プレイヤーズコンベンション横浜2023レポート
3月4-5日にパシフィコ横浜で開催された、プレイヤーズコンベンション横浜2023のレポートをお送りします。
前回の大会レポートでは、このイベントの仕組みなども説明していますので合わせてご覧ください。
「プレイヤーズコンベンション愛知2022レポート」
Team Cygamesメンバーのうち、市川さんが「チャンピオンズカップファイナル サイクル2」に参加し、八十岡さんは生放送の解説として2日間参加しました。
現在の環境について、八十岡さんが解説した記事が公式のカバレージに掲載されています。とてもわかりやすいと評判なので、ぜひチェックしてください。
「八十岡 翔太のスタンダード解説 ~ミッドレンジの正体~」
※写真は「Magic: The Gathering」から引用させていただきました。
大会ラッシュのお忙しい中、オンラインにて市川さんに取材させていただきました。
4《ザンダーの居室》 4《黒割れの崖》 3《闇滑りの岸》 3《シヴの浅瀬》 3《日没の道》 2《地底の大河》 2《死天狗茸の林間地》 1《嵐削りの海岸》 1《天上都市、大田原》 1《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1《落石の谷間》 1《硫黄泉》 土地(26) クリーチャー(12) |
3《勢団の銀行破り》 4《鏡割りの寓話》 4《ギックスの残虐》 2《強迫》 1《兄弟仲の終焉》 3《喉首狙い》 3《削剥》 1《かき消し》 1《否認》 呪文(22) |
4《切り崩し》 2《未認可霊柩車》 2《黙示録、シェオルドレッド》 2《強迫》 1《喉首狙い》 1《軽蔑的な一撃》 1《兄弟仲の終焉》 1《勢団の銀行破り》 1《否認》 サイドボード(15) |
市川さんの戦績
戦績(最終順位:23位)
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 勝敗 |
---|---|---|
1 | セレズニア・ポイズン | ×1-2 |
2 | ラクドス・リアニメイト | ○2-1 |
3 | マルドゥ・ミッドレンジ | ○2-1 |
4 | グリクシス・リアニメイト | ○2-1 |
5 | グリクシス・ミッドレンジ | ×1-2 |
6 | エスパー・レジェンズ | ○2-1 |
7 | エスパー・レジェンズ | ○2-0 |
8 | ジャンド・ミッドレンジ | ×0-2 |
9 | セレズニア・ポイズン | ○2-1 |
10 | 黒単ミッドレンジ | ○2-1 |
11 | セレズニア・ポイズン | ○2-1 |
12 | 赤単アグロ | ×1-2 |
※1ラウンド(松浦拓海選手)、10ラウンド(伊藤大明選手)、11ラウンド(斉藤徹選手)との対戦がビデオフィーチャーになっています。
●デッキについて
――まずはデッキ選択の経緯について教えてください。
市川「この大会がプロツアーの2週間後で、調整期間が全然なくて。デッキ提出締め切りが木曜夜だったんですけど、手をつけ始めたのは火曜くらい。自分でやれることが全然なくて、調整チームがいろいろデッキ上げてくれた中から決めました。」
――チームメンバーは誰ですか?
市川「行弘(賢)君、原根(健太)君と、森山(真秀)君と、ざきかわ(川崎慧太)さんです。原根君が調整してたラクドス・リアニメイトがグリクシス・リアニメイトに変わったくらいのタイミングで、ちょうど僕の体が空いたんで、ちょっと回して『じゃあこれで』って。」
――選んだ決め手は?
市川「ラクドス・リアニメイトのほうもちょっと回したけど、全然感触よくなかったんですよね。グリクシス・リアニメイトのほうは勝率もけっこう出たし、《偉大なる統一者、アトラクサ》自体も使いたかったし、これでいいかなーと。」
――市川さんは先日、『ファイレクシア:完全なる統一』の注目カードとして《偉大なる統一者、アトラクサ》を挙げていましたね。今は下の環境でも使われていますし、世間より早く評価してたんじゃないかなと。
市川「そうでしたっけ。完全に失念してました。」
↓「2022-2023年・冬のTeam Cygamesだより」より引用
市川「おー、有言実行ですね(笑)。実際、最低でも4枚、多いと6枚くらい取れるし、出したらだいたい勝つカードですから。7マナってのが絶妙で、ギリギリ手からプレイできるのもいいんですよね。」
――ラクドス・リアニメイトからグリクシス・リアニメイトになったことで、《偉大なる統一者、アトラクサ》を墓地から釣らずに手出しできるようになったのも強みですよね。
市川「ラクドスだと宝物トークンがそんなに出ないんで厳しいんですけど、グリクシスだと白と緑の土地もちょっとずつ入れてるので、7マナ全部土地から出せたこともけっこうありました。」
――手出しとリアニメイトの比率はどれくらいだったんですか?
市川「7:3くらいで手出しのほうが多かったですね。メインはけっこうリアニメイトが決まるんですけど、サイド後は相手が対策してくる。でも手から出すときは相手の墓地対策とか《否認》を無視できるので、サイド後は圧倒的に手出しが多くなります。」
――そう考えると、手出しが難しいラクドス版はサイド後に厳しいってことですね。
市川「それにラクドスだと、《偉大なる統一者、アトラクサ》でめくれるクリーチャーも弱くなっちゃうんですよね。《税血の収穫者》が大当たりくらい。でもグリクシスだと、《税血の収穫者》はハズレ、《死体鑑定士》が中当たり、2枚目の《アトラクサ》が大当たりになるんです。1枚目の《アトラクサ》で足りない色の土地を拾えて、2枚目を手から出せるようになるので。」
――今回も市川さんは、優勝と準優勝以外は意味がない大会だったわけですよね?(プロツアーの権利がすでにあるので、優勝と準優勝で得られる世界選手権の権利以外は意味がない)
市川「そうです。なので、大勝ちするために選んだ面もありますね。普通のグリクシス・ミッドレンジだと、よほどうまくないと大勝ちはできなさそうだなと。ミラーマッチのとき、予選から勝ち上がってきた人のほうが圧倒的にこの環境のスタンダードをやり込んでるはずなんで。グリクシス・ミッドレンジは安定してそうだけど、練習期間が足りないなと。」
――今回はグリクシス・ミッドレンジの使用者数が一番多かったですが、このデッキに対して、市川さんのデッキはあまり相性がよくないんですよね?
市川「よくないです。原根君に『これ、グリクシス・ミッドレンジにだけ勝てればすごくいいデッキなんだけど、なんかプランないの?』って聞いたら『何もない』って返ってきたんで、しゃーないなと(笑)。
このデッキって、グリクシス・ミッドレンジの《絶望招来》の部分に《アトラクサ》のパーツを入れてるような構成なんですけど、この2つのマッチアップだと《絶望招来》がすごく強いんですよね。でもその分、グリクシス・ミッドレンジが苦手とする相手に対して、こっちは《アトラクサ》の部分で勝てる。」
――なるほど、一長一短ですね。
市川「まあ、フタを開けたらグリクシス・ミッドレンジ一強環境になる、みたいなリスクもありましたけど、今回は結果を見るかぎり、グリクシス・ミッドレンジの勝率は4割くらいで負け組だったみたいなので、選択が当たりましたね。
このデッキを使った調整メンバーはみんな勝ちましたし。原根君がトップ8で、森山君と僕ももう少しでTOP8まで行ったし。川崎さんは初日落ちしましたけど、2日目にスタンダードオープンに出てトップ4だったんで。
トップメタに不利なデッキにもかかわらず、使った面々がみんな勝って、こんなこともあるんだなと。」
――このデッキを組んでみようという人もいるでしょうね。
市川「グリクシス・ミッドレンジのデッキパーツを持ってれば、一部が違うだけなんで組みやすいと思いますし、おすすめです。
やっぱり《偉大なる統一者、アトラクサ》で10枚めくるのは楽しいですよ。アリーナでやってるときもすごい楽しかったから、リアルでやったらもっとおもしろい。」
――プレイングのアドバイスもお願いします。
市川「《死体鑑定士》に注意! ですね。適当に捨てるとすぐ食べられちゃうんで、《鏡割りの寓話》の2章で捨てずに、血トークンでエンドに捨ててメインで釣る。相手の墓地対策がどういうカードなのかを理解して、ソーサリーの墓地対策が介入しないようにするプレイとかが大事です。」
――ありがとうございます。回してみます!
●大会について
――トップ8の目が最後までありましたが、最終戦負けて惜しかったですね。
市川「ああ、でも最終戦は勝っても9位っぽかったんですよね。僕に勝った人がやっぱり9位だったんで。
最終23位で、特に賞金もなかったんですけど、最終戦でID(合意のうえでの引き分け)してたら、結果的には18位以内に入れてインマネ(賞金圏内)だったんです。
ただ、そのためには『最終戦で勝ってもトップ8に入れない』『IDしたら18位以内が確定する』ということを、ちゃんと計算して確定したうえで、相手にも理解してもらわなきゃいけないんで、たぶん無理だったと思います。」
――テーブルトップの大会ならではの問題などはありましたか?
市川「いや、特には。相手側の人はけっこう紙のスタンダードに慣れてて、逆に自分のほうが慣れてない感じでしたね。
スタンダードをやってきてる人たちはたぶんアリーナで練習してるから、フェイズの移行とかもちゃんと把握してるんじゃないかなと思います。昔はもっとルール面の理解が足りなくてジャッジ呼んだりしてたように思うんですけど、ここ数回の紙の大会では、全然そういうことがないんですよ。」
――なるほど、アリーナで誘発タイミングとかをちゃんと理解した状態で紙の大会に来るから、スムーズなんですね。
市川「そうだと思います。『今はアリーナで言うとこのタイミングだな』とか。今はアリーナをみんながやってる恩恵があるのかなと思いました。」
――ところで、あのドラゴンボールの服はなんだったんですか?(笑)
市川「あれはグラニフのドラゴンボールコラボで、買ってから半年寝かせてた秘蔵のジャケットです。あったかくなってきたんで、そろそろ着てもいいかなと。びっくりしたのが、まったく同じのを着てる人に会場で話しかけられたんですよ。思わず2人で写真撮りました。」
――ペアルック!
市川「『市川さん、がんばってください』みたいな感じで声かけられたんですけど、同じジャケットしか目に入らなくて(笑)。まさかかぶるとは。
ただ問題点としては、僕そんなにドラゴンボール詳しくないんで、にわかジャケットなんですよね~。」
――ファンの人につっこまれると困りますね。そういえば、パーマはいつかけたんですか?
市川「1、2か月前くらいですかね。でも大不評で……。」
――木村(Cygames取締役)の今の髪型とちょっと似てますよ。
市川「それは、髪型寄せた可能性ありますね(笑)。」
――大会で優勝したのは、旧知の仲の佐藤レイさんでしたが、言いたいことはありますか?
市川「まあ、強いデッキを強いプレイヤーが使ったら、そりゃ勝つなと。初戦、こないだのプロツアーでTOP8の松浦(拓海)さんと当たって、レイ君と似たようなセレズニア毒デッキだったんですけど、見た瞬間にすごくいいデッキだなと思いました。
今回、調整チームの行弘君だけバントの毒デッキを使ったんですけど、飛び道具が多めで、最後を増殖で詰めるみたいな構成なんです。セレズニアの毒デッキはほんとに一直線のビートダウンで、《スクレルヴの巣》や土地をすごく強く使えてるんで、間違いなくあの大会のベストデッキだと思います。納得の優勝!」
●次の大会に向けて
――すぐに次の大会が来ますね。
市川「アリーナ・チャンピオンシップ2が再来週(3月18-19日)にあって、フォーマットがヒストリック(+ドラフト)なんですけど、マジで1ミリもやってないんで、今大慌てでやってます。デッキリスト提出が次の月曜なんで。」
――ゼロからスタートなんですか?
市川「新セットが追加されて、イゼット・フェニックスとかゴルガリ・フードみたいな、よく知ってる連中は全部ナーフされて消滅したんで、マジで新環境です。まあ、今からでも全力で叩きこめばいけるとは思いますけど……。
この大会が一番バリューあるんですよね。優勝・準優勝に世界選手権の権利ってのはチャンピオンズカップファイナルと一緒ですけど、こっちは参加者数がたった32人だし、賞金もめちゃくちゃ高いんで(優勝3万ドル)、完全にいま、勝負師の顔です!(笑)」
――そういう本気モードのとき、1日の生活はどういう感じなんですか?
市川「調整はあんちゃん(高橋優太さん)とやってて、2人じゃ足りないんで熊谷(陸)さんをヘッドハンティングしました。
このチームでは練習が2部構成になってて、13時から19時までと、21時から夜だいたい2時くらいまで。19時から21時の間が晩飯の休憩です。
それを1週間くらい続ける感じになります。カレーを大量に作って、それで籠城決め込む予定です。」
――1日11時間くらい、ずっとパソコンの前に座って練習するわけですね。チームでのやりとりはどのように?
市川「Discordで画面共有して意見交換したり、ダイレクトマッチで直接相性を見たりとかです。随時ほかのメンバーの画面が見えるんで、『そのデッキ強そうだね』とか、『相手のデッキ面白そうだね』とか、そういう話しながら。」
――熊谷さんを雇ったのはどういう理由ですか?
市川「うまくて時間のあるやつだからです。熊谷イズナンバーワンです。みんな職に就いてしまったりしたので、なかなかいないんですよ、うまくて時間のあるやつは。」
―その通りですね。プロツアー前からずっと忙しい日々が続いているわけですが……。
市川「長い競技イベントマラソンも、アリーナ・チャンピオンシップ2でフィナーレです。マジで長かった。フォーマットがいろいろだから、終わったら即座に忘れるんで、今までの過程は何も覚えてなくて、今目の前にヒストリックがあること以外、何もわからない(笑)。」
――後ろを振り向かず、前だけ見て走ってるんですね。アリーナ・チャンピオンシップ2が終わったらようやく休めますか?
市川「しばらく大きいトーナメントはないんじゃないかな。最近なかなかできてなかったんで、配信やりたいですね。」
――終わったらパーっと遊ぶ!とかじゃなく、終わったらファンの皆さんのために配信をするんですね。すごい。
そういえば、前回の振り返り記事で、「横浜までには体力をつけたい」という話がありましたが……。
↓「プレイヤーズコンベンション愛知2022レポート」より引用
市川「まったくできてません!(笑) 横浜で井川(良彦)君と飲んでて、『そういえばせばちゃん、横浜までに絞るって言ってなかった?』って聞かれて、まったく記憶になくて『え? 何の話してんの?』って反応しました。」
――後ろは振り向かないですから、仕方ないですね。
市川「そうそう。いやー、やっぱり競技マジックと運動を両立するのはかなり難しいです。疲れると寝ちゃいます。プロツアーの練習が始まる前は週2、3回ジムに行ってたんですけど、練習始まったら忙しすぎて、これは詰んだなと思いました。」
――やっぱり、マジックに注力してる時期にほかのことはできないと。
市川「気分転換に運動するってレベルまで体を動かすことが好きじゃないとたぶん無理ですね。
まあ、アリーナ・チャンピオンシップ2が終わったらちょっと時間あるんで、6月の幕張までには絞ろうかなと思います。今度こそシックスパックを目指して。」
――頑張ってください!
3月18-19日のアリーナ・チャンピオンシップ2の応援を、ぜひ皆さんよろしくお願いします!