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【WMC2017】最強の日本代表チーム、優勝への道(後編・決勝)【Day3】

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続いて、決勝と大会全体の振り返りです。

 

 

●決勝:VS ポーランド

プレイヤー 相手のデッキ 勝敗
原根 赤単 ○×○
渡辺 4Cエネルギー ×○×
八十岡 白青サイクリング/td> ○×○

※決勝のカバレージはこちらです

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決勝のテーブルに置かれた優勝トロフィーと国旗

 

準決勝が終わった後、すぐに決勝が始まりました。
もし逆のブロックでドイツが決勝に上がってきていたら厳しかったのですが、ポーランド相手はこちらが先手でマッチアップも有利です。
まず八十岡さんが開始2分くらいで相手のライフを残り1までに押し込んで1本先取、原根さんも有利な赤単相手に《燻蒸/Fumigate(KLD)》を使ってスピーディに先取、一方渡辺さんはトリプルマリガンで1本目を落としたあと、2本目を取り返します。
八十岡さんの2本目は《ドレイクの安息地/Drake Haven(AKH)》3枚と《領事の権限/Authority of the Consuls(KLD)》を貼られたうえで《残骸の漂着/Settle the Wreckage(XLN)》が決まって負け、原根さんの2本目も相手が先手4ターン目《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》まできれいに回って負け。決勝戦にふさわしく、すべての試合が1-1となります。

渡辺さんの3本目、しばらくライフが動かず盤面を取り合いますが、相手の《秘宝探究者、ヴラスカ/Vraska, Relic Seeker(XLN)》と《自然に仕える者、ニッサ/Nissa, Steward of Elements(AKH)》が通りこちらの《王神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, God-Pharaoh(HOU)》がカウンターされると、最後は《川の叱責/River’s Rebuke(XLN)》で負けとなります。
続いて原根さんの3本目。耐えながらもライフを残り8まで削られ、間に合うかどうかというところでしたが、ガンだった相手の《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon(XLN)》を打ち取れたので後顧の憂いがなくなり、そこから《発明の天使/Angel of Invention(KLD)》と《賞罰の天使/Angel of Sanctions(AKH)》を連打。最後は「エンジェルストンピィ」という呼び名もついたビートダウンで勝ち、日本優勝への望みをしっかりとつなぎました。

頂上決戦となる八十岡さんの3本目は、相手の動きが鈍い間に早いスタートダッシュをかけます。相手に4マナそろってからは、《残骸の漂着/Settle the Wreckage(XLN)》を警戒しつつ攻撃。
《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》で「さすがに歴代最高記録」だという7枚ドローから土地をずらりと並べ、最後は《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》で手札を3連続で投げつけて勝つという劇的な勝利をおさめました。
それぞれ15000ドルの優勝賞金(余談ですが、アメリカ国内で獲得した賞金と異なり連邦税で目減りしないのがありがたいそうです)とプロポイント8点をそれぞれ獲得しました。

 

 

 

渡辺雄也 VS Grzegorz Kowalski

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――渡辺さんの試合はどんな内容でしたか?
八十岡「準決勝でナベの相手が事故ったぶん、決勝でツケが返ってきて負けた感じだね。」
渡辺「決勝の1本目、さあやるぜ! と思ったらノーランド、マリガンしてノーランド、5枚見てノーランドで、先手トリプルマリガンはさすがに無理でした。2本目は勝ったけど、3本目は自分のプレイが微妙で負けましたね。あとで動画を見直してみないといけないですけど。」
原根「相手がうまかったですね。ここしかないってタイミングで黒マナをつぶされて。」
八十岡「あれはうまかったね。」
渡辺「僕の場に黒マナがなくて、唯一マナクリ(《導路の召使い/Servant of the Conduit(KLD)》)がいたんですけど、《秘宝探究者、ヴラスカ/Vraska, Relic Seeker(XLN)》のマイナス能力をすぐにそいつに使ってきたんですよ。」
八十岡「あれがプラス能力だったら、返しに《王神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, God-Pharaoh(HOU)》出せてたからナベがたぶん勝ってた。」

――そこが的確に刺さったんですね。
渡辺「あとは、その前のターンに《王神、ニコル・ボーラス》を思い切って出せるかどうかが分岐点だった気がする。盤面を強くしてからブレインズウォーカーを出したかったから、クローン(《多面相の侍臣/Vizier of Many Faces(AKH)》)で相手の《つむじ風の巨匠/Whirler Virtuoso(KLD)》をコピーして、その《つむじ風の巨匠》をカット(《木端/Cut(AKH)》)したんだけど、あそこで代わりに《王神、ニコル・ボーラス》を出してたら、いけてたかもしれない。あとは、《秘宝探究者、ヴラスカ/Vraska, Relic Seeker(XLN)》の返しに《蓄霊稲妻/Harnessed Lightning(KLD)》撃つべきだったか……。」
(プレイングの議論が続く)

原根健太 VS Radek Kaczmarczyk

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渡辺「3本目、ブロックしなかったことで、結果として勝ったよね。こっちの場に《損魂魔道士/Soul-Scar Mage(AKH)》をパクってる3マナ1/3(《博覧会場の警備員/Fairgrounds Warden(KLD)》)がいて、《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》が殴ってきたんです。で、ブロックするかどうか相談されて……」
原根「ブロックしたらどうせ《ショック/Shock(AER)》が来るだろうから、1体1交換になって相手の場に《損魂魔道士/Soul-Scar Mage(AKH)》が戻るだけで、相手にとってはけっこういい交換になる。ただ、こっちとしてはこのあと《発明の天使/Angel of Invention(KLD)》を出す展開になるから、ここで除去を使っといてくれたほうが助かる。」
渡辺「その時の手札は《発明の天使》、《残骸の漂着/Settle the Wreckage(XLN)》と、あと土地が4マナ目までしかなかったんです。だから《発明の天使》は出せるかどうかわからなかった。『《発明の天使》が出せなかったときにすごくつらい展開になるから、ブロックしない選択肢もあるよね』って言ったんです。最終的な判断は任せましたけど。」
原根「やっぱりここでブロックすると、自分の場のクリーチャーがいなくなった状態で返しに《残骸の漂着/Settle the Wreckage(XLN)》を構えてゴーってのが、盤面としておかしすぎる。ちょっとはクリーチャーがいたほうが相手も殴ってきやすいかなと思って、結局《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》をブロックせず通したんです。でもあとになって土地の5枚目も来たし、《発明の天使/Angel of Invention(KLD)》が代わりに《両手撃ち/Dual Shot(XLN)》をくらって死んだときに、『やっぱりブロックしとけばよかった』と思った。でも、そのときブロックしなかったことによって、相手が『こいつは慎重派か、除去ケアってるな。それならこのアタックも通るやろ』みたいな感じで《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon(XLN)》がアタックしてきたんです。それを全部でブロックしたら相手は除去がなくて、そのまま唯一の懸念だった《暴れ回るフェロキドン》が死んでいなくなったおかげで、《発明の天使/Angel of Invention(KLD)》を連打してもダメージをくらうことなく勝てました。」

――なるほど、そういうことだったんですね。
原根「あれはこっちも予想だにしない展開でした。」
八十岡「《暴れ回るフェロキドン》が生きてればたぶん相手勝ってたのに。」
渡辺「結果的によかったですけど、あそこでブロックするかはかなり難しい問題でしたね。」

八十岡翔太 VS Piotr Glogowski

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八十岡さんの相手は、MOで「kanister」として有名で、前回のプロツアーでもトップ8に入っています。白青王神の同じリストで2回競技リーグ5-0リストに載っており、今回もそれだろうと思っていたらデッキが白青サイクリングに変わっていました。原根さんの今回のデッキは彼のものを参考にしているそうです。

原根「この3本目の試合は、相手の4ターン目タップインランドがすべてでしたね。」
八十岡「そうだね。《ドレイクの安息地/Drake Haven(AKH)》を置かれて4マナ立てられた場合、殴りすぎると全部《残骸の漂着/Settle the Wreckage(XLN)》で流されちゃうし、殴らないとサイクリングを2回されて2体にブロックされるんで、ずこく殴りづらいんですよ。だけど4マナ目がタップインだったおかげで、サイクリングでトークン1体しか出ないのが確定したんで、全員で殴れたし除去も合わせられて、《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》まで出せて強い盤面にできた。一方、向こうはもう《残骸の漂着》を構えるしかないから、そうなったらそれ用に攻撃すればいい。《熱烈の神ハゾレト》が立ってて《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》がいれば、最終的にハゾレトビームだけで勝てるんで。」
原根「kanisterは基本あまり顔に出さないでプレイするんですけど、あの4ターン目タップインのときだけはさすがにがっかりしてました(笑)。」
八十岡「あれがすべてだったね。」

 

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両チームが集まっての最終戦。

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優勝トロフィーの授与。画面の向こうに本人たちがいます。

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優勝セレモニーで、原根さんに「グランプリ優勝経験があるとはいえ、殿堂たちに挟まれてどうでしたか?」→「実はグランプリは優勝してないんです」というやりとりが。

 

 

 

●6年目のワールド・マジック・カップ

――優勝した今のお気持ちは?
渡辺「つらい思い出から始まったワールド・マジック・カップですが(初開催は2012年で、飛行機トラブルにより900kmをタクシーで踏破しての参加となり、疲労困憊だった)、ついに優勝できて最高の気分です。」

――八十岡さんはどうですか?
八十岡「まあ、当然の結果でしょ。」
(一同笑い)

――渡辺さんも優勝インタビューで「50%は優勝できると思ってた」って言ってましたもんね。
渡辺「まあ、さすがにチームが強すぎるので。」

――原根さんは初のワールド・マジック・カップ、いかがでしたか?
原根「今回チームがチームなだけにフィーチャーマッチに呼ばれまくりましたけど、僕はプロツアーで一度もフィーチャーされたことがなかったから、緊張感がすごかったです。」

――えっ、いつも冷静なプレイングで、緊張しているようには全然見えませんでしたけど。
渡辺「さすがに呼ばれすぎて慣れてきたよね。」
原根「最初の1回目はかなりドキドキでしたけど、そのあと多少は慣れました。それでも最後の決勝はすごく張り詰めた緊迫感だったので、今はそれから解き放たれてほっとしています。」
八十岡「フィーチャーテーブル、広くてやりやすいでしょ。」
原根「確かにやってて気持ちいいですけどね。ああいうところでプレイしたいから、マジックやってるわけだし。ただ、人の試合を見てるほうが緊張しますね。自分ではどうしようもないから。」
八十岡「最後、2回とも俺が最後の試合になるなんてありえないよ。待たされる時間が長すぎてやばかった。」
原根「向こう側の演出だからしょうがない。『ショータ・ヤソオカが決める!』みたいなのがみんな見たかったから。」

 

 

 

●準備についてと勝因

――皆さん、この大会のために準備はかなりしてきたわけですよね。
渡辺「けっこうしましたよ。僕らが対面でゲームをしたことはほとんどないですが。」
原根「我々の間での対戦データをとってもあまり意味がないので、MOにこもって。」
渡辺「自分のデッキへの習熟度を上げるのが一番、というのが今回の調整方針でした。」
八十岡「リアルでやるより、シャッフルとかがいらないMOのほうが練習効率いいですからね。それに、この期間ほかの世界のプレイヤーたちもみんなMOで調整してて、チーム戦用のカードが変に欠けたデッキによく当たったんですよ。」
渡辺「スタンダード二強のティムールと赤単以外がはやってたし。」
原根「見たことないアカウント名もやたら多かったし。」
八十岡「でも、リーグで4-0すると最後はだいたいあらゆるカードが入った最強のティムールが出てくる(笑)。」
原根「そんなにカード使えるなんて卑怯だぞ! って(笑)。」
八十岡「MOに各地の人たちがいたから、本番同様のちょうどいい練習環境でしたね。準決勝のイタリアの青黒の人にも、『MOで当たったよ』って言われました。原根君は前日くらいにデューク(アメリカのキャプテン・Reid Duke)と当たって王神ミラーやってたし。」
原根「『ちょっとやそっとで投了するな! 全部調べ尽くせ!』って言われました(笑)。」

――今回使ったスタンダードデッキに関して、こうしたらよかったという反省点はありましたか?
渡辺「僕は、2枚の《木端+微塵/Cut+Ribbons(AKH)》がちょっと弱かったですね。《マグマのしぶき/Magma Spray(AKH)》の2枚目でもよかった。インスタントタイミングで動けなさすぎて、リストがばれたあとはつらかった。」
八十岡「《マグマのしぶき/Magma Spray(AKH)》1枚じゃもったいないって言ったじゃん! じゃあ《木端+微塵/Cut+Ribbons(AKH)》欲しかったよ!」
渡辺「いや、《木端+微塵/Cut+Ribbons(AKH)》1枚は必要だから。」
八十岡「贅沢者!」
(一同笑い)

木端+微塵マグマのしぶき

 

――以前はカードを2人で2枚ずつとか、分割して使えましたよね。
渡辺「今回もそうだったら、全チームまったくデッキが変わってましたね。スゥルタイエネルギーはいなくなるし。原根君ももし《否認/Negate(AER)》が1枚あったら全然違ったでしょ?」
原根「マジでひやひやしてました。副陽が相手の時はどうしても2マナ残さざるを得ない場面があったから、ナベさんの墓地をちらっと見て、『《否認/Negate(AER)》は落ちてないな、よし!』って確認して、手札をパチパチしながらゴー!って言ったら、相手が悩みながら《燻蒸/Fumigate(KLD)》撃ってきて、秒で『OK』(笑)。」
(一同笑い)

――そういう駆け引きはおもしろいですね。
八十岡「だから、試合中よく『《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》こっちに入ってたよ』とかは言い合ってましたね。」
原根「ナベさんのデッキには《否認/Negate(AER)》がたまにきいたりするんですけど、僕の相手が《呪文貫き/Spell Pierce(XLN)》を撃ってきたら、『そっちにありそうです』って伝えたりとか。」

――ただ、このフォーマットってあまり普通の人がやる機会はないんですよね。こんなにいろいろなテクニックをせっかく教えていただいても、使う場所がない……。
八十岡「役立つとしたら、王神デッキの使い方くらいじゃない? あれはフルでカード使えてるから。原根君がサイドプランとか記事にしたら、喜ぶ人はいるかもよ。」

――市川さんからの「2行の教え」とかですか?
原根「2行ではないですね……。グランプリ・上海の時、僕全然王神使ってないのに、ひたすら語ってきたんですよ。『いやーこれはこうでこうだからこうなんだよ!』って言われて『はいはい』って適当に答えてたんですけど、けっこうそれが生きました(笑)。」
渡辺「せばちゃんもたまには人の役に立つんだなあ(笑)。」

原根「あとデッキの反省点の話ですが、僕は《残骸の漂着/Settle the Wreckage(XLN)》は後悔しました。あとのラウンドになればなるほど、相手が強くて全然効かなくなっていくので。《排斥/Cast Out(AKH)》だったら勝ってそうな場面は2、3回ありました。」 ――《残骸の漂着/Settle the Wreckage(XLN)》の部分を《排斥/Cast Out(AKH)》にしておけばよかった? 原根「そこは最後までずっと相談してたんです。対戦相手が毎回PV(Paulo Vitor Damo da Rosa)だったら、手堅い《排斥》。でも世界選手権はプレイヤーのレベルもまちまちだから、《残骸の漂着》がありかなと。」 排斥 残骸の漂着

八十岡「あと、《残骸の漂着》はスゥルタイとか打撃体とかの絶対勝てないマッチに、ワンチャン勝てるようになるカードでもあるので。」
渡辺「あと、トップ8に入ったあとはリストが公開されて相手がケアするから、入ってるか入ってないかは全然違うって話も出ました。」
八十岡「リストにはあるけどデッキには入れないのがベスト。」
原根「けど、入れ替え枚数的に赤単の時は入らざるを得ないし、毎回《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon(XLN)》以外が殴ってきて、そりゃそうだよなーと。」

――デッキ提出前に最後まで悩んでいた部分がそこなんですか?
八十岡「あと、自分のデッキのサイドが1枚だけ決まらなくて。」
原根「《砂かけ獣/Sand Strangler(HOU)》は出しました?」
八十岡「出した出した。出して搭乗しただけで3点飛ばず(笑)。」

――最後のサイド1枚がどうして《砂かけ獣/Sand Strangler(HOU)》になったんですか?
八十岡「入れたいカードが全部使われてるから、微妙なカードをいろいろ試すしたけど、結果的に全部いらなくて(笑)、一番バリュー高いのが《砂かけ獣/Sand Strangler(HOU)》だった。」
原根「ヤソさん、最後の1枚を決めるために延々とリーグしてましたよね。」
八十岡「そう。しかも1枚しか入ってないカードだから、いくらやってもまず引かない(笑)。」
渡辺「まあ、ヤソのデッキには《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》が入ってないから、《砂かけ獣/Sand Strangler(HOU)》を入れてもデッキが太りすぎない。」
原根「そういえば少なくとも僕が見た感じ、ほかのチームの赤単は全部《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》を取ってた感じですね。」
八十岡「だいたい《チャンドラ》入り赤単とスゥルタイって組み合わせにしてた。4Cエネルギーには《チャンドラ》が入ってなかったし、純正ティムールを使ってる場合は相方が赤単じゃなくマルドゥ機体とかになってたね。」
渡辺「僕は《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》で勝った試合がたくさんあったので、赤単に《チャンドラ》が実はいらないことに気づけたのは大きかったですね。」
原根「ヤソさんが《チャンドラ》は別になくてもいいという結論を出したのは、けっこう意外でしたけどね。」
八十岡「《チャンドラ》はね、勝つけど負けるカードなんだよね。リターンも大きいけどリスクも大きくて、4マナで5点ゲイン、本体2点のソーサリーみたいになって、何もしてないような時もある。本当に《チャンドラ》が欲しい相手は白青副陽で、あるかないかですごく変わるけど、それ以外は微差。」
原根「そして今回、副陽には当たらなかったですし。」
八十岡「白青サイクリングも、あったらいいけどなくてもまあ勝てる。王神は、あっても勝ったり負けたり。青黒はあったほうがいいけどそんなに変わらない。赤単同系、ティムールとスゥルタイには必要ないって結論になって、じゃあ赤単じゃなくナベのデッキのメインに入れれば勝率がかなり上がるはずだから、トータルでそっちのほうがいいかなと。」

――なるほど。
八十岡「あと、《チャンドラ》を渡すことでこっちのサイドの枠が余ったのもよかった。《チャンドラ》ってサイドの枠を3枚とか消費するんで、絶対4枚必要な《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon(XLN)》がメインに入ることになると、そのぶん《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》がどっか行くみたいになるけど、メインは《アン一門の壊し屋》が一番強い。《チャンドラ》を抜くことで、メインに《アン一門の壊し屋》を4枚入れつつ《暴れ回るフェロキドン》も4枚取れることになった。」
渡辺「そもそも、《チャンドラ》が使えるかもって話があったから4Cになったので、もし《チャンドラ》が使えなかったら、僕のデッキは1から練り直さないといけなかったですね。」

――そこは優勝につながる重要なポイントでしたね。
渡辺「そうですね、今回の僕らの勝因です。」
八十岡「結局、もともときついティムールにしか負けなかったんで。そもそもあんまりA席にはティムール来ないだろうって思ってて、実際1回だけだったし。」
原根「勝因としては、席の読みが当たったのも実際大きいと思います。」
渡辺「さすがに何回も出場してるんで、大会のシステム上こうなるだろうってのをうまく読めたと思います。普通に考えるとリーダーが中央で左右の2人に指示する形になりやすいから、中央には対エネルギーが得意なデッキを置こうと。」
原根「出場した73か国全部の通過者で、リーダー以外にどれくらい著名なプレイヤーが抜けてるかチェックしたら、アメリカとブラジル以外はほぼ見当たらなかったので、じゃあリーダーは真ん中になるだろうと。」

――73か国全部調べたんですか、すごい!
渡辺「まあ名前を見ればわかりますから。」
八十岡「で、AとCだったら絶対にCのほうがサードデッキが多い傾向にあるから、サードデッキに弱い赤単はやめようと。」
渡辺「そういう思考過程のもと、かなり練習もしたんで、結果がついてきてよかったです。」
八十岡「使うデッキが決まってからの練習期間もだいぶあったしね。」
原根「座り順の検討に時間をかけられるくらいの余裕がありましたね。何気に省略されてましたけど、赤単を使うならヤソさんだろうって答えが1秒で出てたのもよくて、WMC予選の時みたいに全然知らないプレイヤーが抜けてきてたら、どんなデッキが得意なのかってところから相談していかなきゃならない。」
八十岡「あと、プレイヤーがみんな強いからABCの配置を好きに決められる自由度があった。わかっててもどうしようもないこともあるんで。」
渡辺「我々はじゃんけんでグーチョキパー出せるけど、ほかの国はグーとチョキしかないみたいな感じかな。」

――こうしてみると、経験と技術によって勝つべくして勝ったということがよくわかりました。

 

 

 

●来年は?

――このチーム、誰かが負けたら誰かが取り返すいいバランスだなと思ったんですが、皆さんはこのチームはどうでしたか?
渡辺「いやー、ヤソが強い。」
原根「結局1回負けただけですよね。」
八十岡「(9ラウンド目の)ティムールだけだね。」
渡辺「原根君と僕が、どっちか負けたら取り返すみたいな感じでしたね。」
八十岡「そこの2人が補って、僕が負けた時は2人が勝つ感じでした。」

――また来年もワールド・マジック・カップに出たいですか?
渡辺「うーん、やりきったから、もうそろそろいいかな(笑)。」
八十岡「システムが来年どうなるかわからないし、日本選手権があるかどうかもわからないからね。去年まではWMC予選で、モダンで勝った人が本番はスタンダードをやらないといけないようなシステムだったから。」
渡辺「今回のシステムはよかったです。」
八十岡「あと、チーム人数が4人から3人になったのがすごくいい変更だった。」

――グランプリ・リヨンから2週間にわたる長旅で、いつものプロツアーなどと違ってほかの日本人プレイヤーもいない3人旅でしたが……。
渡辺「ちょっとだけ行弘が合流したタイミングもありましたけど、基本3人でしたね。」

――日本食が食べたくなったりしないですか?
八十岡「僕はそういうのないんで。」
渡辺「僕も慣れました。」

――原根さんはこれだけ海外に長くいるのは初めてですか?
原根「そうですけど、ラスベガスのグランプリに出た時に毎日ステーキとピザで生活して鍛えられたので、食べ物がおいしいフランスなら余裕です。」

――そういえば、トップ8用のランチがおいしかったとか。さすが美食の国フランスですね。
八十岡「今までのプロツアー飯の中では最高クラスでしたね。メインは牛肉のワイン煮込みで、デザートにミニタルトとかもついてました。」

――3日間を戦い終えて、さすがに疲れましたか?
渡辺「対戦中はなんともないですけど、1日が終わった後に疲れが出ますね。」
原根「僕はまだそこまでには至らず、毎試合終わったあと疲れてます。」

――八十岡さんは試合が短かったので……。
八十岡「今日の全試合にかかった時間を足しても、原根くんの1試合に匹敵するくらいしかないんじゃ(笑)。そもそもマジックはいくらやっても疲れない。」
原根「いや、疲れますよ!(笑)」

ちなみに八十岡さんはこの夜またMOをやっていたそうですが、さすがに当たった相手もビックリしたことでしょう。

 


 

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日本チームが写真撮影のために会場を出ると、「出待ち」のプレイヤーたちにサインを求められました。

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写真撮影は近くのクリスマス装飾がある広場で。後ろの大きな球体を日の丸に見立てています。トロフィーが世界選手権のものと似ていることもあり、渡辺さんと八十岡さんがトロフィーを持っている姿にデジャブを感じます。

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ヨーロッパではありがちなのですが、日曜はほとんどのお店が閉まってしまうため、空いているレストランを探すために歩き回りました。晩ご飯の時には、「準優勝が一番悔しい」という話で盛り上がり、渡辺さんと八十岡さんが決勝で負けた時の古い思い出を昨日のことのように語っていました。原根さんは、カバレージなどの知識でしか知らないことをこうやって直接聞けるのが楽しいと話していました。

今回、生放送が日本の夜の時間帯だったため、多くの方が日本代表の晴れ舞台を生放送で観戦されていたことと思います。見ごたえのあるゲームの連続で、マジックの面白さと奥深さがよく伝わったのではないでしょうか。
Team Cygamesの皆さんは、このあと年末にはグランプリ・シンガポールやThe Finalsなどに参加するほか、2018年には生放送番組も計画中です。どうぞお楽しみに!

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