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【PTXLN】2日目構築まとめ【Day2】

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プロツアー『イクサラン』の2日目が終了し、Team Cygamesの山本さんが日本人最上位の9位となりました。8位に滑り込んだSamuel Ihlenfeldtさんと山本さんは、オポネント・マッチ・パーセンテージ(対戦相手がどれだけ勝ったかで決まり、勝ち点が同じ場合はこの数値で順位が決まる)がなんと0.001%しか違わないという超僅差で、大変惜しかったのですが、ともあれ5000ドルの賞金とプロポイント15点を獲得でき、大きな成果となりました。

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「OMW%」の欄を見ると、わずか0.001%違いです。

2日目の構築ラウンドは、構築の成績が計2-6となった市川さんが途中でドロップ、5敗で踏みとどまりたかった覚前さんも8敗でプロポイント加算なしとなってしまい、かなり苦しいものでした。そんな中、1人淡々と勝ち星を挙げ続けていたのが山本さん。14ラウンド目で4敗になってしまいましたが、最終ラウンドで3敗1分けのオーウェン・ターテンワルドさんとマッチング。オーウェンさんは勝てばトップ8入りなため、フィーチャーマッチとなります。山本さんも勝てば滑り込みのチャンスがわずかながら残っています。
1本目は、山本さんがオーウェンさんのライフを残り1まで追い詰めるものの、そこから《山》ばかり立て続けに引いてしまい、その間にオーウェンさんが《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》2体で怒涛の巻き返し。あわやというピンチを迎えますが、ギリギリで《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》を引くことができ、勝ちました。
2本目はオーウェンさんが回って取られますが、3本目はオーウェンさんのマナフラッドと、緑マナの出る土地を1つしか残さずに《ならず者の精製屋/Rogue Refiner(AER)》を出してしまったためドローした《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra(KLD)》が出せず、そによって《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》による5ダメージを追加で稼ぐことができ、勝利しました。

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オーウェンさんとのフィーチャーマッチ

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最終ラウンドを終えて4敗で終わった同士、井川良彦さんと握手する山本さん。

そして、4敗のプレイヤー10人の中から、オポ(オポーネント・マッチ・パーセンテージの略)がトップの1人だけがトップ8に入ることができます。
緊張のトップ8発表を待ちますが、残念ながら山本さんの名前は呼ばれませんでした。しかしラウンド16開始前の順位から予想すると11位のところ、オポが上がって9位となりました。

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トップ8発表を待つ間、市川さんと八十岡さんがティムール対赤単のゲームを始め、2ターン目に赤単が《過酷な指導者/Harsh Mentor(AKH)》と《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》のどちらを出すべきかという熱論がチームの皆さんを巻き込んで行なわれていました。

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「トップ8入りの可能性がある36ポイント以上のプレイヤーは全員ステージ脇に集まって」と言われ、山本さんが片隅でひっそりと待機しています。

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8位プレイヤーの名前を読み上げる際に司会者が「From Japan!」と言うかどうか、遠目に見守る人々。

それでは、2日目構築ラウンドの結果とデッキについてまとめてまいります。
 

 

 
●市川ユウキの場合

2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1

2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績6-8、最終順位254位)/ティムールタッチ黒エネルギー

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 ティムールタッチ黒エネルギー 負け(×○×)
13 ティムールエネルギー 負け(×○×)
14 白単モニュメント 負け(××)

白単モニュメントは《オケチラの碑/Oketra’s Monument(AKH)》を出して《軍団の征服者/Legion Conquistador(XLN)》や督励クリーチャーをたくさん並べるクリーチャー主体のデッキ。
 


市川ユウキ『ティムールタッチ黒エネルギー』
プロツアー『イクサラン』



3《森》
1《島》
1《沼》
1《山》
4《霊気拠点》
4《植物の聖域》
3《根縛りの岩山》
3《尖塔断の運河》
2《隠れた茂み》
1《水没した地下墓地》


土地(23)


4《牙長獣の仔》
4《導路の召使い》
4《ならず者の精製屋》
4《つむじ風の巨匠》
2《スカラベの神》


クリーチャー(18)


4《霊気との調和》
2《マグマのしぶき》
1《削剥》
1《本質の散乱》
4《蓄霊稲妻》
2《霊気圏の収集艇》
2《慮外な押収》
2《秘宝探究者、ヴラスカ》
1《王神、ニコル・ボーラス》


呪文(19)


2《多面相の侍臣》
3《チャンドラの敗北》
2《強迫》
3《否認》
1《アズカンタの探索》
3《宝物の地図》
1《人工物への興味》


サイドボード(15)


 
渡辺さんのデッキは、以下の部分が異なります。(行弘さんのデッキと同じ)
メイン
《秘宝探究者、ヴラスカ》+1枚
《王神、ニコル・ボーラス》-1枚
サイドボード
《王神、ニコル・ボーラス》+1枚
《チャンドラの敗北》-1枚

八十岡さんのデッキは、以下の部分が異なります。
メイン
《多面相の侍臣》+1枚
《スカラベの神》-1枚
サイドボード
《ジェイスの敗北》+1枚
《多面相の侍臣》-1枚
 

 

 
●八十岡翔太の場合

2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1

2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績10-6、最終順位77位)/ティムールタッチ黒エネルギー

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 スゥルタイエネルギー 負け(1-2)
13 緑白ビート(Willy Edel) 負け(0-2)
14 赤単 勝ち(2-1)
15 赤黒アグロ(Timothy Wu) 勝ち(2-1)
16 赤単 勝ち(2-1)

※緑白ビートは吸血鬼を中心に不朽を交えて殴るデッキ。対赤単のライフ回復パーツがサイドから入ってくるものと思われます。

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ウィリー・エデルさんとの対戦

――40%いたティムールエネルギーに、2日間で一度も当たっていないんですね。
八十岡「たぶん、いなかったですね。今回ティムールエネルギー少なかったなー(笑)。」

――ティムールを使った皆さんにお聞きしたいのですが、チーム内でティムールタッチ黒エネルギーは総合で負け越しの成績となっています。敗因だったと思われる部分はあるのでしょうか。
市川「僕はやっぱり《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester(AER)》より《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra(KLD)》を入れたほうがよかったかなと思ってます。相手の《逆毛ハイドラ》に詰められることも多かったし、赤単に対しても《霊気圏の収集艇》よりよかったかなと。あと《削剥/Abrade(HOU)》は基本的にティムールに対してそんなに強くないカードですけど、《霊気圏の収集艇》に刺さっちゃうとかなりクリティカルなので、アベレージで考えたら《逆毛ハイドラ》のほうがよかったかなという気がしてます。」
八十岡「俺はティムールに当たってないから、対ティムールは何もわからない(笑)。スゥルタイエネルギー相手には《本質の散乱/Essence Scatter(AKH)》がもう1枚あったら違ったと思うけど、あのマッチだと《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra(KLD)》はまったく欲しくない。赤単相手は、まあ負ける時は負けるから仕方ない。とはいえ赤単は4回当たって3回勝ってるんで、よかったかなと。赤黒にも2回勝ってて、赤黒と赤単に強い構成にしてたのはよかったと思う。」
行弘「僕も《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester(AER)》2枚の部分で裏目を引いてよく負けたので、そこが別のカードだったら……とも思うんですけど、その代替案というか最善策を僕が用意できなかったのが敗因だと思ってます。《霊気圏の収集艇》が悪かったわけじゃなくて、もっといい選択肢があった可能性を模索できなかった自分の心の弱さが敗因だったかなと。《霊気圏の収集艇》は強いときもあるけど弱いときもあって、ヤソは活躍したって言ってるし、俺は活躍させられなかった。結局そういう上ブレ下ブレがあるムラが激しいカードだってことは結果が証明してる。」

逆毛ハイドラ 霊気圏の収集艇

行弘「今回このデッキに後悔があるわけじゃないし、ベストデッキ2つのうちの1つを選べたとは思ってるんですけど、構成に妥協してしまった部分があるんで、だったら赤単で出たほうがよかったかもと思ってます。赤単に関しては一切の妥協がないリストだと思ってたんで、今後同じようなシチュエーションが起きたら、ふわっとした部分があるデッキよりは、妥協のないリストのほうで出ようかなと。あの赤単に関しては、やまけんが原案を持ってきたけど、みんな調整につきあったし、力を合わせて完成させた赤単だったんで、かなり惹かれるものはあったんだよね。」

――あ、原案は山本さんなんですか?
山本「最初、ナベから『ティムールにはメンター(《過酷な指導者/Harsh Mentor(AKH)》)が強いよ』って言われて、じゃあメンターを入れた赤単を作ろうって感じで調整してたら世の中のリストもメンターがメインになってきてて、そのへんを取り入れて作っただけです。」
渡辺「世界選手権のときにPV(Paulo Vitor Damo da Rosa)たちが使ってた赤単はメインからメンターが入ってて、僕は世界選手権で2回負けた赤単は両方ともそのメンターが入った形だったんです。そのとき『メンターすごく強いな』と思って、今回の調整準備段階でそれを伝えたらみんなの同意が得られた。世界選手権で実際にメンターの強さを体験したことが生きて、その情報をみんなと共有できたのはよかったなと。」
市川「俺らが使ったティムールタッチ黒は、最終的な形は完璧ではなかったかもしれないけど、調整過程はよかったと思う。あとはけっこう運の要素もあるから。」
渡辺「チームとしては全員機能してたし、よかったと思うよ。」
八十岡「そうだね。」
行弘「俺としては、赤単を同じくらいの熱量で同時に調整できたのがよかったと思ってるよ。自分の興味のあるデッキだけ重視してやるんじゃなくて、全体的なブラッシュアップをみんなでできたから、結局やまけんが今回プロポイント15点取ったのにもつながってると思う。」
山本「みんなの意見があってこそだね。」

過酷な指導者
 

 

 
●覚前輝也の場合

2日目ドラフトラウンドの戦績
1-2

2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績8-8、最終順位180位)/赤単

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 ティムールエネルギー 勝ち(2-0)
13 ティムールエネルギー 負け(0-2)
14 青白王神 勝ち(2-0)
15 スゥルタイエネルギー(高橋優太) 負け(1-2)
16 エスパーコントロール 負け(1-2)

※覚前さんのデッキは下にある山本さんのものと同じですが、サイドボードに《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》がなく、その分《ピア・ナラー/Pia Nalaar(KLD)》と《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester(AER)》が3枚ずつです。
 

 

 
●山本賢太郎の場合

2日目ドラフトラウンドの戦績
2-1

2日目スタンダードラウンドの戦績(通算戦績12-4、最終順位9位)/赤単

ラウンド 対戦相手のデッキ(相手の名前) 勝敗
12 赤単 勝ち(○×○)
13 スゥルタイエネルギー(Martin Dang) 勝ち(○×○)
14 ティムールエネルギー 負け(○××)
15 ティムールエネルギー(Paul Rietzl) 勝ち(○○)
16 エスパーコントロール(Owen Turtenwald) 勝ち(○×○)

 


山本賢太郎『赤単』
プロツアー『イクサラン』



15《山》
4《ラムナプの遺跡》
4《陽焼けした砂漠》
1《屍肉あさりの地》


土地(24)


4《アン一門の壊し屋》
4《ボーマットの急使》
4《地揺すりのケンラ》
4《熱烈の神ハゾレト》
2《過酷な指導者》
4《損魂魔道士》
2《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》


クリーチャー(24)


4《稲妻の一撃》
2《削剥》
4《ショック》
2《反逆の先導者、チャンドラ》


呪文(12)


2《過酷な指導者》
2《反逆の先導者、チャンドラ》
1《削剥》
2《霊気圏の収集艇》
2《栄光をもたらすもの》
2《ピア・ナラー》
4《暴れ回るフェロキドン》


サイドボード(15)


 
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デッキについて

――今日の構築ラウンドはどうでしたか?
山本「今日は先手が多かったですね。4回くらい先手取れて勝ちました。対ティムールはメインが本当に先手ゲーで、後手でこっちが勝つのはかなり厳しいんです。1本目を先手で取って、2本目は後手で取り返されて、3本目こっちが先手で勝ち、というのがティムール戦では多いので、ちゃんと先手を取れたのがすごく大きかったなと。」

――後手でもティムールに勝てるように、前日にサイドプランを調整したと覚前さんに聞きました。
山本「後手は地上ダメージが通らないから空から攻める、軸をずらすプランでやってました。あと井川(良彦さん)や中村肇さんにも聞いて、覚前とほとんど同じ意見だったので、それを取り入れて。」

――デッキに関しては満足ですか?
山本「〈MUSASHI〉で調整してて、赤単を使わないメンバーからもいろいろ意見をもらって、チーム全体で調整した赤単を使えたんで、よかったです。」

――赤単は性に合ってましたか。
山本「そうですね。ゲームプランが一直線だからプレイしやすいし、早いデッキなので疲れにくくて、ゲーム外でも加点要素があって、総合的に見て俺は赤単のほうが向いてるかなと思いました。」

――覚前さんのデッキリストと比較すると、サイドボードに《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》2枚が入っている部分が違いますね。
覚前「そのへんは好みの問題です。」
渡辺「やまけんはドラゴンが好きだから。」
山本「スゥルタイエネルギーに2回当たったから、けっこう活躍したよ。」

最終戦について

――最終ラウンドでオーウェンさんとのフィーチャーに呼ばれたとは、勝ったらTOP8入りするかも、と思っていましたか?
山本「いや全然。16ラウンドの開始前にスタンディングを見て、この順位なら目がないなと思ってたので。でもほかの卓がかなりID(合意の上での引き分け)してて、オーウェンだけは勝ったら抜けるという感じだったから、オーウェンの対戦相手として呼ばれたんだなと。」

――ここで勝てば抜ける! という状況じゃないので、ある意味気楽にプレイできましたか?
山本「ですね、特にいつもと変わらなかったです。」

――見てるほうが、1本目オーウェンさんにまくられそうでハラハラしました。
山本「あれは確かに、千%勝ってると思ってた(笑)。 引いていいカードは多かったけど、薄い目の《山》を引き続けて負けそうでした。でも最後は《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》が駆けつけてくれてよかったです。

(ここで少し議論になったのが、1本目は一度《暗記+記憶/Commit+Memory(AKH)》で戻された《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》を出し直してカウンターされたことです。戻したということは手札に《本質の散乱/Essence Scatter(AKH)》がありそうだから、出さずにいたほうがオーウェンの2マナをずっと縛り続けることができ、《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》を出されるのも遅れたはずだという話でした。)

――今回のような、TOP8に残るか残らないかわからずに発表を待つ経験というのは初めてですか?
山本「確かに普通はTOP8入り確定か、もしくは箸にも棒にもかからないかのどっちかだから、こういう状況は初めてだし、そもそもそんなに起きないケースですね。」

――待っているときの気分は?
山本「一応全員来いって言われたけど、『どうせ無理なのにな~』って感じでした(笑)。」
行弘「オポ0.1%差だっけ?」
渡辺「いや、0.001%。」
行弘「マジで!? 超惜しかったね。」

――それに関しての悔しい気持ちはありますか?
山本「いやまあ、オポは人徳なんで。4敗で全然、十分です。そりゃTOP8に入れればいいですけど、オポには干渉できないので。」
行弘「『TOP8に入れそうだったのに0.001%差で落ちた』だったら精神的にきついけど、どうせ無理だろうって思ってたから、惜しいには惜しいけど、そんなにショックではないよね。」
山本「結果論って感じはあるよね。」
渡辺「でも、もしTOP8入ってたら、たぶんみんなすごいことになってましたよ。」
行弘「うおおおおおってステージになだれ込んでたね(笑)。」
 

 

 
●次に向けて

プロツアー『イクサラン』を終えて、最終的な〈MUSASHI〉の獲得ポイントは、3・3・3・6・15で合計30。日本人チームの「Final Last Samurai」と「Kusemono」が29点と26点で僅差で競り合っており、続くプロツアーも熱い勝負になりそうです。

日曜日は八十岡さんは決勝の解説、ほかの方はドラフトをやるなどして過ごすとのことです。
そして翌週末、すぐにグランプリ・上海2017(フォーマットはスタンダード)が開催されます。今回のデッキをさらに調整するか、もしくは別の新しいデッキで出るかはわかりませんが、市川さん、渡辺さん、覚前さん、行弘さんが参加予定ですので、引き続き応援をどうぞよろしくお願いいたします。

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晩ご飯は会場近くのシュラスコのお店へ。店内は世界各国のマジックプレイヤーだらけで、店員さんに「君もマジックプレイヤーなのかい? 成績はどうだった?」と尋ねられました。食事中も、チームプロツアーで誰がどのフォーマットを担当するのがいいかなどの相談が進んでいました。

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