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グランプリ・広州2016レポート

3人

8月27日(土)~28日(日)に中国の広州で開催されたグランプリ・広州2016(フォーマットはモダン)についてのレポートです。
世界選手権の前ということで、練習時間を確保するため渡辺さんはこのグランプリをスルー(航空券を取って予約もしていましたが……)。

wata_twi

市川さん・山本さん・覚前さんの3人が参加し、山本さんが「グリセルシュート」でトップ8入り、市川さんもあと1勝でトップ8という好成績でした。

 

 

●モダンとは?

――最初にモダンというフォーマットについて少しお聞きしたいと思います。7月にモダンのWMCQ(ワールド・マジック・カップ予選)があり、広州をはさんでこの週末にもモダンのWMCQがありますね(取材はWMCQ名古屋の前に行ないました)。同じデッキで出ますか?
市川「変えようかなと思ったんですが、一人回ししてみたらめちゃめちゃ弱かったので、広州のままにしようかなと悩んでるところです。」

――モダンの大会は定期的に行なわれますが、メタは変わっていますよね?
渡辺「変わってます……自分の中で変わってるといったほうが正しいかな。今はこのデッキが強い環境だっていう理解が、時期によって変わってくるというか。」
覚前「モダンは深いなと思います。川崎さん(トップ8入りしたBIGsの川崎彗太さん)はずっとモダンで勝ってるじゃないですか。大阪にいたときよく練習してたんですけど、僕はモダンあんまりやってなくて、彼は昔からずっとモダンやってるから勝ってる。やれば見返りは来るけど、そこまでの時間がちょっと長い。そうとうやらないとうまくならないイメージがあります。」
山本「モダンって、経験値が蓄積される……RPGで言うと、セーブができるシステムだと思うんですよ。レベル1から始めて10くらいまで行ったらいったんセーブして、またあとから再開したときにレベル10からスタートできる、そんなイメージですね。カードプールが基本的に変わらないから、川崎さんみたいに同じデッキを使い込む熟練度が重要かなと。」

――川崎さんはずっとジャンドをずっと使っているから、ジャンドレベルが高いんですね。でもほかの人が同じジャンドを使おうとしても1レベルから始まると。
覚前「モダンはデッキタイプがたくさんあって、環境に合ってないときは勝たなかったりするんですけど、ジャンドはどんな環境でも適応しやすくてある程度戦えることもあって、川崎さんは常に勝っているんだと思います。」

――なるほど、わかりやすいです。
市川「僕はやり込み否定派なんですよ。モダンがやり込み環境かどうかはともかく、『マジックはやり込んだら勝てる』という世論がかなり嫌いなんです。だから、俺はモダンをやり込まない。」
渡辺「三男と四男のマジック論の決裂!(笑)」

――渡辺さんはやり込み派の筆頭みたいな人ですもんね。
市川「世界的に見て、やり込んでマジック勝ってるのは渡辺雄也くらいですよ。あと、オーウェン・ターテンワルド(渡辺さんと同時に殿堂入りしたアメリカのプレイヤー)もか。」
覚前「モリカツ(Hareruya Prosの森勝洋さん)もじゃない?」
市川「そうだね。俺が知ってる中で勝ってるのはその3人くらいだよ。」
渡辺「それ以外は、正確には『勝ち続けていない』というのが正しいかもね。」
市川「やり込んで勝つというやり方は、相当ないばらの道だということをみんなは認識すべき!」

――やり込まないということは、強さは天性のセンスによるということですか?
市川「センスを磨くってことを、僕は努力してるんですよ。」

――そのほうが難しそうですが……。
市川「いや、滝に打たれるようなものです。」
渡辺「せばちゃん(市川さん)は滝に打たれるし、僕は走り込みをする。」
市川「どちらも努力してるんだけど、ベクトルが違うんです。僕は滝に打たれてひらめくのを待つんです。」
渡辺「ヤソ(Hareruya Prosの八十岡翔太さん)とかもよくお参りしてるけど、神社にお祈りするような感じかも。一方僕は神社の周りを走ります。」
覚前「だいたいのプレイヤーは走ってるよね。」
渡辺「でも走り方が下手なことが多い。もっと効率のいい走り方があったりとか、そもそも走る量が足りなかったりとか。」

――滝に打たれるほうも、ちょっと打たれたくらいじゃ足りないんですね。
市川「いろんな滝を経験して、いろんな景色を見ないと。いろんな体験を吸収してひらめきの元にして感性を磨くんです。」

――強くなるには、大量のインプットが必要なんですね。それでは、続いて本戦についてうかがっていきます。

 

覚前
覚前輝也の場合

覚前輝也『バントエルドラージ』



2《森》
1《平地》
4《吹きさらしの荒野》
4《ヤヴィマヤの沿岸》
4《エルドラージの寺院》
3《低木林地》
3《魂の洞窟》
1《神聖なる泉》
1《寺院の庭》
1《繁殖池》


土地(24)


1《極楽鳥》
1《老いたる深海魚》
3《希望を溺れさせるもの》
4《変位エルドラージ》
4《空中生成エルドラージ》
1《作り変えるもの》
4《貴族の教主》
4《現実を砕くもの》
2《呪文滑り》
4《難題の予見者》


クリーチャー(28)


4《流刑への道/Path to Exile》
4《古きものの活性/Ancient Stirrings》


呪文(8)


1《部族養い》
1《世界を壊すもの》
2《頑固な否認》
2《安らかなる眠り》
2《仕組まれた爆薬》
2《神聖な協力》
2《墓掘の檻》
1《引き裂く突風》
2《自然の要求》


サイドボード(15)


戦績:10-5、最終順位:90位

ラウンド 勝敗
1-3 bye(不戦勝)
4 ×(0-2)
5 ○(2-1)
6 ×(0-2)
7 ×(1-2)
8 ○(2-1)
9 ○(2-1)
10 ○(2-1)
11 ×(1-2)
12 ○(2-0)
13 ×(0-2)
14 ○(2-0)
15 ○(2-0)

――覚前さんはなぜバントエルドラージを?
覚前「練習する時間がなくて、行っても負けそうだなって思いながら行ったんです。ぎりぎりに調整を始めて、勝率40%ないくらいだったんで。いろいろデッキを変えて試したけど全部ダメで、2日前くらいに回してたのがバントエルドラージだったから、もうこれでいいやって。」

――「これでいいや」となった決め手は何かあったんですか?
覚前「バントエルドラージを初めてMOリーグで回したとき、(全5回戦で)4-1したってだけです。それまで1-3ドロップとかばかりだったので、『もうこれでいこう!』って決めて、カード足りなかったから友達に借りたりして、そのあとリーグ出たら0-3からの0-3して、その足で広州に行きました(笑)」
渡辺「魂のバーンはどうしたの? 環境的にそんなに悪くなかったでしょ。」

――バーンのほうが、覚前さんはレベルが高かったのでは。
覚前「自分としてもバントエルドラージよりは回しやすいし、バーンで行こうかなとも考えたけど、バーンで優勝はできないなと思ったので。」

――でも、実際の成績を見ると、10勝5敗ということでそんなに負けまくってはいないですよね。
覚前「そうですね。プロポイント1点は取れました。このデッキもう使いたくないなってことに気づいたのが、5ラウンド目でした(笑)」
市川「早すぎ!
覚前「そっから残り10回戦くらい、『きついなーこれ!』って思いながら使ってた。うまいこと引いたら簡単に勝って、でもだいたい引かなくて負けるんで。」

――よく最後まで戦いきりましたね。
覚前「13ラウンド目にライブラリーアウトデッキに負けたんですけど、何回やっても絶対負ける相手なんです。そういう明確に相性が悪すぎるデッキがあるのはあんまりよくないなって思いました。」
渡辺「でも、モダンはどうしてもそうなるよ。全部に勝てるベストデッキは存在しないから。唯一ジャンドがちょっとマシなくらいかな。」
市川「ジャンドも、どれに対しても戦えるけど、全部4割5分で不利みたいなイメージがある。」

――どこかでじゃんけんみたいになるのは仕方がないんですかね。
渡辺「絶対勝てないマッチがあるのは、モダンだとしょうがないと思うよ。バントエルドラージは、まだ丸く戦えるほうだよ。」
市川「フェアデッキだから、ある程度どれに対しても立ち回れる。上ブレたらすごい強いし。」
渡辺「ただ、上ブレても優勝はできないかな……。感染とかSCZのほうが都合よく引いたら優勝するデッキだと思う。」

 

 

市川
市川ユウキの場合

市川ユウキ『感染』



2《森》
4《墨蛾の生息地》
4《新緑の地下墓地》
4《吹きさらしの荒野》
2《繁殖池》
2《ペンデルヘイヴン》
2《樹木茂る山麓》


土地(20)


4《ぎらつかせのエルフ》
4《貴族の教主》
4《荒廃の工作員》


クリーチャー(12)


4《ギタクシア派の調査》
4《古きクローサの力》
4《変異原性の成長》
4《巨森の蔦》
2《よじれた映像》
1《ひずみの一撃》
1《呪文貫き》
2《使徒の祝福》
1《森の占術》
1《四肢切断》
4《強大化》


呪文(28)


1《ドライアドの東屋》
3《自然の要求》
2《呪文貫き》
1《払拭》
1《墓掘りの檻》
1《よじれた映像》
1《呪文滑り》
3《台所の嫌がらせ屋》
2《四肢切断》


サイドボード(15)


戦績:12-3、最終順位:10位

ラウンド 勝敗
1-3 bye(不戦勝)
4 ○(2-0)
5 ○(2-0)
6 ×(1-2)
7 ○(2-0)
8 ○(2-0)
9 ○(2-0)
10 ×(0-2)
11 ○(2-1)
12 ○(2-0)
13 ×(0-2)
14 ○(2-0)
15 ○(トス)

ichikawa

――市川さんは、なぜ感染に?
市川「一番勝てたからですね。10個くらいデッキを回してどれも勝てなかったけど、感染はリーグで4-1と3-2が交互くらいだったから。」
覚前「どれも3-2とかなんだよね。」
市川「そう。5-0は1回もしなかった。でも4-1と3-2を交互なら勝率7割だから、まあ悪くないなと。」

――本戦では、フィーチャーマッチで相性のいいアドグレイスデッキに当たって勝つというスタートを切っていましたね。
市川「アドグレイス、あとスケープシフトは環境に絶対増えると思ってました。イメージ的には、強いデッキとしてドレッジ、バーン、SCZ(「《死の影》アグロ」デッキ)あたりがまずあって、それに勝てるデッキ、それに勝てるデッキに勝てるデッキ……みたいな感じで増えていくので、そこらへんまでのデッキは視野に入れようと。全体を見渡して、感染は立ち位置がいいなと思ったので選びました。」

――実際、どうでしたか?
市川「バーンには2回負けちゃったんですけど、リソースがすごく大事なので、1回マリガンしただけでけっこう負けます。こっちのほうが負けパターンが豊富なので、ちょっと相性悪いなと感じましたね。あと13ラウンド目は川崎さんのジャンドに負け。ジャンドは相性最悪で、相手が下手じゃないかぎり絶対負けます。」

――なるほど。
市川「もっと下手なプレイヤーのジャンドだったらよかったんですけどね。そしたらこっちの戦闘中に《稲妻/Lightning Bolt(M11)》撃ってくるから、強化スペルで返せるんですけど。うまい人は戦闘では何も撃たずにエンドに撃つから、しぶしぶこっちがプロテクションとかで守って……という展開が続いて、それが最悪のパターンなんです。感染を相手にするときって、突然毒カウンターを与える本体火力みたいなカードはないので、どこまでなら死なないかがわかりやすいんです。だからエンドに除去を撃ち続ければ、感染側の呪文が尽きて勝てる。」

――なるほど、ジャンド使いにとっては参考になりますね。何か印象的な場面はありましたか?

市川
14ラウンド目、感染のミラーマッチでフィーチャーだったんですけど、隣で山本さんもフィーチャーで向かい側だったんですよ。2ゲーム目、《ぎらつかせのエルフ/Glistener Elf(NPH)》がいて、《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(NPH)》で相手の手札を見たら何もなかったから、『これで勝ち確定だな 😆 』と思って、適当に強化スペル撃って殴ったら、全然勝ち確じゃなくて、相手にブロッカーが立ってた(笑)

――そ、それは(笑)

市川
目ん玉飛び出たんですけど、どうも山本さんも目ん玉飛び出てたみたいで、終わったあとに『さっきやばくなかった?』って聞かれました(笑)
山本
やっちまった空気が、横から伝わってきたんだよね。
市川
フィーチャー席はカメラが移動して、2卓のうちどっちかを映す仕組みなんですけど、さすがにカメラの位置を確認しました。もし映ってたら生きていけないって。そしたら映ってなかったんで、『耐えた~! 山本さんがゲームやっててくれてよかった~!』ってなりました。

――相手も、「なんで殴ってきたんだ?」って思ったでしょうね。
市川「相手、『理解不能』って顔で2分くらい悩んでましたよ(笑)もちろんブロックされて、結局そこで2対1交換取られて、そこからどんなドローをされてもだいたい負けそうになったんですけど、何も引かれなくて耐えました。僕ね、ミスしたときに悪びれないっていうのが持ち味なんで! やばいとは思うけど、反省しないし引きずらない。」

――そのメンタルは大事ですね。
市川「いやー、その試合は印象的でしたね。終わったあとで、ふだんそういうことを言わない山本さんが言ってきた、っていうのが印象に残りましたね。よっぽどだったんだなと。」

――そういえば、ちょっと話はそれますが、グランプリ・京都2016のチームプロフィールで、「印象的だったこと」の欄に「9-0した時に、やまけんがうれしすぎてハイタッチしてきた」って書いてありました。いつもクールな山本さんにしては珍しいですよね。
山本「いや、そんなうれしくはなかったですよ。でもとりあえずしとこうかなって。」
市川「えーっ!(笑)チームの士気を上げるためのサービスだったの!?」
覚前「初日全勝したのに『そんなにうれしくない』って(笑)」
山本「いや、うれしいんですけど、『うれしすぎて』ってほどじゃないよって。表現が難しいんですけど。」

――山本さんが本当にすごくうれしいときって、どんな感じになるんですか?
渡辺「せばちゃんが初めて優勝したときじゃない? ベロンベロンになってたじゃん。」
市川「ああ、あれね。懐かしいね。グランプリ・上海2015で僕が優勝したときは、山本さんが一番喜んでました。」
渡辺「喜びすぎて飲みすぎて意識なくなってた。」
山本「記憶にないな。」
市川「グラスは落としまくるし、ほんとにやばかった。10年来の友達のあんちゃん(Hareruya Prosの高橋優太さん)ですら、『やまけんがこんなに喜んでるところ見たことない』って言ってたから。」
渡辺「ずっとフラフラしてて面白かった。ろれつもまわってなかったし。」
市川「飲み始めて15分くらいで、1人だけ立ってるステージが違ったからね(笑)」
山本「記憶にないです。」

 

 

山本
山本賢太郎の場合

山本賢太郎『グリセルシュート』



1《島》
1《沼》
1《山》
4《汚染された三角州》
4《沸騰する小湖》
2《蒸気孔》
2《黒割れの崖》
2《忍び寄るタール坑》
1《湿った墓》
1《血の墓所》
1《血染めのぬかるみ》


土地(20)


4《猿人の指導霊》
4《引き裂かれし永劫、エムラクール》
4《グリセルブランド》


クリーチャー(12)


4《信仰無き物あさり》
4《血清の幻視》
4《手練》
2《稲妻》
4《御霊の復讐》
4《イゼットの魔除け》
2《集団的蛮行》
4《裂け目の突破》


呪文(28)


4《思考囲い》
4《神々の憤怒》
4《神聖の力線》
2《流転の護符》
1《粉砕の嵐》


サイドボード(15)


戦績:12-2-1、最終順位:5位

ラウンド 勝敗
1-3 bye(不戦勝)
4 ○(2-0)
5 ○(2-1)
6 ○(2-0)
7 ○(2-0)
8 ×(1-2)
9 ○(2-1)
10 ○(2-0)
11 ○(2-1)
12 ×(1-2)
13 ○(2-0)
14 ○(2-1)
15 △(ID)

yamamoto

――山本さんが使ったグリセルシュートは、デッキ記事でも紹介されていましたね。
山本「モダンは押し付けるデッキを使いたい、対応する側にはなりたくないと思っていたんです。で、昔使ったこのデッキをまた試しに使ってみたら普通に強くて、リーグをけっこうやったんですけど4-1と3-2の繰り返しで。僕も5-0は1回もしなかったですけど、それで勝率7割だからいいかなと。」

――相性がすごく悪いデッキはやっぱりあるんですか?
山本「感染とか、キルターンが早くて妨害手段があるデッキは相性が悪いですね。」

――負けた相手はそういうデッキでしたか?
山本「8ラウンド目に負けたたまちゃん(玉田遼一さん)がトリコ昇天、12ラウンド目の相手はバーン、準々決勝で負けた相手がSCZかな。たまちゃんのときは俺の頭がバグってて自滅みたいなものでした。バーンは相性五分五分くらい、SCZは相性悪いですね。カウンターの部分が手札破壊になっててキルターンが早いので。逆に遅いデッキやコントロール系には相性がいいですね。」
市川「たまちゃんのとき、なんでバグったの?」
山本「3ターン目にエムラシュート(《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》を素早く出すコンボ)が決まって、相手の場がゼロになったんですよ。フェッチランド使ってなかったからたまちゃんのライフが5かな。こっちの手札が《裂け目の突破/Through the Breach(CHK)》、《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》、《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide (PLC)》。」

引き裂かれし永劫、エムラクール 猿人の指導霊

裂け目の突破

山本「もう1回エムラシュートするプランか、手から《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide (PLC)》を出して殴って5点削るプランの二択で、カウンターとか入ってるデッキ相手だから常識的に考えたら後者のほうがよかったんですけど、除去をケアしてエムラシュートのプランに固執してしまって、結局カウンターで負けちゃったんです。《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide (PLC)》が手札に1枚あって、そのあと追加でもう1枚引けてたんで、普通に出してれば100%勝ってました。」

――それは市川さんの話と比べるとプランの選択ミスという感じですね。
市川「レベルが違う(笑)それはどっちをケアるかって話だから。俺のは目が見えてなかったレベルだから。」
山本「いや、《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit(WWK)》がすでに場にあったと思う。」
市川「あー、それはあやしいね。だったら確かに《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide (PLC)》のほうが丸そう。」
渡辺「それでもせばちゃんの話とはわけが違うけどね(笑)」

――とはいえ、トップ8に残り、幸先のいいシーズンスタートになりましたね。勝因は何でしょうか?
山本「みんなあんまり墓地対策をとってなかったかなと。MOだと絶対サイド後は墓地対策をとられるんですけど、広州では《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》とか《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage(DKA)》とか《
虚空の力線/Leyline of the Void(M11)》を全然出されなかった。なので、普通サイド後の勝率は絶対落ちるんですけど、意外と楽に勝てる試合が多かった印象です。」
市川「日本人はすごくドレッジを意識してたんですけど、現地のプレイヤーは意識してなかったですね。」

――日本と中国ではメタゲームが違うんですね。

 

 

●アジアグランプリのすすめ

――ところで、皆さんはよくアジアのグランプリに行かれますが、日本人プレイヤーでも最近行く人が増えてきています。これから行こうかなと思っている人へのアドバイスはありますか?
渡辺「ホテルや会場の住所を控える場合は、英語じゃなくて現地の言葉にすること。中国なら中国語で調べて、写メ撮っておくとか。英語だとタクシーで断られたりすることがあるので。」
市川「それはあるね。」

――リアルなアドバイスですね。
市川「あとは、行けばだいたいなんとかなる。」
渡辺「アジアのグランプリは手軽なんで。」

――日本より勝ちやすいですか?
山本「単純にトップ8入りのラインが下がるので。」
渡辺「日本のグランプリだと2敗でもトップ8に入れないことがあるけど、アジアだったら2敗1分けまで残れる。」
市川「プロツアー行きたいんだったら行き得。中国はごはんもおいしいし、全然僕は悪いイメージないな。たまにシャクられますけど。」
渡辺「でもシャクり方もかわいいもんだからね。20円とか40円とかのレベルだから払っとこ。」

この取材後、山本さんは「グリセルシュート」を使って名古屋のWMCQに出場し、決勝で惜しくも津村健志さんに敗れたものの準優勝という成績を収めました。「グリセルシュート」はかなり手になじんだデッキとなっているようです。

 

※記事中の写真は一部【グランプリ・広州2016 イベントカバレージ】から引用させていただきました。

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