Team Cygamesのあゆみ ~1669日の道のりと景色~ 前編
『マジック:ザ・ギャザリング』のプレイヤーをCygamesが支援する「Team Cygames」がスタートしたのは2015年10月。
それから4年半が経ち、メンバーの状況も、『マジック』を取り巻く環境自体も、今では大きく変化しました。
現在、大会が中止や延期になってしまいトーナメントシーンは停滞した状況にありますが、これを機に今までのチームの歩みを前後編で振り返っていくことにしましょう。
また、この記事に引き続いて、各メンバーそれぞれのあゆみをまとめ、当時の思い出を振り返っていく記事も予定しています。
■2015年
市川ユウキ、山本賢太郎、覚前輝也の3名にてチーム立ち上げ。
マジック業界外からのスポンサーということで注目を集め、多くのメディアに取り上げられました。
「殿堂入りしていない若手でバリバリ現役のプレイヤー。さらにマジック業界内で悪い評判を聞かない人」という条件をもとに、本当に来てほしいと思う人にオファーを出したところ、結果としてその全員が参加してくれることになりました。
殿堂プレイヤーを条件からはずしたのは、殿堂プレイヤーには一線を退いている人も少なくないので、業界の発展を考えたら今まさに本気で最前線で頑張っている人をスポンサードするべきと考えたからです。
間近に控えたプロツアーのため、晴れる屋主催のドラフト合宿に参加。そのレポートがTeam Cygames初の取材記事となりました。
スタンダード/ドラフト
初の大会レポートは、フィーチャーされなかった注目卓の対戦カバレージも2本含む大ボリュームでお届けしました。
チームTシャツ、ジャケット、プレイマット2種のお披露目の席でもありました。
最初に制作したTシャツのデザイン画。のちに白バージョンも追加しました。
観光に行った動物園にて、「サイを2人で包囲して、《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》ゲームス!」の図。
チームリミテッド
3人のチーム戦に、おのおの別のチームで参加。市川さんのチームが準優勝しました。
それぞれのチームでデッキ構築のやり方やデッキの分担が異なり、チームメイトの助言は最小限のほうがいいといった、チーム戦ならではの戦略もありました。
スタンダード
ここからTeam Cygamesの靴、スリーブ、ストレージボックスが登場。
この大会にはTeam Cygames発起人の木村も出場したため、山本さんと木村の神戸観光記事も掲載しました。
Team Cygamesスリーブ開発の歴史。何度となく改良を重ねましたが、最終的な完成には至りませんでした。
市川「エスパーメンター」VS山本「アブザンアグロ」
マジック・オンラインでの対戦を解説付きで見せる動画コンテンツ「Team Cygamesの9割勝てるマジック講座」がスタート。第2回まではタイトルが決まっておらず、公募で決めました。
アブザンアグロに「9割勝てる」ことが触れ込みのエスパーメンターが1割の負けを引くところを、市川さんの解説に木村取締役による茶々入れ付きで見ることができます。
■2016年
市川「エスパーメンター」VS覚前「赤緑上陸」
当時、今のようにプロプレイヤーの配信が一般的ではなかったため、プレイ画面を見ながら逐一プロの思考回路を聞いたり、感想戦で勝敗を分けるポイントを学んだりできる、貴重な動画でした。マジック・オンラインなので英語しかなくややカードが見にくいのを、字幕を入れることでカバーしています。
Cygames主催のドラフト合宿が初開催。参加者12名。木村も参加し、グランプリに向けてシールドの練習も行ないました。
リミテッド
メンバーの成績はいまひとつでしたが、わずか2週間のあいだに合宿からグランプリでの濃密な経験を経て、プロツアーのドラフトへとつながる流れが見て取れました。
グランプリのフィーチャーマッチで勝利!(木村さん!)
日本最高クラスのドラフトやプレイングの技術を持った渡辺さんの参加は、チーム全体の力が引き上げられるきっかけとなりました。
ドラフト合宿で市川さんにアドバイスする渡辺さん。
モダン/ドラフト
渡辺さんの加入によって海外からの注目度が格段にアップし、ビデオフィーチャーマッチにも呼ばれました。
チームの調整によって極限まで磨かれたデッキが優勝し、日本でもチーム調整が課題として挙げられる結果となりました。
渡辺「ダークジェスカイ」VS山本「アブザンアグロ」
4人になったので渡辺&市川組、山本&覚前組に分かれ、キーポイントでは相手側の盤面や会話を映し、双方の考え方が見られる形にしました。
渡辺「ダークジェスカイ」VS覚前「アタルカレッド」
渡辺「ダークジェスカイ」VS市川「緑単ランプ」
市川さんの後ろに山本さんと覚前さんがついた3対1の対戦。最後のおまけパートが特にお勧めです。
ここからはCygames社内で実施。参加者11名。両面カードの公開によってドラフトが単純化すると判明しましたが、プロツアー直前に「両面カードをスリーブに入れてドラフトする」ことになり、ルール変更に翻弄されました。
スタンダード/ドラフト
山本さんと渡辺さんは日本人計7名による現地での事前合宿に参加。
また、渡辺さんのドラフトテクニックを学べる大ボリュームの記事「なべごく」をプロツアーにて収録。環境は違っても役立つ内容なので読んだことない方はぜひ!
スタンダード
市川さん、渡辺さんは2敗ながらもオポ落ち。参加者3300人超という人数の多いグランプリならではの厳しさでした。
山本「ナヤコントロール」VS渡辺「バント人間カンパニー」
「どっち側の視点で見たいか」という投票により、山本さん&市川さん側からの視点メインでお送りしました。
山本「ナヤコントロール」VS覚前「赤緑ランプ
山本「ナヤコントロール」VS市川「スゥルタイ季節」
市川さんが盗んだニッサで走り出してやらかす回。
スタンダード
市川さんがグランプリ・上海2015に続く2度目のグランプリ優勝。Team Cygamesにとっては初の優勝トロフィーとなりました。
遠方から参加した人も含め、参加者18名による2卓に拡大。人数が多いほどたくさんの知見を集められて効率が良くなります。
リミテッド
山本さん、覚前さん、渡辺さんの3名はグランプリに出場し、そのままシドニーに滞在。総勢12人で合宿を行なってスタンダードのデッキを調整しました。
一方市川さんは裏でBMO(BIG MAGIC主催の大会)に出場。
スタンダード/ドラフト
山本さん、覚前さん、渡辺さんが使ったデッキは行弘さん作の「赤緑昂揚ランプ」で、本人がこれでトップ8入り。また、この大会中に渡辺さんの殿堂入りが発表されました。
記事にはなっていませんが、山本さんと覚前さんは観光にも行きました。船に乗って動物園に向かいます。
乗り場にいたキャプテン・クック船長と記念写真。
船上でシドニー湾の有名なハーバー・ブリッジをバックに。絵になる~!
ケーブルカーから動物園のさまざまな生き物が見えました。
ニコニコ生放送で、渡辺さんの殿堂入りを記念した特別番組を生放送。お酒を飲みつつ昔のデッキで対戦するなどの、ゆるい内容でお届けしました。
何かアクシデントが起きた時に使う“蓋画”として用意していた画像。幸い、実際の放送では使われませんでした。
モダン
山本さんが「グリセルシュート」で5位入賞。
スタンダード/モダン/ドラフト
わずか24人による世界トップの戦いに渡辺さんが出場(6勝8敗、16位)。市川さんは公式放送の解説で参加しました。
チームリミテッド
4人別々のチームで参加し、市川さんのチームが優勝、山本さんのチームが準優勝。華々しいワンツーフィニッシュとなりました。
プロツアー『カラデシュ』の生放送で、このときの合宿の様子のビデオが流れました。
スタンダード/ドラフト
前日に渡辺さんの殿堂セレモニーが行なわれました。
スタン落ち直後の環境初期ということで、仮想のメタゲーム内でほかのチームはどういう調整をしてくるかをイメージし、自分たちがどこまで踏み込むのか、レイヤー2で止めるのかレイヤー3で止めるのか、といった難しさがありました。
(「レイヤー」とは、最初の環境有力デッキがまずあって、それに対して強いデッキが現れて席巻するのがレイヤー1、さらにそれに対するメタデッキが現れるのがレイヤー2……という感じで、多層構造になっているということを示します)
渡辺さんがさまざまなサイドイベントに出場したり、放送の解説に乱入したり、BMO本戦の優勝者とエキシビジョンマッチを行なったりしました。
Cygamesが大会のイベントスポンサーとなり、あずにゃんが祝福するサプライズムービーを用意しました。
大会宣伝用ポスター。(採用ver)
大会宣伝用ポスター。(不採用ver)
あずにゃんの登場パートは現地限定放映のため非公開ですが、チームメンバーのほかにも多くの方に祝福コメントを頂いたムービーを作成。
トロフィーのデザイン画。
スタンダード
市川さんが「白青フラッシュ」で3位入賞。
覚前「マルドゥ機体」VS市川「白青フラッシュ」
ゲストはHareruya Pros所属(当時)の八十岡翔太さん。覚前さんのバックについてもらいました。
レガシー
山本さんは9回目のグランプリトップ8入りにしてついに初優勝。この優勝を記念して、『Shadowverse』でプレイヤー全員にパックが配布されました。
#シャドウバース
初タイトル獲得記念パック配布中!
・プレゼント:スタンダードカードパックチケット×7
・配布期間:12月31日 23:59まで
https://t.co/rCYAWf8juA pic.twitter.com/5XlIZ414UT— Shadowverse公式アカウント (@shadowverse_jp) December 1, 2016
今までに撮影した写真を見ながらたこ焼きを食べ、ゆるゆると今までのTeam Cygamesを振り返るトーク番組でした。
この企画自体は、市川さんが「てるやは関西人だからたこ焼き焼けるでしょ」と言い出した軽いノリで始まったような…年末にマジックのイベントがないので配信をやってみようとなり実現しました。結局覚前さんだけで作るのは無理だったので、助っ人ゲストという形で木村が参加し、2人でたこ焼きをたくさん焼いてくれました。
「ヤマケンはいつも顔写真も全部一緒だよね」という話から、TOP8に入った時の山本さんの写真を並べて順番を当てるクイズもやりました。皆さんはわかりますか?
引き続き八十岡さんゲスト回。
八十岡「グリクシスコントロール」VS渡辺「黒緑高揚」
■2017年
「プロツアー・チームシリーズ」のため、Team Cygamesのメンバー4人が所属するチーム〈MUSASHI〉が発足。
観戦が面白くなるだけでなくプレイするほうにとっても最後まで戦い抜くモチベーションにつながるいい施策でしたが、チーム間での情報共有の問題なども生じました。
最多の20名が参加。メンバーは今年の抱負を書き初めしました。
スタンダード/ドラフト
チーム〈MUSASHI〉が獲得プロポイント1位タイの好発進。
「むさしー! うれしー!」の“C”ポーズ。
アイルランド名物ギネスビールの博物館に観光に行き、見晴らしのいいバーで飲みました。
そしてマネージャーと山本さんがスリに合うハプニングも…
覚前「マルドゥ機体」VS山本「4色サヒーリ」
スタンダード
サヒーリフェリダーコンボと、マルドゥ機体の2強環境で、サイドボードの読み合いが勝負のキモになりました。
渡辺「黒緑アグロ」VS市川「マルドゥ機体」
↑メンバーのちびキャライラストが登場しました。右端に木村verも。
参加者18名。ここから、本番同様にタイムカウント入りでピックする練習が行なわれるようになりました。
スタンダード/ドラフト
〈MUSASHI〉の6人に「7人目」原根健太を加えてデッキ調整し、渡辺さんが「ティムール霊気池」で準優勝。Team Cygames発足して初のプロツアーサンデーを迎えることができました。
モダン
ユニフォームスポンサーとして株式会社LogicLinksについていただき、『LinksMate』のロゴ入りユニフォームで参戦。
チーム〈MUSASHI〉の6人がひな壇に座り、森慶太さん(当時Cygames社員)が司会で行なわれた生放送。八十岡さんがメンバーの強さをグラフで分析したり、お互いに質問をしたり、オフショット写真を見ながら振り返ったりする盛りだくさんの特別放送でした。
スタジオ控室での様子。
フリップボードなどの小道具も用意しました。
参加者18名。
スタンダード/ドラフト
計9人でリアルとMOの双方でデッキ調整。日本開催という地の利があるもののチーム全員勝ちきれずにいましたが、覚前さんがなんとか踏ん張った形になりました。
渡辺「ティムールエネルギー」VS覚前「赤単アグロ」
この動画内で、八十岡翔太選手のTeam Cygames入りがサプライズ発表。ドッキリにしようと提案したのは木村取締役です。既存メンバー4人以外のスタッフは全員知っていたので、八十岡さん用の台本と4人用の台本を別に用意したり、4人に気づかれないように打合せするのがドキドキで、みんなが驚いているのを見てスタッフ一同大喜びでした。
スタンダード/ドラフト
6年ぶりの開催となる日本選手権。
すでに日本代表が決定していた渡辺さんが「準決勝でチームの誰かに当たってトスする」という大会前の目標を実現させました。渡辺さんが準決勝で八十岡さんに勝ちを譲ったことで、歴代最強の日本代表チーム(渡辺・八十岡・原根健太)が誕生したのです。
市川「ジェスカイ王神」VS山本「ティムールエネルギー」
市川さんがついに……!の回
チームリミテッド
渡辺さんと八十岡さん(+中村肇さん)のチームが3位入賞。
渡辺さんと八十岡さんの2人が個人戦に参加したほか、チームシリーズの決勝戦が開催され、〈MUSASHI〉はブラッド・ネルソンやセス・マンフィールドらを擁したチームGENESISを打ち破り、優勝しました。
チームA(渡辺・覚前・八十岡)が負けるも、チームB(行弘・市川・山本)が逆転して2回勝利する熱い展開でした。また、来シーズンも同じメンバーとなることが決定。
参加者18名。プロツアーの日程が発売日から間が空くシステムになり、いつもより遅めの開催でした。
スタンダード/ドラフト
新セット発売から間が空き、世界選手権の後で環境が成熟しきった状態のため、デッキが偏りつまらないという感想が出ていました。
スタンダード
渡辺さんが「4色エネルギー」で6位入賞。
チームシールド/チーム構築スタンダード
チーム内の2人以上が同じカードをデッキに入れることができないという特殊なルールのスタンダードでした。大会前のデッキ構築や席順の戦略なども功を奏し、渡辺・八十岡・原根健太チームが見事優勝しました。
後編へ続く…!
~動画収録の舞台裏~
マジックのプロによる解説動画を作るにあたって、参考になるものが当時はありませんでしたが、マジックをよく知らない人が見ても“なんとなくおもしろい!”と感じるように作りたかったので、「編集でおもしろくする」をコンセプト作り始めました。なんてことないような会話をテロップでおもしろくするなど、編集で見せ方を工夫している番組って何だろうというところから「水曜どうでしょう」を大いに参考にしました。
またこの9割動画シリーズは最初からずっと市川さんに司会進行をしてもらっています。本当に市川さんありきのコンテンツで、司会も盛り上げもニコニコ動画の人気配信者だった市川さんなら「適当になんかずっとしゃべってくれるだろう」という謎の自信がCygames側にあって(笑)。ちなみに覚前さんと山本さんには、しゃべり要素はあまり期待していませんでした(笑)。
動画の制作チームはマジックを知らない人ばかりだったので、単純に「なんかおもしろいこと言ってる」部分を抜き出してくれ、マジック知識がないことで逆にバラエティー寄りに作っていけたのかもしれません。
その分、マジック特有の略語まじりのくだけた会話は収録している部屋にいないと聞き取れないことが多く、2つの部屋に分かれて収録していましたが、それぞれの部屋にいたスタッフのメモ頼りだとあとから推測するのが大変でした。なので、メイン配信側の部屋にはマネージャーが進行兼タイムキーパーとして入り、どこで盛り上がったか、試合のキーポイントなどをひたすらメモし、字幕に反映させました。