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【PTRIX】未踏の地、ビルバオに到着【Day0】

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2月2日~4日に行なわれるプロツアー『イクサランの相克』のため、Team Cygamesのメンバーは日本からはるばる20時間かけてスペインのビルバオへとやってきました。
ビルバオは日本人観光客がほぼ訪れないようなところだそうですが、位置としてはスペインの北東の端、フランスとの国境近くに位置しており、美食と芸術で知られる港町です。
ただし、プロツアー会場の周辺は巨大なアウトレットやIKEAやトイザらスなどと新築の集合住宅が立ち並ぶ、いかにもニュータウンといった雰囲気のエリアです。
また、お店などではほとんど英語が通じないのですが、みんな親切なので身振り手振りでなんとか意思疎通ができている感じです。さらに、ここはバスク地方なのでかなりアクセントの異なるバスク語が話されており、スペイン語ができる人でもあまり通じないのだそう。
先日のアルバカーキ(プロツアー『イクサラン』)に引き続き、プロツアーがなければ一生で絶対に訪れることはない土地と言ってよく、マジックというゲームが与えてくれる貴重な経験に感謝です。

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会場近くのスーパーにはスペインならではの生ハム売り場があり、さまざまな種類の量り売りのほか、丸ごと買うこともできます。

さて木曜日の夜、Team Cygamesのメンバー5人に行弘賢さんを加えた〈MUSASHI〉の6人が集合。
渡辺さんだけ水曜の夜に現地入りしており、ほかのメンバーは木曜の昼に到着しました。渡辺さんだけ早かったのは、モダンなので直前の全体練習がないため、少し早めに来て時差調整しておきたかったからということです。
皆さんにプロツアー直前の意気込みを聞きました。

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ソーセージや生ハムなどを囲んで晩ご飯。メニューがスペイン語しかなく、何が出てくるかわからないまま端から注文した結果、こうなりました。

 

 

 

●合宿に降りてきたデッキ

――先週末に、八十岡さんの家で合宿があったそうですね。モダンのデッキを決めるためですか?
八十岡「いや、デッキを決めるためというより、意見交換しようと。」
覚前「みんなで集まってやろうってことになって。」
渡辺「この場にはいない原根君(7人目の〈MUSASHI〉こと、Hareruya Prosの原根健太さん)も含めて、全員集まりました。」
八十岡「ノートパソコンを持ち寄って、それぞれMOやってました。」
渡辺「互いに対戦するんじゃなくて、ほかの人がやってるゲームを見て学ぶためですね。」
市川「空間を共有することによって、いろんな発想を出すというのが目標です。」

――なるほど。そうしたほうが、1人だけで練習するよりも発展性がありそうです。
市川「デッキに関するフィードバックを共有するときも、同じ空間にいるほうが立体感が増すというか、わかりやすさが全然違うので、時間がすごく短縮されますね。」
八十岡「大きいテレビにつないでMOの画面をみんなで見たりもできるんで。」
市川「気になるデッキは大きい画面に映して、フィーチャーテーブルみたいな感じでみんなで話し合ったり。」

――でも、そこで使うデッキが決まったわけではないんですか?
八十岡「その段階ではまだみんな2、3個で迷ってて、あとは各々で決めようって感じでした。」
市川「でも、最終日の終了直前、23時ごろに突如彗星のごとく現れたデッキがあって……。」
八十岡「最後の土・日くらいになってみんながよく当たるようになったデッキがあって、そのよくわからないデッキにみんなブン回られて負けていると。」
渡辺「それより前にも存在はしてたんですけど、急に増えた。」
市川「『また当たった』『また負けた』『リストがだんだん洗練されてきた』みたいなやりとりが何度もあって。で、『このデッキ、回してみた?』ってみんなに聞いたら、まだやってないと。『じゃあ原根君、組んで回してよ』って言ったら、『えー、このカード何チケもするからイヤだ~』『うるせぇ! 早く組め!』って感じで(笑)。」
渡辺「しょうがないからけっこうカード貸してあげて(笑)。」
市川「回させてみたら、ブン回って『何これやばすぎ!』ってなったけど、その日は時間切れで終わりました。」
八十岡「24時超えちゃったからね。でもそのあと行弘は残って朝までやってたよね。」
行弘「そう。原根君が3-0くらいしたところでみんな帰ったんですけど、強そうだから俺も回してみようかなと。そうしたら、それまでモダンのリーグは1か月くらいやってて1回も5-0したことなかったのに、そのデッキは初回しでいきなり5-0したんです。その瞬間、運命を感じましたね。これは天から光が降りてきたなと(笑)。」
渡辺「僕もその日帰ってからやってみたら5-0しましたよ。」

――それはすごい。神のデッキじゃないですか!
行弘「原根君も5-0してたから、3人とも初回しで5-0したことになって、これはすごく強いデッキかもってなったんですけど、ムラが激しいので、その後だんだん勝率は収束していきました。」

――最終的に皆さんがそのデッキを選んだかどうかは、実際の大会を見てのお楽しみということにしておきましょう。
市川「神のデッキが現れたか!? というところで合宿は終わったけれども、その波に乗るかどうかは各自の判断なんでね。」
八十岡「その前までそれぞれが調整してたデッキもあるし。」
市川「なんにせよ、今まで〈MUSASHI〉でやってきた経験から、プロツアー直前のタイミングにMOでポッと出てくるデッキに対しては敏感になったほうがいいってことがわかってきたんで。今回ちゃんと対応できたのは、結果はどうあれいいことだったかなと。」
八十岡「そうだね。自分で使わないにしても、どっかほかの調整チームが使ってる可能性もあるから、動き方を知っておくことに意味はある。」

 

 

 

●環境予測

――今回のモダンの環境はどう予測していますか?
八十岡「まあ、トップ2はトロンとジェスカイ。あとは青白かなと思ってますけど。」
行弘「ちなみに、《天界の列柱/Celestial Colonnade(WWK)》(青白のクリーチャー化する土地)、会場で62ユーロ(8500円くらい)するんですよ。日本で買うと4000円くらいなんで、相当売れたってことだと思います。」

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渡辺「直前に青白はMOでもそこそこいたし。」
八十岡「青白とかジェスカイはフェアデッキの中では一番強いから、トッププレイヤーが好きそうなデッキなんだよね。いろんなデッキに対して50%あって、『腕でなんとかなるやろ』みたいな人が選びそう。」
行弘「マジックが好きな人は選びそう。マジックが楽しめるデッキだから。」
市川「チームでの調整の道筋として、最強のコンボデッキ、最強のアグロデッキ、最強のフェアデッキを探そうってところからスタートしてて、ほかのチームも同様だと思うんですけど、どこも最強のフェアデッキは青白ベースって結論になってそうだなと。最強のコンボがトロンで、アグロだけまだわからないんですけど……人間っぽいかな。」
行弘「バーンも多いと思うけどね。」
八十岡「ドラフトで1-2したら、たぶんバーンにいっぱい当たるよ。」
市川「バーンには当たりたいけど、1-2はしたくないな。」

――ただ、やはりモダンのラウンドは当たり次第でなんとも言えないですよね。
八十岡「モダンはブレるから、みんな変な当たり方になると思いますよ。」
渡辺「2日間全10ラウンドやって、全部違うデッキと当たるってのも普通です。」
行弘「一番多いといわれるデッキでも占有率8%とかの世界なので、ローグデッキが50%くらいいてもおかしくない。」

――結局、環境予測をしてもそんなに意味がないと。
市川「やっぱり一番強いデッキを作って持ってくるってのが一番です。」
渡辺「あとは使い方やサイドボードに悩まない、理解度が高いデッキを使うことですね。」
――ところでこのところ、ちまたでインフルエンザがすごく流行してニュースになっていましたよね。皆さんはプロツアー前にかからないように、何か心がけてたんですか?
市川「一度もかかったことないから、気にしたことない。」
渡辺「俺もない。」
八十岡「かからないと思ってるから。」
市川「予防接種も受けてないし。」
八十岡「予防接種したけどかかった人、身の回りにけっこういるし。」
市川「なんか予防接種ってメタゲームなんでしょ? A型のを受けといたら、タイプがずれたらそっちにかかって負けるみたいな。」
八十岡「それでもやらないよりはマシだけどね。」
市川「まあ、俺はかからないほうにオールインしてるから。」
八十岡「俺、昔39度5分出てフラフラになったけど、一晩寝たら治ったから大丈夫。寝て起きて治んなかったら、そのとき考える。」
行弘「逆に、インフルじゃないって言われ続けるほうがつらいですよ。僕、昔1週間39度の熱が出続けたことがあって、3回病院に行ったんですけど、毎回インフルじゃないって言われて、じゃあなんなんだよと。インフルだって言われたほうがよっぽど安心ですよ。今から思うと、プロツアーが終わってすごい体調悪いときだったんで、たぶん疲労が原因だったと思うんですけど。せばちゃんもそうだよね。」
市川「俺もそう。プロツアーから帰る飛行機の中でいつも、体調が悪くなっていくのを感じとれるからね。濡れマスクしてても喉がやられる。」
八十岡「そう思ってるからってもあるんじゃない?」
市川「それはあるかもね。プロツアーではマジック三昧で楽しい3日間なのに、帰ったら仕事が押し寄せてくるから、帰りたくないって気持ちが反映されてるかも。」

 

 

 

●今回の目標は?

――モダンの予想は立てづらいと思いますが、恒例の質問としてプロツアーの目標を教えてください。
八十岡「5敗。ドラフト5-1とモダン6-4。個人的には4-2と7-3寄りかな。この環境、ドラフト5-1できるビジョンがないから。」
市川「3-0は難しいよね。」
八十岡「ただ今日のドラフトでは3-0したんで、明日もこの流れでいいカードが回ってきてほしいですね。明日も2-4で《貪欲なチュパカブラ/Ravenous Chupacabra(RIX)》が回ってこないかな~。」

――覚前さんは?
覚前「最低でもトップ8ですかね。」

――おおっ!
市川「自信あるね。」
覚前「ドラフトは4-2できたらうれしいくらいなんですけど……」
渡辺「えっ、じゃあ構築で1敗1分け以上ってこと!?」
覚前「できるかなと思ってます。」
行弘「リーグで平均4-1はしてたよね。」
覚前「4回5-0して、最低でも3-2だったから、自信はあります。風が吹いてる気がします。正直、目標は優勝って言いたかったんですけど、それはまた次にとっておきます(笑)。」

――それは楽しみですね。渡辺さんはどうですか?
渡辺「僕は……初日抜けです。」

――急に謙虚な目標になりましたね。
渡辺「僕、今までモダンのプロツアーで2回に1回は初日落ちしてて、モダンの成績が一番悪いんですよ。」
覚前「(小声で)ちなみにわたくし、2回中2回落ちてます(笑)。」
渡辺「あと、今回カカオ(中村肇さん)が一緒に来てるんですけど、カカオがいるとき必ず僕初日落ちしてるんですよ(笑)。」
八十岡「疫病神!(笑)」
渡辺「でも(グランプリ・静岡2017秋でベスト4入りしたことで)プロツアーの権利をあげたの、俺とヤソなんだよねー。なんで、そのジンクスを破るためにも、モダンのプロツアーに苦手意識があるのを払拭するためにも、とりあえず初日を抜けたい。」
山本「僕も5敗で、プロポイント10点欲しいです。内訳はドラフト5-1でモダン6-4。ちょっとモダンで7勝以上は求められないんで。」
市川「モダンで7勝以上は、相当追い風が吹いてないとね。」

――最後に市川さんは?
市川「優勝します!」

――そこは聞くまでもなかったですね。
市川「常にナンバーワンを目指してなきゃ、このゲームやってらんないからなー。」
八十岡「夢を追いかけ続けるのも疲れるよ?」
市川「1位を目指せなくなったらそれはもう、辞めるときだから。」
覚前「素晴らしい心がけ。心がけだけでもね。」
市川「最近、ちょっと体はついてこないけど、心だけでも若くいかないと(笑)。」
このあと、皆さんはホテルに戻って最終的な話し合いののちデッキを提出する流れでした。この時まだ山本さんだけデッキが決定していないとのことでしたが、体力的に楽かどうかや、「相手にとっての不快指数が高いほうを選ぶべき(by行弘さん)」「自分が回しててストレスを感じないほうがいい(by市川さん)」などいろいろな要素がデッキ選択の決め手になるようです。

 

05
天気は到着してからずっと悪く、雨が降ったりやんだりしています。八十岡さんは傘を持ってきていなかったので、市川さんと行弘さんが2人で半分ずつ雨から守ってあげていますが、八十岡さん自身は「みんなが傘なんか持ってくるから雨が降るんだ」という謎の理論(?)を提唱していました。

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