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【MCVI】来期を見据えて今、リッチモンドへ【Day0】

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11月8日(金)~10日(日)、アメリカのリッチモンドでMythic Championship VIが開催されます。

この東海岸の古い町リッチモンドには、2018年6月にプロツアー『ドミナリア』でやってきました。
今回も会場は同じで、相変わらず会場近辺を少し離れると急に何もなくなり、うら寂しい雰囲気の場所です。

今回参加するTeam Cygamesメンバーは、現在日本で2人しかいないプラチナレベルの覚前輝也さんと、先日MPLのパール・ディヴィジョンで1位突破した記憶も新しい八十岡翔太さんの2名。

覚前さんはなんと飛行機の予約を1日間違えており、水曜夜到着の予定だったのが木曜夜の到着となってしまいました。

というわけで覚前さんはまだ現地にいないので(※夜に無事到着して安心しました)、八十岡さんにだけ、大会前日の夜に軽く取材をさせていただきました。

 

 

 

●八十岡翔太インタビュー

――Mythic Championship Vからこのかた、MPLがあってグランプリ・名古屋2019の解説が入って、ずっと忙しかったですよね。

八十岡「過密スケジュールでした。まあフォーマットがスタンダードでまとまってたからまだよかったけど……。」

――『エルドレインの王権』ドラフトについて、記事では一度も取り上げていなかったのですが、どんな環境ですか?

八十岡「今回はちょっと特殊で、相当久しぶりに単色が強い環境なんで、最初は勝手がわからなかった感じでしたね。特にアンコモンの混成マナのクアトロシンボル(《オークヘイムのレインジャー/Oakhame Ranger(ELD)》など10種)が強くて、2色より単色のほうが受け入れが広いので、できるなら単色を目指して、できない時にどう2色に行くかという環境かなと。」

――かなり難しい環境だという話を、グランプリの解説でもしていましたね。

八十岡「空いてる2色に行ったからといって勝てるわけじゃなくて、3、4手目くらいで空いてる色があったらそこに飛び込んで単色に進むとけっこう間に合うから、ポジション取りがすごく難しいなと。決め打ちも正当化される環境なんで、安定して勝ちづらい印象ですね。」

――その中で八十岡さん的に強い色、弱い色は?

八十岡「色の強弱はそんなにないかな。白単はちょっと弱いですね。赤は色としては強くないけど、赤単が組めると爆発力があったり。あと黒は強いけど黒単にはまずならない。コモンに《パイ包み/Bake into a Pie(ELD)》とかがあって人気が高くて、みんながつまんでしまってカード枚数が足りなくなるので。黒を取ると緑黒か青黒くらいしか選択肢がなくなってしまって、ピックが難しいですね。」

――そうすると、いわゆる“レア環境”ではない感じですか?

八十岡「今回は“アンコ環境”ですね。レアとアンコモンは強さにあまり差がなくて、コモンとアンコモンはかなり差がある。すごく強いカードが多いアンコモンを何枚使えるかが大事で、中でもさっき言った混成マナ10種がまったく入ってないようなデッキは、その時点でけっこう不利です。」

――なるほど。よくドラフト合宿のレポート記事で聞く質問ですが、初手で取りたいカードは何ですか?

八十岡「レアだとやっぱりプレインズウォーカーになっちゃいますね。《呪われた狩人、ガラク/Garruk, Cursed Huntsman(ELD)》や《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns(ELD)》はただ強いんで。あとは《紋章旗/Heraldic Banner(ELD)》から単色に行くか、混成マナのアンコモンだったら緑黒の《不死の騎士/Deathless Knight(ELD)》、白黒の《揺るぎない騎士/Resolute Rider(ELD)》あたり。」

紋章旗 不死の騎士
揺るぎない騎士

八十岡「あとは友好色と対抗色のマルチカラーも半分くらい強い……とはいえ、そこから始めるとほかの色の受けがなくなるので、それらがパック後半で回ってきてそこから2色に入るって形がいいですね。
つまりアンコモンが肝で、最終的には“どのアンコモンが卓に出たか”になってきます。単色ピックをしていても、自分と違う色の混成マナクリーチャーがいっぱい出てしまったら終わり、みたいな。」

――よくわかりました。一方スタンダードについてですが、フード系デッキは大会の何割くらいを占めると思いますか?

八十岡「5割くらいじゃないかな。フードを倒しに来る派閥もいるはずなんで。ただ直近の結果とか見てると厳しそうで、倒す派閥にも限界があるから……。」

――MPLでそのフードの海を、八十岡さんはシミックフードで勝ち抜いたわけですが、自信のほどはいかがでしょう?

八十岡「勝ってしまったので、逆にきついですね(笑)。マジック、2週連続で勝たないんですよねー。グランプリでくまP(熊谷陸さん)もシミックフードで勝ったし。そういうのもあってみんなも対シミックの練習してくるし、サイドプランとかもばれちゃってるし。」

――先週のグランプリ・名古屋2019では解説でしたが、そこで何か得たものはありますか?

八十岡「うーん、フードは難しいデッキだなと。みんな多かれ少なかれミスはする。今回はプロツアーなのでレベルは高くなってると思うんですけど、それでもまだ起こりうる。」

――“ワンミス即死デッキ”というふうに言われることもありますね。

八十岡「まあ即死は言いすぎですけど、100点でプレイするのはほぼ不可能なデッキなので、うまい人でも互いに細かいミスを積み重ねていって、その減点分の差が出るのかなと。《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns(ELD)》は強いから多少能力の使い方をミスっても勝てるんですけど、お互いに出し合ったときはそこの細かい差が出るんで。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》にちょっと近いかなと。あれも能力3つ全部強くて、出してすぐ奥義のときもあったし。《オーコ》も同じで、3つどれを使っても強いけど、100%使うのは難しい。」

王冠泥棒、オーコ ゼンディカーの同盟者、ギデオン

――そこの戦術が観戦時の見どころですね。最後に、今回の目標をお願いします。

八十岡「ミシックポイントの加点的に、5敗かな。それくらいできれば、来期のMPL入りが安定させられると思います。」

――ありがとうございます、がんばってください!

 

 

 

●殿堂セレモニー

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7日(木)の夜はリード・デュークさんの殿堂入りセレモニーが開催され、同じ殿堂顕彰者である八十岡さんが招待されていました。かなりラフな格好の参加者もいましたが、一応ドレスコードがあるイベントなため、八十岡さんもジャケットを持参。

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会場は講演会のような風景です。

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デュークさんの受賞の挨拶には、支えてくれた家族への感謝などに加えて、八十岡さんの名前も登場しました。カイ・ブッディ、ベン・ルービン、ガブリエル・ナシフという殿堂プレイヤーらの名前と並んで、ニュアンスとしてはそれぞれが持つマジックの資質を称え、自分もそうありたいといった内容のようでした。

今回は、八十岡さんは来期のMPL継続を盤石のものにできるかどうか、覚前さんは来期のマジックに対する取り組み方をどうしていくかがかかったMythic Championshipとなっています。
また、今のスタンダード環境は《金のガチョウ/Gilded Goose(ELD)》と《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns(ELD)》が席巻していますが、この大会が彼らにとって最後の華となるのか、もしくは食物の大海を越える新しい風が吹くのか、そちらも注目です。

明日からのレポート記事をどうぞお楽しみに!

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晩ご飯を記念撮影する八十岡さん

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