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Team Cygames『アモンケット』合宿レポート

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4月28日(金)~30日(日)の3日間、Cygames会議室にてプロツアー『アモンケット』に向けた恒例のドラフト合宿が行なわれました。いつも通り、計18人による2卓で実戦を意識したドラフトが行なわれ、盛んに意見交換が行なわれていました。今回もTeam Cygamesの4人に環境の雑感などを聞きました。

参加メンバー一覧(敬称略)順不同
山本賢太郎、市川ユウキ、渡辺雄也、覚前輝也、行弘賢、中村肇、中村さら、瀧村和幸、松本友樹、井上徹、川崎慧太、玉田遼一、三原槙仁、石村信太朗、大礒正嗣、松本郁弥、高尾翔太、熊谷陸

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全体の様子。取材を行なった30日昼の時点では、計10回目のドラフトが行なわれているところでした。

 

 

 

●タイムカウント入りのドラフト練習

――今回の合宿では、何か今までと違うところはありますか?
渡辺「金曜と土曜はいつも通りだったんですけど、日曜日からはタイムカウントをして、パックとパックの間以外はピックしたカードを見ないようにしてドラフトしました。制限時間とか、プロツアーとまったく同じやり方ですね。」
市川「リアルと同様に、実戦的にやろうと。」

――いつもジャッジが「残り30秒です」とか言っている、アレですね。タイムカウントは、その回のドラフトで抜け番の人がやるんですか?
市川「そうです。」
渡辺「今まではわいわいしゃべりながらやってましたけど、この形での練習中はみんな一言もしゃべらないですね。あんなにうるさかった行弘も真剣(笑)。」

――そのほうが本番に近い練習環境ですね。やってみてどうですか?
山本「かなり違います。シリアスな雰囲気になっていいなと。」
渡辺「練習だと、どっちのカードにしようかなって思ったら今までのピックを見直して決めれるけど、本番だったら記憶を頼りにしなきゃしけないので。ピックしたカードをちゃんと覚えて、合間の時間にしっかり確認して、考えることが多くなります。」

――タイムカウント、ちょっとやってみたい気もします。残りカード枚数に応じて秒数が変わるので、難しそうですけど。
渡辺「1回目はカカオ(中村肇さん)にやってもらって、2回目はAさん(松本友樹さん)だったんですけど、Aさんはまじでポンコツでしたね(笑)。」
市川「まだパックを開封してる途中なのに『じゃあ残り40秒です』って言い出して、全員に『おいっ!』って突っ込まれた。あの子は、ちょっと他人の気持ちがわからないだけなんです(笑)。」

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ピック中の風景。後ろの机に座っている中村肇さんが、タイムカウントをしています。

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手元にタイマーと、残り枚数が何枚の場合制限時間は何秒かというメモを置き、「12枚、35秒です。ピックを開始してください。……残り10秒……ドラフト」と、大会でジャッジがやっているのと同じように読み上げます。

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ドラフト中は全員とても静かで、真剣な表情です。

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しかしピックが終わるとにぎやかになり、「あのピックのときはこうだった」といった答え合わせが始まります。デッキ構築中の手元を互いにのぞき込み、「なんで青やってないの!?」とか、「フラッド受けを考えたらこっちのほうがいい」とか、相談しながら構築していました。

 

 

 

●マジック・オンラインの利用

――今回は、今までと違ってマジック・オンライン(MO)に『アモンケット』が導入されていて、合宿前にドラフトができましたよね。
市川「みんなけっこう事前にやってた。」

――皆さんは前もってどれくらいやっていたんですか?
覚前「僕は10回くらい、MOでドラフトやってました。」
渡辺「僕は20回くらい。」
市川「4回くらいですかね。」
山本「俺は6回くらいです。」

――では、ある程度スタートラインが上がってからの合宿という感じでしたか?
覚前「人によって違いますね。」
市川「僕とか、全然できてなかったし。できてる人は最初から勝ってるイメージ。」

――やっぱりMOが先にあるとありがたいですか?
渡辺「そうですね、今回前もってけっこうやっていて、『この色の組み合わせはよくわかんないな』と思ったところを、合宿で集中的に試してスキルアップできるんで。」

――ただMOのドラフトって、同じ卓の人とマッチングしないリーグ制ですよね。リアルのドラフトに比べるとどうですか?
市川「まったく違います。『白黒ゾンビならこんなカードが必要で、このカードの点数が高いな』とか、アーキタイプがわかるくらい。」
渡辺「リーグだと、卓内で相対的に自分が強くなる必要のないドラフトになっちゃうので。自分のやってない色は強くてもバンバン流すんで、《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》が6手目で流れてきたりして、『こんなの、リアルじゃありえん!』ってキレてました(笑)。」

――MOはあくまで試す場所みたいな感じで、ピックの練習はちゃんと合宿でということですね。
市川「そうです。卓に何人まで白が許容できるとか、そういうのは全然違うから。」
渡辺「それに、そもそもMOだと1人なんで、みんなの意見と経験を受け取って考えられる合宿は全然違います。」

――素朴な疑問なんですが、MOって英語じゃないですか。フルスポイラー(発売前に公開される全カードリスト)とかは日本語で見ていると思うんですが、MOでドラフトするときって日本語版を参照しながらやって覚えるんですか?
市川「いや、『マジック』の英語テキストって、使われる語句が限られてるから、誰でもわかりますよ。」
渡辺「やってたら自然に覚えます。あとMOに入る前日にプレリリース・トーナメントがあるので、そこで使ったり使われたりしてだいたいカード内容は覚えられます。」

――なるほど、プロプレイヤーにとっては、カードが英語で書いてあってもわからないことはまずない、日本語版のサイトを見たりはしないと。
覚前「僕はしますけどね(笑)」
市川「昔のカードは英語がまどろっこしくて、キューブ(古いカードを使う特殊なドラフト)とかやってるとわからないことがあるけど、現代のカードはすごくわかりやすくなってない?」
覚前「まあね。フルスポイラー見て、このカードはこういう能力かーって、テストの前に勉強してる感じ。」
渡辺「よっぽど文章が長くて、挙動が難しいカードだと、さすがに日本語を確認しますよ。今回だと《副陽の接近/Approach of the Second Sun(AKH)》とか。」
市川「あれは初見で英語で出てきたらわかんないかも。」

Approach-of-the-Second-Sun
いきなり英語で見たら、「えっ、どういうこと?」と面食らいそうなカード。

 

 

 

●アモンケット環境雑感

――今までのドラフト10回分の成績を見ると、渡辺さんが3-0を4回していて、18人全員の中でも飛び抜けて勝っていますね。山本さんは2-1が5回と多くて安定していて、覚前さんは3-0から0-3までわりとばらばら。
市川「僕は1-2ばっかりですけど、今日になって2-1を2回してるので持ち直してきました。いつも通りですね、だいたい最終日に感じをつかめて終わるんで。」

――合宿では、負け方を覚えておくのが大事という面もありますし。
渡辺「そうそう。どうやったら負けるかを学んでおかないと。」

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中村さらさんによる、何回目のドラフトで誰がどんな成績だったかという記録。
――渡辺さんがこれだけ勝っているということは、得意な環境なんですか?
渡辺「いろんなことができて、自分としてはけっこう好きな環境ではありますけど、事前にやってきた分があるんで、みんなの理解度との差かなと。」

――この環境で強い色は?
渡辺「個人的に思っているのは、コモンの質が高い白が強くて、青は弱い。強さの順は白、微差で赤、ちょっと下がって緑、黒、大きく差がついて青。」
市川「青は最近リミテッドでは不遇だよね。」
覚前「カード痩せてるし。」
渡辺「青に用意されてる能力がサイクリングなんですけど、環境にあまり合ってない。『アモンケット』のテーマになっているほかの能力は不朽と督励ですけど、督励は基本的に攻めのカードだし、不朽もクリーチャーが対処された後でまた出るので、継続的に攻められる。でもサイクリングは、盤面に干渉しないでドローしてるだけ。強いレアがデッキに入っているなら正当化されるんですけど、そうじゃなかったらいまいち。」

――サイクリングしたらボーナスが得られるシリーズもありますが、そういうアーキタイプで輝くということは?
渡辺「そういう、サイクリング系のカードは重いんですよ。環境に用意されてる督励は2マナからだから、サイクリング用のクリーチャーを出す前に出てきて、それに殴られてからサイクリングしてたら間に合わない。」
市川「たとえば2/2で督励すると飛ぶ《突風歩き/Gust Walker(AKH)》は、こっちの場に何もいなければ2/2で殴り続けて、何かいたら督励して3点で殴ってくる。攻め手が途切れづらい、継続的にクロックをかけやすいんですよね。だから、クリーチャーが少ないデッキほど、督励に押し込まれやすいと思います。サイクリングデッキはクリーチャーが少ない形になりやすいから、受けきれないイメージ。」
渡辺「この環境はすごく除去が弱くて、督励クリーチャーがガシガシ殴ってくるせいで、守りに向いてない感じですね。」

――前のめりな環境なんですね。基本セットっぽいっていう話もちょっと耳にしたんですが……。
渡辺「全然そんなことはないです。」
市川「アーキタイプ環境ですね。」
山本「《大蜘蛛/Giant Spider(AKH)》とか、基本セットっぽいカードがいるので自分も最初は少しそういう印象もありましたけど、実際は能力を駆使して殴ってるので、複雑です。」
渡辺「選択肢がたくさんあって、最近のリミテッドの中ではかなりおもしろいほうですね。」

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●初手で取りたいカード

――ずばり、ドラフトの初手で一番取りたいカードは何ですか?
覚前「《木端+微塵/Cut+Ribbons(AKH)》取りたい!」
山本「地味だね(笑)。」

――覚前さんは実際に使ったんですか?
覚前「使ってない……いや、1回使った。青緑のデッキにタッチで無理やり入れた(一同笑い)。」
渡辺「僕は《賞罰の天使/Angel of Sanctions(AKH)》です。マスターピースも入れていいんだったら、《精神錯乱/Mind Twist》かな。《神の怒り/Wrath of God》も強いなあ……。
市川「僕は《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》です。これで1体殺されたら、もうテンポ返せなくなる。これが相手のデッキに入ってるってわかったら、ずっと除去を構え続けなきゃいけなくなるし。」
山本「僕もナベと同じ《賞罰の天使/Angel of Sanctions(AKH)》かな……。」

――評価の高い天使ですが、《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》より強いですか?
市川「同じくらい強い。」

木端微塵

賞罰の天使 栄光をもたらすもの

 

 

 

●スタンダードの準備

――スタンダードについても軽くうかがいます。まず、《守護フェリダー/Felidar Guardian(AER)》禁止についての率直なご意見を。
市川「(禁止を出すのが)2日遅い。」
渡辺「俺は、10日遅いと思う。前回の禁止と同様に、フルスポイラーを出す前に禁止してなきゃいけないはず。今回は禁止改定の日程が前もって決まってたから、『《守護フェリダー/Felidar Guardian(AER)》か《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》が禁止になるかもなー』と悶々としながら、仕方なく1週間練習してたわけです。いざ、禁止改定で何も出なかったから、じゃあ本腰入れてやるぞ!ってなったら2日後に……。」
市川「MOでの2日間のデータを見たら4Cサヒーリの支配率が高かったから、って理由が書いてありましたけど、2日間でわかるわけない。新環境初期は既存のデッキが結果を残すに決まってるから。」

――でも《守護フェリダー/Felidar Guardian(AER)》を禁止にしたこと自体はよかったですよね。
一同「当然です。」
市川「今まで、6マナ以上のソーサリータイミングのカードがすべて否定されてたんで。」
渡辺「なんなら『アモンケット』のカードがほとんど全部否定されてた。」
市川「このセット自体、フェリダーコンボがあることを想定して作られてないからね。」
渡辺「前の環境で強かったデッキは機体と4Cサヒーリの2つですけど、『アモンケット』には機体対策のカードは多いんですよ。『これで頑張って対策してくれ』ってメッセージは受け取れるんですけど、フェリダーコンボに対しては何もない。」
市川「逆に強化されてるからね。」

――これで他のデッキにも光が当たりますね。
渡辺「新環境の準備をしてる時、4Cサヒーリを試したら強くなってるし、対策カードもないから、プロツアーはもう終わったようなもんだって言ってたんですけど、これで楽しめると思います。」

――新環境の4Cサヒーリを、すでに練習していたわけですか。
市川「僕は10時間くらい、20マッチはやりました。時間返してほしい、というか僕だけ10時間プロツアーの開始を遅らせてほしいです。」
渡辺「僕もけっこう時間持っていかれたな。」
市川「前にも言ったけど、禁止改定のタイミングがあそこにあると、練習のモチベーションが下がるんでやめてほしいです。フルスポイラーが出てから1週間待つ意味がわからない。」
渡辺「疑心暗鬼になってよくないですね。こんなんじゃ、みんなカード買わなくなっちゃいますよ。」

 

 

 

●プロツアーまでの11日間

――この記事の掲載時にはすでに終わっていますが、合宿の後、BIG MAGIC OPEN(BMO)やグランプリ・北京2017が続きますね。BMOは出ますか?
渡辺「僕は出ます。」
覚前「出ようと思ってます。」
山本「僕はBIG MAGIC INVITATIONAL(BMI)のほうに出ます。」

――BMOでは新環境スタンダードの様子を見る感じですか?
渡辺「SCG(合宿の裏で開催中のアメリカの大会)で勝ったデッキを、仮想敵としてどうなのか見極めるために持って行こうと思ってます。あとは会場でいいアイディアがあったら拾いたいなと。」
市川「ほかの試合を見るのもけっこう大事だからね。」

――北京ではドラフトの練習をしつつ、勝てればおいしいという感じですか。
渡辺「勝利期待値は高いので。」
市川「これだけ練習して来てる人あんまりいないですから。」

――そうですね、力の差はありそうですね。
市川「とか言って、新環境のリミテッドグランプリで勝ったことは一度もないけど(笑)。理論的に考えれば、期待値は高い……はず!」

――日本から見守っています。プロツアーまで慌ただしいですが、がんばってください。

注:その後、山本さんはBMIでベスト8に進出し、松本友樹さんに勝ちを譲って、松本さんの優勝&プロツアー権利獲得を後押ししました。また、グランプリ・北京2017ではこの合宿に参加していた熊谷陸さんと川崎彗太さんがベスト8に進出しました。

 

 

 

●「MUSASHI」ユニフォーム!

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背中に各メンバーの名前が入った、チーム「MUSASHI」のユニフォームが完成しました! ややタイトなデザインのポロシャツなので、皆さんすらっとしてカッコよく見えますね!
チームメンバーの八十岡翔太さんは晴れる屋合宿のほうに参加しているので、シャツだけ写真に登場してもらいました。
今までのユニフォームには胸ポケットがあり、山本さんはスマホを、市川さんはトークンを入れるのに使っていたので、今回も胸ポケットが欲しいという意見はあったのですが、デザイン的にそぐわなかったので今回はなくなりました。はたして今後はトークンがどこから出てくるのか、乞うご期待!?
また、写真では決め顔の行弘さんは、最近ダイエット中とのことでかなりスリムになり、シャツにもゆとりが出てきましたが、プロツアーまでにもう少し絞るということだったので、どんなふうに カッコよくなっているか、プロツアー『アモンケット』会場からのレポート記事をどうぞお楽しみに!

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