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プロツアー『戦乱のゼンディカー』からグランプリ・神戸2015へ向けて

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10月16~18日にミルウォーキーで開催されたプロツアー『戦乱のゼンディカー』から早1か月。11月21~22日のグランプリ・神戸2015を間近に控えた今、スタンダード環境はどんなふうになっているのでしょうか?  プロツアーのレポートは過去の記事をご覧いただくとしまして、ここでは3人とともに簡単に大会全体を振り返りつつ、グランプリに向けてスタンダード環境を考察していきたいと思います。

 

●プロツアーを振り返って

――まずはプロツアー『戦乱のゼンディカー』の感想を一言お願いします。
山本「僕はドラフトで5勝……あと1勝したかったなと。スタンダードのほうはチームの中にある一番強いデッキを使ったんで、その結果はしょうがないと思ってるんですけど。」

――プロツアー後に、シカゴでの観光記事が掲載されていましたね。
山本「あれ、載るって知らなかったんですよね(笑)。個人的に行ったので。あとから実は載せるって言われてびっくりしました。でも楽しかったから、あんなふうにプロツアー後にどこか1泊して観光するってのもアリだなと思いました。プロツアー前は大会のことが気になってそれどころじゃないですけど、プロツアー後ならいいなと。」

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――市川さんは、ドラフトの失敗とスタンダードの事故に見舞われ、残念な結果に終わったとのことでしたが……。
市川「リミテッドはほんとに実力不足だったと思ってますんで、もっともっと勉強しないと。スタンダードは、前回のプロツアー『マジック・オリジン』のときに使った山本さんのデッキも、今回の瀧村君(優勝したBIG MAGIC プロの瀧村和幸さん)のデッキも、どっちも強いデッキを使えてるはずなんで。」

――課題はリミテッドにあり!と。
市川「そうですね。いつもスタンダードのデッキは強いけどリミテッドがダメな気がするので、もうちょっと数を……マジック・オンラインで30回はやらないと。スタンダードにウェイトを占めすぎてる気がするんですよね。スタンダードが好きだからそればっかりやっちゃって。」

――限られた練習時間をどう配分するかという問題ですね。
市川「あと、リミテッドは『正直運ゲーだろ』ってなめてるんですよね(笑)。反省してもっと練習します。」

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――わかりました。覚前さんはいかがでしたか?
覚前「昨年度のプロツアーは4回ともリミテッドを練習してたんでアベレージ2勝1敗だったんですけど、今回初めて構築を中心に練習して、リミテッドはヤソ邸での合宿と前日のマジック・オンラインくらいしかやってなかったんです。そうしたら、リミテッドに対する引き出しが明らかに少なくて……。ドラフトでパックの出が悪くて、引き出しが少なかったせいでうまく対応できなくて2回とも1勝2敗だったというのが反省点でした。さらに、スタンダードは練習したにもかかわらずダメなデッキを持って行ってしまったので、だったらリミテッドを練習したほうがよかったなというのはありましたね。」

――なるほど。リミテッドはやはり回数が引き出しとなって力になるんですね。
覚前「そうですね。海外勢はリミテッドがかなり弱いので、ちゃんとやったらアベレージ2勝1敗はとれる確信があります。」

――プロツアーレベルでも、ドラフトはそんなに強くないんですね。スタンダードに重点を置いてる人が多いということですか?
覚前「そうですね。構築のほうがラウンド数多いですし。みんなそんなにリミテッドを練習してないので、そこが勝ち星を稼ぐためのポイントですね。」

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●Team Cygamesとして

――プロツアー『戦乱のゼンディカー』はTeam Cygamesとして初めて出場する大会でしたが、気持ちの変化はありましたか?
市川「注目はされてましたね。」
山本「うん。取材班が同行してたこともあって、日本人からの注目度は特に高かったですね。」
市川「結成の発表もプロツアーの直前でしたし。ただ、それによる気負いとかはあまりなかったですけど。」

――チームのユニフォームやグッズはどうでしたか?
山本「プレイマットがすごく使いやすくてよかったです。ほぼ黒無地のと、両脇が白くなってるのと、2種類あって。」
覚前「名前も入ってるしね。」
山本「北京(グランプリ・北京2015)でも敷いてました。」

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――ユニフォームも写真映えしてカッコいいですよね。
山本「評判よかったですよ。」
覚前「おしゃれだし、カジュアルでも着られるのがいいです。」
市川「覚前君、北京にこれ(ユニフォームのジャケット)着てきましたからね。」
覚前「荷物を少しでも減らしたくて……。」

――今度はスリーブと靴ができるそうですね。
覚前「全身欲しいです!ズボンもほしい。ジャージとか、カバンとかもいいですね。」
――そうなると全身コーディネートできますね(笑)

 

 

●グランプリ・神戸2015のメタゲーム

――プロツアーの結果を受けて神戸の環境の予測をしていきたいのですが、あと3週間くらいありますので(取材は11月の初めに行なっています)、使うデッキはまだ決まっていないですよね?
山本「僕はアブザンアグロで行きます。いろいろ回して、単純に一番強かったです。」
市川「もうアブザンアグロが一強、みたいなとこありますからね。」
山本「昔のデルバーみたいな……それは言いすぎかもしれないけど、頭ひとつ抜けてるなと。サイド後も苦手なデッキがほんとに少なくて、地力が一番高いと思いますね。」

――そもそも日本人はアブザンアグロが好きってのもありますし、神戸は多そうですね。
山本「めっちゃいそう。」
市川「25%くらいいてもおかしくない。」

――最近そこまで一大勢力になるデッキってなかったですね。
市川「アラーラ時代のジャンドデッキみたいなイメージかな。安定してて序盤から長期戦も強いから。」

――アブザンアグロはこれに弱い、というのはないんでしょうか。
市川「額面上は、ジェスカイブラックに対しては不利なんですよ。《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》への明確な回答がなくて、《はじける破滅/Crackling Doom(KTK)》がきついんで。だから見た目は不利なんですけど、なんか意外と勝っちゃうんですよね。最近練習してて、苦手そうなジェスカイブラックがそんなに苦手じゃなかったっていうのを発見したんで、結局アブザンアグロ一強ってイメージなんです。」

――確かにそうですね。
市川「今のアブザンアグロはトライランド(3色出るタップインランド)をとってないので、テンポがいいんですよね。反面、ジェスカイブラックはトライランドを4、5枚とってて、バトルランドも豊富に入ってるから、テンポで損するんですよ。そうすると、《はじける破滅/Crackling Doom(KTK)》で除去しても1体残って……みたいなのを繰り返して、《風番いのロック/Wingmate Roc(KTK)》が出てきて『もうどうにもならない』みたいな感じになる。」
覚前「《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》に1ターン対処できなかったら負けだし。」
市川「負け負け。ジェスカイブラックは4色なのにやってることが細いからね。」

はじける破滅 風番いのロック ギデオン

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架空のカードをプレイしつつ話す市川さん。楽しそうな2人。

 

 

――それでは、今後はアブザンアグロ同士のミラーマッチを勝てるように考えていくのがいいですか?
覚前「そこまであっていいと思ってます。」
市川「アブザン同系をとれるデッキができたら、僕は絶対それを使います。」

――じゃあ、これからはアブザンのサイドボードを研究していく?
市川「メインはほぼ完成されてるけど、サイドはすごい研究の余地があると思うんで。今のところ検討中ですが、かなり難しいです。グランプリ勝つか勝たないかはサイドによるかも。」
覚前「色を5色まで何でも足せるから、何かしらありそうな気はするけどね。」

――先手環境だから、後手のときにどうするかというのもありますよね。
覚前「先手だと《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》がマウント取るから、せこいよね。後手でまくるのはかなり厳しい。」

――結局、先手後手のダイス力を鍛えるとかになりますか?
市川「そういう感じになっちゃうから、アブザンアグロ使いたくないんですよね……。環境に多いことがわかってて、同系で運ゲーになるんだったらイヤだなと思ってて。アブザンアグロに勝てるデッキができるか、同系で明確な差がつけられるかが、神戸を制する一番の鍵だと思ってます。」

 

 

●ほかのデッキの選択肢

――アブザンアグロ以外のデッキの選択肢はありますか?
覚前「僕はエスパータップアウトを考えてます。プロツアーで8勝2敗したリストをもとにいろいろいじって、入れ替えながらずっと回してたんですけど、メインは結局もとのリストに行きつきました。エスパータップアウトかアブザンアグロのどちらかで、神戸の前の週のグランプリ・ブリュッセル2015に行こうと思ってます。」

――そこの結果を見て決めると。エスパータップアウトは誰のデッキですか?
市川「ハンガーバックアブザンで最初にグランプリを優勝したプレイヤー(グランプリ・ロンドン2015の優勝者Anteri Fabrizio)で、最近勝ってるんですよね。」

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※画像は【MAGIC: THE GATHERING】より引用させていただきました。

――優秀なデッキビルダーみたいですね。今後も注目です。そのデッキの強みは何ですか?
覚前「2ターン目《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》、3ターン目除去、4ターン目プレインズウォーカーという動きが安定してることです。2ターン目は《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》でもいいんですけど。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》が強く使える構成ですね。」

――アブザンを選ぶかそっちを選ぶかの決め手は?
覚前「友達とちゃんと調整してメタを考慮したうえで選ぶのがいいんですが、そこまで時間があるか怪しいですね。あんまりよくない決め方だとは思うんですけど、単純に勝率の高いほうですかね。」

――そうなると、グランプリ・ブリュッセル2015の結果も気になりますね。何にせよ、全体的に中速デッキがメインの環境になりそうでしょうか。
市川「アブザンアグロはミッドレンジ(中速デッキ)の中では若干速いほうですけど、まあミッドレンジですね。」

――それ以外の、早かったり遅かったりするデッキは厳しいと。
市川「赤単がミッドレンジ全部に勝てるなら赤単って選択肢はありなんですけど、アブザンアグロに勝てないのが問題だよね。」
覚前「アブザンアグロは、赤単にメインで普通に勝つのがやばい。」
市川「負ける要素があんまないからね。《始まりの木の管理人/Warden of the First Tree(FRF)》と《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》っていう、2マナまでのカードが強すぎて。」

――そうですよね。赤単は速さで勝負したいのに、それで勝てないとなると。
市川「赤単のほうがライフレースで負けたりするよね。」

――そう考えると、ほんとにアブザンの安定性がすごい。
山本「すべてはタルキール・ブロックが落ちてからですね。《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》が強すぎた。」
市川「しかも、『ゲートウォッチの誓い』で緑黒ミシュラランドが入るだろうから、もうやりたい放題ですよ。」
覚前「こないだ久しぶりに《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》使って、感動したもん。なんでここ半年くらい使ってなかったんだろうって後悔した。」
市川「今はアブザンアグロ使い得だから! 使わないやつはアホまである。」

このようにデッキについての熱い話し合いが続きましたが、アブザンアグロの強さを覆す方策についてはまだまだ研究中ということのようです。
はたして、11月14~15日に行なわれるグランプリ・ブリュッセル2015での覚前さんのデッキ選択はいかに? そして、グランプリ・神戸2015のトップ8にはいったい何枚の《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》がいるのでしょうか?

 

 

 

 

 

最後にちょこっとオフショット。
取材後の食事会で、少し前に誕生日を迎えた覚前さんをバースデーケーキでお祝いをしました!
オレンジのショートケーキ、喜んでもらえて良かったです!

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