2021-2022年・冬のTeam Cygamesだより
2021年11月から2022年1月までの、Team Cygamesメンバーの活躍と近況をまとめてお届けしてまいります。
この期間には一番のニュースとして、市川さんのチャンピオンシップ優勝がありました。また、マジック界にも新フォーマット「アルケミー」の誕生のような、大きめの出来事がありました。
これらについても、皆さんに感想などをうかがいます。
■2021年秋振り返り
市川さんが解説。久しぶりに、実際にプレイヤーたちが会場に集まって行なう大会だったので、プレイヤーと話すこともできて楽しかったとのこと。
2020年末から延期になっていた大会が大阪で開催され、八十岡さんが東京でリモート解説。
発売に合わせ、山本さんが時々ドラフトの配信を行なっていました。
八十岡さんはスタンダードの練習そっちのけでシールドばかりやっていましたが、30回近くやってほとんどが6勝か7勝という結果に(下の画像)。「シールドはもっとも腕が出るフォーマット」と言われるのも理解できますね。
覚前さんは前回の記事で『イニストラード:真夜中の狩り』クイックドラフトのコツを伝授してくれたので、今回も教えを乞いました。
『真紅の契り』のクイックドラフトなのですが、今回たくさんプレイして特徴が見えてきました。
一番の特徴は、コモンで脅威となるカードがないということです。
このような環境では多色で構築するのが一番勝ちやすいので、それを心がけ以下の順でピックしていく流れが理想だと感じます。
1.1枚で勝てるカード(レアは多数、アンコモンで言うと《群れの仔》《バリスタの監視兵》は見たらピック)
2.確定除去(全色)
3.マナサポート(《名誉ある家宝》《花の織り手》《予言の像》など)
4.ドロースペル(なんでもいい)
これだけです。
上記の基本をおさえ、1から順に優先度を高くピックしていきます。
戦略はシンプルですが、ピック中は意外にも選択肢が多いので、マナカーブにだけは気をつけて(油断するとただ重いだけの弱いデッキができあがります)ドラフトしていくと、強いデッキになるという結論に達しました。
市川さんが、Twitchの企画で伊豆大島へ行きました。
配信中に得た投げ銭などの額に応じてプレゼントがもらえるという企画で、大勢の視聴者からの応援を頂くことができたためです。
出不精なのであまり旅行とかしないんですが、魅力的な場所で癒やされました。
チャンピオンシップの優勝にも1%くらい貢献したと思いますw
サブスク、チアーなどで支援してくれたみなさん、ありがとうございます!
チームメンバーで出場したのは八十岡さん(グリクシスコントロールで3-3)だけでした。
市川さんが優勝! おめでとうございます!
●調整について
計12人でのチーム調整が大成功しました。
詳しくは市川さんが書いたレポート記事に譲りますが、スタンダードとヒストリックの2チームに分かれて研究した結果、スタンダードはイゼット天啓、ヒストリックはゴルガリ・フードに決まりました。
深夜から朝にかけての大会でプレイするには、どちらもすごく大変なデッキです。しかし今回のメタゲームにはぴったりで、チーム全体として素晴らしい成績をおさめました。
市川さんは、スタンダードのチームで主にイゼット・ドラゴンを担当していました。最後まで最強の座が揺るがなかったイゼット天啓を選びましたが、《記憶の氾濫》ではなく《多元宇宙の警告》にした点や、1枚挿しのカードたちによってエッジが出てよかったそうです。
ヒストリックに関しては、選択肢がゴルガリ・フードしかないような状態でした。回すのに時間がかかるため、ミラーのサイドが提出期限ギリギリまで決められなかったというデメリットはありましたが、市川さんが以前から得意としていたフード・デッキが環境で勝ち組だったのは、ラッキーだったと言えます。
●試合について
あと1勝でトップ8が決まる、というところから2回負けて後がなくなってしまいますが、最終戦のリード・デュークさんに運良く勝ててトップ8進出。
決勝ラウンドではチームメンバーの斉藤徹さん、熊谷陸さんとのゴルガリミラー対決を制し、最後に残ったゴルガリマスターとして、決勝でイゼット・フェニックスと対決しました。
勝ち上がるごとに気持ちが盛り上がっていき、決勝はランナーズハイみたいな感じでミスなくプレイできたとのこと。
「泣いても笑っても最終戦」となった3マッチ目の3ゲーム目は激戦でしたが、相手の引きがあまりよくなく時間を稼げたので、徐々に盤面を盤石にしていき、コメント欄の視聴者全員で盛り上がりつつウイニングラン!という感じでした。
決勝の間の待ち時間は最長で2時間くらいあったんですが、暇だったのでほかのTop8プレイヤーのデッキリストをアリーナにインポートして、当たった場合相手がどういうサイドボードをしてくるか、サイドボードをした場合どういう形になるのかを考えたり、想定しているサイド後の相手のデッキリストをスクショして保存したりしていました。
今までほとんどやったことなかったんですが、頭の中で相手のイン・アウトを考えるより実際手を動かして、視覚的にとらえたほうがわかりやすいですね。ひとつ勉強になりました。
後日送られてきた優勝トロフィー
対戦中、音声は入らないのですが喜怒哀楽を体で表現していて、表情豊かなリアクションが公式ツイッターに取り上げられていました。
Yuuki Ichikawa appreciation post 😍@serra2020 #INNChamps pic.twitter.com/LFFwLc0WHe
— Magic Esports (@MagicEsports) December 5, 2021
が、配信を意識してやったつもりもないんですよね。
無意識に緊張をほぐそうとしていたのかも。
ちなみに、あまりにも対戦中に独り言をしゃべっているので、ウィザーズのスタッフの方に「ディスコードの画面を確認させてくれ」と言われました。
直接的に意図を確認したわけじゃないんであくまで想像ですが、「誰かと相談しながらやっているんじゃないか?」と疑われたんだと思います。
来シーズンのシステムがまだわかっていないので、それによっては価値が出てくるかもしれません。求む優勝者特典。
ただ、世界選手権への出場権は非常に嬉しいです。
世界選手権は一度出て、とても楽しかったので今から楽しみです。
みなさんいつも応援してくれてありがとうございます(キレイな部分)。
●一方八十岡さんも
なお、八十岡さんも14位と大健闘。3日目は日本人が5人もいる決勝ラウンドを解説するほうに回りました。
準備時間がとれず、スタンダードは日本選手権優勝デッキをちょっといじったイゼット天啓を選択。練習は数時間しかできませんでしたが、本戦でミラーマッチのたびに学んでいきました。
エピソードとしては、《表現の反復》と《感電の反復》の雰囲気が似ていて2回間違えて撃ったそうです。
一方ヒストリックは土日で調整。トップメタの人間を回していたらジャンドに全然勝てなかったので、ジャンド・サクリファイスに決めました。マナベース以外は自信があったものの、参考になる大会が何もなくてよくわからないままの本番でした。
デッキとしては《波乱の悪魔》との組み合わせが強い《命取りの論争》を入れたのがポイントで、これで4ターン目に《フェイに呪われた王、コルヴォルド》の着地率が上がり、イゼットとゴルガリに対し強くなっています。
いかにもプロツアーという感じで豪華面子とマッチアップ。最後は市川さんのチームメンバーを2連続で打ち破っています。(画像は八十岡さんの振り返り配信より)
イニストラード・チャンピオンシップの裏ではRed Bull Untapped(International Stop V)が行なわれ、山本さんが1日目を13位で突破。
Platinum Divisionに進み、TOP8で敗退して500ドル獲得しました。
『イニストラード:真紅の契り』ドラフトで開催。
八十岡さんは《船砕きの怪物》以外微妙なデッキをドラフトしましたが、貫禄の8勝。
覚前さんは2日目4-2、山本さんは「5回出て抜けれず25000ジェム溶かして終了w」という報告でした。
MTGアリーナにて新フォーマット「アルケミー」がスタートしました。一部のカードを強化/弱体化し、アルケミー専用カードも追加した「調整版スタンダード」のようなフォーマットです。
現状はそこまで人気がないのですが、随時アップデートしていくとのことなので、今後に注目です。
皆さんに意見を聞きました。
敷居の高さ(わかりづらいところ)がマジックをプレイする上での最大の欠点だと感じているので、新規参入のきっかけになると感じました。
今まではテーブルトップでできなかったようなおもしろいカードが多数出たと感じています。
ただアルケミー専用カードが通常セットではまずないレベルに強く、一部はナーフされるカードより強いので、そのへんがもうちょっとどうにかなればいいなと思います。
ただ、スタンダードと併行して禁止やナーフなどを行なうのは、わかりづらすぎるのでやめてほしいですね。
「スタンダードではこれは禁止で、アルケミーではナーフ」みたいな感じだと、順々に遊んでいくと何が何だかよくわからなくなるので。
アルケミーを、デジタルであることを活かして禁止やナーフができるフォーマットとして作ったんだから、テーブルトップとリンクしているスタンダードはある程度禁止などをゆるやかにしたほうがいいんじゃないかなと思っています。あと、ナーフしたらさすがにワイルドカード配るべき。やる人いなくなっちゃう。
長期的に見たらワイルドカード配り得に感じるんですけど、ウィザーズがどういうふうに考えてかたくなにワイルドカードを配らないのか、気になります。
新カードについては、先日の調整で4マナ4/4のドラゴン(《街裂きの暴君》)がまったく弱くなってなくて笑いました。
あと、ナーフされたカードが補填されないのは意味がわかりません。
調整前と調整後。基本土地が選べなくなったからといって、特に……。
市川さん、行弘さんとのコラボ配信を開始。
音声チャットをつないで、わちゃわちゃにぎやかに遊ぶ様子が見られました。今後も定期的にやっていくそうです。
八十岡さんが再び解説。フォーマットはスタンダードとモダンでした。
「MTGアリーナ十種競技」(通称「デカスロン」)イベントがMTGアリーナで開催されました。
スケジュール一覧
12月18~21日
アルケミー(BO1)
シールド:『真夜中の狩り』&『真紅の契り』ミックス
12月21~24日
マッチ戦ドラフト:『真紅の契り』
新規プレイヤーデッキ
12月24~27日
Botドラフト:『ゼンディカーの夜明け』
ヒストリックの職工(コモンとアンコモン限定)
12月27~30日
ヒストリック(BO1)
アルケミー・シングルトン
12月30~1月1日
マッチ戦スタンダード
ターボ・ドラフト:『ストリクスヘイヴン』(全カードのマナコストが軽くなる)
1月8-9日
決勝:キューブドラフト(BO3)
八十岡さんは年越し配信をやりつつ決勝のキューブドラフトを計3回勝ちました(合計で21勝1敗)。決勝の賞品は神河のコンプセット、《精神を刻む者、ジェイス》のアバター、ワイルドカードなど。コンプセットは1セットだけですが、ワイルドカードなどは3倍もらえるみたいです。
市川さんと覚前さんも年末年始のお祭りイベントを楽しんだようです。
マジックの競技って、チャンピオンシップ予選みたいに上位数%しか報われないものがほとんどなので、デカスロンみたいにゆるく結果を求めるイベントは目新しくていいと思いました。自分はアルケミー・シングルトンが一番楽しかったですね。
スタンダードにスゥルタイ根本原理があったとき、80枚デッキの1枚に対して調整している人たちのことを、正直「何が楽しいんだ? ほとんど変わらないだろ」とか思っていたんですが、アルケミー・シングルトンを遊んでみて考えが変わりましたw
シールド:『真夜中の狩り』&『真紅の契り』ミックス
マッチ戦ドラフト:『真紅の契り』
Botドラフト:『ゼンディカーの夜明け』
マッチ戦スタンダード
ターボ・ドラフト:『ストリクスヘイヴン』
↑この6つを突破しました!
なお決勝は早々に負けてしまい、その後キューブドラフトを練習し倒し、ライブラリー破壊デッキが最強という知見を得ました(時すでに遅し)。
アルケミーで開催され、市川さんは初めての賞金獲得。
■チームメンバーへのマジック・アンケート
最近のマジック界隈をにぎわせた出来事などについて、ご意見を聞きました。
Q.『神河:輝ける世界』で、現時点(取材は1月末)で注目しているカードは何ですか?
八十岡「現状では全体的に中堅ぐらいのカードが多い印象。1枚挙げるなら《真夜中の空、殉至》。」
市川「《耐え抜くもの、母聖樹》。普通にいいカードだと思うんですが、Twitterの反応とか見ていると「モダンやレガシーをぶっ壊すくらい強い!」みたいな意見が散見されていて、それほどではないと考えています。
自分の評価も低くはないんですが、周りとあまりにも評価が剥離しているので、実際どのくらい使われるのかに興味があります。」
覚前「《神の乱》。名前、イラスト、能力ともに魅力的な1枚。
どの程度使えるのかは環境次第ですが、使ってみたくなるカードであることは間違いありません!」
山本「《耐え抜くもの、母聖樹》はハンデスされないコスト増えないカウンターされないで完全にオリカ。」
Q.昔の神河時代の思い出を教えてください。
八十岡「当時の2004、2005年あたりは、プロツアーなどの大きな大会は出てないですね。
神河ブロック構築が好きで、グランプリ新潟では何人かが僕のデッキ使って勝ったりしてて印象深いですね。」
覚前「当時のリミテッドのグランプリ1日目、シールドにて《夜の星、黒瘴》が2枚入ったプールをゲット!
なお結果は7-2だった模様。
今思うとデッキは間違いなく9-0クラスでしたが、自身のサイド後の対応力のなさが苦い記憶として残っています。」
山本「当時は池袋でひたすら友達とドラフトしていました。《梅澤の十手》が強すぎておもしろくないので、池袋ルールでは引いた人はパック買い直しでした。」
市川「自分は15才か16才のときですね。
高校生になって、はじめてアルバイトをして、当時は音楽に興味があったのでギターを買ったりCDを買ったり。
ただもちろんお金に限りはありますから、TSUTAYAがレンタル半額みたいなのをやっているタイミングでCDをたくさん借りていた思い出があります。
1泊2日(確か半額だと1枚100円)でレンタル上限の枚数を借りに行って、家に帰ってコピーして、次の日の朝10時までに返却ボックスに入れて、ツタヤが開いたらまたレンタル上限の枚数を借りて……みたいなことをしていました。
家からTSUTAYAまで自転車で30分くらいかかってましたから、若者の情熱ってすごいですよね。
マジックは中学生になった頃に辞めていたので、神河の思い出は一切ないです。」
Q. 直近の禁止改訂についてのご意見をお聞かせください。
八十岡「まぁ仕方がないかなと思いますが、《不詳の安息地》はちょっとやりすぎかなと思いました。
MTGアリーナだけ見ると、スタンで禁止出すとアルケミーはなんなのかなとはちょっと思いますね。」
市川「・スタンダード
禁止出しすぎ。アルケミー作ったんだからスタンダードの禁止はゆるくするべき。
個人的には《アールンドの天啓》だけで十分。
・モダン
基本的になくていいと思うけど、《夢の巣のルールス》はデッキ構築の多様性を失わせるので禁止でもよかったかもしれない。
・レガシー
妥当。《目くらまし》と《意志の力》があるフォーマットで《敏捷なこそ泥、ラガバン》はちょっと強すぎた。
・ヒストリック
《記憶の欠落》:不快だし単純にカードがつまらない。カウンターを打たせる、弱いカードから小出しにしていって引き出させるみたいなカウンターを巡る駆け引きが《記憶の欠落》にはない。打つだけ、打たれるだけ。二度と戻ってこないでほしい。
《時を解す者、テフェリー》:再調整までして使わせたいのか? と単純に疑問。」
山本「《ゼロ除算》はやりすぎな気もしますが、ほかは納得。ナーフも禁止もされない《表現の反復》はウィザーズに愛されてる。」
覚前「禁止カードを何枚も出し続けている昨今の商売の仕方に対して、正直疑問が残りました。
一番被害を受けるのは、テーブルトップでの大きな大会がないにもかかわらずリアルカードを集めた人たちです。
特にスタンダードでは、《アールンドの天啓》は仕方ないにしてもほかの2枚は許されてもいいんじゃないかとの印象を受けました。
昨今のマジックは強いカードと弱いカードの差がけっこうあるので、新セットが出てもすぐに楽しめるカードが少なくなる、このような状態ではスタンダードの人気が下降していっても仕方ない気がします。(あくまでテーブルトップ目線での話にはなるのですが……)」
Q. 市川さんの「2021年ベストバイ」は、春のまとめ記事に出てきた食器洗浄機だそうです。ほかの人の買って良かったものは?
八十岡「ベッドの横とかPCデスクの横に置いてるサイドテーブル。」
覚前「特に何も買ってません!」
山本「ゲーミングチェア。」
最後に宣伝です。
春に『Shadowverse』がリアルカードゲームになります。この『Shadowverse EVOLVE』は、八十岡さんが開発に関わっています。現在βテスト(体験会)の申し込みを受け付けていますので、ぜひチェックしてみてください。
■おまけ:最近の1枚
八十岡「『イニストラード:真紅の契り』発売時に送られてきたもの。」
(編注:紅茶やマジック柄のクッキー、ティーカップ、ティースプーン、キャンドルなどがセットになった、豪華なプロモーションキット)
市川「島に行った時の写真です。
海沿いのペンションみたいなところに泊まりました。」
覚前「最近お気に入りのヘアケア用品、モロッカンオイル。
特にトリートメントの保湿力と香りがとてもいいです。
ここ最近白髪が増え、カラーでダメージを受けるのも厳しそうと、年齢を感じざるを得なくなってきた今日この頃。
歳を重ねるとできないことが増えてくるのだと嫌でも実感しています。
しかし悪いことばかりではなく、時間の大切さや今何をすべきかを改めて考えるきっかけにもなりました。
というわけで、魔法のシャンプー知っている方がいらっしゃったらこっそり教えてください(笑)。」
山本「ゲーミングチェアです。
椅子変えてから疲れにくくなった気がします。」
ただテーブルトップはアリーナと違って、誘発忘れや処理ミスが起きるのでそのへんが大変でした。
久しぶりにリアルイベントの解説やったのですが、会話があったり臨場感あったりで、やっぱりMTGアリーナよりいいなと思いました。