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【WMC2017】初日突破! 日本チームの構築ラウンド【Day1】

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日本代表チームはチーム共同構築・スタンダードにおいて4ラウンド目、5ラウンド目と続けて勝利。6~7ラウンド目を行なわずに初日突破を決めました。

5ラウンド目の韓国とのフィーチャーマッチでは、渡辺さんがほぼ勝ちの場面から唯一の負け筋である《川の叱責/River’s Rebuke(XLN)》を撃たれ、あわやのピンチとなりましたが、《スカラベの神/The Scarab God(HOU)》でまくり返して生放送が大変盛り上がりました。

使用デッキは、皆さんがいつも使っているデッキの傾向から推測すると渡辺さんが使い慣れたエネルギー系、八十岡さんがコントロール系で、原根さんは残った赤系の何かという予想になるのですが、実際は渡辺さんが4色エネルギーで、A席の八十岡さんが赤単、C席の原根さんが白青王神という、予想を裏切るデッキ選択になっていました。
そのデッキ選択の経緯などについて、6ラウンド目に他チームのデッキ内容を軽く偵察したのち、早めの晩ご飯をとりながら皆さんにうかがいました。

4ラウンド目(VSグアテマラ/WIN

プレイヤー 相手のデッキ 勝敗
原根 青白副陽 ○×○
渡辺 赤単 ××
八十岡 スゥルタイエネルギー ○○(2本目は相手がデッキ登録ミスによるゲームロス)

5ラウンド目(VS韓国/WIN

プレイヤー 相手のデッキ 勝敗
原根 緑白アグロ ○○
渡辺 ティムールエネルギー ○○
八十岡 アブザントークン ○○

 

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韓国とのフィーチャーマッチで八十岡さんがまず《山》を置くと、相手は「ノー・コントロール!?」とびっくり。2人とも笑っていました。

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余談ですが、韓国戦の原根さんの対戦相手は今朝がた日本チームの3人にサインを求めに来ていました。大会などで会うたびにサインをもらいに来る渡辺さんファンの方で、渡辺さんのサインカードをすでに30枚以上持っているはずだとのことです。

 

 

 

●デッキ選択の理由

――スタンダードのデッキ割り振り(八十岡:赤単、渡辺:4色エネルギー、原根:白青王神)はどのように決まったんでしょうか?
八十岡「最初に、スタンダードで強いのはティムールエネルギーと赤単だからできればその2つは使いたい、じゃあ3つ目を何にするかという話からスタートして。」
原根「ヤソさん家に集まって、ホワイトボードにあり得る組み合わせを端から書き出していきました。」
渡辺「会場にどんな組み合わせがあるか考えると、まず赤単はほぼいるだろうと。次にエネルギー系、これはティムール純正か4色かスゥルタイのどれにするかが問題だけど、おおむねいるだろうと。で、その場合サードデッキに来るのは青白系が多そうだと。」
八十岡「青白の王神か副陽、あとは白単系の吸血鬼かトークン、あとは黒単。その中で一番いいのを選ぼうと決めていったん解散して、それぞれ個別にMOでデッキを調整しました。最初は赤単が《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》と《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》をもらうとティムールに入れられなくなるんで、それを抜いた形で行けるか試しました。」
渡辺「いろんなパターンを試しましたね。ティムールの、《チャンドラ》なしで《栄光をもたらすもの》あり、その逆パターン、どっちもなしとか。」
原根「そうですね。ヤソさんが赤単の各種パターンを試して、ナベさんが各種ティムールが行けるかを試しながら、その間に僕はサードデッキの候補を片っ端から試してました。」
渡辺「数が多かったんで、僕も手が空いたらちょっとサードデッキを回すのを手伝いました。」

――じゃあ、最初から八十岡さんが赤単担当と決まっていたんですね。
八十岡「そうです。僕はずっと赤単回してました。この中で赤単使うのは僕しかいないかなと。」

――相手は八十岡さんが赤単とは思わないだろうから、コントロールに対抗できるような初手が欲しくてマリガンの判断をミスしたりすると思うんですが、そういう効果も狙って?
八十岡「そういう意図は全然ないです(笑)。」
渡辺「単にヤソが赤単を一番うまく使えるんで。」
原根「リミテッドを見ててもわかりますが、とにかくコンバットでミスらない。」
渡辺「ヤソは実はビートのほうがうまいと、個人的には思ってます。」
原根「ヤソさんに、勝ちにくい副陽デッキを渡すのはもったいないですし。」
八十岡「確かにビートを使ってる時のほうが勝ってるかもしれない。ビートはデッキが強いからね。」

――なるほど。
八十岡「で、赤単は《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》がなくてもけっこう行けるってわかったんで《チャンドラ》を渡して、お互いちょっとずつパーツを融通しました。」

――渡辺さんのデッキが4色エネルギーになったのはなぜですか?
渡辺「まず3色のティムールを回して、《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》と《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》が両方ともそろってないとデッキじゃないって結論になったんです。一方スゥルタイエネルギーは赤単にすごく弱い。今回、チームに赤単は絶対1人いるだろうし、エネルギー同系もそんなに有利というわけでもない。サードデッキには勝てるかもしれないけど、デッキパワーの面でやめました。で、僕はグランプリ・上海2017で《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》なしの4色エネルギーを回して感触がよかったので、じゃあ《栄光をもたらすもの》は赤単にあげられるなということで、最終的に4色になりました。」
八十岡「赤単を使うのをやめて、ティムールエネルギーにカードを全部集約すると最強のデッキが1つできるんですけど、脇の2つは微妙になるんです。」
渡辺「1トップとサードデッキ2つみたいな感じになる。」
八十岡「そういうチームも何チームかいましたね。」
原根「ブラジルや韓国がそうだったけど、残り2つのデッキが厳しいですね。」
八十岡「ティムールが負けたらほぼチーム負けだし。」
渡辺「僕らは4色と赤単がお互いに少しずつ、将棋で言うと“香車落ち”くらいにちょっとずつ落として使う形にしました。」

――では、原根さんの最後のデッキはどのように決まったんですか?
原根「候補のデッキを片っ端から回していったら、どれも勝たなくてMOのチケットがどんどん消えるんですけど(笑)、白青王神だけはけっこう4-1できてギリギリ踏ん張れたので、単純に勝率による消去法です。使えば使うほど少しずつ勝てるようになってきたから、これなら耐えられるかなと。」

――自分のプレイスタイルに合っている、というのもあったんですか?
原根「いや、白青って全然使ったことのないカラーリングなので、どれも合ってないです(笑)。」
渡辺「白青以外は黒単か白単くらいしか選択肢がない中、黒単は勝率がよかったんです。原根君が『感触悪いんだけど勝率はいい』みたいなこと言うから、ぱぱっと回してみたら練習期間中唯一チケットが減りました(笑)。」
原根「引きがいいだけという自覚はあったので、確かめてほしいと頼んだらやっぱりダメでした。」
渡辺「あと、《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester(AER)》が赤単とかぶってるんで、赤単が弱くなるんですよね。赤単を弱くしてまで選ぶほどのデッキパワーではないなと。」
原根「サードデッキって、どれかのデッキタイプにはめっぽう強いみたいなのが多いんですけど、白青王神は赤単にすごく有利なのと、サードデッキ対決に有利なので、66%くらい相性がいい可能性があるんです。」
八十岡「王神は実際、スゥルタイとティムールエネルギーに絶望的だからスタンダードではあまり勝たないけど、それ以外にはかなりいいからね。」

――ほかの国のデッキ選択も、だいたい似たような思考経路だったみたいですね。
八十岡「そうですね、7、8割はそうだったんじゃないかな。」
原根「カードがまったくかぶらなくてマックスに利用できる組み合わせが、スゥルタイエネルギー、青白、赤単なんです。」
八十岡「スゥルタイにすると赤単が《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》を使えて、強さがマックスになる。」
原根「でもスゥルタイ自身が若干弱いから我々のようにそこを変えてるチームもあって、見た感じだと割合としてはだいたい半々くらいですかね。」

――席順はどうやって決めましたか?
渡辺「まず、真ん中の席のゲームを短くしたくないんです。相手のリーダーを自由にさせないためですね。だから真ん中にヤソを置くのは絶対にない。」
原根「グランプリ・リヨンを見た感じだと、真ん中に強い人が座って難しいデッキを回す傾向がありそうだから、そこがスゥルタイとかティムールエネルギーを使うんじゃないかと。」
渡辺「僕のデッキは対ティムールにはけっこう自信があったんで、それなら僕が真ん中に座ろうと。逆に、リーダーが赤単を使って早くゲームを終わらせて左右をフォローするタイプのチームもありますけど、赤単に対してもほぼ五分に戦えるので。」
八十岡「あと、基本的にC席のプレイヤーがサードデッキを使ってることが多くて、赤単は一番サードデッキに対して落としやすいんで、原根君をC席にしてサードデッキ対決をやってもらおうと。」
原根「実際、今日の2回戦もそんな感じでしたね。」

――今回は1種類のカードを1人しか使えない特殊な構築なので、サイドボードもかなり苦労したと思いますが。
八十岡「そうですね。サイドカードの奪い合いです。青白だけはほとんどかぶらないですけど、《否認/Negate(AER)》だけは絶対4色エネルギーから動かせないって最初から決まってたんで、《否認》の代わりを探す作業をずっと原根君にしてもらってました。」

――見つかりましたか?
原根「最初は《呪文貫き/Spell Pierce(XLN)》を試したんですが、長いゲームを見てるのに意味不明すぎるってことでやめて……」
渡辺「最終的には、ゲームが長くなっても大丈夫な3マナ確定カウンター(《不許可/Disallow(AER)》)にしました。」
原根「副陽と戦う時、《副陽の接近/Approach of the Second Sun(AKH)》を打ち消せるカウンターが絶対にないとダメなので。」
渡辺「サードデッキ対決が多そうだし、これならクリーチャーも打ち消せるから、一番カードとして強いかなと。」
原根「ちなみに、《不許可/Disallow(AER)》でよかったと思ったことは一度もないです(笑)。クリーチャーを打ち消したことはまだ一度もないので。ただまあ、苦労しながらも《不許可/Disallow(AER)》で勝ててるので、選択肢の中ではベストだったと思ってます。」
八十岡「僕とナベは赤いカードがかぶるんで……」
原根「どっちのデッキのほうが、そのカードがないことが致命的かという基準で選んでましたね。」
渡辺「《チャンドラの敗北/Chandra’s Defeat(HOU)》がないと、4色は絶対赤単に勝てないレベルだったんで、もらいました。」
八十岡「赤単対決ではそこは譲歩できるレベルだったんで。ただ《削剥/Abrade(HOU)》だけは赤単にないと話にならなかったんで、絶対ほしかったから、ほかの除去を融通して……」
渡辺「強い除去は赤単に回して、《蓄霊稲妻/Harnessed Lightning(KLD)》と3番手4番手の除去をこっちがもらうみたいな感じでした。」
原根「そこが起点でしたよね。《削剥/Abrade(HOU)》は絶対譲れないというところから、じゃあこれはこっちで、これはこっちみたいな調整の流れでした。」

 

 

 

●今年の3人は?

――今年は3人仲良しチームで、調整も楽でしたか?
渡辺「そうですね、前は4人だったからローテーション(抜け番)もあったし、かなり調整は大変だったんですけど、今回3人なのがだいぶ違いましたね。」
八十岡「あと、スタンダードの理解度が高いのがよかったね。誰かに教えるってなると、自分もそのデッキへの理解度がないといけないけど、この3人だったら使ってる本人の理解度が一番高いから、助言とかする必要が特にない。干渉しなくてもいい3人だってのが強みかなと。」
原根「まさに今日、3対1で戦ってましたよ。」
渡辺「俺ら必要ないよね? じゃ! って(笑)。」


↑ウルグアイ戦にて、向こうは3人集まっていますがこちらは原根さんが孤軍奮闘。

 

原根「実際、いないほうが助かるってこともあって。」
八十岡「見られてるほうが変に考えちゃったりするから。」
渡辺「実際、この試合って終わった時の残り時間が1分とかだったんですよ。もし僕らどっちかが横にいたら、『このプレイでいいですか?』って確認取るだけでも時間をロスして、たぶん試合が終わってないです。」
八十岡「実際、いないほうがいいですよ。相談するとゲームプランが途中で狂ったりするし、3人いるほうがだいたい不利。」
原根「3人いると、どっかでほころびが出るんです。何も引けなかった時とかに、顔に出さない人もいるけど、出ちゃう人もいてバレたりする。」
八十岡「よほどプレイヤーのレベル差があって後ろから操作するとかじゃない限り、3人いる必要はほぼない。」
原根「複数いることで防げるのは見落としくらいですね。」

――実際、皆さんの試合では必要最低限しか相談していないように見えました。
八十岡「そうですね、サイドボードとか、見たカードを共有するくらいで。」
渡辺「たとえば相手にティムールと赤単がいたら、見たカードは共有しますね。こっちで出たカードは、そっちでは出されないんで。」
原根「僕が1つだけお願いしているのは、『相手が赤単だったら教えて』ということです。僕のデッキに入ってる《聖なる猫/Sacred Cat(AKH)》は、赤単相手にしかプレイしたくないんですよ。それ以外は全部捨てる用のカードなので。」
渡辺「韓国との試合で、僕の相手がナム(・サンオク)さんだったんですけど、始まる前に『ナムさんは赤単じゃない?』みたいな会話をしてたら、ナムさんが自分のデッキをシャッフル中に崩しちゃって、赤緑土地が見えたんで『これはティムールだね』って言ったら、日本語で『ソンナコトナイヨ』って(笑)。」
原根「ナムさんと僕の対戦相手は日本語がわかるんですよ。だから相談はナシにしようって言ったら、ナムさんが『ニホンゴ、ワカラナイ』って言い出しておもしろかった(笑)。」
(一同笑い)

 

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韓国との試合では日本語が通じてしまうため、小声でこっそり相談していました。

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初日突破を決めたその場で記念撮影。

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雨が降ってきたため、ホテル近くの店で晩ご飯。2日目の幸運を祈って乾杯!

 

日本代表は4-1の成績で見事2日目進出となりましたが、「明日が本番だ」と3人とも改めて気を引き締めていました。明日はまずオーストラリア、リトアニア、ペルーとのグループで、相手のデッキタイプも多少判明しています。
3人は「2-1しなければいけないのはなかなかハードルが高いだけど、2勝してさくっと決めたい。最初の試合が特に大事だね」と話し合っていました。引き続きがんばってください!

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