グランプリ・名古屋2018レポート 前編:渡辺雄也・八十岡翔太:市川ユウキ
10月13日(土)~14日(日)に開催されたグランプリ・名古屋2018には、Team Cygamesのメンバーが4つのチームに分かれて参加しました。皆さんの成績やチームシールドのデッキ構築について、前・中・後編に分けてまとめました。
●渡辺雄也・八十岡翔太の場合
渡辺さんと八十岡さんは、グランプリ・静岡2017秋でトップ4入りしたときと同じ中村肇さんとのチーム(チーム名は「日本の裏ボス、カカオ」)で参加しました。もともとの希望通りに八十岡さんはディミーア、渡辺さんはイゼットを組めたのですが、3つめのデッキがどうしても弱くならざるを得ず、そこで組み間違えてしまったとのことで、初日落ちとなりました。
戦績(1勝3敗DROP、最終順位565位)
ラウンド | チーム(1-3) | 渡辺(2-1-1) | 中村(1-3) | 八十岡(1-3) |
---|---|---|---|---|
1 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
2 | × | × | 〇 | × |
3 | × | – | × | × |
4 | × | 〇 | × | × |
A:渡辺さんのデッキ(イゼット)
B:中村さんのデッキ(ゴルガリ)
C:八十岡さんのデッキ(ディミーア)
デッキ作成の流れ
デッキの核となるマルチカラーやアンコモンがあったため、渡辺さんのイゼットと八十岡さんのディミーアはすんなり組めました。残ったカードで中村さんが使う3つめのデッキを組むにあたり、緑白赤が残っていましたが、ボロスはイゼットからカードをもらわないといけないうえ、そもそも組むに値しないカードプールだったので、とりあえずセレズニアを組んだところ“吐き気がするくらい弱い”という結果になり…消去法でゴルガリになったとの事でした。
渡辺「ゴルガリにするとディミーアから《採取+最終/Find+Finality(GRN)》《真夜中の死神/Midnight Reaper(GRN)》《致命的な訪問/Deadly Visit(GRN)》の3枚のレアをもらうことができ、黒いレアが使えるのでギリギリいけるかなという甘い目論見でしたが、後で思い返すとその判断が間違いでした。」
(中村「いっそこれ(レア)がプールになければ……!」)
渡辺「ゴルガリを作るにあたって渡した3枚のレアをもしディミーアが持ったままなら、ディミーアから青いカードがもらえてイゼットも総合的に強くなります。
結果的に“ゴルガリ、セレズニア、ボロスのどれを作ってもゴミデッキだった”ので、3rdデッキを無理に作らず、2トップだけにしておけばよかったのではないかということです。」
――つまり、どうしたらよかったですか?
八十岡「ゴルガリとセレズニアを比べた場合、イメージ的にはセレズニアが15点だとしたらゴルガリは30点。15点ぶんゴルガリを上げたんですけど、その分ほかが15点下がってる(イゼット-5点、ディミーア-10点くらい)。対戦相手のデッキはみんな60点くらいあるんで、30点でも15点でもどうせ負けるんだから、15点の分をイゼットとディミーアに渡しておけばよかったなと。」
渡辺「真ん中はどうせ赤点だから、両脇の点を上げてしっかり勝てるような構築にしておけばよかった。」
~こうしておけばよかったバージョン~
こうしておけばよかったバージョン(渡辺)
こうしておけばよかったバージョン(中村)セレズニア
こうしておけばよかったバージョン(八十岡)
渡辺「この環境はほとんどの人が色を組み間違えない……特に1つ目2つ目のデッキはだいたい組み間違えないんで、みんなデッキが強いっすね。」
八十岡「弱いパックのときは間違えるんですけど、強いパックのときは間違えないですね。そこがいつもと違うね。」
中村「強いプールのときは道しるべがあるし、マルチカラーが全部強いし。」
渡辺「今回僕らは緑と白のプールが弱かったんで、判断間違えましたね。」
反省点について
――ゴルガリの経験値が3人とも低かったのも原因ですか?
渡辺「そうですね。できあがったデッキにGOサインを出してしまったのも、3人とも経験値が低かったことに起因しているので。」
八十岡「これだけ3種(ゴルガリ、セレズニア、ボロス)とも弱いなら、いっそ(中村)肇がたくさん練習したボロスで行ってもよかったかもね。なんだかんだボロスはブン回った時に一番爆発力あるから。」
こうしておけばよかったバージョン(中村)ボロス
また、チームシールドは一度色が決まると、そこから色を変更するのは難しいですが、20分くらい残っていた構築時間でもう少しだけ再考すればよかったということと、各ギルドの「弱いプール」での勝ちパターンを練習して経験しておけばよかったという反省点も出ました。2つのデッキだけを強くし1つのデッキを切り捨てるということは、この1日を通じて完全に“負け係”を引き受ける1人が生まれるわけです。そういう判断を下すのにはとても勇気がいり、かなり難しそうに感じられますが、「今回は合宿の日しか練習ができなかったから、2トップにするというパターンに気づけなくて、組み間違えたね」と3人は冷静に反省していました。
●市川ユウキの場合
市川さんは以前にもチームメイトだった瀧村和幸さん(BIG MAGIC所属プロ)と、3人目の石村信太朗さんによるチーム「the sun」で参加。
グランプリ前日には、サイドイベントのチームシールド講習会で、瀧村さん、石村さんとともにたくさんのプレイヤー相手に授業を行ないました。市川さんのアドバイス、とても参考になります……!
ぜひみなさんも参考にして下さい。 pic.twitter.com/WXX2tBG0Ai
— Yuuki Ichikawa (@serra2020) 2018年10月17日
本戦では、このチームシールド環境で基本となるディミーアのデッキが組めなかったため、瀧村さんの3色デッキがやや難を抱える構築となり、残念ながら初日6ラウンド目で脱落という結果になりました。
戦績(3勝3敗DROP、最終順位312位)
ラウンド | チーム(3-3) | 石村(3-2-1) | 瀧村(1-4-1) | 市川(4-2) |
---|---|---|---|---|
1 | × | × | × | 〇 |
2 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
3 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
4 | 〇 | 〇 | – | 〇 |
5 | × | 〇 | × | × |
6 | × | – | × | × |
A:石村さんのデッキ(セレズニア)
B:瀧村さんのデッキ(青黒緑)
※右上の光っている土地は《ギルド門通りの公有地/Gateway Plaza(GRN)》、その下が《沼》
C:市川さんのデッキ(イゼット)
チーム結成の理由は?
市川「前からrizar(石村さん)と組みたいなと思ってたんで、今回空いてたらぜひって。」
石村「んで、今回空いてた(笑)。」
市川「でも、かなり早めに声かけてたもんね。rizarは人気だからすぐ埋まっちゃうからね~。」
デッキ作成の流れ
構築の様子はカバレージに掲載されています。
今回のチームシールドはディミーアありきで始まりますが、使えるディミーアのカードが全然なかったため、3つのデッキを0ベースから考えることになりました。
ディミーアが組めないと緑を分割しなければならないのですが、緑のカードはそもそも弱いので使えるカードの総数が少なく、練習では一度も経験がないほどのレアケースに苦労することとなりました。記事を読むとスムーズに構築が進んでいたように見えますが、実は「プールの弱さにピヨっていて」かなり難しかったそうです。
まず、イゼットは《パルン、ニヴ=ミゼット/Niv-Mizzet, Parun(GRN)》があり、アンコモンもコモンもそろっているため「組まない理由がない」ということに。
瀧村「《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer(GRN)》というキーパーツがないのがすごい心残りではあったんですけど、フィニッシャーがいるから組みますかってなりました。」
市川「(《ゴブリンの電術師》がいないと)ほぼ2アクションとれない。押し込まれていると手詰まりなターンが多くなるんだよね。」
瀧村「プールにイゼットで使える強い低マナ域がなくて、スペルと上のマナ域がちゃんとしてるんで、じゃあコントロール気味で組もうかって。」
市川「見た目はまとまっているように見えるんだけど、イゼットが負けた2試合とも序盤押し込まれて巻き返せる術がなくて手詰まりという流れだったので、やっぱり守れるクリーチャーとして2枚目の《気難しいゴブリン/Ornery Goblin(GRN)》か、テンポがとれる《ゴブリンの電術師》が欲しかった。」
石村「ディミーア組まなかった理由の1つもそうなんですが、全体的に2マナのクリーチャーが少なかったですね。」
次に、カードがけっこうあったセレズニアがすんなり決まり、最後に黒をどうするかという話になりました。
黒だけでは攻められるカードが少なく、緑から持ってこないといけなかったため、ゴルガリにディミーアのカードも足し、黒緑青の3色で3つ目のデッキができました。
この3色に落ち着いた理由としては、ギルド門が合計6枚あるため(《ゴルガリのギルド門/Golgari Guildgate(GRN)》×3、《ディミーアのギルド門/Dimir Guildgate(GRN)》×2、《ギルド門通りの公有地/Gateway Plaza(GRN)》×1)、3色で組むと《ギルドパクトの大剣/Glaive of the Guildpact(GRN)》と《ギルド会談/Guild Summit(GRN)》が生き、弱いクリーチャーでも強化して勝ち筋にできるという考えもありました。
反省点について
瀧村「しかしその考えがトラップで……。これだけだと勝てなさそうだから、セレズニアから緑のカードをもらおうと思ったんだけど、セレズニアのパワーを下げてしまうので結局やめたんです。でも、やはり緑をもらってゴルガリベースで組んでおけば、またちょっと違ったかなと。」
――3色っぽくするよりは、ゴルガリメインのほうがよかった?
瀧村「この形はけっこう受けの形になっていて、自分から攻め出せず、講習会で話した“やっちゃいけないパターン”をやってしまった(苦笑)。『この環境はゴルガリはパワー3で攻めろ!』って話をしたにもかかわらず、受けてしまう形を作ってしまった。それが失敗だったかなと思っています。」
石村「セレズニアのサイドにパワー3が入ってたせいで、瀧村さんが使えなくなってしまってて。」
市川「まぁけっこう難しいところでしたね。これを渡しちゃうと、もちろんrizerのデッキは少し弱くなっちゃうし……。
セレズニアは見た感じ、このチームのトップだったんですよね。レアもちゃんとあり、除去も安定性もあって、セレズニアとして理想の形だった。だからrizerのデッキの勝率を担保したいってのもあって、瀧村君のデッキがこれで行けるんなら、あまりカードを譲らないほうがいいのかなと。まぁ、結果としては行けず……。」
瀧村「自分のレンジを変えられなかったってのが一番の敗因ですね。やっぱリミテッドって2本目3本目が本番なんです。相手のカードを見てどうかぶせて対応するか、抜け道を作っていくのがリミテッドで勝率を上げる技なんですけど、それが僕が持ってるカードではできなかったってのが敗因の1つですね。」
石村「これだけギルド門があると、タップインばかりなので早くすることはできないんで。」
市川「メインはゴルガリのビートダウンみたいな感じにしておいて、サイド後にこういう形にしたらよかったかもね。」
↑練習ではこんな理想の感じで組めてたそうです
中編「覚前輝也の場合」に続きます!