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【MythicInvitational】ミシックインビテーショナル、準備万端! 目指せ賞金1億円!【Day0】

会場写真

「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」による史上初めての大会、「ミシックインビテーショナル」が3月28日(木)から始まります!

世界から選ばれたトップ選手64人が、賞金総額100万ドル(約1億1千万円)をかけて4日間にわたり争います。

我らがTeam Cygamesからは、渡辺雄也さん、八十岡翔太さん、そして覚前輝也さんの3名が出場。さらに〈MUSASHI〉の盟友・行弘賢さんもいらっしゃいます。

新しい舞台、新しいソフトウェア、新しいフォーマットによる初めて尽くしの大会。はたしてどんな戦いになるのでしょうか? 会場からできるだけ詳しくレポートをお届けしてまいりましょう!

 

 

 

 😀 ミシックインビテーショナルを楽しむための予備知識
今までにない特殊な大会ということで、どんなルールなのかざっくりまとめてみました。

〇そもそもアリーナとは?
「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ(以下アリーナ)」は、パソコンでマジックをサクッと遊べるデジタルカードゲーム。
昨年9月末にオープンベータテストがスタートした。派手なエフェクト、一部自動化されスピーディにプレイできるUI、さまざまなフォーマットで遊べることなどが人気。
今年2月に日本語版が実装され、これをきっかけにマジックを始めたり復帰したりする国内プレイヤーが急増している。

 

〇ミシックインビテーショナルの舞台はどこ?
ミシックインビテーショナルは、ボストンの「PAX East」会場内で開催。
「PAX East」は、デジタル・アナログ含め、幅広く世界中のゲームを扱う巨大なゲームショウ。年に5回(アメリカで4回、オーストラリアで1回)開かれている。
※会場の様子も追って取材予定。なおボストンは、〈MUSASHI〉が2017年の世界選手権でチームシリーズ優勝を決めた土地でもある。

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【WORLD】チーム〈MUSASHI〉、世界を制す!(後編)【Day3】

 

〇出場しているメンバーはどんな人たち?
参加者64人のうち、32人がMPLメンバー、32人がチャレンジャー枠からなる。
MPLとは去年の戦績で選ばれた「マジック・プロリーグ」のメンバー(今回は2人が欠席)。
チャレンジャー枠には有名配信者や女性プレイヤーが多いが、LSVやガブリエル・ナシフら殿堂プレイヤーもおり、またアリーナのランキングで世界8位以内に入って出場権利を獲得したプレイヤーもこのチャレンジャー枠に含まれる。

→出場者一覧はこちらから

 

〇今までにないフォーマット
今大会では「デュオスタンダード」と呼ばれる新しいフォーマットで戦う。
プレイヤーはそれぞれ、スタンダードのデッキを2つ準備する(同じデッキ2つでもかまわない)。
1試合で最大3ゲーム行ない、2ゲーム先取したプレイヤーが勝ちとなる。
第1ゲームで使うデッキはランダムで決まり、先攻後攻もランダム。
第2ゲームでは、第1ゲームで使わなかったほうのデッキを使う。第1ゲームで後攻だったプレイヤーが必ず先攻になる※修正済情報※(コントロール対決などで後攻を選びたくてもできない)。
第3ゲームではどちらのデッキを使うか選べる。先攻後攻はランダム。
各ゲームはBO1(サイドボードなしの一本勝負)で行なう。
通常のアリーナの試合と異なり、砂時計カウンターおよび導火線エフェクトによる行動の時間制限はない。代わりに、1試合の制限時間が45分となっている(テーブルトップのマジックと同様に、ジャッジからスロープレイの警告などを受けることがある)。

 

※アリーナ特有のルールについて
今大会ではいくつか、テーブルトップ版と異なるルール運用がある。
たとえば、《軍勢の戦親分/Legion Warboss(GRN)》を戦闘前に除去すればトークンは出ないが、アリーナだと相手が「戦闘前メイン・フェイズの終了時に優先権を得る」ように設定していない場合、対応する間もなく戦闘に入り、トークンが出てしまう。そのため、《軍勢の戦親分/Legion Warboss(GRN)》を出す前に、相手に一言かける必要がある(なお、相手との会話にはDiscordを使用)。

軍勢の戦親分

 

〇対戦形式は?
64人がA~Dの4リーグ(各16人)に分かれ、木曜にAとBリーグ、金曜にCとDリーグの試合を行なって各4人にまで絞る。土曜に計16人が戦って4人まで絞ったら、日曜に決勝トーナメントを行い優勝者を決める。
木~土曜のリーグ戦はダブルエリミネーション形式(2回負けたら脱落)。
各リーグのプレイヤーの使用デッキリストは、ゲーム開始の1時間前に発表される。
各リーグの対戦組み合わせは以下の通り。
対戦組み合わせA
対戦組み合わせB
対戦組み合わせC
対戦組み合わせD

 

〇生放送で応援しよう!
英語による公式の生放送もあるが、強くオススメしたいのはTeam Cygames一番の“しゃべり上手”、市川ユウキさんによる解説付きの生放送。
ウィザーズ社より後援を受け、Twitchにて4日間配信している。

ぜひご覧のうえ、よろしければ“サブスク”(配信者を応援するための投げ銭制度。アマゾンプライムに加入している方は、月1回無料でサブスクができます)もどうぞ!

   

 

 

 

●前夜取材
4人写真

大会前の水曜夜。相手のデッキリストを見るまでもう特にできることはないため、わりとリラックスした雰囲気の出場選手の皆さんに、いくつか質問してみました。

デッキ選択が5割

――デュオスタンダードというフォーマットにおいて、勝敗を決めるのは何ですか? 持って来たデッキ? 各ゲームでの使用デッキ選択? それとも先攻後攻?
八十岡「まあ全部ですけど、持って来たデッキによっては、相手のデッキ1つに対してこっちの2つが両方とも不利だったりして、対戦相手が決まった時点でもう詰んでる可能性はありますね。」
渡辺「だから、一番比重が大きいのはたぶんデッキ選択で、5割くらい。で、どっちのデッキを使うかは最初ランダムで決まるので、そのランダムでの当たり方がたぶん3割くらいあって、先攻後攻は残り2割くらいかな、個人的には。」
八十岡「白単同士とか、同系だったらほぼ先手ゲーなんで、先攻後攻はでかいですね。」
行弘「アグロがマッチアップに含まれてるなら、何を使ってようが絶対先攻が欲しい。」

※デッキ選択について この環境は、以下の図のような三すくみにたとえられる。
デッキ三すくみ図_修正 

準備の内容

――デッキ提出は先週の木曜くらいでしたよね? それまでに、準備にどれくらい費やしてきましたか?
渡辺「僕はミシックチャンピオンシップが終わってからほぼすべての時間をこっちにつぎ込みました。」

――ああ、先日のグランプリのほうは「5時間しか練習していない」とのことでしたもんね。
行弘「僕はけっこう友達とドラフトやったり、気分転換してましたね。BO1ばっかりだと頭おかしくなるので。」
渡辺「たまにやると、サイドボードのあるゲームは素晴らしいなってなりますね(笑)。」
覚前「僕は全然練習してないですね……BO3と同じか、少ないくらい。BO3にはそこそこ自信あって、BO1には自信なかったんですよね。BO1でよさそうなデッキも見つけられなくて。結局は先手ゲーになると僕は思っているので、ストレートに勝率のいいデッキを2つ持ってきました。」
渡辺「その先手ゲーにどれだけあらがうかが、今回の焦点かもね。」
八十岡「僕もまあまあずっとやってました。ずっと土地枚数の研究してて……。」
渡辺「土地13枚の赤単だっけ?」

――えっ、土地13枚でも回るんですか?
八十岡「(アリーナでは初手を決める際、7枚の組み合わせを2回引き、その中からもっともデッキ内の土地配分に近い初手が選ばれるので)選択肢2つの中に土地2枚の手札があれば、初手で2枚来ます。でも、土地13枚だと選択肢の中に土地2枚がないことがよくありますね。」

――確率的に初手の土地枚数がどうなるか、14枚、15枚……と試したわけですか。
八十岡「3マナ目が来る確率って、初手補正がある分、リアルよりちょっと高くなるんですよ。そういうのも全部計算したりして。」

――そうなんですね。
八十岡「先攻での最強デッキが組めないかやってみたんです。ほぼ2マナ以下のカードで構成されてて、土地2枚でも2アクション取り続けられるようなデッキ。結果、土地枚数に関係なく勝たんなということに(笑)。単に事故らないだけで、勝てはしない。」
渡辺「コントロールは土地26枚が最強ですね。」
八十岡「25枚だと、土地2枚と土地4枚の選択のときに2枚のほうが来ちゃう。26枚だと、4枚のほうが来るから。」 行弘「コントロールで土地2枚だとつらいね。」
八十岡「3マナ目引かなくて負けることがすごく多いから。26枚にしておけば、ほぼ土地3枚になる。」
渡辺「だから、理論上土地25枚で回るようなデッキでも、BO1だったら土地26枚にします。」

――そういうところはアリーナならではですね。 行弘「BO1だからこそありうるデッキリストが出てくるかもしれない。」

対戦相手について

――記事の読者さんから、「チャレンジャー側の対戦相手の情報はどの程度集めましたか?」という質問が届いていました。
行弘「まったくしてないです(笑)。」
渡辺「一応ざっと見たくらいですね。もともと知ってるストリーマーとかも何人かいるので。」
八十岡「調べようかなと思ったんですけど、そっちへの対策に寄せすぎると今度はMPLのプレイヤーにたぶん負けちゃうから、あまり意味ないかなと思って。あと、そもそも俺の場合はチャレンジャー枠のプレイヤーと当たることがまずない(笑)。当たってもナシフとかだから。」
渡辺「“チャレンジャー”ってレベルじゃないやつが多すぎるのが問題(笑)。」      

 

 

 

●わずか3日で出場に至った覚前さん

覚前さんは2月末、「アリーナで構築ランキングが世界で8位以内になったらミシックインビテーショナルに出場できる」という枠を獲得しました。 ただ、実際にこれを目指したのはミシックチャンピオンシップ・クリーブランドが終わった後で、実際にそのためにプレイしたのは3日間程度。 公式のインタビュー記事でも紹介されていますが、どうやってその3日間を「走り抜けた」のかを聞きました。

――走ることを決めたのはいつですか?
覚前「やろうと決めたのはプロツアー終わって帰る最中、2月26日くらいからですね。」
渡辺「帰りの空港でみんなで『まだ全然チャンスあるよね』って話してて。」
覚前「そのときランクはダイヤモンド2で、はっきり言ってトップ8に入れるとはまったく思ってなかったですけど、時間もあるし、やらない理由もないかなと。」

――ランクを上げるのはBO3でやっていたんですか? 覚前「ほぼずっとBO3です。今回抜けた8人で集まって取材を受けたんですけど、ほかの人たちもほぼBO3だったみたいです。たぶん、BO1よりランクの上がり幅が倍くらい大きいんで。」

――3月1日の朝5時までですから、実際のプレイ期間は3日間くらいですよね。その間はどれくらいプレイしていたんですか?
覚前「その3日は、たぶん12時間、12時間、24時間くらいですね。」

――最後の日は寝てないんですか!
覚前「ずっとプレイしてたわけじゃないですけど、アリーナに張り付いてました。」

――最後は高い順位になったら放置して、下がってきたらプレイする……という感じでしたよね。
覚前「そうです。ツイッターとか見ながら、順位をずっとチェックしてました。」

――その時使ってたのは、こないだの京都でも使っていた赤タッチ黒デッキですか?
覚前「そうです。」

――相当やりこんでいるデッキですよね。勝率は70%とか?
覚前「もっとありました。最後は15連勝とかしてたんで。今回の8位までに入ってる人は、みんなだいたい 一度は1位になって、時間が経って順位が下がったらまた1試合やって順位を戻した、って人たちでしたね。」

――1回でも負けるとガクッと下がるから、ある程度まで上がったら、プレイしないで様子を見てたほうがいいわけですね。
行弘「上のほうまで行ったら、もう勝ってもほぼ上がらないから、やる意味ないよね。」
覚前「1位から時間が経って、残り3時間くらいの時点で8位になったんですよ。それでさすがにやらないといけないなって1試合やったんですけど、その1戦だけは本当にハラハラしましたね。」
八十岡「そこで負けたらまた何連勝もしないといけないからね。」
覚前「勝ってまた1位に戻ったんですけど、その1試合はグランプリの決勝よりも緊張しました(笑)。」

――締め切りの5時になっても、絶対に8位以内にいるかどうかはわからなかったですよね?
覚前「終わったとき4位だったから、たぶん行けるかなと思って寝ました。」

――その日の昼ごろにメールが届いて、出場が確定した時の気持ちは?
覚前「嬉しかったですけど、『こんな簡単にミシックインビテーショナル出られていいのか』って感じもありましたね。もし入ったらラッキーくらいの気持ちでやり始めたことだったので。」

――えっ、意外と簡単だったんですか。
覚前「けっこうずっと勝ってて、たいした苦労はしてないので。」
行弘「いやでも、12時間12時間24時間って普通の人は絶対プレイできないですよ。けっこうな覚悟がないと。」

――確かにそうですね。それだけずっとやり続けても無に帰す可能性のほうがずっと高いわけですから。
渡辺「せばちゃんとかも走ってたけど、結局200位とかだったし。」
行弘「覚前君はMJ(麻雀のネット対戦ゲーム)とかでも全国1位取ったことあるし、ゲームをやりこむことに慣れてるというか、覚悟がほかの人と全然違う。」 覚前「あと、アリーナが楽しかったからやれたっていうのはありますね。楽しければいくらでもできます。」

覚前さんは2月末でいったんランクがリセットされた後もアリーナをやり続け、一時は構築とリミテッドの両方で世界1位になるという快挙をなしとげました。

 

 

 

●いよいよ本番へ!
皆さんは昨日現地入りし、今日は大会の説明を受けたり、機械がちゃんと動くかどうかなどをテストしたりしたそうです。
来場客から見える場所でプレイするので、他人の声が聞こえないようにヘッドセットをつけるのですが、今日つけてみた感じではそこから流れるノイズ音がうるさくて、試合中集中しづらそうという声もありました。
普段とまったく違う環境でプレイするのは、プロツアーなどで慣れている皆さんとはいえやはり難しそうです。

明日はAとBリーグの試合なので、渡辺さんと行弘さんが朝10時から出番で、八十岡さんと覚前さんはお休みです。「PAX会場をぶらぶら見て回ろうかな」とのこと。

明日は3-0できればベスト16に入れる一方、初戦でもし負けたら即座に崖っぷちとなり、1戦ごとの重みがとても大きい大会です。
皆さま、応援よろしくお願いします!

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