Team Cygamesのあゆみ ~1661日の道のりと景色~ 後編
前編に引き続き、Team Cygamesの歴史を振り返ります。
■2018年
参加者18名。ピック後に並べたデッキだけを見て誰のものかを当てる、「ききマジック」という遊びが生まれていたのが印象的です。
「ききマジック」をやっているところ。
合宿レポート記事に使用した集合写真の没バージョン。皆さん写真を撮られ慣れていて撮影時にあまりまばたきしないので、こんなに目をつぶっている写真はすごくレアです。
モダン/ドラフト
直前で天啓のごとく発見したホロウワンデッキを使い、行弘さんがトップ4入り。「マジック2.0」ともいわれる異次元の動きが話題になりました。チームメンバーも山本さん、覚前さん、八十岡さんが使用しましたが、運要素が高く好き嫌いが分かれるデッキでした。
3人チーム構築戦(スタンダード・モダン・レガシー)
25周年プロツアーと同じフォーマットでの前哨戦に、同じチーム構成で参加。
市川さんと八十岡さんがレガシーとスタンダードのダブルグランプリに出場。
渡辺さんと覚前さんがチームモダンのグランプリに出場。
新セットが出るたびに注目カードをピックアップする八十岡さんの記事「ヤソの新カードレビュー」がスタート。
参加者18名、祝日を利用して初の4日間開催。
覚前さん不在のプロツアー。環境が煮詰まってからの開催なため、結果はやや不振でした。
30秒の映像ですが、倉庫風のスタジオを使って丸一日がかりの本格的な撮影を行ないました。お披露目は格闘ゲームの祭典「EVO2018」にて。その後テレビCMとしても放映しました。
それぞれが使っているデッキ(渡辺=白、山本=黒、覚前=赤、市川=緑、八十岡=青)は、スタンダードだと時期が限定されてしまうのでモダンにしました。デッキリストや撮影企画、そして完成した動画などはすべてウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の承認を取っています。
撮影用絵コンテの一部。
撮影概要書の一部。
スタンダード
市川さんが「青白王神」で優勝。グランプリ優勝はこれで4回目です。王神デッキは大会で繰り返し使っていて、お気に入りなんだなと印象的でした。
参加者18名。次のプロツアーではドラフトがないのでグランプリ用の練習でした。
リミテッド
25周年記念イベントということで、大会内でもいろいろな演出がありました。レポート内では皆さんに「マジック人生一番の思い出」を尋ねています。
リミテッド
山本さんが8位入賞。市川さん以外のTeam Cygamesメンバー4人に行弘さんと原根さんが加わり、1週間前のこのグランプリに出てから現地で合宿しプロツアーに備えました。
チーム構築戦
25周年を記念した大会で、前日に食事がふるまわれたり参加者にコンプリートセットが配られたりと豪華でした。
6人のチームを2つに分けるため、同じフォーマットを担当するのは2人だけ。いつもは6人で相談するところ、チーム内で相談がほぼなく個人戦の様相で、チームの戦略などがないのがつまらないといった感想が出ました。
1年ぶりの動画で、オープニングを一新。15~17回は行弘賢さん(アイアンワークス所属)をゲストに招き、25周年記念プロツアーの時にフォーマットが同じだったプレイヤーどうしで対戦しました。
行弘「緑単タッチ黒」VS渡辺「緑単タッチ黒」
スタンダード/ドラフト
渡辺さんが「赤黒アグロ」で7位入賞。
覚前「ナカティルバーン」VS市川「ブリッジヴァイン」
これより約1年前、プロツアー『イクサラン』の会場で、アリーナのテストバージョンにさわることができました。動きの軽快さはこの時からでしたが、今とはだいぶUIが異なっています。たとえば初期バージョンでは、負けたプレイヤーのアバターが爆発する演出はありませんでした。
八十岡「オムニテル」VS山本「スニークショウ」
参加者19名。次シーズンのチームシリーズも〈MUSASHI〉継続となりました。
公式サイトの「ラヴニカギルド診断」(質問に答えていくと所属ギルドが決まる占いのようなもの)では、山本さんと市川さんがゴルガリ(黒緑)、八十岡さんがイゼット(青赤)、渡辺さんがディミーア(青黒)、覚前さんがセレズニア(緑白)と判定されました。
チームリミテッド
山本さん・行弘賢さん・佐藤レイさんのチームが、リミテッド力の高さを存分に発揮して優勝。
スタンダード/ドラフト
渡辺さんが「イゼットドレイク」で8位入賞。
11人でスプレッドシートにデジタルの対戦データを蓄積する調整法になり、結果を出すことができました。
レガシーとスタンダードのダブルグランプリで、レガシー/スタンダード両方に出場したのが市川さん、山本さん、覚前さん。渡辺さんはスタンダードのみ出場、八十岡さんは公式放送の解説として参加。
レガシーグランプリで覚前さんが優勝し、グランプリ優勝回数を3回に増やしました。
プラチナ・ゴールド・シルバーといったプロレベル制が廃止され、マジック・プロリーグ(MPL)の設立が発表。MPL所属選手24人だけが公式プロという形になり、それぞれモチベーションに変化が起きる大きなきっかけとなりました。
MPLに選出された八十岡さんは、テーブルトップ/アリーナによる大会の合間にMPLリーグ戦が入り、忙しい2019年を送ることに。
■2019年
これを機に国内でプレイヤーが急増するとともに、チームでも全員がアリーナを調整に取り入れるようになっていきます。
参加者18名。この裏で覚前さんがグランプリ・シドニーに出場しトップ4入り。
スタンダード/ドラフト
今までのプロツアーからミシックチャンピオンシップに名前変更。アリーナの導入により試行回数が増えることによって環境の変化が早まる傾向がみられました。
命運を託せるチームデッキが誕生しなかったこともあってか、やや不振な結果に。
リミテッド
ミシックチャンピオンシップの併催グランプリに、初日落ちした山本さん、覚前さん、渡辺さんの3名が参加しました。
また、覚前さんはこのあと、アリーナで3日間ランクマッチを走り込み、「構築ランキングが世界で8位以内になったらミシックインビテーショナルに出場できる」という枠を獲得。
スタンダード
覚前さんが愛用してきた「赤単タッチ黒」で8位入賞、渡辺さんが「スゥルタイ」で準優勝。
デュオスタンダード
マジックのe-Sports化を象徴する、MTGアリーナのお披露目的な一大イベント。MPLメンバーと招待プレイヤーが半分ずつの、計64人で高額賞金をかけて戦いました。
Team Cygamesからは八十岡さんと渡辺さん、そしてアリーナで権利を獲得した覚前さんが出場。BO1(1本勝負)のデュオスタンダード(2デッキ制)、2敗したら即終了という特殊なフォーマットに苦戦を強いられました。
モダン
裏では八十岡邸で『灯争大戦』のドラフト練習も行なわれていました。
モダン/ドラフト
発売前の『灯争大戦』を使用したドラフト、ロンドン・マリガン初導入、構築ラウンドでのデッキリスト公開と、初めてのこと尽くしでした。
この大会で、渡辺さんがスリーブのマークドを理由に失格処分となり、その後5月に30か月の出場停止および殿堂・MPL除名という発表がありました。これを受けて渡辺さんはTeam Cygamesとの契約を更新せず、競技プレイヤーを引退することとなりました。これはTeam Cygamesの歴史の中でもっとも悲しく、悔しい事象です。
〈MUSASHI〉最後の写真。
スタンダード
初のMTGアリーナによるミシックチャンピオンシップが開催されました。招待プレイヤーのみの小規模大会に、山本さんと八十岡さんが出場。八十岡さんは自信作の「エスパーコントロール」でトップ4入り目前でしたが、“ジャーマン・ジャガーノート”ことKai Buddeに惜しくも敗れました。
モダン/『モダンホライゾン』ドラフト
ポイント的にチームシリーズが関係なくなったので、チーム「曲者」と共同で18名によるデッキ調整を行ないました。
この大会に出場するために予選を行脚した末、ついに最終週ギリギリで権利を獲得した市川さんでしたが、飛行機トラブルに見舞われ24時間以上かけてヨーロッパを大移動する羽目になりました。
ベルギーからパリへ、遅延を繰り返しながら電車で移動中の写真。
リミテッド
シールド戦が好きな八十岡さんが5位入賞。
八十岡さんは解説。ほか3名は全員初日1敗と好調で、最終的に山本さんが14位で賞金獲得となりました。
スタンダード
参加者68名のMTGアリーナ大会。市川さんが「日本の人気ストリーマー」として特別招待されました。
スタンダード/ドラフト
覚前さんと八十岡さんが参加。このあと禁止となる《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns(ELD)》《むかしむかし/Once Upon a Time(ELD)》《夏の帳/Veil of Summer(M20)》が席巻する大会となりました。
スタンダード
参加者67名のMTGアリーナ大会に覚前さんが特別招待。市川さんは日本で配信の解説でした。八十岡さんは11月のMPLリーグで1位になったことにより1日目をスキップ。
■2020年
パイオニア/ドラフト
大会システムが変更され、シーズンごとにアジア・ヨーロッパ・アメリカの3か所でプレイヤーズツアーを行ない、それぞれの上位入賞者は「プレイヤーズツアーファイナル」に出場できるようになりました。
10名でパイオニア・フォーマットの練習と調整を行なった結果、うち4名(八十岡さん含む)がトップ8に進出。
今後の予定は……?
プレイヤーズツアー・名古屋2020から本来つながっていた4月のプレイヤーズツアーファイナル・ヒューストンや、5月のミシックインビテーショナルなどの大会が、新型コロナウイルスの影響で軒並み中止となりました。市川さんと覚前さんが権利を獲得していた5月のプレイヤーズツアー・北九州も延期です。
代わりに、Channel Fireball主催のアリーナでの大会(プレイヤーズツアーやプレイヤーズツアーファイナルへの参加権利が得られる「マジックフェスト・オンライン」)が開かれるようになりました。市川さんと覚前さんはこれに積極的に出場し続け、戦績を残しています。
今シーズンのトーナメントシーンは大きな空白となり、テーブルトップでのプレイが大きく制限されている今、マジックはオンライン方面へ大きく舵を切ろうとしている印象です。はたしてこれからどうなっていくのでしょうか?
「MTGアリーナ」を世界のゲーマーに向けてアピールしたミシックインビテーショナル
●4年半で変わった景色
この数か月だけでもマジック業界には著しい変化が起きていますが、チームが発足してからの4年半で環境は大きく変わりました。
特に大きい変化は2つ。1つ目が「MTGアリーナ」の誕生、2つ目がMPL制度の発足で、マジックはe-Sports化への道を一気に走り始めました。
公認のプロとして活動するMPL(+下部組織のライバルズリーグ)と、それを目指すその他大勢といった形で、プレイヤー層は大きく二分。今までのように、こまめにプロポイントを稼いで1つでも上のプロレベルを目指すという活動をしなくなったため、かつてのように海外グランプリに大勢で遠征するといったこともなくなりました。
チームとしても、この4年半の間に華々しいチームシリーズ優勝があったり、Cygamesのロゴが入ったユニフォームやサプライが使用禁止になったりなど、さまざまな紆余曲折がありました。
現在はプレイヤーズツアーファイナルやミシックインビテーショナルに、チームのメンバー全員が出られるといった状況ではなくなってきていますし、チーム内でも目標や活動姿勢は同じではありませんので、今後は取材体制も臨機応変にしていく予定です。
それでもチーム発足時の理念通り、マジック業界外からのスポンサーとしてマジック界に活気を吹き込み、ひいてはカードゲーム業界全体の隆盛や底上げを目指していきたいという気持ちは変わりません。
Cygamesではそれぞれのメンバーをそれぞれの形で、今後とも引き続き応援していきたいと思っています。
マンパワーの問題などでなかなかできませんが、また動画もやりたいですね!
公式HP:TOP画の遷移(初期メンバーver)
公式HP:TOP画の遷移(4人ver)
公式HP:TOP画の遷移(5人ver)