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【MTGWAR】1日目モダンラウンドまとめ【Day1】

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イレギュラー尽くしのミシックチャンピオンシップ in ロンドン。

正式発売前の『灯争大戦』を使用した初日のブースタードラフト3回戦が終わった後は、『灯争大戦』のカードを使用できないモダンラウンド5回戦が待ち受けている。

ロンドンマリガンかつ対戦前リスト公開 (※サイドボードは種類のみ公開) というイレギュラーは、モダンフォーマットにどのような影響をもたらしたのか。

……結論から言えば、影響をもたらした部分とそうでない部分が極端に分かれる結果となった。

メタゲームブレークダウンを見ればわかるように、トップメタとなったのはトロン・イゼットフェニックス・5色人間。Tier2には青白コントロール・ドレッジ・グリクシスシャドウ・鱗親和・エルドラージ系といったデッキが名を連ねる。

だが、イゼットフェニックスやドレッジなどはたとえ通常のルールでも同様の勢力を保っていたであろうデッキたちだ。

すなわちこれらのデッキは、「ルールの変更を認識しつつも、それによって環境の多様性が失われない以上、依然自分たちの優位性は保たれている」と信じた者たちによって選択されたものと考えられる。「雑多なデッキに強い」というポジションはこのルールでも依然として有効だと考える、ルール変更によってデッキ選択がそこまで影響されなかった集団と言えるだろう。

一方トロンや5色人間は、通常のモダン環境と比べても明らかに数を増している。ということは、そこには明確にロンドンマリガンやデッキリスト公開の影響がある。トロンに関してはロンドンマリガンによりそもそもデッキポテンシャルが強力になったと考えられての評価だろうし、5色人間はリスト公開が《翻弄する魔道士/Meddling Mage》の指定に与える影響を加味してのものだろう。

では、そういった今回のルール特有のメタゲーム展開を見せたモダン環境があったとして、それを実際に体験してみた者たちの実感は、はたしてどのようなものとなったのか。

初日の激闘を終えたTeam Cygamesの5人に、感想や反省点を述べてもらった。

 

 

● 渡辺 雄也 (使用デッキ:トロン) モダン4勝1敗 総合7勝1敗

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Urza's-TowerKarn Liberated

渡辺「トロンはロンドンマリガンの恩恵を最も受けられるデッキということで選択しました。実際この5回戦で10回以上マリガンしているので、ロンドンマリガンのおかげで勝てた部分もかなり大きいと思います。」

 

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗 (※マッチ単位)
4 5色人間
5 赤黒プリズン (黒力線、月、リリアナ、ラブルマスターetc)
6 鱗親和 ×
7 呪禁オーラ
8 無色エルドラージ

渡辺「ロンドンマリガンに関しては少し印象に残った出来事があって、最終ラウンドは1-1で迎えた3本目、先攻の相手が《血清の粉末/Serum Powder》を見せながらマリガンを宣言したんです。では、次にキープ/マリガンの宣言をするのは先攻と後攻、一体どちらのプレイヤーでしょうか?」

Serum Powder

――え……?もし渡辺さんがこのタイミングでマリガンの宣言をしちゃうと、相手は7枚の手札をキープ/マリガンするのに対して、渡辺さんが6枚 (にする予定) の手札をキープ/マリガンすることになるから、なんだか公平ではない気がするので、『もう一回相手が宣言する』のでは?

渡辺「ブブー。正解は『次は後攻のプレイヤーがキープ/マリガンする』でした。では僕がマリガンしたとして、相手が今度は普通にマリガン、僕がダブルマリガン。そうしたらまた相手は手札から《血清の粉末》を公開してマリガンを宣言しました。次にキープ/マリガンの宣言をするのは先攻と後攻、一体どちらのプレイヤーでしょうか?」

――先ほどの例からすると、後攻の渡辺さんがキープ/マリガンの選択をしないといけないということになるんでしょうね。ということは、最終的な手札の枚数にかかわらず、必ず交互にキープ/マリガンを宣言するんですね。

渡辺「はい。ロンドンマリガンに《血清の粉末》が絡んだときにどうなるかわからなかったので、ジャッジに確認したらそういう裁定でした。」

八十岡「まあそのあたりはまだルールも固まってないところだろうからね。明日には裁定が変わってるかもしれないw」

 

 

● 市川 ユウキ (使用デッキ:5色人間) モダン4勝1敗 総合6勝2敗

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Meddling-Mage Aether Vial

市川「このデッキはリスト公開で《翻弄する魔道士》の指定がやりやすくなっているのと、ロンドンマリガンで《霊気の薬瓶/AEther Vial》やサイドボードカードなど探したいカードが探しやすくなっているということで、今回の特別ルールの両方の恩恵を受けられる数少ないデッキということで選択しました。」

 

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗 (※マッチ単位)
4 トロン
5 イゼットフェニックス
6 鱗神話
7 イゼットフェニックス ×
8 白緑デス&タックス

Arclight Phoenix Mantis Rider

市川「4-1は御の字ですが、7回戦目はもう少しうまくやれてもしかしたら全勝できたのかもと思うと悔やまれます。イゼフェニ相手で変身した《氷の中の存在/Thing in the Ice》と《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》に殴られていて相手のライフは3、こちらのクリーチャーは全部手札、で場にカウンターが3個乗った《霊気の薬瓶/AEther Vial》と『人間』指定の土地2枚と《地平線の梢/Horizon Canopy》がある状態で、手札に《カマキリの乗り手/Mantis Rider》と《幻影の像/Phantasmal Image》があったんです。」

Phantasmal Image Cavern of Souls

市川「この状況、もし《霊気の薬瓶》から《カマキリの乗り手》を出し、手札から《幻影の像》を唱えられたら、スタックで《稲妻/Lightning Bolt》を打たれて《カマキリの乗り手》が落ちたとしても、相手の《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》をコピーできて相手の頓死になりうる場面だったんですよね。ただ残念ながら土地が全部『人間』指定で、《幻影の像》がプレイできなかった。人間デッキは《地平線の梢》をトップする受けがあるので引いた土地は基本的に置くのが定石ですが、《幻影の像》の受けを考えたら3枚目の土地をセットしないこともありえたな、そうしたらマッチ勝てたかもな、と少し後悔しました。」

 

 

● 八十岡 翔太 (使用デッキ:親和) モダン4勝1敗 総合5勝3敗

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Arcbound-Ravager Cranial Plating

八十岡「ドラフトで負けた分、モダンではダイスロールでよく勝てたね。《幽霊街/Ghost Quarter》が2枚入ってるんだけど、トロンに2回当たって、先攻で《頭蓋囲い/Cranial Plating》装備して殴りながら土地を割って実質《時間のねじれ/Time Warp》して勝ったりしたね。」

 

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗 (※マッチ単位)
4 呪禁オーラ
5 タイタンシフト
6 トロン
7 トロン (Martin Juza)
8 鱗親和 ×

Experimental Frenzy Dismember

八十岡「最後は環境で一番相性悪い、当たってはいけないデッキを踏んでしまってダメだったね。一応《実験の狂乱/Experimental Frenzy》が置けるか、飛行クリーチャーに《頭蓋囲い/Cranial Plating》付けて空が止まらないと勝てたりはするんだけど、《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》に《頭蓋囲い》2枚付けて殴ったら《四肢切断/Dismember》されて無事死亡。」

――ロンドンマリガンは活用されましたか?

八十岡「かなり活用したね。10回くらいマリガンしたし、親和はサイドカードを探したいデッキでもあるからね。先手ダブルマリガン後の7枚が蛾土地含む土地3枚、《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》2枚、《バネ葉の太鼓/Springleaf Drum》、《オパールのモックス/Mox Opal》。どの2枚を戻す?

Springleaf-Drum Mox Opal

――え、うーんと、3ターン目のドローが《大霊堂のスカージ/Vault Skirge》だと損するから、土地と《オパールのモックス》かな……?

八十岡「それだと3ターン目の『アタッカー+3マナ』が確定しなくなるから、トップ《頭蓋囲い/Cranial Plating》の受けがなくなるね。他方、土地1枚は確定として、《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》を戻すとトップの受けが増えるけど、今度はさすがに打点が低くなりすぎてしまう。で、結局実戦では土地と《バネ葉の太鼓》を戻したんだけど……トップが《実験の狂乱》で『おい!』ってなった。」

八十岡「まあとにかく言えることは、ロンドンマリガンは難しいということだね。」

渡辺「それは言える。ロンドンマリガンはかなり難しいね。」

 

 

● 覚前 輝也 (使用デッキ:黒緑ジャンク) モダン3勝2敗 総合4勝4敗

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Tarmogoyf Liliana of the Vei

覚前「全体的に、キープがぬるかったなと反省しています……。」

 

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗 (※マッチ単位)
4 イゼットフェニックス
5 5色人間
6 青白コントロール ×
7 トロン ×
8 ストーム

Field of Ruin

覚前「R7のトロン戦で、メインボード後手、相手マリガンに対してこちらは《廃墟の地/Field of Ruin》含む土地5、《致命的な一押し/Fatal Push》、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》という7枚。これをキープしてしまって3ターン目に揃われて負けたんですけど、正直マリガンした方が良かったですね。マリガン後に《致命的な一押し/Fatal Push》とかを初手に引いたとしてもロンドンマリガンなら下に送れますし、後手ならハンデス+《闇の腹心/Dark Confidant》とかの方が《森の占術/Sylvan Scrying》落とせて揃うの妨害できたりもしますし。甘えてました。」

Fulminator Mage

覚前「サイド後もハンデス+《タルモゴイフ/Tarmogoyf》+《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》みたいな感じで《廃墟の地/Field of Ruin》がないという手札を深く考えずにキープしてしまって負けてしまったんですけど、サイド後なら《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》もあるんですよね。このマッチならマリガンもそこまでリスクがないので、探しにいった方が良かったです。」

 

 

● 山本 賢太郎 (使用デッキ:5色人間) モダン1勝4敗 総合3勝5敗 (初日敗退)

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Champion of the Parish Thalia's Lieutenant

山本「せばちゃんと2~3枚しか変わらないレシピで出たんですけど、人間という選択は少し安易すぎたのかな、と反省してます。」

 

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗 (※マッチ単位)
4 唸りプリズン ×
5 鱗親和 ×
6 トロン
7 トロン ×
8 ドレッジ (Kai Budde) ×

Torpor-Orb Damping Sphere

山本「R4はこのラウンドだけリストが非公開なんですが、よりにもよって一番リストを知りたい唸りプリズンに当たってしまい、サイド後は意識の外だった《倦怠の宝珠/Torpor Orb》を置かれて負けました。R5も相性の悪い鱗親和で、1本目は《翻弄する魔道士/Meddling Mage》で《古きものの活性/Ancient Stirrings》を腐らせて奇跡的に勝利しましたが、2本目3本目は順当に負けました。」

山本「R6のトロンはG1相手4マリ、G2こちら4マリしても《減衰球/Damping Sphere》引けずで、G3はこちらワンマリでやっぱり《減衰球》は引けませんでしたが相手も微妙な回りでギリギリ間に合って勝ち。R7のトロンはG1相手ダブマリで拾うも、G2G3で《減衰球》を見ずに負け。R8はKai Buddeのドレッジに成すすべなく敗北しました。」

山本「フィールドを見ても、トロンには相性良くはなく、イゼフェニには微有利、同型は五分で、ドレッジには不利と、立ち位置がかなり悪い印象でした。途中で周りを見渡しても、どのデッキにも当たりたくない感じでしたね。」

 

 


ロンドンマリガン、影響大。

事前に予想されていたとおりではあるが、ロンドンマリガンは『トロンの大幅な強化』と『サイドカードへのアクセス強化』という2点において、正式採用されればモダン環境にかなり大きなインパクトをもたらすものであることは、既に実証されたと言えるだろう。

ともあれ、Team Cygamesでは4人が初日突破を果たし、しかも渡辺は初日1敗で2日目は1番Podからのスタートという好位置に付けている。市川も6勝2敗でトップ8入賞が十分狙える位置だ。

だが2日目は、さらに過酷な戦いが彼らを待ち受けている。はたして彼らはトップ8に進出し、3日目の決勝トーナメントに勝ち残ることができるのか。

2日目の『灯争大戦』ブースタードラフト3回戦+モダン5回戦の模様も、引き続きインタビューとともにお伝えしていく予定なので、楽しみにお待ちいただけると幸いだ。

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