【MCVII】1日目・覚前輝也編【Day1】
大会1日目、日本勢は覚前さんを含む4人が出場していました。しかし序盤から成績がふるわず、1~2ラウンドの勝敗の合計は1勝7敗と絶不調。皆さんは苦しい表情でどんなひどい負け方をしたか言い合ったり、「次こそは〇〇デッキに当たりたい」と祈ったりして試合の合間を過ごしていました。
途中少し持ち直しかけたものの、6ラウンド目終了時には覚前さんと吉野高平さんが脱落。行弘賢さんと佐藤レイさんも3-3で、次勝っても2日目進出はほぼ無理そう……と暗い雰囲気になっていました。
するとそこで、実は今までの1日7ラウンドではなく、今回から8ラウンドになっていたことが発覚。「それならあと2連勝すれば2日目に行ける!」ということで、2人のテンションが急上昇しました。
しかし、そこで「欲にまみれてしまった」のか、7ラウンド目で2人とも敗退。最終ラウンドを待たずして全員終戦となってしまいました……。
毎度のことですが、MTGアリーナによるMythic Championshipは強者ばかりの少人数で構成され面子がとても濃いので、2日目に残るだけでも至難の業ということがよくわかります。
逆に、八十岡さんは先日MPLのリーグ戦を1位突破したことによりこの過酷な1日目をスルーできており、本当に幸運だったと言えるでしょう。
●覚前輝也・試合振り返り
八十岡さんは2日目から出場のため、今日1日の覚前さんの戦いを追ってまいります。
8 《沼》 7 《山》 4 《血の墓所》 4 《寓話の小道》 1 《ロークスワイン城》 土地(24)
クリーチャー(28) |
4 《初子さらい》 4 《魔女のかまど》 呪文(8) |
3 《強迫》 4 《溶岩コイル》 2 《エンバレスの盾割り》 4 《朽ちゆくレギサウルス》 2 《ドリルビット》 サイドボード(15) |
1日目スタンダードラウンドの戦績(1-4)/ラクドスサクリファイス
ラウンド | 対戦相手のデッキ(相手の名前) | 勝敗 |
---|---|---|
1 | ティムールアドベンチャー(Jean-Emmanuel Depraz) | 〇×× |
2 | ジェスカイファイアーズ(Pierre Violleau) | 〇×× |
3 | 5Cファイアーズ(行弘賢) | ×○× |
4 | ジェスカイファイアーズ(Alexander Steyer) | ×○○ |
5 | ゴルガリアドベンチャー(Allison Maino) | 〇×× |
対戦について
――今日の試合の内容を教えてください。
●ラウンド1
覚前「相性のいいティムールアドベンチャーだったんですけど、毎ゲーム2ターン目に《幸運のクローバー/Lucky Clover(ELD)》を貼られて負けました。3ゲーム目はちょっとヌルキープしたところに相手が2ターン目3ターン目に《幸運のクローバー》貼って、《願いのフェイ/Fae of Wishes(ELD)》で3枚ドローされるブン回りでした。」
●ラウンド2
覚前「相性の悪いジェスカイファイアーズにメインは取ったんですけど、サイド後負けでした。あんまりよく覚えてないです、すいません。」
●ラウンド3
――ここは行弘さんとの試合でしたね。行弘さんは「手札ゼロから《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn(WAR)》が降ってきて、3枚ドローして勝った」と言っていました。
覚前「1ゲーム目も3ゲーム目ももう少しで勝てそうなところまでいって、特に3ゲーム目は次のターン何もなければ勝ちってところだったんですけど、《ニヴ=ミゼット再誕》からつながって負けましたね。」
――まあ、行弘さんのデッキはそういう、1枚が重いデッキですからね。
覚前「しょうがないです。」
●ラウンド4
覚前「この試合はサイドがうまく働いて勝ちました。ジェスカイファイアーズ相手に《朽ちゆくレギサウルス/Rotting Regisaur(M20)》を4枚とってるんですけど、2ゲーム目は3ターン目に着地した《朽ちゆくレギサウルス》がそのままゴール決めて、3ゲーム目も手札破壊から《朽ちゆくレギサウルス》2体出して走り切りました。想定通りに動けたなって感じでしたね。
それで思い出しましたけど、ラウンド2はこのパターンの逆で、《朽ちゆくレギサウルス》引けなくて負けでしたね。ちょっと弱めだけど土地とスペルのバランスがいい初手で、《リックス・マーディの歓楽者/Rix Maadi Reveler(RNA)》もあるからキープしたけど結局引けずでした。」
――全体的に、今日は運がなかった感じはありますね。
覚前「まあ、そうですね。その日もしツイてたら都合よく《朽ちゆくレギサウルス》引くし、行弘との試合は「相手が何も引かなくて勝ち」ってなってましたからね(笑)。」
●ラウンド5
覚前「ゴルガリアドベンチャー相手も有利なはずなんですけど……この試合だけちょっとミスったかなって思ってて。」
――どういう盤面だったんですか?
覚前「3ゲーム目、僕が先攻で、相手は2ターン目に《楽園のドルイド/Paradise Druid(WAR)》出して、3ターン目に《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast(ELD)》のトークンだけ出して、あと3マナあるのに5/5の野獣は出さずに構えてたんです。たぶん手札に《残忍な騎士/Murderous Rider(ELD)》があったと思うんですけど。
自分はそこまで猫(《大釜の使い魔/Cauldron Familiar(ELD)》)と《魔女のかまど/Witch’s Oven(ELD)》しか出せてなくて、クロックが遅い状態でした。」
覚前「自分の4ターン目、《どぶ骨/Gutterbones(RNA)》を引いたから、猫でアタックして1/1トークンと相討ちして、《どぶ骨》を出して、メインでそれを《魔女のかまど》でサクってから猫を戻して、《どぶ骨》も手札に戻したんです。そしたら相手がサイドから入れてた《軍団の最期/Legion’s End(M20)》で猫を追放されてしまって。
ずっと動いてない相手の動きからして、手札にスペルがたまってそうだから、《軍団の最期》は予想できたんです。だから《どぶ骨》を出さないで相手の手札を腐らせて、そのままずっと猫で1点ドレインを続けてたほうが間違いなくよかったなと。」
――なるほど。
覚前「それか、《どぶ骨》自体は出してもよくて、調子に乗って《魔女のかまど》を起動しなければよかった。出してそのままゴーしていれば、クロックが上がるから相手も5/5の野獣を早めに出すしかなくて、そしたら手札に《初子さらい/Claim the Firstborn(ELD)》があったから、それを奪って、猫を戻せば野獣で殴ってからサクれました。」
――そういう展開は理想的ですね。
覚前「……でも、さらに今になってよく考えてみたら、野獣を奪っても猫は戻さないで、《どぶ骨》だけで殴るのが正解ですね。猫を戻して野獣をサクったら、猫に《軍団の最期》を撃たれちゃうので。
このゲームで猫には5/5で殴る以上のバリューがあるので、戻さないのが正解だと思います。相手は墓地クリーチャー回収の出来事(《真夜中の騎士団/Order of Midnight(ELD)》)も持ってたんですけど、《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast(ELD)》を墓地から回収されたとしても、猫さえいればずっとチャンプブロックしてしのぐこともできますし。」
――つまり、猫を失ったことが敗着だったと。このデッキ、プレイが難しいですね……。
覚前「ややこしいです。たぶん本番では猫戻して5/5で殴ってそうです(笑)。」
――先日、覚前さんがツイッターで問題を出していましたが、これも最大12点かと思いきやよく考えると13点与えられるというシチュエーションで、冷静になってよく考えればわかるけれど、試合中の短い時間ではなかなか正解にはたどり着けなさそうですね。
問題「このターンに13点与えないとあなたの負け!」
条件
相手は土地が全てタップ状態、4/4の獣だけいる場。
自分の手札は右の3枚。
このターンセットランドはした。
ドローは全て土地。 pic.twitter.com/RON7DhlSWp— 覚前輝也/Teruya Kakumae (@fushiginokunin5) November 28, 2019
反省点
覚前「振り返ってみると、緊張してたつもりは特にないんですけど、してたのかもしれないですね。なんかフワフワしてて、プレイちょっとあやしかったかも……。『本当にこれ正しいんかな?』って思う間もなく行動してた感じです。
こういう環境でプレイするのはミシックインビテーショナル以来で、久しぶりで慣れてなかったのでいつも通りにプレイできてなかった感じが……。とはいえ、あんま慣れようもないんですけど。」
――普段家でやっているアリーナを、大会でも同じように平静にプレイするというのは難しいですね。では、デッキ選択や内容についてはどうでしたか?
覚前「ラクドスを使う以上はこれでよかったと思ってます。」
――全員のデッキを見たうえで、もし使うなら何がよかったですか?
覚前「フラッシュ系が強そうだなと思いました。そこまで回してないからイゼットかシミックかはまだわからないですけど。ジェスカイファイアーズがある程度いて、そこにかなり勝てるなら持ってくる価値はあったなと。
練習してるとき、感触よかったのはジェスカイファイヤーズとジャンドサクリファイスと今回使ったラクドスサクリファイスの3つで、ラクドスは前の2つには相性がそんなによくないので、一番多そうなジェスカイファイヤーズに勝てるデッキはもっと試してもよかったかなと思いました。」
――今大会が終わると、次の予定は何ですか? The Finals2019に出るかもという話を聞きましたが……。八十岡さんも「賞金期待値が高いからおすすめ」と言ってましたよ。
覚前「うーん、出てもいいんですけど、このままだとジェスカイファイヤーズが多そうなのでこのデッキではあんまり出たくなくて、かといって新しいデッキを練習するくらいなら、次のプレイヤーズツアー名古屋に向けてパイオニア始めたほうがいいかなと思って……。まだ全然手つけてないので。(パスワードがリセットされて)MOまだ入れないんですけど……まあでも、入れるようになったらやりますよ。次に向けてまたがんばります。」
覚前さんのMythic Championshipはこれで終了となりましたが、明日は注目の八十岡さんの戦いにフィーチャーします!「dream」デッキは日本勢のラストホープとなってくれるでしょうか!?
晩ご飯は日本勢の皆さんで、ウィザーズ社の方が勧めてくれたシーフードレストランに行き、八十岡さんの健闘を願って乾杯しました。大きなタライに山盛りのロブスターやカニやエビを、手づかみで食べる豪快なメニューです。
MPLの行弘さんと佐藤さんは今日で1年間の締めくくりということで、MPLとしての1年を振り返り「いろいろあって長かったようでもあり、忙しくて短かったようでもある」と話していました。いろいろな環境でマジックができ、初めての経験も多く、大変だったけどその分濃くて楽しかったという感想でした。
現時点でのミシックポイントを鑑みると、行弘さんはMPL続投が確定していますが佐藤さんは五分五分とのこと。佐藤さんの順位を抜くかもしれないMPLたちを、八十岡さんが明日どれくらい倒してくれるかにかかっているとのことで、佐藤さんは「明日は全力でヤソを応援します!」と宣言していました。
また、吉野さんは次回のアリーナMCQも絶対に抜けてもう一度この舞台に立ちたいとの思いを表明し、「それならもしMCQを抜けられなかったらどうするか」という罰ゲームの話題で盛り上がりました。
おまけ:会場風景
会場はMCVと同じで、ロングビーチ郊外にある巨大な撮影スタジオ「THUNDER STUDIOS」というところです。一番広いホールにパソコンを並べ、選手たちの試合が行なわれています。
この巨大で重厚なドアの向こうが試合エリアですが、選手しか入ることができません。
試合エリアとは別に、この奥にある部屋で、食事ができるようになっています。
プレイヤー用の昼ご飯として、フライドチキンやベイクドポテトなどがありました。なお、午前中は朝ご飯も用意されています。
スナックや飲み物も好きなだけ。なぜかリップクリームやポケットティッシュなどももらい放題で、いたれりつくせりです。
大きなスクリーンを備えたホールが選手の休憩所になっています。試合エリアに入れない取材陣はここで放送を見ながら待ち、試合を終えて出てきた選手たちから話を聞く形になります。
休憩所では備え付けのパソコンでMTGアリーナが遊べるほか、ウィザーズ製のボードゲームも各種用意してありました。
試合の合間にソファでくつろぐMPL勢の皆さん。八十岡さんは放送を見ている時に、やはり2日目から出場のウィリアム・ジェンセン選手やマルシオ・カルバリョ選手らに声をかけられていました。
写真提供:Wizards of the Coast LLC