさせていただいたときには『安定性を取らずにもっと攻撃的に組めばよかった』と仰っていましたが、具体的に伺ってもいいですか?
覚前「《ティムールの激闘/Temur Battle Rage(FRF)》と《強大化/Become Immense(KTK)》を2枚ずつにしていたんですが、3枚ずつまで増やしておくべきでした。このデッキの必殺技はパワーが2のクリーチャーにこの2枚をプレイして一気に16点削るコンボなので、その可能性を減らすべきではありませんでした。代わりに土地を22枚にして事故を減らしたつもりだったんですが、むしろマナフラッド(土地を引きすぎて負けること)を増やすだけでしたね。でも、《炎跡のフェニックス/Flamewake Phoenix(FRF)》の感触はよかったですね。コントロール相手とか、飛行の少ないデッキにはとても強かったです。」
――サイドボードの《わめき騒ぐマンドリル/Hooting Mandrills(KTK)》は印象的でした。
覚前「対戦相手が使っている軽い除去(《乱撃斬/Wild Slash(FRF)》《絹包み/Silkwrap(DTK)》など)も効きませんし、打点も高いので、かなり強かったと思います。3枚採用していましたが、4枚にしてもいいかもしれませんね。」
――ありがとうございます。最後に山本さんの戦績を見ましょう。
【Team Cygamesの最終戦績 ~山本賢太郎~】
★山本プロ 10勝6敗
Day1
ドラフト 2-1
スタンダード 2-3
Day2
ドラフト 2-1
スタンダード 4-1
Round12(勝)『緑白青大変異』
Round13(勝)『マルドゥトークン』Ondrej Strasky(プラチナレベルプロ)
Round14(負)『青黒赤ドラゴン』
Round15(勝)『アブザンアグロ』
Round16(勝)『緑白大変異』
4《平地》 1《島》 2《沼》 4《溢れかえる岸辺》 4《汚染された三角州》 1《血染めのぬかるみ》 2《大草原の川》 4《窪み渓谷》 1《コイロスの洞窟》 4《乱脈な気孔》 土地(27)
クリーチャー(8) |
4《絹包み》 2《見えざるものの熟達》 1《停滞の罠》 3《隔離の場》 4《破滅の道》 2《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1《完全なる終わり》 3《次元の激高》 2《時を越えた探索》 3《面晶体の記録庫》 呪文(25) |
4《アラシンの僧侶》 2《龍王オジュタイ》 2《龍王シルムガル》 4《強迫》 2《正義のうねり》 1《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 サイドボード(15) |
――トップ8の目は早い段階で消えてしまいましたが、2日目のスタンダードラウンドが4勝1敗と好成績でした。《隔離の場/Quarantine Field(BFZ)》をフィーチャーした『エスパータップアウトコントロール』ということでしたが、感触はいかがでしたか?
山本「デッキは強かったですね。行弘くん(行弘賢……Dig.cards所属のプロプレイヤー)が作ったデッキなんですが、ミッドレンジ全般には本当に強かったと思います。調整中も『ダークジェスカイ』相手にはほとんど負けていなかったので、かなり行けるんじゃないかと思ってました。」
――昨日の時点では、『アタルカレッド』などの攻撃的なデッキ相手には不利なので、今回のプロツアーはきつかったと仰ってましたが、今日の好成績はそのあたりと当たらなかったことも関係しているのでしょうか。
山本「『アタルカレッド』については、行弘くんは4回当たって3勝1敗と勝ち越していますし、当初考えていたよりは不利ではなかったと思います。サイドにも《アラシンの僧侶/Arashin Cleric(FRF)》をフルで用意していますし、マッチ全体で言えば五分五分になるかもしれません。」
――覚前さんは『アタルカレッド』がメイン最強と仰っていました。メイン最強ならフィールドに多く存在すると考えるのが自然だと思うのですが。
山本「もちろん、メイン最強だとは思いますが、サイドの柔軟性がないので選択するプレイヤーは少ないと思っていました。また、周囲のプレイヤーもそれを前提にサイドボードを作ってくるので、勝ちきれないのではないかと。特に前回、前々回のプロツアーを赤単系が制しているので、きつくマークされていますから、自分では使いたくありませんでした。他のプレイヤーも同じ考えなら、最大勢力にはなりづらいかなと思っていました。でも、メタゲームブレイクダウンを見ると使用者も2日目進出率もかなり高かったですね。」
――本当ですね。土地もふんだんでしたし、マリガンルールも変わったので、もっと多色化に踏み切ったデッキが活躍すると思っていました。
山本「市川くんの話にもありましたが、本格的に多色化しようとするとタップインランドを使わざるを得なくて、展開がもたついてしまいます。それに、フェッチランドとバトルランドでどんな色でもサーチできるのですが、戦場に残るのは特定の色を生む土地だけです。《マナの合流点/Mana Confluence(JOU)》のようなカードがないので、多色化は厳しい環境だと思います。」
――なるほど。赤単などの早くて安定したデッキはその隙を突いたわけですね。
山本「今回使用したデッキも、タップインするランドは《乱脈な気孔/Shambling Vent(BFZ)》だけで、黒マナ20枚、白マナ20枚、青マナ16枚という安定したマナベースを実現できました。入っているカードも白を中心にしていて、青と黒は《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》以外は後半のカードなので、事故なく安定した動きができました。2日目の勝率はこの安定性がもたらしてくれたとも言えますね。」
――いつも以上にマナベースについての構築力が試された環境だったと総括してもよいのかもしれませんね。引き続きドラフトについても話をお伺いしたいと思います。
【戦乱のゼンディカー ドラフト総括】
――まずは、2日目のドラフト記事を補う形にはなるのですが、個人的には撤退サイクルの評価を伺いたいと思います。山本さん、2日目のドラフトで《エメリアへの撤退/Retreat to Emeria(BFZ)》をピックしていて、色も合っていたのですが結局デッキには入りませんでしたね。土地を置くだけで呪文と同じ効果が得られるなんて、すごく強いと思うのですが。
山本「機能するのが少し遅いのと、プレイしたときに隙が生まれてしまうことを嫌って抜けましたが、《グール・ドラズの監視者/Guul Draz Overseer(BFZ)》とのシナジーもありますので、入れてもよかったかもしれないですね。」
市川「撤退シリーズはたくさん土地を置かないと元が取れませんし、出たターンに隙が生まれてしまいますから、ドラフトでの評価は低めですね。この環境は長引きやすく、デッキ全体で戦うことになるので、弱い場面のあるカードは評価が下がります。もちろんデッキとかみ合えばとても強いのでプレイアブルなカードではありますよ。」
覚前「市川くんの言う通りで、弱いカードを入れたくない環境ですね。弱いカードを引いたら負けてしまう。」
市川「タルキール・ブロックでは変異もあったのでピックの失敗をプレイングで誤魔化すこともできたのですが、この環境にはプレイングで誤魔化せる要素が少ないんですよね。コンバットトリックも低マナ域の優秀なクリーチャーも少ないですし。」
――落とし子トークンと違って、末裔トークンにパワーがありますからね。攻撃が簡単には通らない。
市川「《沸き立つ大地/Boiling Earth(BFZ)》もありますから、タフネス1のクリーチャーは全般的に評価が低いですね。ドラフトを総括するなら、普段よりもプレイングよりもピックの研究をした方が勝ちやすかったのではないかと思います。」
――まとめていただき、ありがとうございました。次のプロツアーこそ、3日目に進めることを期待しています!
※その後、取材班とTeam Cygamesは瀧村プロのトップ8進出祝賀会に合流。市川さんは調整チームの一員として瀧村プロのセコンドにつくため、ホテルへと向かいました。(トップ8ラウンドは全員のデッキが公開されるため、事前に練習することができます。しかし、選手本人は休息が必要なため、チームメイトが対戦相手の研究を行い、選手に伝えます。トップ8ラウンドは選手本人はもちろん、チームの力が試される場でもあります。)
3日目、瀧村プロの活躍に期待しましょう!