日本選手権2019レポート
去る2019年9月7日(土)~8日(日)、立川立飛アリーナにて「日本選手権2019」が開催されました。フォーマットは、1日目がスタンダード5回戦+ドラフト3回戦、2日目がドラフト3回戦+スタンダード2回戦、その後決勝ラウンドとなります。
Team Cygamesから市川さん、山本さん、覚前さんが出場し、3人とも初日を1敗で終えるという好調ぶりで、最終的には山本さんが14位で賞金獲得となりました。
また、八十岡さんは同じくMPL所属の佐藤レイさんと共に生放送に出演し、チームメンバーのドラフトピック(3人ともビデオフィーチャーされました)などを解説しました。
この環境末期におけるデッキ選択についてやドラフト戦略などを、後日取材しました。
●戦績まとめ
ラウンド | 市川(88位) | 覚前(19位) | 山本(14位) |
---|---|---|---|
1 | bye | bye | bye |
2 | × | ○ | ○ |
3 | ○ | × | ○ |
4 | ○ | ○ | ○ |
5 | ○ | ○ | ○ |
6 | ○ | ○ | ○ |
7 | ○ | ○ | ○ |
8 | ○ | ○ | × |
9 | ○ | ○ | ○ |
10 | × | ○ | × |
11 | × | × | ○ |
12 | × | × | ○ |
13 | DROP | ○ | × |
●覚前輝也の場合
※覚前さんにはメールで取材を行ないました
7 《平地》 3 《山》 4 《聖なる鋳造所》 4 《断崖の避難所》 4 《凱旋の神殿》 土地(22)
クリーチャー(19) |
4 《ショック》 4 《無謀な怒り》 4 《果敢な一撃》 4 《神々の思し召し》 1 《防護の光》 2 《黒き剣のギデオン》 呪文(19) |
2 《啓蒙》 1 《高山の月》 2 《敬虔な命令》 3 《丸焼き》 1 《黒き剣のギデオン》 1 《凶兆艦隊の向こう見ず》 2 《溶岩コイル》 1 《牢獄領域》 2 《血染めの太陽》 サイドボード(15) |
スタンダード
――このデッキを選択した理由は?
覚前「理由1.エスパーミッドレンジ、エスパーコントロール、ネクサス以外の全てに有利だと思ったから。
理由2.ケシスデッキが流行りつつある現在のメタゲームで、ケシスに強い唯一のデッキであるため。
理由3.ネクサスは現状流行ってなく、少ないと予想されるため。
メタゲームとしては、ケシス、吸血鬼、赤単といった、少し前のMTGアリーナのMCQで流行っていたデッキが多いだろうと予想しました。ボロスフェザー、エスパーコントロールなどはその下の位置くらいだろうと考えていました。
その予想からいくと、フェザーは上位メタ全てに有利で、苦手なマッチアップがエスパーコントロールくらいだと感じてました(ネクサスは当たらないくらいの確率だと思ったので考えません)。
エスパー自体が多くないと思っていたのに加え、苦手なデッキがほかにないと思ったので、エスパーに対するサイドプランのみを考えました。
しかし、エスパーに対策カードをいくらとっても不利であることは変わらなかったので、無理にエスパーをメタるのではなく、噛み合えば勝てるくらいの最低限のサイドだけ残し、あとはほかのマッチアップをこぼさないよう、50%ほどの勝率になる同系等に対して厚くサイドを取ることを心がけました。」
――何か反省点などはありましたか?
覚前「本戦ではフェザーが想像以上に多くいてビックリしました。
フェザーなどのデッキが多くなることも見越したサイドプランは考えていたため、特に『こうすればよかった!』というのはありませんでした。
もしネクサスが多くいたとしたら、メタゲームを読み違えていたということでデッキ自体を変えたほうがよかったのですが、サイドプラン含め想定内のメタゲームで動いてくれたこと、(エスパーに2回当たったのは少し不運とはいえ)大会前の想像と結果が同じだったことは、自信につながりました。」
――スタンダードの練習はどれくらいしましたか?
覚前「平均すると1日3時間程度です。」
ドラフト
――M20ドラフトの練習はどれくらいしましたか?
覚前「自分が納得できるまでやろうと思いました。練習時間でいうと1日2ドラフトくらいです。」
――もともとやりたいと思っていた色や戦略はありましたか?
覚前「結論から言うと、『基本セット2020』環境は流れがいい色(空いている色)をやりたいという考えになりました。
アグロ系の戦略のほうが完成系をしっかり認識できてるので、『アグロやらせてもらえたらうれしい』くらいのイメージでした。」
1日目のドラフトについて(3-0) |
覚前「2手目に取るものがなくて《稲妻の嵐族/Lightning Stormkin(M20)》をとりあえずピックしたのですが、その後赤の流れがよく、とりあえずで取った《稲妻の嵐族/Lightning Stormkin(M20)》も最高の形で使えるようになり、23枚強いカードで構成された理想のデッキに仕上がりました。」
2日目のドラフトについて(2-1、ビデオフィーチャー) |
覚前「初手が《供犠の仮面/Mask of Immolation(M20)》で、2手目も赤のカードでした。《供犠の仮面/Mask of Immolation(M20)》を自分は高く評価していて、なおかつ赤黒だと一番強く使えるので、それに引きずられ赤黒路線でピックしていきましたが、黒のカードが全然取れず、今思うと2色目の選択をミスした、強引すぎたなと反省しています。
1パック目は赤だけ決めるという考えになっていたら、2パック目から白に踏み込み、最終的には赤白で組めたんではないかな? と思っています。
自分にとっては少し難しいドラフトでした。」
フィーチャー卓でドラフト中の覚前さん。対面の席に市川さんがいます。
●山本賢太郎の場合
7 《平地》 4 《山》 4 《聖なる鋳造所》 4 《断崖の避難所》 4 《凱旋の神殿》 土地(23)
クリーチャー(20) |
4 《果敢な一撃》 4 《神々の思し召し》 4 《無謀な怒り》 4 《ショック》 1 《溶岩コイル》 呪文(17) |
3 《啓蒙》 3 《丸焼き》 2 《敬虔な命令》 1 《溶岩コイル》 2 《炎の一掃》 4 《黒き剣のギデオン》 サイドボード(15) |
スタンダード
――デッキ選択の理由は?
山本「1か月くらい前かな、MTGアリーナのMCQのときに、スタンダードのいろんなデッキを回したんですよね。吸血鬼とか、赤単とか、アグロ系中心に。その時は一番感触がよかった吸血鬼を使ったんですけど、一瞬で1-2して終わりました。
そのあとちょっと忙しくて全然マジックやってなかったんですけど、日本選手権に出るにあたって、新しく出てきたケシス・コンボってデッキがすごい強いらしいと、噂だけが聞こえてきて(笑)。」
市川「伝聞調(笑)。」
山本「ケシスに強くて、なるべくアグロを使いたいことも考えると、フェザーが一番いいかなと。2点4点火力(《無謀な怒り/Reckless Rage(RIX)》)が、ケシスに強いので。」
――最強デッキのケシスを、自分で使おうとは思わなかった?
山本「思わなかったです。動きめちゃめちゃ難しそうだし、トップメタとして意識もされるから、サイド後もいろいろ考えることが多いし。」
八十岡「そもそも、こういうガチャガチャ系のデッキ、使わないよね。」
山本「嫌いだね。」
――では、ケシスが多いメタゲームだろうと思っていたわけですね。
山本「ケシス一強みたいな感じだと思ってました。フェザーはスケープシフトがめっちゃ苦手なんですけど、スケープシフトはケシスに勝てないので減る読みで、そこもフェザーを使う後押しになりました。」
――でも会場では思ったよりフェザーが多かったですよね。正確な割合などはわかりませんが。
山本「びっくりしました。ケシス全然いなくて、フェザーが一番多いくらいでしたね。」
八十岡「ケシスは単純に、今さらカードをそろえたくないって人が多かったと思う。」
市川「すぐスタン落ちするからなー。《モックス・アンバー/Mox Amber(DOM)》買いたくない。」
八十岡「日本選手権もグランプリみたいな雰囲気になってるから、わざわざカードを全部そろえて勝ちに行くぞって気概のある人はあんまりいなかったのかなと。」
市川「フェザーなら資産的に組みやすい上にトップメタにも強いって触れ込みだから、みんな選んだってのはありそう。」
――実際に当たったデッキはどんな感じでしたか?
山本「ケシスはゼロでした。フェザー1回、赤単1回、あとはランプとかの緑系が多かったですね。そのへんは《贖いし者、フェザー/Feather, the Redeemed(WAR)》+《無謀な怒り/Reckless Rage(RIX)》の組み合わせに基本的に干渉できないので、こっちがちゃんと回ればだいたい勝つなって感じでした。」
――最終戦で、同系のバブルマッチに敗れたのは惜しかったですね。ルールミスがあったとか……。
山本「《黒き剣のギデオン/Gideon Blackblade(WAR)》を僕が3ターン目に出して、そのエンドに《丸焼き/Fry(M20)》を撃たれて、《黒き剣のギデオン》は僕のターンだと破壊不能持ってるんで死なないんですけど、お互い気づかなくて……。あとでジャッジが来て、『これ死んでないよね』みたいな話になったけど、もう巻き戻せなくて。」
市川「墓地に《丸焼き/Fry(M20)》と《黒き剣のギデオン/Gideon Blackblade(WAR)》が落ちてる、犯行現場みたいなもんだからな。」
――そこは気づいていれば結果も違ったかもしれませんね、残念です。
八十岡「俺がテーブルジャッジについてればな~(笑)。」
ドラフト
――構築の練習はMCQのときがメインということですが、ドラフトの練習は?
山本「グランプリ千葉以来、特にやってないです。」
――ドラフトでやりたい戦略はありましたか?
山本「千葉のときもあまり練習できてなかったんですけど、ドラフトは2回とも赤使って、弱いなーと思ったんで、今回は青か黒どっちかメインに使いたいなと。」
1日目のドラフトについて(2-1、ビデオフィーチャー) |
――1日目のドラフトは、1パック目は強かったけど2パック目から急に弱くなった感じでしたね。
山本「1パック目、調子よかったんですよね。青いカードめっちゃ来て。1-1が2/1飛行1ドロー君(《雲族の予見者/Cloudkin Seer(M20)》)、1-2に《大気の精霊/Air Elemental(M20)》と来て、1-3に1/1/1瞬速ドロー君(《幽体の船乗り/Spectral Sailor(M20)》)が流れてきたんで、青は確定だし席順的もよさそうだなと。」
山本「で、2色目に白を選んでしまったんですけど、1-6くらいに緑の3/3出る装備品(《狼乗りの鞍/Wolfrider’s Saddle(M20)》)か白のオール+2/+1(《鼓舞する突撃/Inspired Charge(M20)》)という分岐があったんです。カードパワー的には緑のほうが強いけど、その前に白いカードを少し取ってて、青白で殴るデッキには欲しいってことで結局白を取ったんです。緑は下にけっこう流してて、返しがおいしくなさそうだからあまりやりたくなかったこともあって。そしたら白もけっこう流れがよくて、1パック目は青白飛行ビートいけるやん!って感じでした。」
山本「でも2、3パック目はカード全然取れなくて。なんでこうなった……みたいな(笑)。」
八十岡「下に青そんなに流してないから返しは期待できるはずだったんだけど、下家が初手で《空の踊り手、ムー・ヤンリン/Mu Yanling, Sky Dancer(M20)》取ってて、青強行して返しに何も来なかったからね。」
――完成度低めのデッキで、よく2-1できたなという感じですか。
山本「ラッキーでしたね。」
八十岡「まわりもそんな強くなかったのと、KK(山本さんの上にいた加藤健介さん)が《心臓貫きの弓/Heart-Piercer Bow(M20)》2枚持ってて助かったね。確か弓は卓に3、4枚出てて、やまけんのデッキはタフネス1ばっかりだからきつかったけど、一番強いKKが2枚持ってて、そこにはどうせ勝てないから噛み合った。」
2日目のドラフトについて(2-1) |
――2日目のドラフトはどうだったんですか?
山本「まあ……ゴミでしたね。1-1のあと、3戦目の相手がブラマス(伊藤大明さん)で、彼はもう目無しだったんでトスってくれた(トップ8に入れないことが確定していたので勝ちを譲ってくれた)んです。マジでクソ弱いよ(と言いながらデッキの写真を見せる)。」
八十岡「……やばいね(笑)。」
山本「初手は《風の騎兵/Cavalier of Gales(M20)》で青だけ決めてて、なんか気がついたらふんわり緑やっちゃって、こんなことに……あまり記憶がない(笑)。」
八十岡「一周してきた緑の安いカード取ってたら緑になってた感があるね。」
●市川ユウキの場合
1 《平地》 1 《沼》 4 《氷河の城砦》 1 《静寂の神殿》 3 《孤立した礼拝堂》 4 《湿った墓》 4 《神聖なる泉》 4 《神無き祭殿》 4 《水没した地下墓地》 土地(26) |
2 《軍団の最期》 2 《暴君の嘲笑》 1 《古呪》 2 《アズカンタの探索》 4 《思考消去》 1 《漂流自我》 3 《ケイヤの誓い》 2 《聖堂の鐘憑き》 3 《ケイヤの怒り》 1 《ヴラスカの侮辱》 2 《戦慄衆の指揮》 3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 4 《覆いを割く者、ナーセット》 4 《時を解す者、テフェリー》 呪文(34) |
2 《聖堂の鐘憑き》 2 《強迫》 2 《害悪な掌握》 2 《敬虔な命令》 1 《肉儀場の叫び》 1 《灯の燼滅》 3 《夢を引き裂く者、アショク》 1 《古呪》 1 《ボーラスの城塞》 サイドボード(15) |
スタンダード
――それでは、デッキ選択の理由からお願いします。
市川「MTGアリーナでやってて唯一勝ったからです。ケシスとかグリクシスコントロールとか、それ以外のデッキもいろいろ回したんですけど、ケシスはやっぱり難しいですね。メインはルーティンなんですけど、やまけんも言ってたようにサイドプランが難しい。いろんなリストがあって人によってプランが全然違うし。あと、色事故もすごいするし。体感で、3ゲーム中1ゲームは事故ってほぼ何もプレイできない、みたいな感じなんで、ちゃんと色が出たゲームは全部勝たないといけない。そのハードルが高くてやめました。
グリクシスは《アングラスの暴力/Angrath’s Rampage(WAR)》とか、《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager(M19)》とかの、赤い要素があまり強くないなと思って。《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales(WAR)》が環境に多いんで、生け贄とか手札破壊を封じられて、デッキが機能不全になりやすいんです。
市川「で、日本選手権前日の朝に、たまたまリード・デュークの配信見てたらいきなりマルシオ・カルバーリョと対戦が始まって、デュークが黒緑のミッドレンジで、マルシオのエスパーにフルボッコにされてた(笑)。
それはFandom Legendsというオンライン大会だったんですけど、そこで(アンドレア・)メングッチやマルシオがエスパーコントロールを使ってて。カルロス・ロマオが調整したらしいんですけど、《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils(WAR)》が4枚入ってて、《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria(DOM)》が3枚に抑えられてるのが特徴的で、《戦慄衆の指揮/Command the Dreadhorde(WAR)》が2枚入ってるのもケシスに強い。ケシスはミラー用にメインの《夢を引き裂く者、アショク/Ashiok, Dream Render(WAR)》が増えてるから、相手のアショクとプレインズウォーカーをこれで釣るとだいたい勝つんです。
このリストをちょっと回してみたら勝率が良くて、サイドだけ自分で調整して使いました。」
――ケシスに強そうだと思って選んだんですか?
市川「それがアリーナだと全然ケシスに当たらないんで、よくわからなかったんですよ。本戦の1回戦で当たったケシスの人に、終わったあと『《強迫/Duress(M20)》って入れます?』『いらないですよ』とか、サイドボードを聞いてました(笑)。」
――当日の当たりはどうでしたか?
市川「初日はケシス、吸血鬼、エスパー、フェザーと当たって、吸血鬼が完璧な回りしてきて負けました。2日目にシミックフラッシュみたいなのに当たって、目無しなのにマジおもんないからもう帰る!ってドロップ(笑)。」
――でも、選んだデッキ的にはよかったですか?
市川「よかったんじゃないですかね。ロングレンジのマッチアップに強くて、フェザーにもちょっと有利だから、上位層のデッキには有利かなという印象です。スケープシフトとかメタ外にはちょっと弱いのがリスクですけど。」
ドラフト
――ドラフトの練習はどれくらいしましたか?
市川「日本選手権のドラフトって、けっこう練習してもめちゃくちゃ勝率低いんで、今回はあえて練習しないで、生まれたままの自分で勝負したらどうなるかなと(笑)。いろんな人の話は聞きましたけどね。」
――先人たちの意見はどんなふうでしたか?
市川「総合すると、緑はみんなやりたくないって話だったので、避ける方向で。青が強くてその次が黒ってのは間違いないけど、あとは人気不人気で変わるみたいな。白は人気ないけど、コモンだけで再現性高く組めるとか、青赤は組めたら強いとかですかね。」
1日目のドラフトについて(3-0) |
――1回目は《フェアリーの悪党/Faerie Miscreant(M20)》5枚のデッキで3-0していますね。
市川「初手が《チャンドラの憤慨/Chandra’s Outrage(M20)》、3/3飛行宝物つき(《多欲なドラゴン/Rapacious Dragon(M20)》)とか赤いカードが多くて、(赤を下に流して)白の4マナ2/3の《庇護のグリフィン/Griffin Protector(M20)》取ったんです。あとでてるや(覚前さん)に聞いたら『絶対にない』って言われたんですけど(笑)。
市川「で、1-2が赤の5マナ5点火力(《灰と化す/Reduce to Ashes(M20)》)と、《フェアリーの悪党/Faerie Miscreant(M20)》で、『赤流しちゃったしな~』と思ってフェアリー取ってみた結果、最終的に5枚集まった(笑)。」
八十岡「無邪気が板(笑)。」
――実際、《フェアリーの悪党/Faerie Miscreant(M20)》を並べて殴り勝った感じでしたか?
市川「いや、白のコモンの全体強化系が、たぶん1枚ずつくらいしか出なかったんであまりそいつらを生かせなくて……。相手が事故って勝ったりもしたので、運も良かったですね。望外の3-0でした。」
2日目のドラフトについて(1-2) |
――2日目のドラフトは、白黒から2パック目の2、3手目で緑の強いカードを引いて緑黒に切り替えていますが、そこがよかったですか?
市川「結果的には1-2なので、よくなかった(笑)。白はそもそも《平和な心/Pacifism(M20)》とタップ除去(《空からの突撃/Aerial Assault(M20)》)くらいしか取ってなかったから、別にどうでもいいと思ってたんですけど、今改めて見ると、黒も別にたいして取れてないという(笑)。」
八十岡「1パック目は全体的にカードが弱かったね。シグナルまったくなくて、レア枠からは力線と土地が出まくってて。」
市川「そうそう、ヤバかった。1-1《殺害/Murder(M19)》、1-2《隕石ゴーレム/Meteor Golem(M20)》、1-3《平和な心/Pacifism(M20)》みたいな感じで始めて、『黒のアドバンテージデッキに白タッチしたらいいかな』みたいに思ってたら結局白やれなくて。
2-2で《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher(M20)》を引いて緑になってるんですけど、1パック目の後半、《ケンタウルスの狩猟者/Centaur Courser(M20)》とか0/1狼(《獰猛な仔狼/Ferocious Pup(M20)》)とかがすごく安く流れてたのをちゃんと取っとけば、もっとマナカーブも良くなったかなと心残りです。緑やりたくなかったから、全部流して下にやってもらえればと思って、適当に白の1マナ1/1ライフゲイン(《魂癒し人/Soulmender(M20)》)とか取ってた。」
八十岡「緑の流れがよかったわけじゃなくて、2-2で《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher(M20)》引いた結果だから、結果論ではあるんだけどね。」
市川「パック弱くてこれからどうなってしまうのか全然わからなかったから、台風に備えるじゃないですけど、使えそうなカードはとりあえず取っとく、とりあえず風呂に水を貯めておく感じで緑のコモンを取っておくのは大事かなと思いましたね。」
――このドラフトでは、2試合目の最後の試合が中継に映りましたね。
市川「3体バウンス(《捕獲する渦/Captivating Gyre(M20)》)をケアしないで突っ込んだ結果、トップデッキされて負けたやつですね。リストは公開されてたから(フィーチャー卓でドラフトを行なった場合、ピックしたカードのリストを試合前に交換する)、相手に入ってることはわかってるし、なんなら1ゲーム目も撃たれて負けてます(笑)。2ゲーム目は3体バウンスを《夏の帳/Veil of Summer(M20)》でカウンターして勝ってるから、全部あのカードで決まってる(笑)。」
――そんなキーカードだったとは。
市川「あの3ゲーム目は、相手ダブルマリガンだったけどこっちもめちゃくちゃ土地が詰まって2枚ディスカードまで行って、それでも耐えて、『巻き返せそう!』ってなった瞬間の“油断・慢心・環境の違い”ですね(笑)。」
八十岡「しかもあそこ、けっこう悩んで『行けるか……? 行くか!』からの『やっぱり行けなかった!』だからね(笑)。」
市川「ただ、リスト交換はあったんだけど、日本語のカード名まったくわかってなかったから、1ゲーム目に3体バウンス撃たれたとき、『へー、そんなの入ってたんだー』ってなったよ(笑)。カード名のリストだけ渡されるあのシステムはきつい!」
八十岡「しかも、海外の大会だと英語のリストだからますますわからんし。」
市川「あと、ピックしたカードだけのリストに関しては、特にジャッジのチェックとか通ってないんですよ。デッキリストは提出するけど、カードプールのリストは自分で持っておいて、対戦前に相手と交換して1分間見るってだけなんです。これ合ってなくてもわかんないだろって思ったんですけど、あくまでフィーチャーマッチに関してお願いされてるゲーム外のことにすぎないし、もし書き間違えてたらルール的にはどうなるんですかね?」
――それでもし何かのペナルティになるとしたら、フィーチャー席の人だけちょっと負担が増えてしまいますね。
八十岡「前は(プールだけ記入した段階で)コピー取ったこともあったけど。」
――まだ最近やり始めたことなので、これからよりいい方法になっていくといいですね。
ドラフトがフィーチャーされた場合、ピックしたカードのリストを、試合前に1分間だけ交換して確認します。
――フィーチャー卓でピックしたカードリストを見る場合、普通のドラフトとどれくらいプレイが変わりますか?
市川「カード名がわかれば、めちゃくちゃ変わります(笑)。青黒の人と当たったとき、メインに《巻き込み/Convolute(M20)》1枚、《焼印刃/Bladebrand(M20)》2枚、4マナ3/3のダメージくらったやつ破壊(《深海艦隊の殺し屋/Fathom Fleet Cutthroat(M20)》)、それ以外の除去がほぼゼロだったから、めちゃくちゃコンバットが簡単だったんですよね。」
八十岡「プロツアーとかでも、リスト公開を意識してピックしないといけないのがきついね。ジャイグロ(強化インスタント)が1枚も入ってないってわかると弱いから、入れる入れないは別としてピックしておくみたいな工夫が必要になる。
構築のデッキリスト公開のときにサイドボードを工夫するのと同じで(実際には入れないとしても、入っている可能性を相手に意識させるために1枚だけサイドボードにカードを用意するなど)、リミテッドでもバレたら弱いデッキっていうのがある。リスト公開があるときに、青黒カウンターみたいなのは絶対作っちゃいけないデッキ。」
――もしそういうことを意識してちゃんとピックできたとしても、相手が「カード名わからん」ってなったら意味ないですしね……。
市川「リミテッドのカード名をパッと見せられてわかる人のほうが少数派だと思うけどな。みんな能力で覚えてるでしょ。」
――山本さんはいかがでしたか?
山本「1分間しかないから、基本的にインスタントしか覚えなかったです。『《殺害/Murder(M20)》あるな』とか。除去の名前ならわかるんで、俺はそんなに困らなかったです。相手もたぶん同じくらいのことしか見てない感じでしたけどね。」
なおリスト交換について覚前さんにも質問したところ、以下のような返答でした。
●八十岡翔太の場合
※画像は【MAGIC: THE GATHERING】より引用させていただきました。
ドラフト
――今回は解説でしたが、八十岡さん自身としてはどんなドラフト戦略でしたか?
八十岡「まず、色は上から順に黒、青、白、赤、緑。
ベストは青赤で、組めたら最強だけどハードルも高い。青赤の2/2速攻(《稲妻の嵐族/Lightning Stormkin(M20)》)が1-3くらいで回ってきたらやってもいいかな。
それ以外だと、《殺害/Murder(M20)》スタートの黒なら相方は何でもいい。白はほぼ単色ピックになるので、白のレアとか装備品が出たらなるべく単色でピックして、2色目はレア取れた色か空いてる色。
赤は、赤青で失敗すると弱くて、赤メインの赤白も弱いし、パートナーが弱いからなるべくさわりたくない。
緑は……この環境は除去が強いから、緑のマナクリーチャーからデカブツという戦法が強いわけがない。緑をやるなら白メインで5マナオーバーラン(《超克/Overcome(M20)》)とかを使ったビートにするしかない。」
――ほかの3人みんなのドラフトを見たわけですが、どうでしたか?
八十岡「やっぱり人柄が出るなと。てるやは赤を重ねてたし、やまけんは青白に向かいたいんだなって意志が見えたし、面白かったですね。あとやまけんとKKみたいに上下がわかるのも、答え合わせするのが面白いですね。
やまけんの1-2で、コモンが抜けたすごい強いパックが回ってきて、『これ、上のKKさんは100パーセント《殺害/Murder(M20)》ですね』って(解説席で)言ってて、実際その通りで安心した(笑)。『これならやまけんも気づくだろうから、黒は嫌うだろう』って話してたよ。」
山本「全然気づいてなかった(笑)。」
(一同笑い)
――何か放送で印象的だったことはありますか?
八十岡「うーん……あまりリミテッド練習してない人が多いなっていうのと、アリーナの弊害なのか、誘発忘れが多いなと思って見てましたね。最近のカード能力はmay(~してもよい)じゃなくてmust(~しなければならない)になってるから、忘れるとめんどくさい。
あと、ロンドンマリガンが難しい。技術介入度が高すぎるくせに、勝敗にかかるウェイトがすごく重い。ロンドンマリガンは、マジックというゲームを一段階難しくしたと思う。今までは『キープかマリガンか』の選択だったけど、今は『キープかマリガンか』のあとに、『何を戻すか』っていうさらに難しい選択がある。」
市川「新しいルールだから、まだ解説記事とかもあんまりないし。」
八十岡「デッキ解説のときに、マリガンしたら何を戻すかみたいな説明も今後は必要になってくるのかなと。」
――今後さらなる研究が求められる分野ですね。
スタンダード
――八十岡さんはもし出るなら何デッキで出ましたか?
八十岡「もしワールドマジックカップがまだあったら、ケシスです(去年までは日本選手権で1位と2位のプレイヤーがワールドマジックカップに出場)。ないなら、そこまで勝ちにこだわらないんでグリクシスコントロール使ってましたね。
ぶっちゃけ勝ちたいならケシス一択。今回の1位2位がケシスということからも証明されてる通り、頭1つ抜けてますね。」
――3回に1回くらい事故るとしても?
八十岡「そんなに事故らないです。」
市川「えー、事故るよぉー!」
八十岡「ちょっと遅れるけど間に合うことが多い。」
市川「まあ、緑は遅れても間に合うけど。」
八十岡「多角的な強さがあるし、1枚でいきなり勝てるデッキだから、あとはどれだけ練習を積めるかと、サイドを練れるかにかかってる。プロツアーだったらケシス包囲網になるだろうからわかんないけど、日本選手権だったら勝てる。
逆にプロツアーだったら、グリクシスのほうがいいかもしれない。エスパーより、座った瞬間に相性勝ちするデッキが多いんですよね。プロツアーみたいに相手が強いときは相性ゲーにしたいので、エスパーみたいな丸いデッキよりすごい有利かすごい不利のあるデッキのほうがいい。」
――さっきちょっと出た、グリクシスの赤要素が《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales(WAR)》に弱いという点は?
八十岡「グリクシスの赤で一番強い要素は《魔性/Bedevil(RNA)》ですね。3マナでプレインズウォーカーを除去できてアーティファクトにもさわれる。あと5マナの《龍神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Dragon-God(WAR)》が土地系のデッキにも強い。ブンまわりがあるので早く終わって疲れないというメリットもあります。」
――ワールドマジックカップがなくなって、日本選手権へのモチベーションは下がりましたか? 覚前さんからは「やっぱり大きな舞台で戦える機会をもらえればモチベーションにつながります」ということでしたが。
市川「まあ、(今回の日本選手権は)でかいMCQですね。」
八十岡「ナカシュー(中村修平さん)もコガモ(津村健志さん)もいなかったし。」
山本「確かに、けっこういなかったな。」
八十岡「日本選手権って昔は300人くらいでピリピリしてましたけど、今回1000人くらいでワイワイやるから、昔とは違うイベントだなと思います。これはこれでいいんですけど。プレイヤーズツアーのアジア予選(今年のミシックチャンピオンシップに相当する、プレイヤーズツアーファイナルへの参加権をかけた大会。来冬に名古屋で開催予定)が、人数少なくてピリピリした感じになると思うんで、そっちも楽しみですね。」
●次の予定や目標は?
プロ制度の変更で次々回のMCの権利がない状態です。
毎週のように行なわれるマジック・オンライン内のMCQが次々回のMCの権利になったため、この大会を勝って権利を取るのが一番近い目標です!
八十岡「僕はミシックチャンピオンシップVですね。カリフォルニア行きます。」
山本「僕は、行くとしたらGPバンコクと、GP名古屋かなと。」
市川「次のアリーナのミシックチャンピオンシップVに招待されたので、それに行きます!」
八十岡「たぶん取材とかあるから、早めに行かないと」
山本「ああ、MPL以外の招待者は若干フォーカスされるもんね。」
――おお、それは楽しみですね!
重大なお知らせ^^なんと私市川は・・・次回のArenaMC@カリフォルニアに日本人初!特別招待されました(^O^)!!うれぴ~^^これいつも応援してくれている皆さんのおかげです^^ありがとうございます^^空気読まず優勝目指して頑張ります^^うおおおお!!!!!!111 https://t.co/7ACspF1aF1 pic.twitter.com/bVSdvy8ugR
— Yuuki Ichikawa (@serra2020) September 23, 2019
日本選手権を終え、それぞれ次の目標に向かってスタートしているTeam Cygames。
今後も大会ごとに取材レポート記事をアップしていく予定ですので、どうぞよろしくお願いします。
1.飛行クリーチャー、アーティファクトがどのくらい入ってるか(サイドをどのくらい入れるかの指針にする)
2.除去スペルは何が入ってるか(サイドからのクリーチャー選択やプレイするカードの順番が変わったりする。大雑把に言うと、相手のデッキに《ショック/Shock(M20)》が多いならインスタントのクリーチャー強化スペルはサイドアウトするなど)
3.1枚で勝てるカードは何か?
以上の3点は意識的に見ました。
交換時間が1分間なので、自分はこの程度だけ確認しました。